【鈴木雅光の投信Now】東証REITはどこまで上がるのか?

目先、調整しているものの、東証REIT指数は順調に上昇傾向をたどっている。1月16日には1990ポイントをつけ、2000ポイントという大台まであと一歩まで迫った。

ここまで市場での取引価格が上昇すると、REITの魅力のひとつである配当利回りは低下する。1月23日時点で、東証に上場されているREITの配当利回りは、2.93%だ。ちなみに昨年の1月時点では3.6%程度を維持していた。

現在、J-REITに買いが入っている理由は、恐らく2つある。

第一に、国内不動産市況が堅調に推移していることだ。都心を中心にして不動産価格が下げ止まり、徐々に上昇の兆しが見え始めている。それに加え、オフィスビルなどでは賃料が上向き始めた。賃料の上昇は、J-REITにとってポジティブな材料であり、それを好感してJ-REITへの買いが集まっている。

第二に、日銀による買いへの期待感もあるだろう。昨年10月末に発令された黒田バズーカ第2弾では、ETFだけでなくJ-REITの買入を3倍に増やすことになった。これにより、少なくともJ-REIT相場が大きく崩れそうな時には、日銀のさらなる援護射撃が期待されると見る市場関係者は、少なくない。

ただ、一方で不安材料もある。国債利回りと、J-REITの配当利回りの差(スプレッド)が縮小していることだ。両者のスプレッドは昨年5月に3%を割り込んだ。市場関係者の間では、3%が理想のスプレッドと見られていたが、現在のスプレッドは2.7%程度まで縮小している。日本国債に対して、不動産投資のリスクプレミアムは3%程度というのが、スプレッド3%の根拠であり、それを割り込んでいる状況は、J-REITがやや割高な水準にまで買われていることを意味する。その調整が、どこかの段階で入る可能性は否定できない。

もし、スプレッド3%程度まで広がるとしたら、J-REITの配当利回りは3.2%程度まで上昇することになる。もし、配当金の額が不変だとしたら、配当利回りが3.2%程度まで上昇した時、東証REIT指数は1800ドル近辺まで下落する。これからJ-REITに投資する場合は、その程度のリスクを見込んでおく必要がありそうだ。。(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る