寿スピリッツは17年3月期第2四半期累計の売上高(概算)は前年同期比22.3%増収

 寿スピリッツ<2222>(東1)は「お菓子の総合プロデューサー」を企業ビジョンに掲げ、首都圏エリア展開強化や商品プレミアム化などの重点施策を加速している。10月11日発表した17年3月期第2四半期累計の売上高(概算)は前年同期比22.3%増収と好調だった。通期2桁営業増益・連続増配予想で中期成長シナリオに変化はない。株価は調整一巡して戻り歩調だ。7月の上場来高値を目指す展開だろう。なお11月1日に第2四半期累計業績発表を予定している。

■「お菓子の総合プロデューサー」として地域限定ブランド菓子を展開

 地域限定ブランド菓子の製造・販売を主力とする持株会社である。全国各地のお菓子のオリジナルブランドとショップブランドを創造する「お菓子の総合プロデューサー」を企業ビジョンに掲げ、製造卸から製造小売に事業モデルを転換して高収益化を推進している。さらに「ワールド サプライジング リゾート(WSR)宣言」を経営スローガンに掲げ、中期経営目標を売上高経常利益率20%としている。

 主要子会社は、山陰地区中心に「お菓子の壽城」「ラングドシャ」ブランドなどを展開する寿製菓、北海道中心に「ルタオ」ブランドを展開するケイシイシイ、首都圏中心に「東京ミルクチーズ工場」「ザ・メープルマニア」など洋菓子を展開するシュクレイ、九州中心に「赤い風船」ブランドを展開する九十九島グループ、関西中心に「遊月亭」ブランドを展開する但馬寿、そして販売子会社(東海地区3社、中国・九州地区4社、関西地区2社)である。

 16年1月但馬寿の菓子製造部門の全部および販売部門のうちグループ向け卸営業に関する事業を寿製菓に承継した。また明治ホールディングス<2269>グループで「ミルフィユ」など洋菓子製造・販売を行うフランセを子会社化(16年2月から新規連結)した。

 なお16年3月期の地域別売上構成比は首都圏23.1%、北海道22.8%、九州・沖縄16.3%、近畿13.8%、中国・四国12.3%、中部8.4%、東北1.4%、海外2.1%、また販売チャンネル別売上構成比は卸売(駅・空港・高速道路SAなどの小売店、代理店卸、OEM)48.4%、店舗販売(直営店舗、催事)40.7%、通信販売8.6%(うちルタオ通販7.1%)、海外2.1%、その他0.1%だった。駅・空港・高速道路SAなど交通機関チャネルでの土産品としての販売比率が高いことも特徴である。

■重点施策を着実に遂行

 重点施策として、プレミアム・スイーツブランドの創出と育成(地域・チャンネル特性にマッチした商品開発推進、主力商品リニューアルによるバージョンアップと価格改定、販路開拓やリアル店舗と通販の融合、新業態店の拡大)、インバウンド対策の強化(国内主要国際空港における免税売店等への販売強化、直営店舗での免税対応強化)、首都圏でのWSR化展開(シュクレイのブランド力向上、フレンチトースト専門店「Ivorish(アイボリッシュ)」など新ブランド確立)、海外展開、生産性向上による製造採算改善などを推進している。

 健康食品事業については、藍染めで知られる「タデ藍」を使用した機能性食品の企画販売を行う新会社の純藍を14年9月設立し、野菜不足を補うアンチエイジング飲料「藍の青汁」を15年1月販売開始した。なお16年6月には藍のポリフェノール(フラボノイド)の物質特許、製法特許およびコレステロール合成に関わるHMG-CoA還元酵素阻害剤としての用途特許を取得したと発表している。

 海外展開については、台湾は直接進出、韓国はフランチャイズ方式で進出する。またシュクレイが香港・ハンドメイド社と共同出資で香港に合弁会社ハニーシュクレイを設立し、15年12月から香港で「東京ミルク工場」の店舗展開を開始した。

 当面の重点施策の数値目標として、18年3月期に国内主要国際空港でのインバウンド売上高25億円(16年3月期実績8億10百万円)、海外売上高(台湾現地法人売上高+韓国・香港向けロイヤルティ含む国内出荷売上高)15億円(同5億50百万円)、首都圏主要売上高(シュクレイ、アイボリッシュ、グラッシェル)60億円(同38億50百万円)の合計100億円(同52億10百万円)を掲げている。

■クリスマス・年末年始需要などで第3四半期の構成が高い収益構造

 四半期別推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期50億01百万円、第2四半期58億89百万円、第3四半期62億75百万円、第4四半期58億02百万円、営業利益が2億02百万円、5億10百万円、8億66百万円、4億55百万円、16年3月期は売上高が55億42百万円、65億68百万円、69億68百万円、75億34百万円、営業利益が3億49百万円、9億31百万円、11億48百万円、8億48百万円だった。16年3月期第4四半期売上高はフランセの新規連結も寄与したが、クリスマス・年末年始需要などで第3四半期の構成比が高い収益構造である。

 16年3月期はシュクレイを中心とする首都圏エリア展開強化、空港でのインバウンド・アウトバウンド対応強化、商品プレミアム化など重点施策遂行の成果に加えて、生産効率改善、価格改定、経費効率的使用なども寄与して大幅増収増益だった。首都圏主要売上高(シュクレイ、アイボリッシュ、グラッシェル)は38億50百万円で15年3月期比7億92百万円増加した。特にシュクレイがブランド知名度向上効果で躍進した。国内主要国際空港における売上高は8億10百万円で同5億76百万円増加した。

 売上総利益は同20.4%増加し、売上総利益率は55.2%で同2.0ポイント上昇した。販管費は同12.2%増加したが、販管費比率は42.9%で同1.4ポイント低下した。特別利益では負ののれん発生益を計上した。ROEは23.3%で同8.0ポイント上昇、自己資本比率は60.1%で同1.0ポイント低下した。配当は同20円増配の年間60円(期末一括)で配当性向は27.0%だった。利益配分については内部留保、業績水準ならびに配当性向等を総合的に勘案して利益還元に努めることを基本方針としている。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、ケイシイシイは売上高が同9.2%増の90億95百万円で営業利益が同34.8%増の12億90百万円、寿製菓・但馬寿(16年1月の組織再編に伴ってセグメントを統合)は売上高が同8.9%増の88億67百万円で営業利益が同19.8%増の6億71百万円、販売子会社は売上高が同9.8%増の48億68百万円で営業利益が同46.7%増の3億30百万円、シュクレイは売上高が同36.6%増の38億18百万円で営業利益が同2.9倍の4億36百万円、九十九島グループは売上高が同4.2%増の35億54百万円で営業利益が同42.9%減の85百万円、フランセ(新規連結2ヶ月分)は売上高が9億17百万円で営業利益が1億29百万円、その他(新規連結の台湾における菓子事業含む)は売上高が同8.6倍の2億27百万円で営業利益が45百万円の赤字(前々期は64百万円の赤字)だった。

■17年3月期第1四半期は増収営業増益

 今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は売上高が前年同期比21.3%増の67億24百万円、営業利益が同6.6%増の3億72百万円、経常利益が同4.1%増の3億82百万円、純利益が同16.2%減の1億86百万円だった。法人税等の増加で最終減益だったが、インバウンド対策や首都圏展開の推進など重点施策を着実に遂行し、フランセの季節要因によるマイナス影響を吸収して営業・経常増益だった。売上総利益は同23.8%増加し、売上総利益率は54.3%で同1.1ポイント上昇した。販管費は同26.1%増加し、販管費比率は48.7%で同1.8ポイント上昇した。

 首都圏主要売上高(シュクレイ、アイボリッシュ、グラッシェル)は9億94百万円で同2億07百万円増加した。特にシュクレイが首都圏でのWSR化展開を加速した。インバウンド売上(国内主要国際空港売上)高は3億76百万円で同2億62百万円増加した。海外売上(台湾、韓国、香港、その他)は1億46百万円で同63百万円増加した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、ケイシイシイは売上高が同6.5%増の20億04百万円で営業利益が同75.4%増の1億55百万円、寿製菓・但馬寿は売上高が同7.3%増の21億72百万円で営業利益が同41.4%増の1億75百万円、販売子会社は売上高が同2.3%増の11億50百万円で営業利益が同6.5%増の53百万円、シュクレイは売上高が同38.3%増の10億44百万円で営業利益が同67.4%増の95百万円、九十九島グループは売上高が同5.8%減の7億46百万円で営業利益が41百万円の赤字(前年同期は2百万円の黒字)、フランセは売上高が7億04百万円で営業利益が1億23百万円の赤字、その他(台湾の菓子事業含む)は売上高が同26.3%増の61百万円で営業利益が12百万円の赤字(同12百万円の赤字)だった。

 なおフランセ連結の影響を除くと、売上高は同8.6%増の60億19百万円、経常利益は同38.3%増の5億08百万円だった。フランセの主力商品「ミルフィユ」は年末・バレンタイン・ホワイトデーなど、下期に売上が集中するイベント型の商品で、業績は上期が営業赤字、下期が営業黒字、通期で営業黒字となる季節要因がある。このためフランセの連結によって、利益面では上期がマイナス影響、下期がプラス影響、通期でプラス影響となる。

■17年3月期第2四半期累計の売上高(概算)は前年同期比22.3%増収

 10月11日発表した17年3月期第2四半期累計(4~9月)売上高(概算)は前年同期比22.3%増の148億12百万円だった。フランセ連結の影響を除くと同10.0%増収だった。

 セグメント別(連結調整前)には、ケイシイシイが同9.4%増の42億66百万円、寿製菓・但馬寿が同7.8%増の49億48百万円、販売子会社が同1.5%増の25億05百万円、シュクレイが同36.5%増の24億31百万円、九十九島グループが同4.9%減の16億12百万円、フランセが14億90百万円、その他(台湾の菓子事業含む)が同10.8%増の1億13百万円だった。九十九島グループが熊本地震発生による観光客減少の影響を受けたが、首都圏エリアのシュクレイが店舗・催事の好調で大幅増収だった。

■17年3月期通期は2桁営業増益・連続増配予想

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比17.9%増の313億70百万円、営業利益が同12.3%増の36億80百万円、経常利益が同11.3%増の37億円、純利益が同4.5%増の24億10百万円としている。配当予想は年間25円(期末一括)である。16年4月1日付株式3分割を考慮して分割前に遡及修正すると年間75円で、前期の年間60円に対して実質的に15円増配となる。また予想配当性向は32.3%となる。

 シュクレイを中心とする首都圏エリア展開強化、空港でのインバウンド・アウトバウンド対応強化、商品プレミアム化など重点施策の着実な遂行の成果、フランセの通期連結などで2桁営業増益予想である。売上総利益率は55.5%で同0.3ポイント上昇、販管費比率は43.8%で同0.9ポイント上昇を想定している。なおフランセの影響を除くベースでは売上高が同6.1%増の272億70百万円、経常利益が同8.8%増の34億77百万円としている。フランセの収益構造は事業・商品特性による季節変動要因で下期の構成比が高い。そして経営の抜本的見直し(工場改善、リブランディング、経営管理システムの変更など)では下期からの収益改善を見込んでいる。

 セグメント別(連結調整前)の計画は、ケイシイシイの売上高が同6.7%増の97億円で営業利益が同10.9%増の14億30百万円、寿製菓・但馬寿の売上高が同6.7%増の94億60百万円で営業利益が同7.5%増の7億22百万円、販売子会社の売上高が同5.6%増の51億40百万円で営業利益が同19.8%増の3億95百万円、シュクレイの売上高が同14.7%増の43億80百万円で営業利益が同10.1%増の4億80百万円、九十九島グループの売上高が同1.0%増の35億90百万円で営業利益が同27.1%減の62百万円、フランセ(12ヶ月)の売上高が41億円で営業利益が1億12百万円、その他(台湾における菓子事業含む)の売上高が同36.6%増の3億10百万円で営業利益が64百万円の赤字(前期は45百万円の赤字)としている。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が21.4%、営業利益が10.1%、経常利益が10.3%、純利益が7.7%と低水準の形だが、年末商戦などで第3四半期の構成比が高い収益構造であり、フランセの収益も下期偏重の季節要因があることを考慮すればネガティブ要因とはならない。首都圏を中心とする新業態店の知名度・ブランド力向上、新商品の開発・投入の加速、販促・接客強化による消費者への訴求力向上、商品のプレミアム化、製造採算改善、海外展開など積極的な施策の効果で、中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株主優待は毎年3月末に実施

 株主優待制度については毎年3月末現在の株主に対して実施している。100株以上~500株未満所有株主に対して2000円相当の自社グループ製品、500株以上~1000株未満所有株主に対して4000円相当の自社グループ製品、さらに1000株以上所有株主に対して4000円相当のグループ製品+3000円相当の直営店舗利用優待券(代替商品送付可)を贈呈する。

■株価は調整一巡して戻り歩調

 株価の動き(16年4月1日付で株式3分割)を見ると、第1四半期業績発表をきっかけとして上場来高値圏から急反落したが、直近安値圏2000円台から切り返して戻り歩調だ。調整が一巡したようだ。

 10月11日の終値2422円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS77円44銭で算出)は31~32倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS346円14銭で算出)は7.0倍近辺である。時価総額は約754億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線が上向きに転じてサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると52週移動平均線近辺から切り返している。中期成長シナリオに変化はなく、7月の上場来高値3625円を目指す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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