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アルコニックスは割安感を見直して戻り歩調、M&Aも活用して非鉄金属の総合企業目指す
- 2016/9/26 07:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アルコニックス<3036>(東1)は商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指してM&A戦略も積極活用している。17年3月期は積極的なM&A戦略が奏功して2桁営業増益予想である。株価は調整一巡して出直りの動きを強めている。指標面の割安感を見直して戻り歩調だろう。
■商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」
軽金属・銅製品(伸銅品、銅管、アルミフィン材など)、電子・機能材(レアメタル・レアアース、チタン・ニッケル製品など)、非鉄原料(アルミ・亜鉛地金など)、建設・産業資材(配管機材など)を取り扱う非鉄金属商社グループである。
レアメタル分野に強みを持つことも特徴だが、中期成長に向けて商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。
16年3月期のセグメント別売上高構成比は軽金属・銅製品43%、電子・機能材35%、非鉄原料16%、建設・産業資材6%、経常利益構成比(連結調整前)は軽金属・銅製品60%、電子・機能材35%、非鉄原料1%、建設・産業資材4%だった。
なお17年3月期からセグメント区分を変更し、新セグメントは商社流通(電子機能材事業、アルミ銅事業)および製造(装置材料事業、金属加工事業)とした。製造業の利益が連結業績の過半を占めるようになったため、流通を手掛ける連結子会社は商社流通、製造を手掛ける連結子会社は製造に再編する。
■M&Aを積極活用して業容拡大
13年1月金属・化成品メーカーの米ユニバーティカル社を子会社化、13年3月アルミ合金スクラップ販売の大阪アルミセンターを子会社化、13年4月産業機械用精密加工部品メーカーの大羽精研を子会社化、14年4月住宅建設関連資材メーカーのケイ・マックを持分法適用関連会社化、14年11月アルミ銅センター(大阪アルミセンターが14年9月1日付で商号変更)が稲田商会の銅リサイクル事業(稲田銅センター)を譲り受けた。
15年7月中間持株会社アルコニックス・トーカイが溶接材料製造ならびに溶射加工事業の東海溶業を子会社化、15年10月非鉄金属専門商社の平和金属を子会社化、16年2月中間持株会社アルコニックス・エムティが金属製品非破壊検査(表面探傷検査)および金属マーキングの国内トップ企業であるマークテックを子会社化した。
■非鉄金属市況などが影響するが、M&A効果で収益拡大基調
四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期484億04百万円、第2四半期485億96百万円、第3四半期546億06百万円、第4四半期499億37百万円、経常利益が17億13百万円、13億95百万円、13億02百万円、7億95百万円で、16年3月期は売上高が529億30百万円、482億55百万円、524億29百万円、481億41百万円、経常利益が12億71百万円、10億43百万円、10億34百万円、6億85百万円だった。
レアメタル・レアアースなど非鉄金属の市況、持分法投資損益、M&Aに伴うのれん償却や負ののれん益なども収益変動要因となるが、積極的なM&Aが寄与して収益拡大基調である。16年3月期は15年3月期比増収、営業減益、経常減益、最終増益だった。スマホ・タブレット端末の高機能機種向け電子材料や、船舶・発電設備向け熱交換器用チタン展伸材の輸出などが伸長し、第3四半期から新規連結した平和金属も貢献して増収だが、非鉄原料やレアメタル・レアアースの市況低迷、販管費の増加などで営業減益、ケイ・マックの負ののれん発生益一巡で経常減益だった。純利益は平和金属の負ののれん発生益が寄与して大幅増益だった。
16年3月期の売上総利益は同0.8%増加し、売上総利益率は6.0%で同横ばいだった。販管費は同11.8%増加し、販管費比率は4.2%で同0.5ポイント上昇した。営業外では受取配当金が増加し、為替差損益が改善したが、持分法投資利益が減少し、ケイ・マックを持分法適用関連会社化したことに伴う負ののれん発生益が一巡した。
特別利益には平和金属の株式取得に伴う負ののれん発生益を計上した。ROEは17.8%で同2.9ポイント上昇、自己資本比率は26.8%で同2.5ポイント低下した。NET/DERは0.6倍(15年3月期は0.7倍)だった。配当は同4円増配の年間44円(第2四半期末22円、期末22円)で配当性向は11.4%だった。利益配分については将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続的に実施していくことを基本方針としている。
セグメント別動向を見ると、軽金属・銅製品は売上高が同14.8%増の870億20百万円、経常利益は同14.3%減の25億73百万円だった。平和金属のCAN材や伸銅品が加わり、大羽精研も貢献したが、ケイ・マックの負ののれん発生益が一巡した。電子・機能材は売上高が同7.3%減の697億77百万円、経常利益は同13.6%減の14億98百万円だった。スマホ・タブレット端末の高機能機種向け電子材料などが伸長したが、レアメタル・レアアースが減収となり、めっき材料の価格下落も影響した。
非鉄原料は売上高が同10.6%減の325億32百万円となり、経常利益が同81.7%減の49百万円だった。アルミ再生塊などが減少し、アルミ銅センターの不振も影響した。建設・産業資材は売上高が同11.5%減の124億26百万円、経常利益が同19.7%減の1億66百万円だった。東海溶業が貢献したが、国内配管機材が減少した。
■17年3月期第1四半期は営業減益
今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)連結業績は、売上高が前年同期比9.7%減の477億93百万円、営業利益が同27.5%減の8億93百万円、経常利益が同14.8%減の10億83百万円、純利益が同5.1%増の8億30百万円だった。商社流通関連の非鉄原料やレアメタル・レアアースの数量減少および価格下落、さらに円高影響などで減収、営業減益、経常減益だった。前期連結した平和金属や東海溶業は貢献したが、マークテックは主要需要先の鉄鋼業界における設備投資先送りの影響や中国現法の業績低迷で経常赤字だった。純利益は税金費用の減少で増益だった。
売上総利益は同10.6%増加し、売上総利益率は7.4%で同1.4ポイント上昇した。販管費は同34.6%増加し、販管費比率は5.5%で同1.8ポイント上昇した。営業外では受取配当金が増加(前期46百万円、今期1億20百万円)、為替差損益が改善(前期差損31百万円、今期差益38百万円)、持分法投資利益が増加(前期52百万円、今期90百万円)した。自己資本比率は27.7%で同1.0ポイント上昇した。NET/DERは0.7倍で1.0倍以下を維持した。
セグメント別(連結調整前)動向を見ると、商社流通の電子機能材料は売上高が同21.1%減の118億57百万円で経常利益が同25.9%減の2億96百万円だった。スマホ・タブレット端末向け部材、太陽光発電部材、チタン・ニッケル製品輸出、レアメタル・レアアースなどが低調だった。商社流通のアルミ銅事業は売上高が同8.9%減の295億84百万円で経常利益が同33.4%減の1億80百万円だった。平和金属が貢献したが、自動車向けアルミ板材など一部を除いて需要が低調だった。
製造の装置材料事業は売上高が同29.6%増の39億46百万円で経常利益が36百万円の赤字(前年同期は17百万円の赤字)だった。米ユニバーティカル社がのれん償却後で黒字化し、東海溶業も貢献した。マークテックはのれん償却後で経常赤字だった。製造の金属加工事業は売上高が同1.0%増の24億04百万円で経常利益が同5.3%増の6億53百万円だった。大羽精研はチップマウンター用研削加工部品などが好調だった。大川電機製作所は短納期対応が収益を圧迫した。なお持分法適用関連会社3社の持分法投資利益が増益に寄与した。
■17年3月期通期はM&A効果で2桁営業増益予想
今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月13日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比9.0%増の2200億円、営業利益が同12.1%増の42億50百万円、経常利益が同2.8%増の44億円、純利益が同37.7%減の31億円としている。純利益は平和金属の負ののれん発生益が一巡して減益予想である。配当予想は前期と同額の年間44円(第2四半期末22円、期末22円)で、予想配当性向は18.3%となる。
中国の景気減速やスマホ・タブレット端末の成長鈍化などで国内外の生産、輸出が停滞し、レアメタル・レアアースの市況低迷も続くが、M&Aによる新規連結会社の通期寄与(平和金属、東海溶業、マークテック)などで増収、営業増益、経常増益見込みである。純利益は平和金属の株式取得に伴うのれん発生益が一巡して減益見込みである。売上総利益は同23.1%増の150億円、売上総利益率は同0.8ポイント上昇の6.8%、販管費は同28.1%増の107億50百万円、販管費比率は同0.7ポイント上昇の4.9%の計画としている。
セグメント別の計画を見ると、商社流通の電子機能材料は売上高が同27.5%増の730億円で経常利益が同21.0%減の13億円、商社流通のアルミ銅事業は売上高が同3.0%減の1190億円で経常利益が同4.7%増の7億50百万円、製造の装置材料事業は売上高が同45.6%増の190億円で経常利益が5億円(前期は96百万円の赤字)、製造の金属加工事業は売上高が同2.9%増の90億円で経常利益が同8.7%減の18億50百万円としている。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が21.7%、営業利益が21.0%、経常利益が24.6%、純利益が26.8%と概ね順調な水準である。通期ベースで好業績が期待される。
■新中期経営計画で19年3月期ROE13~15%程度目標
16年5月策定の新中期経営計画(17年3月期~19年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、経営目標値として19年3月期の経常利益65億円超、純利益46億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0~1.3倍程度を掲げ、3年間の投融資総額はM&A・事業投資を中心に200億円の計画としている。商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指し、アクションプランとして、営業収益力の強化と投資案件の推進を掲げている。
営業収益力の強化では、電子材料分野における原料(レアメタル・レアアース)から製品(電子材料・機能材料)までを網羅したビジネスモデルの展開、環境対応関連分野における省エネ・環境対応素材からリサイクル事業までの幅広い事業展開、そして海外事業展開(地場取引の拡大、三国間ビジネスの拡大、海外ネットワーク充実に向けた拠点拡大)を推進する。
投資案件の推進では、短期間での業容拡大に有効なM&A、新たな商流を創出するための金属加工・販売事業等への事業投資、およびリサイクルを含む資源確保のための投資を重点施策として推進する。積極的なM&A戦略も奏功し、グループのシナジー効果を高めて中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は指標面の割安感を見直して戻り歩調
株価の動きを見ると、8月4日の直近安値1250円から切り返して出直りの動きを強めている。9月23日には戻り高値となる1420円まで上伸した。調整が一巡したようだ。
9月23日の終値1415円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS240円67銭で算出)は5~6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間44円で算出)は3.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2311円32銭で算出)は0.6倍近辺である。なお時価総額は約182億円である。
日足チャートで見ると上向きに転じた25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線を突破した。指標面の割安感を見直して戻り歩調だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)