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【アナリスト水田雅展の企業レポート】バルクホールディングスは17年3月期減益予想だがクラウドサービス伸長して上振れ余地
- 2016/9/23 07:14
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
バルクホールディングス<2467>(名セ)はコンサルティング事業、マーケティング事業、IT事業、住宅関連事業を展開する持株会社である。17年3月期は住宅関連事業における人手不足の影響などを考慮して減益予想としているが、クラウドサービスの伸長などで上振れ余地があるだろう。株価は安値圏モミ合いだが、調整の最終局面で反発展開が期待される。
■コンサルティング事業などを展開する持株会社
コンサルティング事業、マーケティング事業、IT事業、住宅関連事業を展開する持株会社である。傘下に連結子会社バルク(コンサルティング事業、マーケティング事業)、マーケティング・システム・サービス(13年3月子会社化、マーケティング事業)、ヴィオ(10年5月子会社化、IT事業)、ハウスバンクインターナショナル(14年1月子会社化、住宅関連事業)を置き、アトラス・コンサルティングを持分法適用関連会社としている。
16年3月期のセグメント別(連結調整前)売上構成比は、コンサルティング事業9%、マーケティング事業34%、IT事業7%、住宅関連事業50%だった。また営業利益構成比はコンサルティング事業36%、マーケティング事業38%、IT事業10%、住宅関連事業16%だった。
■プライバシーマーク・ISO27001認定取得支援に強み
コンサルティング事業はバルクが個人情報保護など情報セキュリティマネジメント分野において、プライバシーマーク認定取得支援、ISO27001(ISMS)認証取得支援、および運用支援を主力としている。
情報セキュリティマネジメント分野のリーディングカンパニーである。プライバシーマーク認定取得は国内トップクラスの1600件超、ISO27001認証取得は500件超の取得支援実績を誇っている。自社社員によるコンサルタント、ISMS審査員資格保有者の在籍、自社開発の支援ITツールによる作業負担軽減、教育支援メニューや取得後の継続維持・運用サポートメニューの充実などを強みとして、あらゆる業種・業態への対応実績を持つ。このため企業にとっては短期間での取得が可能になる。
15年6月には業界初の情報セキュリティマネジメントシステム運用支援クラウドサービス「V-Cloud」をリリースした。進捗状況が一目瞭然などで運用スケジュールが簡単に管理できるなどの特徴があり、プライバシーマーク更新やマイナンバー制度対応のセキュリティコンサルティングサービスも含めて、顧客囲い込み戦略を推進する方針だ。
なお「V-Cloud」リリース後は更新比率が大幅に上昇し、クラウド利用社数が大幅に増加した。導入実績は200アカウントを突破している。月額課金型のため顧客囲い込みによってストック収益拡大にも繋がる。16年5月には「V-Cloud」のでeラーニング(v-assist動画教育システム)機能を搭載し、顧客における運用効率の改善と自力運用を強力にサポートするツールとなった。
また16年5月には、企業の情報漏洩や内部統制リスクを分析して対策を支援する、効果測定型コンプライアンスリスク診断プログラム「V-Risk」のサービス提供開始を発表した。Web調査により企業内部の潜在化・顕在化するリスクを分析し、コンプライアンス診断~様々なコンプライアンスリスクの対策提案および対策支援~その後の効果測定まで提供する、今までにないオールインワンサービスで、大企業向けに販売する。
■マーケティング事業は新製品モニター調査などが主力
マーケティング事業はバルクがマーケティングリサーチ事業、マーケティング・システム・サービスがSP(セールスプロモーション)事業や広告代理業を展開している。
バルクのマーケティングリサーチ事業は大手メーカーの新製品開発時のモニター調査などを主力としている。ネットリサーチ・インタビューなどの調査手法をベースとして、調査の企画・設計・分析・実査から商品企画などのマーケティング戦略支援まで、企業のマーケティング活動における課題を総合的にワンストップで解決・支援する。15年7月には店頭調査「Shoppers Direct」を発表した。実際のお店に来店するお客様の「行動の観察」や「インタビュー」を行うことで、従来の調査では知ることのできない「気付き」を得ることができるなどの特徴を持つ。
マーケティング・システム・サービスのマーケティング事業は、食品関連流通事業者(スーパー、食品卸など)のフリーペーパー、食品・飲料メーカーのSPツール・ノベルティ制作などでクライアントの課題解決を総合的に支援している。関東の大手スーパー向けを主力としている。
■IT事業は開発リソースをグループ内システム開発にも活用
IT事業はヴィオが、大手SIベンダーからのビジネスアプリケーションなどの受託開発を主力として、オリジナルのパッケージソフトを活用したITソリューションサービスも展開している。
企業間ネットワーク業務提携事業では、顧客とヴィオが業務提携し、共同事業でシステム導入に伴う収益を、双方の負担に応じてレベニューシェアする方式を目指している。またグループ内にシステム開発会社を持つことで、開発リソースをコンサルティング事業の運用支援ツールなどグループ内のシステム開発に活用できるメリットがある。
■住宅関連事業は京都で地域密着の事業展開
住宅関連事業は、ハウスバンクインターナショナルが戸建住宅建築請負工事およびリフォーム工事全般を展開している。天井やフローリングなどに天然木を使用した「天然木の家」を主力として、地域密着(京都府長岡京市)の事業展開を推進している。25年の歴史を持ちリフォーム実績件数は5000件以上である。
■アライアンス戦略も積極推進
アライアンス戦略も積極推進している。15年8月バルクが、ITコンサルティング事業のITbook<3742>とコンサルティング事業分野で業務提携した。相互の顧客紹介、相互の製品・サービスの販売、共同提案やセミナー共催など販売活動における協調、両社の強みを生かした共同事業の創出を推進する。
15年12月バルクが、ブーメランイット・ジャパン(BIJ社)と情報セキュリティ分野で業務提携した。BIJ社の紛失物回収サービス「マイブーメラン」をバルク社で販売するとともに、情報セキュリティ市場における共同提案やセミナー共催など販売活動における協調、情報セキュリティ市場における共同事業の創出を推進する。
BIJ社は米国ブーメランイット社との独占ライセンス契約に基づいて、国内初の国際的紛失物回収サービス「マイブーメラン」を提供している。スマートフォン、パソコン、入退室カードなどに貼付・装着するためのシリアルナンバー(番号)を記載したラベル等を提供し、紛失物の回収を代行するサービスである。MDM(モバイルデバイス管理)システムを補完して情報セキュリティ対策の完成度を高めるサービスのため、バルクの情報セキュリティコンサルティングサービスとの高い親和性も有している。
16年1月バルクがPICC社(東京都)と業務提携した。PICC社は個人情報保護に関する中小企業向けの第三者認証制度JAPHIC(ジャフィック)マークの認定審査機関として付与審査業務を行っている。業務提携によってバルクがPICC社の提携コンサルタント企業として、プライバシーマーク認定やISO27001(ISMS)認証では負担が過大となっていた小規模事業者向けに、JAPHICマーク認証取得支援サービスを提供する。
■営業損益改善基調
四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期4億23百万円、第2四半期5億29百万円、第3四半期5億56百万円、第4四半期5億52百万円、営業利益が26百万円の赤字、25百万円、32百万円、11百万円、16年3月期は売上高が6億39百万円、5億86百万円、5億47百万円、4億78百万円、営業利益が9百万円、33百万円、30百万円、4百万円の赤字だった。
16年3月期は15年3月期比9.2%増収、61.2%営業増益、40.3%経常増益で、純利益は黒字化した。コンサルティング事業においてマイナンバー制度導入を受けた情報セキュリティ体制構築・運用支援関連の受注が想定を上回った。さらにマーケティング事業における大型スポット案件獲得も寄与して計画超の増収増益だった。営業損益は改善基調だ。
売上総利益は同3.9%増加したが、売上総利益率は25.5%で同1.3ポイント低下した。販管費は同0.8%減少し、販管費比率は22.5%で同2.3ポイント低下した。特別損失では減損損失42百万円が一巡した。ROEは7.9%で同10.4%ポイント上昇、自己資本比率は47.2%で同3.2ポイント上昇した。配当は無配を継続した。
セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、コンサルティング事業は売上高が同20.7%増の2億01百万円、営業利益が同51.2%増の62百万円だった。上期にマイナンバー制度関連の対策支援やプライバシーマーク・ISO27001の新規認定・認証取得支援などが特需的に発生した。15年6月リリースした「V-Cloud」の受注も当初想定を上回った。マーケティング事業は売上高が同5.8%増の7億65百万円だが、営業利益が同2.7%減の66百万円だった。セールスプロモーション分野はリピート案件およびスポット案件とも好調に推移したが、マーケティングリサーチ分野は市場の成長が鈍化傾向を強めたようだ。
IT事業は売上高が同11.0%減の1億59百万円、営業利益が同46.6%増の17百万円だった。グループ各社の中期成長に向けて、グループ内のシステム開発や新規ビジネス開発支援に戦略的に人的リソースを投入した。住宅関連事業は売上高が同12.8%増の11億31百万円、営業利益が同74.1%増の28百万円だった。継続開催のリフォームイベントや大型改装物件を活用した内覧会など、積極的な広告宣伝活動が奏功して順調に伸長した。
■17年3月期第1四半期は減収減益
今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は売上高が前年同期比24.6%減の4億82百万円、営業利益が同36.8%減の6百万円、経常利益が同53.7%減の5百万円、純利益が同43.1%減の4百万円だった。コンサルティング事業は堅調だったが、住宅関連事業が前年同期に前々期からの期ズレ案件があった反動で大幅減収となり、営業損益が悪化した。売上総利益は同3.8%減少したが、売上総利益率は27.4%で同5.9ポイント上昇した。販管費は同1.3%減少したが、販管費比率は26.2%で同6.2ポイント上昇した。
セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、コンサルティング事業は売上高が同5.2%増の50百万円、営業利益が同2.5%減の17百万円だった。プライバシーマークやISO27001認証など情報セキュリティ関連認証の新規取得需要が減少したが、既存顧客の更新支援や情報セキュリティ体制強化・構築支援のストック型案件が増加した。マーケティング事業は売上高が同16.3%減の1億96百万円だが、営業利益が同2.3倍の19百万円だった。セールスプロモーションにおける前年同期の大型スポット案件の反動で減収だが、景品が中心の利益率の低い案件だったため営業損益は改善した。
IT事業は売上高が同37.3%減の30百万円、営業利益が同34.3%減の2百万円だった。グループ各社の中期成長に向けて、グループ内のシステム開発や新規ビジネス開発支援に戦略的に人的リソースを投入した。住宅関連事業は売上高が同32.4%減の2億10百万円、営業利益が5百万円の赤字(前年同期は5百万円の黒字)だった。前年同期に前々期からの期ズレ案件があった反動だった。
■17年3月期通期減収減益予想だがクラウドサービス伸長して上振れ余地
今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月13日公表)については売上高が前期(16年3月期)比5.3%減の21億30百万円、営業利益が同26.8%減の50百万円、経常利益が同30.9%減の47百万円、純利益が同43.9%減の28百万円としている。配当予想は無配継続としている。
コンサルティング事業において、マイナンバー制度関連の需要が落ち着いたことに加えて、プライバシーマーク認定を新規に取得する企業は比較的小規模なケースが多く、競争も激化しているため案件単価が下落傾向にあるとしている。16年5月リリースの効果測定型コンプライアンスリスク診断プログラム「V-Risk」については織り込んでいない。また住宅関連事業における人手不足の影響なども考慮して保守的な予想だ。
セグメント別(連結調整前)売上高は、コンサルティング事業が同14.1%減の1億73百万円、マーケティング事業が同6.4%減の7億17百万円、IT事業が同10.2%減の1億43百万円、住宅関連事業が同2.5%減の11億03百万円の計画としている。
ただし情報セキュリティマネジメントシステム運用支援クラウドサービス「V-Cloud」の導入数が増加基調であり、16年5月の新機能搭載(v-assist動画教育システム)の効果や、効果測定型コンプライアンスリスク診断プログラム「V-Risk」も寄与してストック型収益の伸長が期待される。通期業績予想には上振れ余地があるだろう。さらに主要ターゲットを大企業にシフトしてストック型収益を一段と伸長させる方針であり、中期的に収益構造転換と収益拡大が期待される。
■株価は調整の最終局面で反発期待
株価の動きを見ると、安値圏130円近辺でのモミ合いからやや水準を切り下げたが、6月の年初来安値108円まで下押す動きは見られない。
9月21日の終値125円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS3円84銭で算出)は32~33倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS89円63銭で算出)は1.4倍近辺である。時価総額は約9億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、調整のほぼ最終局面と考えられる。調整一巡して反発が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)