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三洋貿易は4%近辺の予想配当利回りなど割安感を見直し
- 2016/9/5 08:07
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
三洋貿易<3176>(東1)は自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。業容拡大に向けてM&A戦略も加速し、バイオマス発電分野や医療機器分野など新規領域を強化している。16年9月期は主力事業の堅調推移にM&A効果も寄与して営業増益予想である。株価は安値圏だが、4%近辺の予想配当利回りなど指標面の割安感を見直して反発のタイミングだろう。なお9月7~9日開催(幕張メッセ国際展示場)のアジア最大級分析機器・理科学機器展示会「JASIS 2016」に科学機器事業部が出展する。
■自動車業界向けゴム・化学関連製品やシート部品が主力の専門商社
ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に展開する専門商社である。メーカー並みの技術サポート力に加えて、財務面で実質無借金経営であることも特徴だ。
15年9月期セグメント別(連結調整前)売上高構成比は、化成品(ゴム・化学品を16年9月期から名称変更)41%、機械資材27%、海外現地法人22%、国内子会社10%、その他0%で、営業利益構成比は化成品30%、機械資材42%、海外現地法人10%、国内子会社14%、その他4%だった。
業界別売上構成(単体ベース)で見ると、自動車が過半を占め、OA・家電、塗料・インキ、その他化学などが続いている。自動車関連は各種合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサー)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーターはカーボンファイバー仕様市場を独占し、ランバーサポートは世界市場6割を占有している。
飼料・エネルギー・リサイクル関連では飼料や固定燃料などを製造するペレットミルが高シェアだ。国内子会社のコスモス商事は地熱・海洋資源開発関連分野で掘削用機材の輸入販売・レンタルを手掛けている。
■M&Aも活用した業容拡大戦略を推進
グループとして重点志向する事業領域への経営資源集中を進めるとともに、国内外でM&Aも活用して業容拡大戦略を推進している。15年3月エレクトロニクス関連商品卸売の連結子会社アロマンの株式をタクミ商事に譲渡、15年9月連結子会社ケムインターが工業用洗剤輸入販売のコムスタージャパンを子会社化、16年2月工業化学薬品輸入販売のソートを子会社化した。
16年6月洸陽電機(兵庫県)と業務提携した。小型高効率の独ブルクハルト社製木質バイオマスコージェネレーション(熱電併給)システムの販売拡大や導入促進で提携し、17年9月期に2社共同事業による合計売上高50億円を見込んでいる。
16年7月には日本フルトを子会社化した。同社は呼吸器系を主軸に医療機器の開発・製造販売、医療機器および理科学機器の輸入販売を手掛けている。同社の子会社化によって当社科学機器事業部が医療機器分野に新規参入する。
海外は米国、メキシコ、タイ、中国(上海、香港)、インド、ベトナム、インドネシアに展開している。15年7月シンガポールの工業用フィルム販社BPS社を子会社化(シンガポール三洋貿易に社名変更)、15年10月タイに子会社Sanyo Trading(Thailand)を設立した。
■3月決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高い収益構造
四半期別の業績推移を見ると、15年9月期は売上高が第1四半期153億86百万円、第2四半期156億16百万円、第3四半期156億82百万円、第4四半期139億88百万円、営業利益が9億82百万円、10億54百万円、10億68百万円、5億02百万円、経常利益が11億48百万円、10億47百万円、12億09百万円、7億06百万円だった。設備投資関連商材を含むため、3月期決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高くなりやすい収益構造である。
15年9月期は6期連続最高益更新だった。売上総利益率は15.6%で14年9月期比0.8ポイント上昇、販管費比率は9.6%で同0.3ポイント上昇した。営業外収益では受取配当金、為替差益、匿名組合投資利益が増加し、純利益はアロマン株式譲渡に伴う税負担減少も寄与した。ROEは15.9%で同3.2ポイント上昇、自己資本比率は62.1%で同7.4ポイント上昇、D/Eレシオは0.06倍で同0.02ポイント低下した。配当は5期連続増配で、配当性向は25.1%だった。配当の基本方針は連結配当性向25%を下限の目途としている。
■16年9月期第3四半期累計は営業減益
今期(16年9月期)第3四半期累計(10~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比3.5%減の450億51百万円、営業利益が同2.1%減の30億40百万円、経常利益が同7.0%減の31億66百万円、純利益が同16.9%減の19億78百万円だった。
化成品や機械資材は堅調だったが、円高や新興国経済減速など事業環境悪化が影響して営業・経常減益だった。純利益はアロマン株式譲渡に伴う税負担減少効果一巡も影響した。売上総利益は同0.6%増加し、売上総利益率は16.4%で同0.6ポイント上昇した。販管費は同2.5%増加し、販管費比率は9.7%で同0.6ポイント上昇した。営業外収益では為替差益が減少(前期2億36百万円、今期51百万円)した。
セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、化成品は売上高が同1.4%増の180億46百万円、営業利益が同2.5%増の9億12百万円だった。ゴム関連製品で自動車・家電・情報機器向け合成ゴムがやや低調だったが、化学品関連で染料や難燃材が好調だった。第2四半期から新規連結したソートも寄与した。機械資材は売上高が同8.4%増の145億27百万円、営業利益が同5.9%増の17億04百万円だった。自動車内装用部品やシート用高機能性部品・原材料が伸長した。科学機器関連は各種分析・試験機器が好調だった。
海外現地法人は売上高が同15.2%減の82億20百万円となり、営業利益が同32.1%減の2億69百万円だった。SCOA(米国)は吸水性ポリマーが低調だった。三洋物産貿易(上海)は自動車用各種部品が伸長したが、ゴム・化学品が低調だった。San-Thap(タイ)はタイパーツ安に伴い輸入品が採算悪化した。国内子会社は売上高が同28.1%減の40億47百万円、営業利益が同20.3%減の4億68百万円だった。コスモス商事の海洋・船舶および地熱関連が大型案件の反動で伸び悩み、ケムインターは化学品、機械・電子部品とも低調だった。
なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期163億87百万円、第2四半期149億46百万円、第3四半期137億18百万円、営業利益は13億11百万円、9億94百万円、7億35百万円、経常利益は13億90百万円、9億86百万円、7億90百万円だった。
■16年9月期通期は営業・経常増益予想
今期(16年9月期)通期の連結業績予想(11月6日公表)は、売上高が前期(15年9月期)比5.5%増の640億円で、営業利益が同12.3%増の40億50百万円、経常利益が同3.4%増の42億50百万円、純利益が同7.0%減の26億円としている。配当予想は同3円減配の年間46円(第2四半期末23円、期末23円)で予想配当性向は25.3%となる。
純利益はアロマン株式譲渡に伴う税負担減少効果が一巡して減益予想だが、自動車用各種部品など高付加価値の主力商材が堅調に推移して営業増益・経常増益予想である。売上総利益率は同1.0ポイント上昇の10.1%、販管費比率は同1.2ポイント上昇の7.8%の想定である。
セグメント別(連結調整前)の売上高は、化成品がソートの新規連結も寄与して同5.5%増の249億円、機械資材が北米自動車市場の好調などで同7.4%増の190億円、海外現地法人がゴム関連製品や自動車用部品の堅調推移で同7.7%増の133億円、国内子会社がケムインターの低調で同4.2%減の65億円、その他が同30.4%増の3億円の計画としている。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が70.4%、営業利益が75.1%、経常利益が74.5%、純利益が76.1%である。為替の円高傾向が自動車業界に与える影響など不透明要因もあるが、通期会社予想の達成は可能だろう。
■長期ビジョンで20年9月期までにROE15%以上目指す
15年11月策定の16年9月期~17年9月期2カ年中期経営計画では、目標数値に17年9月期売上高670億円、経常利益44億50百万円を掲げた。
重点戦略は(1)コアビジネスの収益の強化と安定化、(2)新規事業は地熱・海洋資源開発機材など資源エネルギー分野、木質バイオマス機材など環境関連分野、医薬中間体・医療用原材料・バイオなどライフサイエンス分野へ展開、(3)グローバル展開(自動車産業を中心に日系企業の進出が続くアセアン+インド、中国、北中米に主軸)、(4)投資案件への積極的取り組み(既存事業との相乗効果、成長性、グローバル展開を目指すM&A含む投資案件)、(5)マンパワーの強化と人材育成とした。
そして15年10月1日~20年9月30日の5年間長期ビジョン「VISION2020」では、目標数値に20年9月期までに経常利益50億円、ROE15%以上、自己資本比率50%以上を掲げている。
基本方針は(1)盤石な財務基盤、(2)強みを通じた価値創造、(3)自由闊達な社風と機会創出の組織として、6つの戦略に、戦略A:既存ビジネスの深化、戦略B:ビジネスポートフォリオの明確化、戦略C:新規ビジネスのプロジェクト立ち上げ、戦略D:グローバル展開の加速、戦略E:新規投資案件の推進、戦略F:国内外の組織の強化を掲げた。
戦略Cの新規プロジェクト立ち上げでは、20年までに具現化可能な新規ビジネスとして、地熱・海底資源開発関連機材、医薬中間体・原体、特殊フィルムの海外展開、木質バイオマス・ガス化発電関連機材を推進する。なお16年の成約として独ブルクハルト社製ガス化熱電併給装置、コールバッハ社サーマルオイルボイラー、CPM社ペレットミル、ステラ社ベルト式低温ドライヤー関連機器を見込んでいる。
戦略Eの新規投資案件では、新規投資目標を5件以上として、会社方針に符合する案件にM&A・商権譲渡・資本参加・JV設立などの形で積極投資を行う。戦略Fの国内外の組織の強化では、グローバル化に対応すべく約260人のグループ社員を20年には300人以上に増強する方針だ。
■株価は安値圏だが割安感を見直して反発のタイミング
株価の動きを見ると、6月の年初来安値1041円から7月末の1300円近辺まで一旦切り返したが、8月以降は安値圏1100円~1200円近辺で推移している。
9月2日の終値1158円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS181円77銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間46円で算出)は4.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1314円11銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約168億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となったが、4%近辺の予想配当利回りなど指標面の割安感を見直して反発のタイミングだろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)