日銀の金融政策決定会合、FOMCまで期間限定の秋相場の予選リーグでは増配・高配当利回り株にも出番=浅妻昭治
- 2016/9/5 12:18
- 編集長の視点
<マーケットセンサー>
困ったものである。重要イベントが通過したのに、円安か円高か、株高か株安か中央銀行プレーの方向性が、またまた逃げ水のように遠去かり不確かになった。前週末2日の米国では、方向性示唆の糸口となるはずの8月の雇用統計が発表された。非農業部門の雇用者数の増加幅は、15万1000人と市場予想の18万人程度を下回ったが、それで9月20日~21日開催のFOMC(米公開市場委員会)で追加利上げの確率が高まったかどうかなお見方が分かれたからだ。実際に、為替相場は、円高に振れたあと円安となり、ニューヨーク・ダウ工業株30種平均も続伸したあと上値が重くなって引けた。
しかも、さらに困ることは、米国市場は週明け5日が、レーバー・デーの祝日で3連休となることだ。週明けの東京市場は、世界市場に先駆けてこの不確かさに正解を出さなければならない。とても、重要イベント明けでいよいよ秋相場が本格的にスタートすると鷹揚に構えるわけにはいかず、週明け早々の決め打ちのリスクを意識させられるのは致し方のないところだろう。
下衆の勘繰りと叱られそうだが、東京市場の投資家と同様に、やや困っているのではないかと推察されるのが、日銀の黒田東彦総裁である。日銀は、米国のFOMCと同じ日程の9月20日~21日に金融政策決定会合の開催を予定している。同じ開催日程ながら、時差の関係で金融政策決定会合の方が、FOMCより先に会合を終了する。FOMCで追加利下げがあったかどうか確認してからの会合結果の発表とはできないからだ。
それでなくても、前回7月末の金融政策決定会合後の記者会見で、黒田総裁は、9月会合で「マイナス金利付き量的・質的緩和策」の「総括的な検証」を行うことを強調していた。「総括的な検証」が、マイナス金利の深掘り(利下げ)を指すのか、マイナス金利の撤廃を意味するのかこれまた市場の見方は分かれており、この動向次第ではFOMCの結果と相乗して為替相場や株式市場へのインパクトは、2倍にも3倍にも増幅し上にも下にも大きく振れる可能性がある。
何とも厄介で、不確実材料横溢の9月相場が進行することは間違いなく、年内あと4カ月を残すばかりとなった2016年相場を生き残り、勝ち切るためにも、決勝前の予選リーグ序盤で読みが外れて市場撤退するわけにはいかず、慎重な上にも慎重な投資スタンスが求められることになる。そこで金融政策決定会合、FOMCの結果判明前までの期間限定で浮上するのが、時節柄、3月期決算会社の中間配当の権利取り、あるいは9月決算会社の期末配当の権利取りである。
個人的な集計で漏れがあるかもしれず恐縮だが、3月期決算会社の第1四半期(2016年4月~6月期、1Q)決算の発表が本格化した今年7月中旬以降から前週末2日までに増配を発表した銘柄は、12月期決算会社、2月期決算会社なども含めて31社にのぼっているが、この多くが株価高感度を高めて株価も上昇しており、インカムゲイン妙味が、株価材料としても健在であることを示している。例えばハーツユナイテッドグループ<3676>(東1)は、8月6日に今3月期配当の増配と合わせて9月30日を基準日に株式分割も発表したことから年初来高値を更新し短期3割高している。9月27日の権利付き最終日に向けてこうした増配株に狙いをつけることが一つの選択肢となる。
もう一つターゲット銘柄として注目したいのは、3月期・9月期決算会社の東証1部高配当利回りランキングの上位株である。この上位株は、今年1月末の日銀の金融政策決定会合で決定された初のマイナス金利の導入の反動安で、多くが2月に年初来安値まで売られ、その安値から3月末に向けた配当権利取りで3割高、4割高した実績がある。この上位株は、業績がやや不調で足元の株価が安値に里帰りしており、日銀の金融政策決定会合を前に今年2月~3月相場の再現の可能性もある。インカムゲイン狙いが、あるいは9月27日の権利付き最終日に向けキャピタルゲインも望める両建て妙味を示唆してくれているかもしれないのである。
もちろん高配当銘柄の定番銘柄は、日経平均株価の構成銘柄となっているメガバンク株、大手商社株などだが、それ以外の増配銘柄、高配当銘柄の小型株にも意外性があるだけに浮上を期待したい。
■増配銘柄は業績上方修正も伴い低PER、高配当銘柄は市場平均を倍以上も上回る
今年7月中旬以降に9月期配当、3月期配当を増配した銘柄のうち配当利回りが市場平均を大きく上回るのは、アイビー化粧品<4918>(JQS)、三浦印刷<7920>(東2)、SHOEI<7839>(東1)、日進工具<6157>(JQS)で、トップの三浦印刷の配当利回りは4.3%、4番目の日進工具でも3.3%となっている。また多くが業績の上方修正に伴う増配であり、PER評価から割安な銘柄も目立ち、川岸工業<5921>(東2)のPER4倍台を筆頭に山加電業<1789>(JQS)の9倍台、さらにパナホーム<1924>(東1)、システム情報<3677>(東マ)、パラカ<4809>(東1)、前田工繊<7821>(東1)などが12倍~14倍の低評価にとどまる。またセプテーニ・ホールディングス<4293>(JQS)は、ハーツユナイテッドと同様に9月末割り当てで株式分割を予定している。
配当利回りランキングの上位銘柄は、トップの6.2%に回るデクセリアルズ<4980>(東1)以下、双葉電子工業<6986>(東1)、アイダエンジニアリング<6118>(東1)、明和地所<8869>(東1)、学究社<9769>(東1)、サンデンホールディングス<6444>(東1)、バイオテックホールディングス<9957>(東1)、あおぞら銀行<8304>(東1)、黒田電気<7517>(東1)、盟和産業<7284>(東1)と続き、10番目の盟和産業の配当利回りは、4.8%と東証1部全銘柄平均の1.93%を倍以上大きく上回る。いずれも減益・赤字決算発表時に配当据え置きを明らかにしており、これからの配当異動動向が注目されるが、9月末まではこのまま高配当株評価が続くと想定される。(本紙編集長・浅妻昭治)