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エストラストは基調転換して戻り歩調、17年2月期第2四半期累計減収減益だが計画水準
- 2016/10/12 08:42
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エストラスト<3280>(東1)は山口県および福岡県を地盤とする不動産デベロッパーで、成長市場である九州主要都市への展開を加速している。10月11日発表した17年2月期第2四半期累計連結業績は減益だったが計画水準である。通期もプロジェクト先行費用などで減益予想だが、分譲マンション引き渡し予定戸数に対する契約進捗率は高水準である。株価は基調転換して戻り歩調だ。17年2月期減益予想は織り込み済みであり、指標面の割安感に注目して出直り展開だろう。
■山口県・福岡県を地盤とする不動産デベロッパー
山口県および福岡県を地盤とする不動産デベロッパーである。一次取得ファミリー型の新築分譲マンション「オーヴィジョン」シリーズ、ハイクオリティ・ミドルプライスの新築戸建住宅「オーヴィジョンホーム」の不動産分譲事業を主力として、不動産賃貸事業、そして「オーヴィジョン」マンション管理受託の不動産管理事業(連結子会社トラストコミュニティ)も展開している。
山口県でのマンション販売実績は13年1位、14年1位、15年1位と首位を維持し、九州・山口エリアでのマンション販売実績は13年6位、14年5位、15年3位と順位を上げている。
成長市場である九州主要都市への展開を推進し、重点エリアとしている福岡県での事業展開加速に向けて、ふくおかフィナンシャルグループ<8354>傘下の福岡銀行との関係を強化している。14年3月には山口県内最大のオフィス街に立地する下関第一生命ビルディング(山口県下関市)を取得し、不動産賃貸事業の収益基盤を強化した。
不動産開発事業として「オービジョンクラス」シリーズに参入した。第1棟目が新下関駅南で始動し、事業規模約5億円で収益物件として販売する。第2棟目も山口県内で計画中である。
■引き渡し物件数によって四半期収益は変動
四半期別推移を見ると、15年2月期は売上高が第1四半期3億60百万円、第2四半期48億84百万円、第3四半期49億65百万円、第4四半期17億32百万円、営業利益が2億12百万円の赤字、6億50百万円、7億32百万円、8百万円、16年2月期は売上高が17億01百万円、45億10百万円、35億76百万円、30億40百万円、営業利益が2億32百万円、3億52百万円、3億83百万円、1億48百万円だった。引き渡し物件数によって四半期収益が変動する。
16年2月期は分譲マンション開発目的で取得した不動産の売却も寄与して15年2月期比増収だが、業容拡大に伴う人件費や販売費の増加で営業減益だった。売上総利益は同3.2%増加したが、売上総利益率は20.0%で同0.9ポイント低下した。販管費は10.9%増加し、販管費比率は11.4%で同0.4ポイント上昇した。ROEは16.4%で同4.9ポイント低下、自己資本比率は28.6%で同0.1ポイント上昇した。
配当は15年2月期の市場変更記念配当2円を落として年間8円(第2四半期末4円、期末4円)とした。配当性向は8.2%だった。利益配分に関しては、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、経営成績や財務状況の推移および今後の事業計画等を十分に勘案しながら配当を行うことを基本方針としている。
不動産分譲事業における引き渡し戸数は、分譲マンション6物件391戸(前々期比38戸減少)および分譲戸建38戸(同2戸増加)で、総引き渡し数は429戸(同36戸減少)だった。分譲マンション引き渡し戸数は期初計画370戸に対して21戸上回った。また分譲マンション開発目的で取得した不動産を売却した。
セグメント別売上高は、不動産分譲事業が同7.7%増の123億33百万円、不動産管理事業が同4.8%増の2億78百万円、不動産賃貸事業が同4.8%増の1億99百万円、その他(不動産仲介など)が同47.5%減の15百万円だった。不動産管理事業ではマンション管理戸数が2627戸(同488戸増加)と順調に増加した。
なお15年1月「オーヴィジョン下関海峡テラス」「オーヴィジョン広島パークサイド」「オーヴィジョン飯塚本町」プロジェクト、15年4月「オーヴィジョン新下関駅南」プロジェクト、15年5月「オーヴィジョン新山口駅ネクシア」「オーヴィジョン青山グランテラス」プロジェクト、15年6月「オーヴィジョン舞鶴」プロジェクト、15年8月「オーヴィジョン防府駅天神口」プロジェクト、15年11月「オーヴィジョン西小倉」プロジェクトが始動し、16年7月に「オーヴィジョン防府駅天神口」が完売している。
■17年2月期第2四半期累計は減収減益だが計画水準
10月11日発表した今期(17年2月期)第2四半期累計(3~8月)の連結業績は、売上高が前年同期比16.3%減の51億99百万円となり、営業利益が同52.5%減の2億77百万円、経常利益が同56.7%減の2億13百万円、純利益が同57.4%減の1億31百万円だった。
分譲マンション開発目的で取得した不動産の売却の一巡、建築コストの上昇、プロジェクト先行費用の増加などで減収減益だった。ただしほぼ計画水準である。売上総利益は同25.7%減少し、売上総利益率は18.4%で同2.4ポイント低下した。販管費は同3.7%減少したが、販管費比率は13.1%で同1.7ポイント上昇した。
不動産分譲事業における引き渡し戸数は分譲マンション159戸(前年同期比7戸減)および分譲戸建19戸(同1戸減)で総引き渡し数178戸(同8戸減)だった。不動産管理事業における管理物件数は2716戸(同577戸増)だった。セグメント別売上高は不動産分譲事業が同17.4%減の49億28百万円、不動産管理事業が同9.4%増の1億54百万円、不動産賃貸事業が同8.7%増の1億07百万円、その他(不動産仲介など)が同2.6倍の10百万円だった。
なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期22億81百万円、第2四半期29億18百万円、営業利益は39百万円、2億38百万円だった。
■17年2月期増収減益予想だが契約進捗率は高水準
今期(17年2月期)通期の連結業績予想については、前回予想(4月12日公表)を据え置いて、売上高が前期(16年2月期)比1.3%増の130億円、営業利益が同20.2%減の8億90百万円、経常利益が同21.4%減の7億50百万円、純利益が同16.7%減の5億円としている。配当予想は前期と同額の年間8円(第2四半期末4円、期末4円)で予想配当性向は10.3%となる。
建築コストの上昇、プロジェクト先行費用の増加、人件費や販売費の増加などを考慮して営業微減益予想としている。不動産分譲事業における引き渡し予定戸数は分譲マンション404戸(前期比13戸増加)および分譲戸建45戸(同7戸増加)で総引き渡し戸数は449戸(同20戸増加)である。なお分譲マンション引き渡し予定404戸に対して、第2四半期末時点の契約完了318戸、契約進捗率78.7%に達している。不動産管理事業におけるマンション管理戸数は2966戸(同339戸増加)の計画としている。
また分譲マンションプロジェクトについては、16年2月期末時点で、事業用地取得済プロジェクト20棟・計画戸数1309戸・総売上高約330億円(山口県内で9棟・583戸、福岡・佐賀・大分で8棟・581戸、熊本・宮崎で3棟・145戸)と、約3年分の供給物件を確保している。
■九州・山口エリアでのNO.1デベロッパーを目指す
中期経営戦略としては、九州・山口エリアでのNO.1デベロッパーを目指し、福岡県および九州主要都市への進出加速、九州・山口エリアでのマンション年間供給500戸体制構築、山口県での戸建住宅年間供給100戸体制の構築、ストック型ビジネスとなる不動産管理事業でのマンション管理戸数拡大、不動産賃貸事業での収益物件長期保有による収益基盤強化などを推進している。
事業展開の重点エリアとしている福岡市では、国家戦略特区に指定されたことも背景として、一段と人口増加傾向を強めることが予想される。アベノミクス「地方創生」戦略や日銀のマイナス金利政策に伴う住宅ローン金利低下も追い風となる。成長市場への事業展開を加速して中期的に収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度は2月末に実施
株主優待制度については16年2月期から開始した。毎年2月末日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してクオカード2000円分を贈呈する。
■株価は基調転換して戻り歩調、指標面の割安感に注目
株価の動きを見ると、安値圏500円近辺でのモミ合いから上放れの展開となった。17年2月期減益予想を織り込んで下値固めが完了した。
10月11日の終値534円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS81円08銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS638円44銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約33億円である。
日足チャートで見ると上向きに転じた25日移動平均線がサポートラインの形となり、週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。そして13週移動平均線が上向きに転じた。基調転換を確認した形だ。17年2月期減益予想は織り込み済みであり、指標面の割安感に注目して出直り展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)