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日本アジアグループは底打ちして基調転換の動き、0.4倍近辺の低PBRも見直して戻り試す
- 2016/10/18 08:19
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本アジアグループ<3751>(東1)は空間情報コンサルティング事業、グリーンエネルギー事業、ファイナンシャルサービス事業を展開している。子会社の国際航業は10月19日~21日開催「モバイル&ウェアラブル2016」および10月31日~11月1日開催「第15回世界風力エネルギー会議2016東京」に出展する。17年3月期は先行投資負担で営業減益予想だが、特別損失が一巡して最終増益予想である。株価は底打ちして基調転換の動きを強めている。景気対策関連、防災関連、再生可能エネルギー関連として注目され、0.4倍近辺の低PBRも見直して戻りを試す展開が期待される。
■社会インフラ・環境・エネルギー関連に経営資源を集中
社会インフラ・環境・エネルギー関連にグループ経営資源を集中して、空間情報コンサルティング事業(国際航業の社会インフラ関連事業)、グリーンエネルギー事業(太陽光発電受託・売電事業、土壌・地下水保全コンサルティング事業、戸建住宅・不動産事業)、およびファイナンシャルサービス事業(証券業)を展開している。
16年3月期のセグメント別売上高構成比は空間情報コンサルティング57%、グリーンエネルギー33%、ファイナンシャルサービス10%、営業利益(連結調整前)構成比は空間情報コンサルティング42%、グリーンエネルギー45%、ファイナンシャルサービス13%だった。
グループ再編を推進し、グリーンエネルギー事業のJAG国際エナジーとグリーンプロパティ事業の国際ランド&ディベロップメントが合併(15年7月)して新JAG国際エナジーが発足した。またファイナンシャルサービス強化に向けて日本アジア証券にファイナンシャルサービス部門の子会社を集約した。16年4月には兵庫県で戸建住宅事業を展開している連結子会社KHCを株式交換で完全子会社化した。
15年12月には国際航業が、メタウォーター<9551>を代表企業とする特別目的会社「あらおウォーターサービス」に参画し、荒尾市企業局と特別目的会社が「荒尾市水道事業等包括委託」業務委託契約を締結した。改正PFI法の「民間事業者による提案制度」に基づいて事業化されたもので、水道事業に関する業務を包括的に民間委託する全国に先駆けた先進的事業である。16年4月業務開始した。
なお子会社の国際航業は、10月19日~21日開催「モバイル&ウェアラブル2016」および10月31日~11月1日開催「第15回世界風力エネルギー会議2016東京」に出展する。
■再生可能エネルギー関連では流水式水力発電にも参入
再生可能エネルギー関連事業では14年10月JAG国際エナジーが、東京都が創設した官民連携再生可能エネルギーファンドの運営事業者に選定された。また14年12月にはシーベルインターナショナル(東京都)の経営権を取得した。アジア・アフリカ各国に事業展開している同社の流水式超低落差型マイクロ水力発電システム(商品名:ストリーム)を活用し、マイクロ水力発電事業を再生可能エネルギー関連事業の第2の柱に育成する方針だ。
なお国内の太陽光発電事業に関する進捗状況は、16年3月末時点で売電事業の稼働・竣工が74.8MW(49ヶ所=国際航業15ヶ所+JAG国際エナジー34ヶ所)、案件確保が89.4MW、受託事業の稼働・竣工が129.8MW、案件確保が5.9MW、総合計が299.9MWである。
■空間情報コンサルティングは第4四半期の構成比が高い収益構造
四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期124億60百万円、第2四半期176億00百万円、第3四半期181億62百万円、第4四半期276億81百万円、営業利益が1億45百万円、11億47百万円、10億07百万円、30億53百万円、16年3月期は売上高が155億14百万円、194億05百万円、187億75百万円、218億30百万円、営業利益が3百万円、10億60百万円、2億79百万円、25億45百万円だった。
空間情報コンサルティング事業は公共事業関連が主力のため第4四半期の構成比が高い収益構造である。ファイナンシャルサービス事業は株式市場の動向の影響を受けやすい。16年3月期は空間情報コンサルティング事業とグリーンエネルギー事業が好調だったが、ファイナンシャルサービス事業が想定以上に落ち込み、特別損失計上も影響して15年3月期比減収減益だった。
売上総利益は同7.8%減少し、売上総利益率は31.1%で同2.5ポイント低下した。販管費は同2.6%減少し、販管費比率は26.0%で同0.5ポイント低下した。特別損失では減損損失が減少し、関係会社株式売却損が一巡したが、おきなわ証券での偶発損失引当金繰入額を計上した。ROEは1.6%で同14.0ポイント低下、自己資本比率は21.9%で同0.2ポイント上昇した。
配当は年間30円(第3四半期末20円=東証1部への市場変更記念特別配当、期末10円)で配当性向は200.5%だった。利益配分については業績に対応した水準であること、中長期的な視点から安定的に継続することを基本に、競争力、事業環境、財務体質等を勘案して総合的に決定することを基本方針としている。当面の配当性向は10%~20%を目途としている。
空間情報コンサルティングは受注高が同2.0%増の421億46百万円、売上高が同1.6%増の426億81百万円、営業利益(連結調整前)が同26.4%増の17億46百万円だった。グリーンエネルギーは受注高が同26.7%減の179億31百万円、売上高が同8.1%増の250億07百万円、営業利益が同10.9%増の18億56百万円だった。稼働済み発電所は49ヶ所以上、合計74MWを超える規模となった。ファイナンシャルサービスは売上高が同27.5%減の77億95百万円、営業利益が同78.9%減の5億51百万円だった。
■17年3月期第1四半期は赤字
今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比20.2%減の123億75百万円で、営業利益が10億92百万円の赤字(前年同期は3百万円の黒字)、経常利益が13億34百万円の赤字(同3億77百万円の赤字)、純利益が18億16百万円の赤字(同7億79百万円の赤字)だった。グリーンエネルギー事業は増益だったが、空間情報コンサルティング事業とファイナンシャルサービス事業の収益が悪化した。
売上総利益は同27.9%減少し、売上総利益率は28.5%で同3.1ポイント低下した。販管費は同5.5%減少したが、販管費比率は37.4%で同5.9ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化(前期差益16百万円、今期差損8百万円)した。特別利益では補助金収入85百万円を計上したが、特別損失で固定資産圧縮損85百万円、和解金80百万円を計上した。
セグメント別に見ると、空間情報コンサルティング事業は受注高が同9.2%減の158億46百万円、売上高が同5.9%減の66億45百万円、営業利益(連結調整前)が14億45百万円の赤字(前年同期は8億47百万円の赤字)だった。高水準だった前期の反動、進捗遅れ案件、販管費の増加が影響した。
グリーンエネルギー事業は受注高が同59.2%減の25億52百万円、売上高が同29.4%減の42億10百万円、営業利益が同14.8%増の5億12百万円だった。受託事業の大型案件の反動で受注高、売上高とも減少したが、利益率の高い注文住宅の増収および売電事業の拡大で増益だった。なお稼働済み発電所は50ヶ所以上、合計76MWを超える規模となった。
ファイナンシャルサービス事業は売上高が同38.9%減の15億10百万円、営業利益が1億11百万円の赤字(同4億80百万円の黒字)だった。株式市場低迷や円高による預かり資産評価目減りが影響した。
■17年3月期は先行投資負担だが、特別損失一巡で最終増益予想
今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比2.0%増の770億円、営業利益が同28.0%減の28億円、経常利益が同49.3%減の13億円、純利益が同2.4倍の10億円としている。先行投資負担で営業減益・経常減益だが、純利益は特別損失が一巡して増益予想である。配当予想は年間10円(期末一括)としている。前期の東証1部への市場変更記念特別配当20円を落として同20円減配の形である。予想配当性向は27.6%となる。
セグメント別の計画は、空間情報コンサルティング事業の売上高が同2.9%増の439億円で営業利益(連結調整前)が同42.7%減の10億円、グリーンエネルギー事業の売上高が同0.4%減の249億円で営業利益が同19.2%減の15億円、ファイナンシャルサービス事業の売上高が同5.2%増の82億円で営業利益が同27.1%増の7億円としている。
空間情報コンサルティングは高水準の受注獲得や新規事業育成による民間・海外展開で増収だが、投資費用や販管費負担が先行して減益見込みとしている。グリーンエネルギーは大型案件の反動で売上高は横ばい、電源開発事業投資(風力・バイオマス)に伴う費用増加で減益見込みとしている。ファイナンシャルサービスは仲介店舗拡大などの収益基盤強化と相場環境のボトムアウトで増収増益見込みとしている。
■中期経営計画ではROE12%以上目標
中期経営計画では、16年度~20年度を「成長DNA醸成ステージ」と位置づけ、経営目標値として20年度売上高1400億円~1600億円、営業利益110億円~130億円、ROE12%以上を掲げている。
成長領域である「G空間×ICT」「まちづくり」「気候変動対策」分野への取り組みを強化する方針だ。財務面ではROE向上に向けて総資産利益率の向上および財務レバレッジ効果の追求を推進する。
■自己株式取得は終了
9月1日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限25万株、取得価額総額の上限1億円、取得期間16年9月2日~16年9月30日)については、9月23日時点の累計で取得株式総数25万株、取得価額総額9179万500円となって終了した。
■株価は底打ちして基調転換の動き
株価の動きを見ると、8月下旬~9月上旬の年初来安値圏350円台から切り返しの動きを強めている。
10月17日の終値386円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS36円18銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS963円28銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約107億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線を突破し、続いて26週移動平均線突破の動きを強めている。底打ちして基調転換する動きのようだ。低PBRも見直して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)