クリーク・アンド・リバー社は目先的な過熱感解消、VR・AR関連に注目して14年10月高値目指す

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(東1)は、クリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開している。事業領域拡大戦略を加速して17年2月期大幅増益予想である。株価は目先的な過熱感が解消して再動意のタイミングだ。VR・AR関連に注目して14年10月高値を目指す展開だろう。なお10月6日に第2四半期累計業績の発表を予定している。

■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 日本のクリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版などの制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業、およびプロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業を主力としている。また韓国のクリエイティブ分野、および医療・IT・法曹・会計などの分野におけるエージェンシー事業も展開し、事業領域拡大戦略を加速している。

 16年2月期セグメント別売上高構成比は、日本クリエイティブ分野61%、韓国クリエイティブ分野15%、医療分野12%、その他12%だった。

 日本のクリエイティブ分野では、13年8月公開のテレビ朝日開局55周年記念劇場公開映画「少年H」(モスクワ映画祭特別賞受賞)の制作を担当したことが評価されて、TV番組制作受託事業が拡大している。当社が制作協力したドキュメンタリー映画「抱擁」は平成27年度文化庁映画賞(文化記録映画部門)文化記録映画優秀賞を受賞した。当社、白組およびハウステンボスが共同制作した劇場公開用3DCGアニメ「GAMBAガンバと仲間たち」が15年10月から公開され、この公開にあわせてスマホゲームアプリ「GAMBA RACER」の配信を開始した。

 なお韓国のクリエイティブ分野はクリーク・アンド・リバー韓国、医療分野はメディカル・プリンシプル、IT分野はリーディング・エッジ、法曹分野はC&Rリーガル・エージェンシー、会計分野はジャスネットコミュニケーションズ、ファッション分野はインター・ベル(13年12月子会社化)、広告分野はプロフェッショナルメディア(15年4月子会社化)の各連結子会社が事業展開している。

■新規分野に積極展開して事業領域拡大戦略を加速

 新規事業分野として電子書籍取次事業、および作家、オンラインクリエイター、建築、ファッションクリエイター、シェフ、プロフェッサー分野のエージェンシー事業へ展開し、M&Aも積極活用している。当面は人件費などの費用が先行するが、順次収益化を見込んでいる。

 15年4月プロフェッショナルメディア(トータルブレーンが運営する人材紹介・派遣事業および広告業界特化型情報事業「広告転職.com」「クリエイティブ派遣.com」を新設分割して設立)を連結子会社化した。15年5月エコノミックインデックスを持分法適用関連会社化した。同社のデータ解析技術を活かして商品・サービスの販売促進、広告効果の検証、企業イメージの動向把握と維持向上、ブランド価値の定量化などを提供する。15年6月ベトナム最大のマルチチャンネルネットワーク(MCN)であるPOPSと業務提携した。

 15年10月オンラインクリエイター分野において、YouTuberと企業のマッチング・分析を行う新ソーシャルクリエイターマッチング・分析プラットフォーム「EUREKA(エウレカ)」をリリースした。また教授や準教授をはじめとする研究者に特化したエージェンシー事業の本格的始動を発表した。

 16年2月法曹分野の子会社C&Rリーガル・エージェンシー(CRLA社)が、世界中の弁護士のためのSNSプラットフォーム「JURISTERRA(ジュリステラ)」の開発を発表し、16年4月からβ版の運用を開始した。16年8月から本格オープンを予定している。米国におけるサービス基盤拡充は16年3月設立した子会社CREEK & RIVER Global(米国)が行う。

 16年3月ゲームやアプリなどの優れたコンテンツを世界へ発信するプロジェクトを本格始動した。第一弾としてアラビア語圏・ロシア語圏に向けて、親子で楽しめる知育アプリ「えほんであそぼ!じゃじゃじゃじゃん」(開発・提供:フォーリー社)の翻訳・吹き替えを実施し、155の国と地域に配信した。16年4月ソーシャルゲームインフォと連携してスマホアプリ先行予約サービス「Social Game Info@先行予約」の提供を開始した。

 16年5月子会社メディカル・プリンシパル社(MP社)が、メンタルヘルスケアのEAP(従業員支援プログラム)事業者として国内最大規模のアドバンテッジリスクマネジメントと提携し、ストレスチェックにおける「医師面接」領域での提携関係を構築した。また大学や企業などの研究機関に所属する研究者のための情報サイト「Technologist’s magazine」をオープンした。

 16年7月中国のアイデアレンズ社および同社の筆頭株主である投資ファンドのパートナー王涵氏と共同で、VR・AR(仮想現実・拡張現実)における日本市場への進出および日本コンテンツの中国展開を図るための合弁会社設立基本合意を発表した。そして16年8月日本市場進出のための新会社VR Japan設立(当社出資比率51.0%)を発表した。

 なおアイデアレンズ社のVRヘッドマウンドディスプレイ(HMD)新製品「IDEALENS K2」は中国市場でのHMDの本命と言われ、9月15日から中国で発売開始した。日本では9月15日~18日開催「東京ゲームショウ2016」のVRコーナーに出展し、年内の発売を予定している。

 また16年8月にはハウステンボスと映画配給会社ギャガの第三者割当増資を引き受けた。当社出資比率は15.0%となる。当社が企画・開発・制作するコンテンツを、アジアを中心とする海外へ発信していくことを目指している。

■日本クリエイティブ分野は拡大基調、医療分野は期前半に利益偏重の特性

 四半期別推移を見ると、15年2月期は売上高が第1四半期60億92百万円、第2四半期56億97百万円、第3四半期55億42百万円、第4四半期55億95百万円、営業利益が5億78百万円、3億50百万円、1億69百万円、1億99百万円、16年2月期は売上高が63億69百万円、65億03百万円、57億07百万円、63億30百万円、営業利益が4億58百万円、4億49百万円、1億03百万円、1億67百万円だった。

 医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重し、第3四半期と第4四半期は赤字となるため、全体として上期の構成比が高くなる収益構造だ。主力の日本のクリエイティブ分野は売上・営業利益とも四半期ベースで拡大基調である。

 16年2月期は積極的な人材投資、初の大型自社開発ゲーム関連の販促費、プロフェッショナルメディア新規連結の影響などで減益だったが、売上面では主力の日本のクリエイティブ分野を中心に既存事業分野が好調に推移した。グループ全体での派遣稼働者数、紹介成約者数は過去最高水準を更新した。増収基調に変化はない。

 売上総利益は10.4%増加し、売上総利益率は32.1%で同0.5ポイント上昇した。ゲーム・Web分野中心に自社制作強化・利益率向上を目的として、制作スタジオを拡張して内制化を推進したことも寄与した。販管費は14.7%増加し、販管費比率は27.4%で同1.5ポイント上昇した。16年2月期末人員数は15年2月期末比125人増加の889人となった。また初の大型自社開発ゲーム「戦国修羅SOUL」の配信開始に伴って販促費用が増加した。

 営業外費用ではエコノミックインデックス社の持分法適用関連会社化に伴って持分法投資損失68百万円を計上した。ROEは13.2%で同3.8ポイント低下、自己資本比率は52.8%で同0.2ポイント上昇した。配当は前々期比1円増配の年間8円(期末一括)で配当性向は26.5%だった。

 セグメント別(連結調整前)動向を見ると、日本のクリエイティブ分野は売上高が同6.3%増の152億36百万円、営業利益が同10.6%減の7億18百万円だった。韓国のクリエイティブ分野は売上高が同16.6%増の38億20百万円、営業利益が同43.0%減の23百万円だった。医療分野は売上高が同6.5%増の29億08百万円、営業利益が同13.3%増の4億09百万円だった。その他事業(IT・法曹・会計他の事業)は売上高が同13.3%増の29億68百万円、営業利益が同71.5%減の24百万円だった。

 新規事業領域では、電子書籍取次事業はダウンロード数・売上高とも順調に増加して黒字定着した。オンラインクリエイター事業は動画再生回数が順調に増加して黒字化メドとなった。第1四半期にシェフ・エージェンシー事業、第2四半期にプロフェッサー・エージェンシー事業を立ち上げ、作家、建築、ファッション、シェフ、プロフェッサーの新規エージェンシー事業における先行投資負担の営業利益への影響額は合計で約2億10百万円(15年2月期は約1億50百万円)だった。

■17年2月期第1四半期は増収減益

 今期(17年2月期)第1四半期(3~5月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.7%増の65億39百万円、営業利益が同1.0%減の4億54百万円、経常利益が同7.9%減の4億23百万円、純利益が同7.7%減の2億26百万円だった。人件費など先行投資負担で減益だが、売上高は四半期ベースで過去最高となり、概ね計画水準としている。

 売上総利益は同10.7%増加し、売上総利益率は36.5%で同2.7ポイント上昇した。販管費は同13.8%増加し、販管費比率は29.6%で同2.9ポイント上昇した。営業外では持分法投資損益が悪化(前期は利益2百万円、今期は損失34百万円)した。なお利益押し下げ要因として、新規エージェンシー事業における先行投資負担の営業利益への影響額は55百万円(前年同期30百万円)で、前期持分法適用関連会社化したエコノミックインデックス社の経常利益への影響額は32百万円(前年同期は影響なし)だった。

 セグメント別(連結調整前)動向を見ると、日本のクリエイティブ分野は売上高が同1.8%増の39億05百万円、営業利益が同23.9%減の1億66百万円だった。韓国のクリエイティブ分野は売上高が同17.4%減の7億99百万円、営業利益が1百万円の赤字(前年同期は4百万円の黒字)だった。医療分野は売上高が同20.6%増の10億79百万円、営業利益が同17.5%増の2億76百万円だった。その他事業(IT・法曹・会計他の事業)は売上高が同13.1%増の7億65百万円、営業利益が12百万円の黒字(前年同期は0百万円の赤字)だった。

 日本のクリエイティブ分野は、売上面では前年同期に請負案件の納品が増加した反動で小幅な伸びにとどまったが計画どおりに進捗している。利益面では戦略的に人員を増加しているため減益だった。医療分野は医師紹介事業が好調に推移している。

■17年2月期は大幅増益予想

 今期(17年2月期)通期の連結業績予想(4月7日公表)については売上高が前期(16年2月期)比6.4%増の265億円、営業利益が同35.9%増の16億円、経常利益が同38.9%増の15億50百万円、純利益が同27.7%増の8億円としている。配当予想は前期比1円増配の年間9円(期末一括)で予想配当性向は23.4%となる。

 売上面では日本のクリエイティブ分野を中心に既存事業分野が好調に推移する。利益面では引き続き積極的な人材投資で販管費が増加するが、内制化進展による売上総利益率改善や、新規事業分野の収益化(建築およびファッションクリエイター事業で収支均衡を計画)も寄与して大幅増益予想だ。なお15年12月配信開始した自社開発ゲーム「戦国修羅ソウル」は100万ダウンロードを突破し、7月から台湾、香港、マカオなどアジア圏に向けて配信開始した。

 セグメント別(連結調整前)の計画を見ると、日本のクリエイティブ分野は売上高が165億円で営業利益が10億円、韓国のクリエイティブ分野は売上高が35億円で営業利益が30百万円、医療分野は売上高が30億50百万円で営業利益が4億60百万円、その他は売上高が34億80百万円で営業利益が1億20百万円としている。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が24.7%、営業利益が28.4%、経常利益が27.3%、純利益が28.3%である。上期の構成比が高い特性を考慮しても順調な水準だろう。戦略的投資の効果や新規事業領域の収益化で増収増益基調が期待される。

■中期成長戦略で18年2月期営業利益30億円をイメージ

 中期成長戦略では既存事業で年率10~15%の成長を見込み、新規事業分野の積み上げや収益化も寄与して、18年2月期売上高300億円、営業利益30億円をイメージしている。事業領域拡大戦略を加速して、中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株価は目先的な過熱感解消、14年10月高値目指す

 株価の動き(16年2月26日付でJASDAQから東証2部に市場変更、8月31日付で東証1部に指定替え)を見ると、VR・AR関連のテーマ性や東証1部への指定替えを好感して年初来高値を更新し、9月14日の862円まで上伸した。その後は年初来高値圏でモミ合う形だ。

 9月23日の終値816円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS38円50銭で算出)は21~22倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間9円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS227円55銭で算出)は3.6倍近辺である。時価総額は約184億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドの形だ。また日足チャートで見ると25日移動平均線が接近して目先的な過熱感が解消した。再動意のタイミングだ。VR・AR関連に注目して14年10月高値893円を目指す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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