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ヨシムラ・フード・ホールディングスは自律調整一巡して上値試す、17年2月期大幅営業増益予想
- 2016/9/21 08:51
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ヨシムラ・フード・ホールディングス<2884>(東マ)は食品関連の中小企業をM&Aで支援・活性化するビジネスモデルを展開している。17年2月期は既存事業の成長とM&Aによる新規連結で大幅営業増益予想である。株価は8月の上場来高値から一旦反落したが高値圏で推移している。自律調整が一巡して上値を試す展開が期待される。
■中小食品関連企業をM&Aで支援・活性化するビジネスモデル
食品関連企業を傘下に置く持株会社である。2008年3月設立、2016年3月東証マザーズに新規上場した。
事業承継などの課題を抱える食品関連の中小企業を、中長期視点で支援・活性化するプラットフォーム(営業、製造、仕入・物流、商品開発、品質管理、経営管理といった機能ごとに横断的に管理して業績拡大を図る中小企業支援プラットフォーム)を基本ビジネスモデルとしている。食品関連の中小企業に対するM&Aで業容を拡大し、幅広い中小企業の受け皿になっている一方で、グループ化した子会社の売却を目的としていないことも特徴だ。ビジネスモデルの独自性が評価されて、2014年には官民ファンドの産業革新機構から出資を受けている。
16年2月期末の連結子会社は、製造事業セグメントでシウマイ・餃子(チルドシウマイの生産量国内トップ)の楽陽食品、乾麺(宮城県白石市特産の白石温麺が主力)の白石興産、冷凍かきフライが主力のオーブン、ピーナッツバターのパイオニアであるダイショウ、岩手県の地場酒造10社で設立した日本酒の桜顔酒造、まぐろ加工品の雄北水産、販売事業セグメントで業務用惣菜(業務用食材の企画・販売を主力として、自社で物流機能を持たずに販売先へ直送するビジネスモデル)のヨシムラ・フード、宅配等(冷凍食品の企画・販売、全国の生活協同組合と直接口座を保有)のジョイ・ダイニング・プロダクツの合計8社である。
16年2月期のセグメント別売上高は、製造事業が87億48百万円(楽陽食品が40億円、オーブンが25億35百万円、白石興産が9億05百万円、ダイショウが5億89百万円、雄北水産が4億85百万円、桜顔酒造が3億57百万円)で、販売事業が40億85百万円(ヨシムラ・フードが43億84百万円、ジョイ・ダイニング・プロダクツが8億70百万円)だった。
■M&Aと既存事業の両輪による成長を目指す
中期成長戦略には、M&Aによる傘下企業の増加および既存事業の成長・拡大という、両輪による成長を強化する方針を掲げている。事業承継などの課題を抱える食品関連の中小企業の数は今後ますます増加することが予想され、M&Aのさらなる推進を図る。またグループシナジーの拡大を図るために、営業、製造、仕入・物流、商品開発、品質管理、経営管理といった機能ごとに横断的に管理して業績拡大を図る中小企業支援プラットフォームのさらなる強化、および両輪に係る人材の強化を図る。
16年7月にはゼリー等のデザート類を主力とする純和食品を子会社化(6月公表)した。埼玉県食品衛生自主管理優良施設確認制度(彩の国ハサップ)において優良施設に認定された高い品質管理体制などで、イオングループをはじめとした大手スーパー量販店向けOEM生産も拡大している。
16年9月には栄川酒造を子会社化(6月公表)した。業歴約150年を誇り、福島県会津地方を代表する酒造事業者である。また自社製造惣菜(彩の国優良ブランド品に認証されている「むさし野とんかつ」が主力)や輸入食肉加工品のエスケーフーズを子会社化(7月公表)した。
■M&Aで収益拡大基調、冬季に利益偏重の収益構造
積極的なM&A効果で収益が急拡大している。またグループ内でさまざまな食品商材を扱っているため、個人消費動向や原材料価格動向の影響を受けやすく、さらに製品の性質上、季節変動の影響を受けやすい収益構造である。現在は冬季(10月から12月)に販売のピークを迎える製品を多く取り扱っているため、冬季の利益が偏重している。
16年2月期連結業績は15年2月期比12.8%増収、48.9%営業増益、38.3%経常増益、99.2%最終増益だった。楽陽薬品がチルド餃子などの好調で15.6%増収、ヨシムラ・フードが冷食販売などの好調で8.4%増収となり、雄北水産の連結(15年2月)も寄与した。売上総利益は同14.9%増加し、売上総利益率は21.1%で同0.4ポイント上昇した。販管費は同11.4%増加したが、販管費比率は18.5%で同0.3ポイント低下した。ROEは17.1%で同6.7ポイント上昇、自己資本比率は49.3%で同1.1ポイント上昇した。
■17年2月期第1四半期は順調
今期(17年2月期)第1四半期(3~5月)連結業績は、売上高が33億47百万円、営業利益が1億45百万円、経常利益が1億49百万円、純利益が99百万円だった。前年同期は四半期財務諸表を作成していないため比較はできないが、主力製品が好調に推移したようだ。売上総利益率は22.7%、販管費比率は18.3%だった。
セグメント別に見ると、製造事業は売上高が23億03百万円で営業利益が1億82百万円だった。主力製品が好調に推移し、ダイショウの拡販施策も寄与した。販売事業は売上高が10億43百万円で営業利益が45百万円だった。ヨシムラ・フードで冷凍原料、ジョイ・ダイニング・プロダクツで生協向けが好調だった。
■17年2月期通期予想はM&A効果で2回目増額修正
今期(17年2月期)の連結業績予想については、7月14日に第2四半期累計(3~8月)予想および通期予想を増額修正した。16年7月から純和食品を新規連結することに加えて、楽陽食品の販売が計画を上回り、操業度上昇効果も寄与する。なお純和食品の業績は製品の性質上、夏季が繁忙期となり、冬季が閑散期となる。また9月1日にエスケーフーズの新規連結に伴って通期予想を2回目増額修正した。なおエスケーフーズ単体では利益を計上するが、連結決算では同社取得に係る費用を今期一括計上するため利益増額は小幅だった。
修正後の第2四半期累計予想(7月14日公表)は売上高が69億48百万円、営業利益が2億09百万円、経常利益が2億11百万円、純利益が1億27百万円とした。
また2回目修正後の通期予想(9月1日公表)は売上高が前期(16年2月期)比29.2%増の165億85百万円で、営業利益が同24.4%増の4億08百万円、経常利益が同25.0%増の4億10百万円、そして純利益が同48.1%減の2億39百万円とした。純利益は前期特別利益に計上した収用補償金5億15百万円が一巡するため減益予想だが、既存事業の好調と新規連結で大幅増収・営業増益予想である。
配当予想は無配継続としている。なお利益配分については、現在は成長過程のため、設備投資等による積極的な事業展開およびプラットフォーム拡充による経営基盤の強化を図るための投資等に充当させることが、株主に対する最大の利益還元に繋がると考えているため、設立以来配当は実施していない。今後においても当面の間は事業拡大のための投資および既存事業の必要運転資金とする方針としている。将来的には各事業年度の経営成績および財政状態を勘案しながら、株主への利益還元を検討していく方針としている。
楽陽食品のチルド餃子の販売好調、ダイショウの販売エリア拡大効果など既存事業の成長に加えて、M&Aによる新規連結効果も寄与して収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年2月末および8月末に実施
株主優待制度は毎年2月末日および8月末日に実施している。500株以上保有株主に対して3000円相当の自社商品を贈呈する。
■株価は自律調整一巡して上値試す
株価の動きを見ると、8月3日の上場来高値1800円から利益確定売りで一旦反落したが、大きく調整することなく9月以降は高値圏1500円近辺で推移している。そして自律調整一巡感を強めている。
9月20日の終値1490円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS55円20銭で算出)は27倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1752円29銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約65億円である。
週足チャートで見ると、8月3日1800円と8月29日1780円でややダブルトップ気味だが、13週移動平均線が接近して切り返しのタイミングだろう。自律調整が一巡して上値を試す展開が期待される。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)