山下医科器械は戻り歩調に変化なし、17年5月期営業減益予想だが上振れ余地

 山下医科器械<3022>(東1)は九州を地盤とする医療機器専門商社で、福岡県での市場シェア拡大を重点戦略としている。17年5月期第1四半期は長崎TMSセンター稼働に伴う費用増加で営業赤字が拡大した。通期も減益予想である。ただし期初時点では保守的な計画を打ち出す傾向が強く、上振れ余地があるだろう。株価は第1四半期営業赤字拡大に対するネガティブ反応が限定的であり、戻り歩調に変化はないだろう。

■九州を地盤とする医療機器専門商社

 九州を地盤とする医療機器専門商社である。医療機器の販売・メンテナンスおよび医療材料・消耗品などの販売を主力として、子会社イーピーメディックは整形インプラントを製造販売している。中期成長に向けて、九州最大の需要地である福岡県での市場シェア拡大を最重点戦略としている。

 医療機関向けSPD(病院医療材料管理業務)の契約施設数増加に対応するため、13年7月に福岡SPDセンター(福岡県福岡市)を新設し、鳥栖SPDセンター(佐賀県鳥栖市)との2拠点体制とした。そして16年9月に長崎TMSセンター(長崎県諫早市)が稼働し、物流センター2拠点、SPDセンター3拠点体制となり、物流の効率化と迅速化により信頼性とサービス向上を図る。

 15年10月には、パナソニックヘルスケアとの合弁会社パナソニックメディコム九州(当社出資比率49%)が営業開始した。電子カルテやレセコンなどのメディコム製品および関連機器の販売・サービスを展開する。

■指名停止と一般競争参加資格降格の期間満了

13年12月に判明した従業員による不正行為に関して、14年2月28日に独立行政法人国立病院機構から指名停止(14年2月28日~14年11月27日)と一般競争参加資格降格(14年11月28日~15年8月27日)の処分を受けた。

 不正行為の再発防止策に関して4月17日再発防止策実施状況その1、5月16日再発防止策実施状況その2、6月13日再発防止策実施状況その3、8月18日再発防止策実施状況その4を発表している。15年8月には第67回定時株主総会の承認に基づいて監査等委員会設置会社に移行した。そして14年11月27日を以って指名停止期間が満了となり、15年8月27日を以って一般競争参加資格の降格措置期間も満了となった。

■第2四半期と第4四半期の構成比が高い収益構造

 四半期別業績推移を見ると、15年5月期の売上高は第1四半期105億82百万円、第2四半期126億55百万円、第3四半期118億52百万円、第4四半期152億21百万円、営業利益は45百万円の赤字、2億21百万円、50百万円、3億12百万円だった。16年5月期の売上高は114億70百万円、130億53百万円、122億63百万円、148億29百万円、営業利益は4百万円の赤字、1億97百万円、64百万円、3億27百万円だった。医療機関の設備投資関連で第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造である。

 16年5月期は15年5月期比2.6%増収、同8.6%営業増益、同3.1%経常増益、同7.5%最終減益だった。一般競争参加資格の降格措置期間が満了し、営業減益予想から一転して営業増益となった。売上総利益は同1.4%増加したが、売上総利益率は11.5%で同0.1ポイント低下した。販管費は0.7%増加したが、販管費比率は10.3%で同0.2ポイント低下した。

 純利益は営業外費用での持分法投資損失計上、特別利益での収用補償金一巡、法人税等増加などで減益だった。ROEは5.6%で同0.7ポイント低下、自己資本比率は32.0%で同横ばいだった。配当は前々期比7円増配の年間50円(期末一括、普通配当40円+創業90周年記念配当10円)で、配当性向は38.0%だった。利益還元については安定的な配当の継続を基本方針とし、配当水準として連結配当性向30%を基準としている。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、医療機器販売事業は売上高が同2.5%増の512億64百万円、営業利益が同8.9%増の12億21百万円だった。医療モール事業(主として賃料収入)は売上高が同7.7%増の74百万円、営業利益が同3.9倍の10百万円、その他(自社グループ開発製品の整形外科用インプラント製造販売)は売上高が同11.0%減の4億76百万円、営業利益が6百万円の赤字(前々期は4百万円の赤字)だった。

 医療機器販売業の売上高の内訳は、一般機器分野が同1.8%増の102億01百万円、一般消耗品分野が同2.9%増の192億66百万円、低侵襲治療分野が同3.4%増の134億13百万円、専門分野が同2.3%増の65億90百万円、情報・サービス分野が同3.7%減の17億93百万円だった。

■17年5月期第1四半期は費用増加で営業赤字拡大

 9月30日発表した今期(17年5月期)第1四半期(6~8月)連結業績は、売上高が前年同期比3.5%増の118億68百万円だが、営業利益が36百万円の赤字(前年同期は4百万円の赤字)、経常利益が30百万円の赤字(同15百万円)、純利益が30百万円の赤字(同0百万円)だった。売上総利益率が低下し、長崎TMSセンター稼働に伴って消耗品等の販管費が増加したため営業赤字が拡大した。

 売上総利益は同0.8%減少し、売上総利益率は11.0%で同0.4ポイント低下した。販管費は同1.7%増加したが、販管費比率は11.3%で同0.2ポイント低下した。営業外費用では持分法投資損失10百万円を計上した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、医療機器販売事業は売上高が同3.4%増の117億84百万円で営業利益が同32.7%減の1億08百万円、医療モール事業(賃料収入)は売上高が同0.6%増の18百万円で営業利益が0百万円の赤字(前年同期は1百万円の黒字)、その他(自社グループ開発製品の整形外科用インプラント製造販売)は売上高が同35.6%減の68百万円で営業利益が同22.9%増の3百万円だった。

 なお医療機器販売業の売上高の内訳は、一般機器分野が同26.1%増の20億30百万円、一般消耗品分野が同1.7%減の47億74百万円、低侵襲治療分野が同4.2%増の31億99百万円、専門分野が同1.8%増の15億37百万円、情報・サービス分野が同29.6%減の2億42百万円だった。一般機器分野は大型の病院施設新築移転案件等に伴う超音波診断装置等の医療機器備品や、MRI等の画像診断・放射線機器が寄与した。

■17年5月期営業減益予想だが上振れ余地

 今期(17年5月期)通期の連結業績予想は、前回予想(7月11日公表)を据え置いて、売上高が前期(16年5月期)比6.0%増の546億95百万円、営業利益が同28.5%減の4億18百万円、経常利益が同23.1%減の4億88百万円、純利益が同14.1%減の2億85百万円としている。配当予想は同15円減配の年間35円(期末一括)としている。予想配当性向は30.7%となる。

 診療報酬改定による汎用医療材料の価格低下や病床再編に伴う市場成長の減速など事業環境が厳しい中で、基盤事業であるSPD事業の拡大を図るが、長崎TMSセンター稼働に伴う先行費用(人件費、リース料、減価償却費)の発生、営業人員増加による人件費の増加などで減益予想としている。

 なお病床機能の分化・連携や在宅医療・在宅介護の推進によって需要増加が見込まれる介護分野の事業展開を図るため、ヘルスケア事業推進部を新設する。同部署では今後、当社グループが出資している国内の新興企業が開発する介護関連製品の取り扱いを予定している。また電子カルテ等の普及拡大が見込まれるため、MIT推進部を強化してシェア拡大を図る。さらに整形分野における子会社事業の強化、循環器事業の拡大、医療モール事業の収益向上に取り組む。

 期初時点では保守的な計画を打ち出す傾向が強い。指名停止および一般競争参加資格の降格措置の影響一巡、さらに長崎TMSセンター稼働による物流体制充実も寄与して会社予想には上振れ余地があるだろう。

■中期経営計画で18年5月期売上高580億円目標

 15年7月策定の新中期経営計画では基本戦略として、さらなる基盤事業の強化と推進体制の構築、地域医療構想に即した新規事業の創出、グループ統制とガバナンス強化に即した経営体制の刷新、積極的な人材確保と教育、コンプライアンス・内部統制の徹底と経営理念経営を推進する。

 経営目標数値には、18年5月期の売上高580億円、経常利益8億50百万円を掲げている。中期的に収益拡大基調が期待される。

■株主優待制度は11月末と5月末の年2回実施

 株主優待制度は毎年11月30日および5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。優待内容は100株~999株保有株主に対して500円相当のクオカード、1000株~1999株保有株主に対して1000円相当のクオカード、2000株以上保有株主に対して1500円相当のクオカードを贈呈する。

■株価は戻り歩調に変化なし

 株価の動きを見ると、直近安値圏1600円近辺でのモミ合いから上放れて水準を切り上げている。第1四半期の営業赤字拡大に対するネガティブ反応も限定的であり、戻り歩調に変化はないようだ。

 10月5日の終値1734円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS113円90銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間35円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2391円34銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約44億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形だ。また週足チャートで見ると26週移動平均線を突破し、13週移動平均線が上向きに転じている。基調転換を確認した形であり、戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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