エイジアは17年3月期2桁増収増益・連続増配予想

 エイジア<2352>(東2)はメール配信システムの大手である。eコマース関連分野を強化し17年3月期2桁増収増益・連続増配予想である。株価は安値圏モミ合いだが、調整一巡して反発展開が期待される。なお10月31日に第2四半期累計の業績発表を予定している。

■メール配信などe-CRMシステム「WEBCAS」シリーズが主力

 自社開発e-CRMシステムのWEBCASシリーズを提供するアプリケーション事業を主力として、システム受託開発やマーケティングコンサルティングなどのサービスソリューション事業も展開している。

 16年3月期の事業別売上高構成比はアプリケーション事業84%、サービスソリューション事業16%だった。なお17年3月期からサービスソリューション事業を分解し、事業セグメントをアプリケーション事業、コンサルティング事業、オーダーメイド開発事業とする。

 01年発売開始したメール配信システム「WEBCAS e-mail」は顧客の嗜好、属性、購買履歴などに基づいたOne to Oneメールを、世界トップレベルの最高300万通/時で送信することが可能な超高速性が強みである。通販企業、メーカー、生命保険、情報サービス会社など多様な業界の企業や官公庁に導入され、国内メール配信パッケージ市場でシェア1位である。

■WEBCASシリーズのラインナップ強化

 中期成長戦略として「メールアプリケーションソフトのエイジア」から、販売促進・マーケティング支援分野に事業領域を拡大して「eコマースの売上UPソリューションを世界に提供するエイジア」への発展を目指し、クラウドサービス(ASP、SaaS)の強化、新製品・サービス開発の推進、サービスソリューション事業の拡大に取り組んでいる。

 15年9月システムインテグレータの「SI Omni Channel Services」と「WEBCAS e-mail」を連携したオムニチャネルマーケティング・ソリューション開始、15年11月LINEビジネスコネクトを活用したセグメント抽出型メッセージ配信システム「WEBCAS taLk」発売、16年4月地方創生関連施策の推進や検証をサポートするCRMシステム「WEBCAS地方創生応援パック」発売、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)対応「WEBCAS e-mail for AWS」を発売した。

 16年6月には新製品マーケティングオートメーション「WEBCAS Auto Relations(ウェブキャス・オート・リレーションズ)」を発売した。ユーザーの行動に基づいた効果的なマーケティング・コミュニケーションを自動で実行できるBtoCのEC事業者向けマーケティング・プラットフォームである。

 WEBCASシリーズはメール配信システム「WEBCAS e-mail」を中心として、メール共有システム「WEBCAS mailcenter」などをラインナップに抱えるe-CRMアプリケーションシリーズである。16年8月にはWEBCASシリーズ導入企業が3000社を突破した。

 さらに「WEBCAS Auto Relations」の今後の開発戦略については、16年にはSTEP2としてチャネルの複数化・多様化、定性分析による顧客セグメント化、17年にはSTEP3として人工知能「将来予測エンジン」の搭載または連携、IOT技術を活用したビッグデータ対応を計画している。

■M&A・アライアンスも積極活用

 M&A・アライアンス戦略では、12年4月ECサイト構築・運営事業拡大に向けてシステムインテグレータ<3826>と資本・業務提携、12年12月メールマガジン制作・運用支援のグリーゼと資本・業務提携、13年10月メールマガジン戦略立案・企画・制作・分析サービスのFUCAを連結子会社化、14年1月Webサイトソーシャル化支援サービスのフィードフォース社と業務提携、15年11月調査・コンサルティングサービスのwizpraと業務提携した。

 16年1月ダイレクトマーケティング専門エージェンシーのフュージョンと業務提携、16年4月米国トレジャーデータ社の日本法人トレジャーデータが16年4月提供開始した「TREASURE DMP(Private Data Management Platform)」と「WEBCAS e-mail」が連携、CMS開発・販売のミックスネットワークと業務提携、16年6月電通ダイレクトフォースと業務提携、16年7月米国アクシオムコーポレーションの日本法人アクシオムジャパンのデータコネクトサービス「Acxiom Connect」と「WEBCAS e-mail」が連携した。

 10月12日には「WEBCAS e-mail」が、セラン(東京都)のマーケティングツール「xross data(クロスデータ)」と連携開始したと発表している。

■デジタルポスト社と業務提携して新サービス

 15年10月にはWebサービス「Digital POST」を提供するデジタルポスト社と業務提携した。デジタルポスト社は日本郵便のハイブリッド郵便サービスを事業化するため11年に設立され、ネットやアプリから郵便やDMを作成・配送できるユニークなサービスを提供している。

 15年12月にはWEBCASシリーズの新サービスとして、インターネット上からDM(ダイレクトメール)やハガキ、手紙などの作成から郵送までを行えるDM配送サービス「WEBCAS DM」の発売を開始した。デジタルポスト社から技術供与を受けた。

■人工知能(AI)を活用した新サービス開発にも注力

 15年10月人工知能(AI)技術や自然言語解析技術を活用したマーケティングソリューションの共同研究・開発を目的として、人工知能型「顧客の声」分析エンジンを提供するメタデータと資本・業務提携し、16年2月メタデータがAIを活用した高速マッチングエンジン「xTech(エックステック)」を販売開始した。実用性に乏しい機械学習アルゴリズム(ディープラーニング)や、処理が遅延しがちな従来型マッチングエンジンの問題を解決する超高速マッチングエンジンである。

 16年6月には人工知能アルゴリズムを駆使した感性分析型テキストマイニングシステム「WEBCAS Sense Analyzer」を発売した。メタデータから技術供与を受けた。

■海外はマレーシアを強化

 海外は15年12月マレーシアでマーケティング支援業務を行うMarvelous International社を子会社化した。購買力の高い富裕層や中間所得層が拡大する成長市場マレーシアにおける事業を強化する。

■下期の構成比が高い収益構造

 四半期別推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期2億22百万円、第2四半期2億65百万円、第3四半期2億67百万円、第4四半期2億77百万円、営業利益が14百万円、51百万円、54百万円、59百万円、16年3月期は売上高が2億51百万円、2億90百万円、2億83百万円、3億21百万円、営業利益が25百万円、73百万円、55百万円、86百万円だった。ストック型で下期の構成比が高い収益構造である。

 16年3月期は利益率の高いクラウドサービスが好調に推移し、15年3月期比で計画超の2桁増収増益だった。売上総利益は同16.0%増加し、売上総利益率は65.4%で同2.8ポイント上昇した。販管費は同9.1%増加したが、販管費比率は44.5%で同0.8ポイント低下した。ROEは15.6%で同3.2ポイント上昇、自己資本比率は81.3%で同2.3ポイント上昇した。配当は同3円増配の年間18円(期末一括)で配当性向は22.2%である。利益配分については、新規事業投資や研究開発投資等に必要な内部留保は従来どおり行いつつ、配当金による利益配分を行っていくことを基本方針としている。

 セグメント別に見ると、アプリケーション事業は売上高が同12.5%増の9億62百万円、売上総利益率が同3.0ポイント上昇の73.0%、営業利益(連結調整前)が同20.9%増の4億51百万円だった。重点分野のクラウドサービス(ASP・SaaS)売上高は同19.0%増加の6億59百万円だった。サービスソリューション事業は売上高が同4.3%増の1億82百万円、売上総利益率が同1.3ポイント低下の25.2%、営業利益が同50.9%減の6百万円だった。

■17年3月期第1四半期はクラウドサービス好調で大幅増益

 今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は売上高が前年同期比13.7%増の2億85百万円、営業利益が同81.3%増の46百万円、経常利益が同84.4%増の49百万円、純利益が同83.0%増の32百万円だった。利益率や売上継続性の高いクラウドサービスが好調だった。売上総利益は同21.0%増加し、売上総利益率は64.7%で同3.9ポイント上昇した。販管費は同8.9%増加したが、販管費比率は48.5%で同2.1ポイント低下した。

 事業セグメント別に見ると、アプリケーション事業は売上高が同15.1%増の2億42百万円で売上総利益率が同1.7ポイント上昇の72.5%、コンサルティング事業は売上高が同13.9%増の37百万円で売上総利益率が同11.1ポイント上昇の15.4%、オーダーメイド開発事業は売上高が同29.5%減の5百万円で売上総利益率が同29.1ポイント上昇の60.3%だった。なお重点分野としているクラウドサービスの売上高は同16.7%増の1億73百万円、コンサルティングサービスの売上高は同7.8%増の27百万円だった。

■17年3月期2桁増収増益・連続増配予想

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月10日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比10.4%増の12億65百万円、営業利益が同10.7%増の2億65百万円、経常利益が同11.2%増の2億70百万円、純利益が同11.8%増の1億80百万円としている。配当予想は同2円増配の年間18円(期末一括)で予想配当性向は22.9%となる。

 BtoC企業向けマーケティングオートメーションツール「WEBCAS Auto Relations」や、人工知能アルゴリズムを駆使した感性分析型テキストマイニングシステム「WEBCAS Sense Analyzer」など、新製品投入も寄与してアプリケーション事業が好調に推移する。戦略的投資として、クラウドサービス提供サーバー等のインフラ増強18百万円、ESOPによるモチベーション戦略21百万円、新卒採用を含めた人材投資23百万円、「WEBCAS e-mail for AWS」提供環境構築1百万円、マレーシア市場開発7百万円、合計約70百万円を計画しているが、増収効果で先行投資費用を吸収する。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が22.5%、営業利益が17.4%、経常利益が18.2%、純利益が17.8%と低水準の形だが、ストック型で下期の構成比が高い収益構造のためネガティブ要因とはならない。通期ベースでも好業績が期待される。

■株主優待制度は3月末に実施

 株主優待制度については、毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。15年3月期末から実施した。

■株価は調整一巡して反発期待

 株価の動き(8月1日付でマザーズから東証2部に市場変更)を見ると、主要株主フュージョンパートナーによる保有株売却で6月の年初来高値3320円から急反落し、その後は1700円~1900円近辺でモミ合う形だ。ただし調整一巡感を強めている。

 10月14日の終値1712円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS87円50銭で算出)は19~20倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS556円33銭で算出)は3.1倍近辺である。時価総額は約40億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、調整一巡して反発展開が期待される。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る