中本パックスは上場来高値更新の流れに変化なし、依然として指標面に割安感

 中本パックス<7811>(東2)は食品関連を中心にグラビア印刷、ラミネート加工、コーティング加工、および成型品を展開している。コンビニ向け容器や自動車関連が牽引して17年2月期増益予想(7月15日に利益を増額)である。そして利益は再増額余地がありそうだ。株価は8月の上場来高値から利益確定売りで一旦反落したが素早く切り返している。4%台の予想配当利回りなど指標面で見れば依然として割安感の強い水準である。上場来高値更新の流れに変化はなく、自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。なお10月14日に第2四半期累計業績発表を予定している。

■グラビア印刷、ラミネート加工、コーティング加工、成型品を展開

 1941年紙販売業として創業、1952年紙製品加工を目的として中本印刷工業設立、1959年グラビア印刷加工を目的として中本グラビア印刷設立、1988年関東中本印刷(1991年中本パックスに社名変更)設立、1981年業界に先駆けて投入した柄付き食品トレーをエフピコ<7947>が採用、1995年廊坊中本包装有限公司を設立して中国に進出、2004年アールを買収して生活資材分野に本格参入、2006年中本印書館を設立して建材分野に本格参入、2016年3月東証2部に新規上場した。

 グラビア印刷、包装材料の強化・機能付加を目的として接着剤により多層複合化するラミネート加工(ドライラミネート)、素材の保護・機能付加を目的として素材表面を樹脂等の薄い膜で覆うコーティング加工、および成型品(食品用容器やトレーなど)の製造販売を展開している。生産拠点は国内9工場、海外3工場(中国)に展開している。

■用途別には食品関連が主力

 用途別に見ると、16年2月期売上構成比は食品関連67%、IT・工業材関連14%、医療・医薬関連4%、建材関連2%、生活資材関連12%、その他1%、売上総利益構成比は食品関連49%、IT・工業材関連21%、医療・医薬関連6%、建材関連3%、生活資材関連18%、その他4%だった。また売上総利益率は食品関連10.4%、IT・工業材関連21.5%、医療・医薬関連19.5%、建材関連15.8%、生活資材関連22.3%だった。食品関連、IT・工業材関連、生活資材関連が主力である。

 用途別製品売上構成比は、食品関連が乳製品関連22%、コンビニ関連21%、農水産関連7%、加工食品関連44%、その他5%、IT・工業材関連がモバイル関連46%、二次電池関連16%、自動車関連12%、半導体関連2%、その他24%、医療・医薬関連が湿布関連78%、医薬関連16%、病院関連5%、その他2%、建材関連が住宅関連81%、家具関連15%、その他4%、生活資材関連が圧縮袋関連30%、キッチン・掃除関連21%、文具関連8%、販促関連4%、その他38%だった。

■特許技術を用いた高機能製品の開発・用途拡大を推進

 全天候型グローバル企業を目指し、極薄フィルム(スマホ関連の遮光フィルムや食品関連のシュリンクフィルムなど)からシートダイレクトまで対応するグラビア印刷技術、徹底したクリーン環境で薄膜から厚塗り加工まで対応するコーティング加工技術、幅広い用途に対応するラミネート加工技術、リサイクル可能PETに豊富な特許を保有する素材開発技術という4つのコア技術をベースとして、高機能製品の開発や製品用途の拡大を推進している。

 グラビア印刷では競合が比較的少ない厚さ領域(厚=成型品関連、弁当容器、蓋など、薄=スマホ関連の遮光フィルム、食品関連のシュリンクフィルムなど)での展開、および安全性と環境負荷低減を実現した自社開発製品(NAK-A-PET、NC-PET、HS-PET、NTS2)の販売を強化している。特殊コーティング加工では、自社ブランドのNSセパ(シリコンを塗布したセパレーターフィルム)が、IT・工業材関連のスマートフォン・液晶ディスプレイ、医療・医薬関連の湿布剤に使用されている。ラミネート加工では、特許技術を用いたサーマルラミネート装置によって環境負荷低減(減量化・無臭化)を図り、接着性特殊三層フィルムが自動車のヘッドライニングやフロントドアトリムなどに採用されている。

 保有特許には、レトルト食品容器の製造方法、耐熱A-PET容器ならびにその製造方法、シュリンクラベル用筒状体の製造方法、サーマルラミネート装置などがある。さらにエコ・省資源化が求められる食品包装材の市場ニーズに対応すべく、リサイクル可能なPET素材の特許技術を用いた高機能製品を投入するため、薄肉剛性容器、透明耐熱PET容器、NC-PET(190℃以上の超高耐熱PET容器)、HS-PET(ヒートシールPET)などの改良・開発を推進している。

■中期的にROE8%以上目標

 中期数値目標としては、連結売上高経常利益率5%以上(16年2月期の実績は3.8%)、連結ROE8%以上(同7.7%)を掲げている。

 利益配分については、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としている。なお17年2月期から中間配当を実施する。

■17年2月期第1四半期の利益は計画超の水準

 今期(17年2月期)第1四半期(3~5月)の連結業績は売上高が79億44百万円、営業利益が4億48百万円、経常利益が4億22百万円、純利益が2億41百万円だった。前年は四半期財務諸表を作成していないため比較はできないが、食品関連でコンビニ関連容器、IT・工業材関連で自動車関連(内装材、二次電池)が好調に推移した。売上高は円高による為替換算影響がマイナス要因となったが、利益は工場稼働率の上昇効果で計画超の水準となった。売上総利益率は16.2%、販管費比率は10.6%だった。営業外収益では持分法投資利益13百万円、営業外費用では為替差損44百万円を計上した。

 用途別に見ると、食品関連は売上高が53億93百万円で売上総利益が6億15百万円、IT・工業材関連は売上高が10億76百万円で売上総利益が2億90百万円、医療・医薬関連は売上高が3億38百万円で売上総利益が95百万円、建材関連は売上高が1億55百万円で売上総利益が26百万円、生活資材関連は売上高が8億56百万円で売上総利益が2億21百万円、その他は売上高が1億23百万円で売上総利益が39百万円だった。なお売上総利益率は食品関連が11.4%、IT・工業材関連が27.0%、医療・医薬関連が28.1%、建材関連が16.8%、生活資材関連が25.8%、その他が31.7%となる。

 食品関連ではコンビニ関連容器が好調だった。IT・工業材関連では自動車関連(内装材、二次電池)が好調に推移し、情報端末関連のNSセパの受注も増加した。医療・医薬関連では湿布用の離型フィルムが安定して推移した。建材関連では賃貸住宅用壁材の新規受注が寄与した。生活資材関連では圧縮袋が堅調に推移し、Nコート品の受注も増加した。その他ではリサイクルペレットに一部機械販売も寄与した。

■17年3月期第2四半期累計と通期の利益予想を増額

 第1四半期の利益が計画超となったことを受けて、7月15日に今期(17年2月期)第2四半期累計(3~8月)および通期連結業績予想の修正(売上高を減額、利益を増額)している。売上高は円高に伴う為替換算の影響で期初計画を下回るが、利益は工場稼働率上昇効果などで期初計画を上回る見込みだ。なお想定為替レートは期初計画の1ドル=120円、1人民元=19円から、1ドル=105円、1人民元=16円に見直した。

 第2四半期累計の連結業績予想は、期初計画(4月14日公表)に対して売上高を2億73百万円減額して153億円、営業利益を2億22百万円増額して7億30百万円、経常利益を1億12百万円増額して6億60百万円、純利益を49百万円増額して3億80百万円とした。

 通期の連結業績予想は期初計画(4月14日公表)に対して、売上高を8億86百万円減額して16年2月期比0.9%増の307億円、営業利益を1億94百万円増額して同18.2%増の13億円、経常利益を75百万円増額して同7.1%増の12億50百万円、そして純利益を5百万円増額して同8.5%増の7億50百万円とした。なお8月12日に連結子会社エヌアイパックスの三原工場第2倉庫(東京都西多摩郡)において火災が発生したが、人的被害はなく、生産への影響もないとしている。

 第2四半期累計の利益増額幅に対して通期の利益増額幅が小さく、下期の利益予想を減額修正した形である。これは第2四半期累計に前倒しされた受注の反動、および為替換算レートの不透明感を考慮したとしている。ただし保守的な印象が強い。通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高25.9%、営業利益34.5%、経常利益33.8%、純利益32.1%と高水準である。通期利益予想は再増額余地があるだろう。

 配当予想は据え置いて年間90円(第2四半期末45円=普通配当40円+記念配当5円、期末45円=普通配当40円+記念配当5円)としている。16年2月期の年間62円50銭に対して27円50銭増配である。予想配当性向は48.8%となる。

■株価は上場来高値更新の流れに変化なし、指標面に依然として割安感

 株価の動きを見ると、8月18日の上場来高値2234円から利益確定売りで一旦反落したが、素早く切り返している。9月13日には2225円まで上伸して8月高値に接近した。自律調整が一巡したようだ。

 9月16日の終値2168円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS184円34銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間90円で算出)は4.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2721円35銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約89億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドの形だ。そして指標面で見れば依然として割安感の強い水準である。上場来高値更新の流れに変化はなく、自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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