鉄人化計画＜２４０４＞（東２）はカラオケルーム運営事業への経営資源集中を進め、新たな成長ステージに向けて新規出店の検討も開始している。１７年８月期の収益改善が期待される。株価は８月期末の配当・株主優待権利落ちも影響して安値圏で推移しているが、９月７日は前日比１４円（３．５８％）高の４０５円まで上伸する場面があり、調整一巡感を強めている。

■カラオケルーム運営事業に経営資源を集中

　首都圏中心に展開する「カラオケの鉄人」ブランドのカラオケルーム運営事業を主力としている。また「カラオケの鉄人モバイル（カラ鉄モバイル）」サイト運営やコンテンツ配信ＡＳＰサービスのＣＰ事業、まんが喫茶（複合カフェ）運営事業、音響設備販売、海外事業（グアムのエンターテイメントレストラン運営）なども展開している。

　カラオケルーム運営事業への経営資源集中を進め、１４年６月韓国カラオケ店舗事業の当社持分を譲渡、１５年１月台湾でフルサービス型珈琲ショップを運営する連結子会社の解散を発表、１５年４月広告代理店業務の子会社パレードの解散を発表、１５年７月子会社システムプランベネックスを吸収合併、１５年８月フルサービス型珈琲ショップ運営の子会社からふね屋珈琲の全株式をジェイアール西日本フードサービスに譲渡した。

　１５年８月期セグメント別売上構成比はカラオケルーム運営事業８３％、フルサービス型珈琲ショップ運営事業（１５年８月譲渡）８％、ＣＰ事業３％、その他６％だった。

■カラオケルームは独自開発「鉄人システム」に特徴

　カラオケルーム運営事業は、すべてのルームで複数の通信カラオケメーカーの機種が利用できる独自開発のカラオケ集中管理システム「鉄人システム」をベースとして、５０万曲を超える豊富な楽曲配信、独自分析によるオリジナル楽曲の配信、顧客情報のデータベース化などを特徴としている。

　出店戦略は２０ルーム前後の中小型店舗で、設備投資負担が小さい居抜き物件への出店を基本としている。首都圏中心部の駅前立地などでは４０ルーム以上の大型店も出店する。収益性と効率性を重視した厳選出店戦略を推進している。

　不採算事業の整理や子会社売却による事業再編が進展し、財政状態が相当程度改善したため、新たな成長ステージに向けてカラオケルーム運営事業における新規出店の検討を開始している。

　また１５年１２月、モバイル・ミュージック配信サービス企画・運営などを展開するレコチョクと共同出資で企画会社（Ｔ・Ｒプロジェクト）を設立した。映像と音楽を活用した新しい音楽体験サービスを提供する事業会社を設立し、１７年８月期のサービス開始を目指すとしている。

■第２四半期（１２～２月）と第３四半期（３～５月）が繁忙期の収益構造

　四半期別業績推移を見ると、１４年８月期は売上高が第１四半期２２億９２百万円、第２四半期２７億９５百万円、第３四半期２６億５３百万円、第４四半期２４億１１百万円、営業利益が２億１２百万円の赤字、２億８６百万円の黒字、１億４９百万円の黒字、８２百万円の黒字、１５年８月期は売上高が２２億７８百万円、２７億２５百万円、２４億０４百万円、２４億３４百万円、営業利益が１億０１百万円の赤字、３億３４百万円の黒字、１億３６百万円の黒字、５３百万円の黒字だった。

　カラオケルーム運営事業は忘年会・新年会シーズンの第２四半期（１２～２月）および歓送迎会シーズンの第３四半期（３～５月）が繁忙期となり、売上高・利益とも構成比が高くなる収益構造だ。１５年８月期はカラオケルーム運営事業の不採算店２店舗閉店などで減収だったが、厳選出店、不採算店閉店、店舗商圏・環境を意識したセグメント・マーケティングの推進、既存店舗オペレーションの見直し、閑散期における店舗原価削減施策の推進の効果などで営業損益が大幅に改善した。

　１５年８月期の売上総利益率は１９．５％で１４年８月期比２．２ポイント上昇、販管費比率は１５．２％で同０．９ポイント上昇した。特別利益にはからふね屋珈琲譲渡に伴う関係会社株式売却益を計上した。ＲＯＥは１５．３％で同７．７ポイント上昇、自己資本比率は２１．４％で同３．８ポイント上昇した。

　配当性向は２３．５％だった。配当についての基本方針は、中長期的な配当性向の目安として連結純利益の２０％をメドに配当を行うとともに、当期および今後の業績や財政状況等を勘案して継続的に配当を行うとしている。

■１６年８月期第３四半期累計は減損損失計上で最終赤字

　前期（１６年８月期）第３四半期累計（９～５月）連結業績は売上高が前年同期比１６．６％減の６１億７９百万円、営業利益が同６２．０％減の１億４０百万円、経常利益が同５４．８％減の１億９１百万円、純利益が３７百万円の赤字（前年同期は２億３８百万円の黒字）だった。

　子会社売却など事業再編の影響、二次会としてのカラオケ利用頻度の減少傾向、競争激化の影響などで減収減益だった。売上総利益は同１７．８％減少し、売上総利益率は１９．３％で同０．３ポイント低下した。販管費は同２．２％減少したが、販管費比率は１７．１％で同２．４ポイント上昇した。営業外では為替差益が減少（前期１５百万円、今期０百万円）したが、支払利息が減少（前期６４百万円、今期４７百万円）した。また特別利益では固定資産売却益が減少（前期１９百万円、今期２百万円）し、特別損失では減損損失が増加（前期４２百万円、今期１億７５百万円）した。

　セグメント別（連結調整前）動向を見ると、カラオケルーム運営事業は売上高が同６．５％減の５７億９１百万円で営業利益が同９．２％減の６億６２百万円、ＣＰ事業は売上高が同２３．４％減の１億９０百万円で営業利益が同３０．５％減の１億１０百万円、その他は売上高が同６０．６％減の１億９８百万円で営業利益が３２百万円の赤字（前年同期は２５百万円の黒字）だった。事業譲渡したフルサービス型珈琲ショップ運営事業の前年同期売上高は６億０８百万円、営業利益は２７百万円だった。なおカラオケルーム運営事業の既存店売上高は９３．８％だった。

　四半期別推移を見ると、売上高は第１四半期１８億７９百万円、第２四半期２３億１８百万円、第３四半期１９億８２百万円、営業利益は１億６４百万円の赤字、２億６５百万円、３９百万円だった。

■１６年８月期通期は下振れ注意、１７年８月期の収益改善期待

　前期（１６年８月期）通期の連結業績予想（１０月１５日公表）は売上高が前々期（１５年８月期）比９．６％減の８９億円、営業利益が同４．２％増の４億４０百万円、経常利益が同１３．１％増の５億円、純利益が同３．３％増の３億円としている。配当予想は前期比１円減配の年間１０円（第２四半期末５円、期末５円）で予想配当性向は２０．７％となる。

　フルサービス型珈琲ショップ運営事業から撤退したことも影響して減収だが、店舗環境に応じた効率的な販促活動、原価削減、人員配置などの施策で増益予想としている。通期会社予想に対する第３四半期累計の進捗率は売上高が６９．４％、営業利益が３１．８％、経常利益が３８．２％である。低水準のため通期予想下振れに注意が必要となる。

　カラオケルーム運営事業は大手チェーンとの競合が激しいが、収益性の高い地域に厳選した出店戦略、顧客満足度向上に向けた店舗教育の強化、オリジナル楽曲の開発・提供加速、大手レーベルとのコラボレーション企画などの営業強化策、店舗オペレーションの効率化などの施策を推進している。不採算店舗閉鎖や不採算事業の整理進展なども寄与して来期（１７年８月期）の収益改善が期待される。

■株主優待制度は８月末に実施

　からふね屋珈琲の株式譲渡に伴って１５年７月、株主優待制度の内容変更を発表した。変更後は毎年８月３１日現在の１単元（１００株）以上保有株主に対して、①当社カラオケ店舗「会員カード」、②当社カラオケ店舗およびマンガ店舗で使用可能な「飲食ご優待券」の２商品を贈呈する。なお②は保有株数に応じて贈呈する。

■株価は安値圏だが調整一巡感

　株価の動きを見ると、８月期末の配当・株主優待権利落ちも影響してやや水準を切り下げ、安値圏４００円割れ水準で推移している。ただし９月７日は前日比１４円（３．５８％）高の４０５円まで上伸する場面があり、調整一巡感を強めている。

　９月７日の終値３９５円を指標面で見ると、前期推定連結ＰＥＲ（会社予想の連結ＥＰＳ４８円３０銭で算出）は８～９倍近辺、前期推定配当利回り（会社予想の年間１０円で算出）は２．５％近辺、前々期実績連結ＰＢＲ（前々期実績の連結ＢＰＳ３２７円０７銭で算出）は１．２倍近辺である。時価総額は約２６億円である。

　週足チャートで見ると戻りを押さえていた１３週移動平均線突破の動きを強めている。調整一巡して出直り展開だろう。（日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展）