カナモトは基調転換して出直り本格化、16年10月期減益予想の織り込み完了

 カナモト<9678>(東1)は建設機械レンタルの大手である。長期ビジョンで成長エンジンと位置付ける海外展開も強化している。16年10月期第3四半期累計が減価償却費増加などで減益となり、通期も減益予想だが、17年10月期は災害復旧関連需要や景気対策効果も期待される。株価は16年10月期減益予想の織り込みが完了し、基調転換して出直りの動きが本格化してきた。戻りを試す展開だろう。

■建設機械レンタルの大手

 建設機械レンタルを主力として、海外向け中古建設機械販売、土木・建築工事用鉄鋼製品販売、IT機器・イベント関連レンタルなども展開している。理工系研究開発要員派遣のカナモトエンジニアリングは15年8月に全株式を技術者派遣会社のトラスト・テック<2154>に譲渡した。

 北海道を地盤として東北、関東、中部、近畿、九州にも営業拠点網を拡充して全国展開と業容拡大を加速している。16年7月には北海道地区道央ブロック11店舗目となる石狩営業所(北海道石狩市)、および新潟エリア7店舗目となる柏崎営業所(新潟県柏崎市)を開設し、当社の全国営業拠点数は184拠点、グループ合計で451拠点となった。

 16年8月には2017年2月19日~26日開催「2017冬季アジア札幌大会」のスポンサーシップ契約の締結を発表した。
 
 なお9月9日、代表取締役の異動を発表した。11月1日付で金本寛中現代表取締役社長(執行役員)が代表取締役会長に、金本哲男現取締役副社長執行役員が代表取締役社長(執行役員)に就任する。経営体制の強化・充実を図るため、代表者の若返りを実施する。

■M&Aも活用して業容拡大

 M&Aも活用して業容を拡大している。12年6月道路建機レンタルと道路工事施工のユナイトを子会社化、15年7月大手ゼネコン向け汎用小型建設機械レンタルの有限会社ヱーワ商会(埼玉県)の全株式を取得(非連結子会社)した。

 15年11月名岐エンジニアリング(岐阜県)および東友エンジニアリング(東京都)で構成されるグループと、一部株式取得を含めて建設機械レンタル事業に関して業務提携した。トンネル工事向け有力プラントメーカーの名岐エンジニアリング、トンネル工事向けレンタルに強みを持つ東友エンジニアリングとの連携により、トンネル工事への対応力を高める。

 16年3月ニシケン(福岡県)を子会社化(出資比率76.62%)した。同社は建設機械レンタル事業ならびに福祉介護用品レンタル事業を福岡県中心に九州各県や中国・近畿地方に展開している。16年5月サッポロドラッグストアー<2786>と共同で、建設現場事務所で使用される日用品セットを販売すると発表した。北海道内でのサービスとしてスタートするが、将来的には全国規模でのサービス拡充を計画している。

■17年10月期ROE10%以上目標、成長エンジンとして海外展開強化

 14年9月策定の新長期ビジョンおよび中期経営計画では、55期の19年を見据えたグループの目指す姿を新長期ビジョン「BULL55」として示し、実行計画である3ヵ年中期経営計画「BULL53」では目標数値として17年10月期売上高1500億円、営業利益190億円、ROA5.0%以上、ROE10%以上などを掲げた。

 新長期ビジョン「BULL55」では海外展開強化を今後の成長エンジンと位置付けている。そして15年1月インドネシア現地法人が営業開始、15年6月ベトナム現地パートナー企業との合弁会社が営業開始、15年7月タイ現地パートナー企業との合弁会社が営業開始、16年3月フィリピン現地パートナー企業との合弁会社が営業開始した。

■公共工事が増加する第1四半期の構成比が高い収益構造

 四半期別業績推移を見ると、14年10月期は売上高が第1四半期331億48百万円、第2四半期310億64百万円、第3四半期284億45百万円、第4四半期328億98百万円で、営業利益が56億51百万円、44億21百万円、27億41百万円、36億41百万円だった。15年10月期は売上高が363億27百万円、319億80百万円、306億49百万円、343億36百万円で、営業利益が63億06百万円、43億46百万円、18億46百万円、37億72百万円だった。

 公共工事が増加する第1四半期の構成比が高い収益構造である。なお15年10月期の売上総利益率は31.1%で14年6月期比0.9ポイント低下、販管費比率は18.9%で同横ばい、ROEは14.4%で同1.4ポイント低下、自己資本比率は34.3%で同0.7ポイント上昇した。配当性向は13.1%だった。配当政策については事業環境に関わらず一定の配当を安定して行い、業績に応じて利益還元を加えていきたいとしている。そのうえで、財務体質の強化と将来の積極的事業展開に必要な内部留保の充実を図ることを基本方針としている。

 15年10月期のセグメント別業績は、建設関連事業の売上高が同6.0%増の1235億72百万円、営業利益(連結調整前)が同2.0%減の155億92百万円だった。地域別には北海道地区が9.5%減収、東北地区が19.7%増収、関東信越地区が4.8%増収、関西中部地区が2.0%増収、九州沖縄地区が1.5%減収で、東北地区と関東信越地区が好調だった。中古建機販売は一定期間を経年した機械の計画的売却を進めて同26.6%増収だった。その他事業は売上高が同8.2%増の97億19百万円、営業利益が同39.4%増の3億01百万円だった。

■16年10月期第3四半期累計は減益

 9月9日に発表した今期(16年10月期)第3四半期累計(11~7月)の連結業績は、売上高が前年同期比4.5%増の1034億22百万円だが、営業利益が同15.4%減の105億76百万円、経常利益が同19.9%減の100億49百万円、純利益が同21.5%減の58億89百万円だった。

 民間建設投資が堅調に推移し、災害復興や東京五輪等に伴う建設需要に強さがあるものの、地方における建設需要はインフラ整備工事着工遅延などで弱含みの状況が続いている。営業基盤強化の効果で増収だが、レンタル用資産への投資増強に伴う減価償却費の増加が影響して減益だった。売上総利益は同0.4%減少し、売上総利益率は29.7%で同1.5ポイント低下した。販管費は同9.8%増加し、販管費比率は19.5%で同1.0ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化(前期は差益1億90百万円、今期は差損4億53百万円)した。

 セグメント別動向を見ると、建設関連は売上高が同3.3%増の948億30百万円、営業利益(連結調整前)が同17.7%減の98億72百万円だった。東北や首都圏が堅調に推移し、ニシケンの新規連結によって九州地区の売上が増加した。中古建機販売は計画どおりの売却にとどめて同4.0%減少した。その他は売上高が同20.3%増の85億91百万円、営業利益が同72.4%増の3億92百万円だった。新規連結したニシケンの福祉関連事業が寄与した。

 四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期350億79百万円、第2四半期333億83百万円、第3四半期347億80百万円、営業利益は40億69百万円、45億36百万円、19億71百万円だった。第2四半期からニシケンを新規連結した。

■16年10月期通期は減益予想

 今期(16年10月期)通期の連結業績予想は前回予想(6月10日に売上高を増額、利益を減額修正)を据え置いて、売上高が前期(15年10月期)比7.4%増の1432億円で、営業利益が同10.1%減の146億30百万円、経常利益が同12.8%減の141億円、そして純利益が同10.5%減の85億50百万円としている。配当予想(12月9日公表)は同10円増配の年間45円(第2四半期末15円、期末30円)で予想配当性向は18.6%となる。

 東北や首都圏での建設需要は堅調だが、その他地域では公共工事着工遅延で建設機械レンタル需要が停滞する見込みだ。また関東・関西の都市圏や未出店エリアへの出店を加速させて強固な営業基盤を構築するため減価償却費が増加する。通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高72.2%、営業利益72.3%、経常利益71.3%、純利益68.9%である。

■中期的には事業環境良好で収益拡大基調

 国内では震災復興関連工事、激甚災害現場復旧工事、防災・減災・耐震化関連工事、老朽化インフラ補修・更新関連工事、都市再開発関連工事などが活発であり、リニア新幹線関連工事や20年東京夏季五輪関連工事も本格化する。今期(16年10月期)は減価償却費増加などで減益予想だが、来期(17年10月期)は景気対策効果も期待される。中期的に良好な事業環境に変化はなく、建機レンタル需要は高水準で推移することが予想される。

■株価は16年10月期減益予想の織り込み完了、基調転換して出直り

 株価の動きを見ると、7月の年初来安値1841円から切り返し、9月13日には2543円まで上伸した。第3四半期累計の減益に対しても悪材料出尽くし感が優勢になったようだ。

 9月13日の終値2484円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS241円94銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間45円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1969円16銭で算出)は1.3倍近辺である。時価総額は約897億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線と52週移動平均線を突破した。そして13週移動平均線が上向きに転じた。基調転換を確認した形だ。16年10月期減益予想の織り込みが完了して戻りを試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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