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ランドコンピュータは自律調整一巡して8月の上場来高値試す、17年3月期増収増益予想
- 2016/9/8 08:01
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ランドコンピュータ<3924>(東2)は独立系のシステムインテグレータである。金融分野などに強みを持ち、マネジメント改革の成果で17年3月期増収増益予想である。株価(9月1日付で株式3分割)は8月の上場来高値から利益確定売りで一旦反落したが、自律調整が一巡して上場来高値を試す展開だろう。
■金融分野に強みを持つ独立系システムインテグレータ
金融分野に強みを持つ独立系のシステムインテグレータ(SI)である。システム受託開発のシステムインテグレーション・サービスを主力に、ハードウェア導入・ネットワーク構築などのインフラソリューション・サービス、ソフトウェアパッケージ製品(Salesforceなど)導入・カスタマイズのパッケージベースSI・サービスも展開している。
16年3月期の事業別売上高構成比は、システムインテグレーション・サービス78%、インフラソリューション・サービス13%、パッケージベースSI・サービス9%だった。システムインテグレーション・サービスの業種別売上高構成比は、金融44%(銀行27%、保険4%、証券3%、クレジットカード10%)、産業・流通42%、公共5%、医療9%だった。
■メーカー系大手SIerと長期取引関係
メーカー系大手SIerとの長期取引関係、高い技術力・業務知識・品質に裏付けられた強固な顧客基盤、Salesforceなど有力パッケージベンダーとの戦略的協業、ビジネスパートナー(協力会社)との長期協力関係、不採算プロジェクト防止への全社的取り組みなどを特徴としている。
主要取引先は、メーカー系大手SIerで富士通<6702>グループ、日立グループ、NTTグループ、新日鐵住金ソリューションズ、インテック、直接取引で三菱総研DCS、三井住友トラスト・システム&サービス、出光興産、関電システムソリューションズ、野村ホールディングスなどがある。直接取引ユーザー数は11年3月期の94社から16年3月期には151社に増加した。
また16年4月時点で社員の資格取得はIT系資格が延べ1036人、銀行業務検定や簿記など業務系資格が延べ218人で、1人当たり平均資格数は2.65資格となっている。
■システム投資の影響を受け、第2・第4四半期の構成比が高い収益構造
16年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期15億54百万円、第2四半期19億84百万円、第3四半期16億64百万円、第4四半期22億08百万円、営業利益は53百万円、1億64百万円、1億31百万円、2億07百万円だった。顧客のシステム投資の影響を受け、予算執行や工期などのタイミングで第2四半期および第4四半期の構成比が高くなりやすい収益構造である。
16年3月期(非連結)は大幅増収増益で売上高、利益とも過去最高だった。事業別売上高はシステムインテグレーション・サービスが同14.4%増の57億62百万円、インフラソリューション・サービスが同19.4%増の9億84百万円、パッケージベースSI・サービスが同40.9%増の6億66百万円だった。システムインテグレーション・サービスでは金融分野のネットバンキング案件や公共分野の年金関連案件が拡大した。電力小売全面自由化案件にも参画した。インフラソリューション・サービスではアプリ基盤構築案件、パッケージベースSI・サービスでは会計システムパッケージの大型案件が寄与した。
売上総利益は同28.0%増加し、売上総利益率は16.5%で同1.4ポイント上昇した。販管費は同14.1%増加したが、販管費比率は8.9%で同0.3ポイント低下した。営業人件費の増加、上場に伴う管理人件費の増加、本社事務所増床よる家賃の増加を増収効果で吸収した。また14年3月期から開始した見積精度向上や品質管理向上などマネジメント改革の成果で、営業利益率は14年3月期3.7%をボトムとして、15年3月期5.9%、16年3月期7.5%へとV字回復した。
営業外収益では助成金制度変更に伴って助成金収入が減少(前々期40百万円、前期5百万円)した。営業外費用では株式公開費用39百万円を計上した。ROEは14.5%で同0.4ポイント上昇、自己資本比率は60.8%で同11.1ポイント上昇した。配当は年間50円(期末一括)で配当性向は26.6%だった。
■17年3月期第1四半期は順調
今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の非連結業績は、売上高が14億97百万円、営業利益が27百万円、経常利益が30百万円、純利益が18百万円だった。前年同期は四半期財務諸表を作成していないため比較はできないが、概ね順調に推移したようだ。売上総利益率は15.8%、販管費比率は14.0%だった。
事業別売上高はシステムインテグレーション・サービスが11億60百万円、インフラソリューション・サービスが1億61百万円、パッケージベースSI・サービスが1億75百万円だった。システムインテグレーション・サービスでは金融分野のネットバンキング案件、公共分野の既存顧客、産業・流通分野における百貨店向けおよび食品流通向け案件、エネルギー自由化案件の受注拡大に注力した。分野別売上高は金融4億69百万円、産業・流通5億34百万円、公共61百万円、医療94百万円だった。インフラソリューション・サービスではアプリ基盤構築案件、パッケージベースSI・サービスではSalesforce関連が堅調だった。
■17年3月期通期増収増益予想
今期(17年3月期)通期の非連結業績予想(5月11日公表)は売上高が前期(16年3月期)比4.8%増の77億70百万円、営業利益が同2.4%増の5億71百万円、経常利益が同9.2%増の5億72百万円、純利益が同9.9%増の3億55百万円としている。配当予想は年間18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。16年9月1日付株式3分割を考慮して年間54円に換算すると、前期の年間50円に対して実質的に4円増配となる。予想配当性向は30.3%である。利益還元についての基本方針は配当性向30%を目途としている。
事業別売上高の計画はシステムインテグレーション・サービスが同0.5%増の57億92百万円、インフラソリューション・サービスが同9.2%増の10億74百万円、パッケージベースSI・サービスが同35.5%増の9億03百万円としている。
システムインテグレーション・サービスでは、大手金融機関の大型システム統合案件が収束して伸び率が鈍化するが、日立グループへの新規参画案件や公共分野の拡大に取り組む。インフラソリューション・サービスでは銀行・公共分野のストックビジネスの受注拡大に取り組む。パッケージベースSI・サービスでは、Salesforce関連の導入支援・カスタマイズの大型案件開拓、自社アプリケーション開発による課金ビジネスへの転換に取り組む。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が19.3%、営業利益が4.7%、経常利益が5.3%、純利益が5.1%である。低水準の形だが、第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造のためネガティブ要因とはならない。受注拡大やプロジェクト管理徹底で好業績が期待される。
■中期成長に向けて新領域にも展開
中期成長に向けた事業戦略としては、システムインテグレーション・サービスではメーカー系大手SIerとの関係強化(富士通に続く第2・第3の柱として日立・NTTデータの深耕)、金融分野のさらなる事業拡大、産業・流通・医療・公共分野での直接取引ユーザーからの一括請負拡大、インフラソリューション・サービスではネットワークの多様化と仮想化技術への積極対応、パッケージベースSI・サービスではパッケージのカスタマイズ・アドオン事業の強化、さらにSalesforceとの連携によるクラウドSI事業や自社商品など新規ビジネスの拡大を掲げている。中期的に収益拡大基調が期待される。
■株価は自律調整一巡して8月の上場来高値試す
株価の動き(16年9月1日付で株式3分割)を見ると、8月2日の上場来高値2500円から利益確定売りで一旦反落したが、大きく下押すことなく上場来高値圏で堅調に推移している。そして9月7日には2395円まで上伸して8月の上場来高値に接近してきた。自律調整が一巡したようだ。
9月7日の終値2380円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS59円34銭で算出)は40倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は0.8%近辺、前期実績PBR(前期実績に株式3分割を考慮したBPS446円93銭で算出)は5.3倍近辺である。時価総額は約142億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートして上昇トレンドである。需給面は良好であり、自律調整が一巡して8月の上場来高値を試す展開だろう。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)