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クリナップは強基調に変化なく上値試す、17年3月期大幅増益予想
- 2016/9/2 08:04
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリナップ<7955>(東1)はシステムキッチンの大手でシステムバスルームも展開している。17年3月期は新機能「流レールシンク」搭載システムキッチン「クリンレディ」の好調や原価低減効果などで大幅増益予想である。低金利も追い風だ。株価は第1四半期黒字化を好感して8月12日の年初来高値859円まで上伸した。その後一旦反落したが素早く切り返している。強基調に変化はなく上値を試す展開だろう。0.6倍近辺の低PBRも見直し材料だ。
■システムキッチンの大手でシステムバスルームも展開
システムキッチンの大手である。厨房部門(システムキッチン)を主力として、浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)も展開している。16年3月期の部門別売上高構成比は厨房部門78%、浴槽・洗面部門16%、その他6%で、販売ルート別売上高構成比(単体ベース)は一般ルート(工務店・リフォーム)79%、ハウスメーカー16%、直需(マンション)5%である。
■中期経営計画で「ザ・キッチンカンパニー」目指す
中期経営計画では「ザ・キッチンカンパニー」の確立を目指している。重点施策として、システムキッチン「S.S.」「クリンレディ」「ラクエラ」を軸とした商品ラインナップの充実、中高級システムキッチンの販売強化と市場シェア上昇、リフォーム市場での競争優位となる商品の開発、全国のショールームを核とした販売戦略の推進、会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携強化とリフォーム需要の取り込み、サプライチェーン全体での原価低減活動強化、設備投資およびコストの最適化、CPS活動の全社展開による業務効率化、20年サポートを支える業務システムの整備、海外事業の強化などを推進している。
商品ラインナップ充実では、15年5月発売の新機能「流レールシンク」搭載システムキッチン「クリンレディ」が、2015年日経優秀製品・サービス賞において優秀賞日経産業新聞賞を受賞した。
全国ショールームを核とした販売戦略では、ショールームを顧客接点の要、地域に根差したブランド戦略の重要拠点、リフォーム需要取り込みの最重要拠点と位置付けて、集客を強化するためリニューアルと生活提案型ショールームへの転換を進めている。シュールームのリニューアルは12年3月期4ヶ所、13年3月期14ヶ所、14年3月期21ヶ所、15年3月期9ヶ所、16年3月期13ヶ所、5期合計61ヶ所を実行した。
会員登録制組織「水まわり工房」正会員数は16年3月期末4259社(15年3月期末比309社増加)となった。生産面では16年2月、クリナップ岡山工業津山工場のプレス棟建築工事とプレスライン設備工事が完了した。16年7月本格稼働後は、福島県いわき市の東日本の拠点と合わせて生産拠点の二極化体制が整い、西日本における供給体制を強化する。
海外展開は中国、台湾、シンガポール、マレーシアなどに展開している。中国にはハウスメーカーと共同進出して、瀋陽、蘇州、無錫、太倉の4地区にキッチン等を供給している。
■新設住宅着工やリフォーム需要の影響を受けやすい収益構造
四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期319億24百万円、第2四半期284億53百万円、第3四半期288億39百万円、第4四半期270億23百万円、営業利益が19億68百万円、5億49百万円、11億13百万円、6億02百万円の赤字、16年3月期は売上高が271億23百万円、292億70百万円、301億81百万円、278億71百万円、営業利益が32百万円の赤字、4億30百万円、13億59百万円、6億28百万円だった。
収益は新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい。16年3月期は新設住宅着工件数や住宅設備機器需要が本格回復に至らず、原材料価格上昇、ショールームリニューアル費用や広告宣伝費の増加で大幅減益だった。売上総利益は15年3月期比4.1%減少し、売上総利益率は32.4%で同0.9ポイント低下した。販管費は同0.9%増加し、販管費比率は31.5%で同0.8ポイント上昇した。
特別損失では厚生年金基金解散損失引当金繰入額が一巡した。ROEは0.6%で同0.9ポイント低下、自己資本比率は65.0%で同0.7ポイント低下した。配当性向は244.2%だった。利益配分は安定的な配当を長期的に継続していくことを基本方針としている。
部門別売上高は、厨房部門が同1.6%減の897億55百万円、浴槽・洗面部門が同2.6%減の184億66百万円、その他が同2.2%増の62億23百万円だった。厨房部門のシステムキッチン「S.S.」は数量・金額とも減少、「クリンレディ」は数量・金額とも増加、「ラクエラ」は数量・金額とも減少した。浴槽・洗面部門のシステムバスルーム「アクリアバス」は数量・金額とも減少、「ユアシス」は数量・金額とも減少、洗面化粧台は数量・金額とも減少した。
ショールームは15年10月首都圏エリア旗艦ショールームとして「クリナップ・キッチンタウン・東京」をオープンしたほか、6ヶ所を新築移転、6ヶ所を全面リニューアルした。
■17年3月期第1四半期は営業損益大幅改善して黒字化
今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.5%増の275億26百万円、営業利益が5億20百万円(前年同期は32百万円の赤字)、経常利益が5億09百万円(同34百万円の赤字)、純利益が2億75百万円(同1億22百万円の赤字)だった。増収効果、原価低減効果、販管費抑制効果で大幅増益となり黒字化した。売上総利益は同4.3%増加し、売上総利益率は33.8%で同0.9ポイント上昇した。販管費は同1.9%減少し、販管費比率は32.0%で同1.1ポイント低下した。
部門別売上高は、厨房部門が同2.5%増の212億36百万円、浴槽・洗面部門が同3.7%減の47億65百万円だった。厨房部門ではシステムキッチン「S.S.」が数量減少・金額増加、「クリンレディ」が数量・金額とも増加、「ラクエラ」が数量・金額とも減少した。浴槽・洗面部門ではシステムバスルーム「アクリアバス」が数量・金額とも減少、「ユアシス」が数量・金額とも減少、洗面化粧台が数量・金額とも増加した。
■17年3月期通期も大幅増益予想で収益改善基調期待
今期(17年3月期)通期の連結業績予想は前回予想(5月10日公表)を据え置いて、売上高が前期(16年3月期)比4.0%増の1190億円、営業利益が同2.2倍の25億円、経常利益が同2.5倍の22億円、そして純利益が同2.5倍の12億円としている。配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で予想配当性向は69.3%となる。
部門別売上高の計画は、厨房部門が同3.5%増の929億09百万円、浴槽・洗面部門が同4.7%増の193億29百万円、その他が同8.7%増の67億62百万円としている。
会員登録制組織「水まわり工房」加盟店や流通パートナーと連携し、流レールシンクを標準装備したシステムキッチン「クリンレディ」や美コートワークトップを標準装備したシステムキッチン「S.S.」などを中心に拡販を強化する。生産設備の整備、ショールームの新設・移転・改装、情報基盤整備などへの投資を継続しつつ、生産面での原価低減や営業業務の効率化などで大幅増益予想としている。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が23.1%、営業利益が20.8%、経常利益が23.1%、純利益が22.9%である。期後半の構成比が高い収益構造を考慮すれば順調な水準と言えるだろう。低金利や住宅取得優遇策なども追い風となって収益改善基調が期待される。
■株価は強基調に変化なく上値試す、低PBRも見直し
株価の動きを見ると、第1四半期黒字化を好感する形で8月12日の年初来高値859円まで上伸した。その後一旦反落したが8月17日の784円から素早く切り返している。強基調に変化はないようだ。
9月1日の終値841円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS28円85銭で算出)は29~30倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1340円97銭で算出)は0.6倍近辺である。時価総額は約353億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形となった。強基調に変化はなく、0.6倍近辺の低PBRも見直して上値を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)