- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- TACは17年3月期大幅増益・増配予想、割安感も見直して戻り歩調
TACは17年3月期大幅増益・増配予想、割安感も見直して戻り歩調
- 2016/10/19 08:18
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
TAC<4319>(東1)は「資格の学校」運営を主力に、M&Aも活用して教員、医療、介護、語学など新領域への事業展開を強化している。17年3月期大幅増益・増配予想である。株価は徐々に下値を切り上げている。指標面の割安感も見直して戻り歩調だろう。なお11月4日に第2四半期累計業績発表を予定している。
■財務・会計分野を中心に「資格の学校」を運営
財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)、その他分野(情報・国際、医療・福祉など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営している。また法人研修事業、出版事業、人材事業も展開している。
■M&Aも積極活用して新事業領域への展開を強化
財務・会計、経営・税務、法律など既存領域の市場が縮小傾向のため、中期成長に向けて、オンライン教育サービス(Webなどの通信系講座)や、M&Aも積極活用して教員、医療、介護、語学など新領域への事業展開を強化している。
13年12月増進会出版社(子会社のZ会が通信教育事業などを展開)と資本業務提携し、14年8月増進会出版社が第2位株主となって資本関係を強化した。
14年6月レセプト点検・整理業務など医療機関事務分野の人材サービスを展開するクボ医療(兵庫県加古郡)と、医療事務に関する労働者派遣事業・レセプト作成請負業務を展開する医療事務スタッフ関西(兵庫県神戸市)を子会社化、14年11月関西4校舎で「医療事務講座」を開講、14年12月子会社TAC医療事務スタッフを設立して関東エリアでも医療事務スタッフ派遣事業や診療報酬請求事務請負事業を開始した。
14年11月トーハン・コンサルティングと業務提携、15年1月トーハン・コンサルティングの介護系資格取得教室を当社の主要校舎において「介護教室ケアマイスター TAC教室」の名称で開講した。15年1月「相続アドバイザー講座」開講を発表した。15年から相続税および贈与税の税制改正が行われたため注目度が高い試験だ。
15年3月一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)公認で、日本初の大規模公開オンライン講座提供サイト「gacco(ガッコ)」に対して無料の実務・資格講座の提供を開始した。15年4月日本商工会議所と連携して「高等学校日商簿記学習支援プログラム」を開始した。
15年7月TMMCの株式12.5%を取得して資本業務提携した。当社グループの医療医務人材サービスと、TMMCの病院経営・業務改善コンサルテーションサービスおよびレセプトチェックサービスを融合し、病院・診療所・クリニック等への販路拡大を推進する。15年9月パイプドビッツと協業で「ストレスチェック義務化トータルソリューション」サービスの提供を開始した。改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化、15年12月1日施行)に対応したサービスである。
16年4月旅行ガイド本シリーズ「おとな旅プレミアム」発刊を発表した。出版事業において資格試験とは別の分野に進出し、事業領域を拡大する。
■季節要因で四半期業績は変動
四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係などで季節変動の特徴がある。第2四半期(7~9月)と第3四半期(10~12月)の公認会計士・税理士講座は、翌年受験のための受講申込が集中する時期となるため、現金ベース売上高が突出して多くなるとともに、翌四半期に向かって前受け金として繰り越されることから、発生ベース売上高の増加が少なくなる傾向がある。
また第4四半期(1~3月)から第1四半期(4~6月)にかけては、夏・秋の本試験時期に向けて全コースが出揃う時期にあたり、稼働率の上昇から前受金戻入額が増加することを通じて発生ベース売上高が増加する傾向にある。こうした売上の傾向に対して、売上原価や営業費用は毎月一定額計上されるため、四半期ごとの営業利益が変動しやすい。
四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期54億04百万円、第2四半期49億56百万円、第3四半期43億91百万円、第4四半期47億84百万円、営業利益が5億75百万円、2億12百万円、4億28百万円の赤字、2億19百万円の赤字、16年3月期は売上高が55億92百万円、50億04百万円、45億77百万円、48億34百万円、営業利益が8億08百万円、2億44百万円、3億18百万円の赤字、1億29百万円の赤字だった。
16年3月期は減損損失計上で純利益の伸びは小幅だが、消費増税前駆け込み申込の反動影響が一巡して増収、売上原価における賃借料や人件費の減少、販管費における賃借料の減少などのコスト削減効果も寄与して大幅営業増益・経常増益だった。
差引売上総利益は同6.7%増加し、差引売上総利益率は39.4%で同1.6ポイント上昇した。販管費は同0.4%増にとどまり、販管費比率は36.4%で同0.7ポイント低下した。営業外収益では投資有価証券運用益が減少し、特別損失では減損損失が増加した。ROEは4.8%で同0.1ポイント低下、自己資本比率は21.0%で同0.4ポイント上昇した。配当は同1円増配の年間2円(第2四半期末1円、期末1円)で配当性向は17.3%だった。
セグメント別(前受金・全社費用等調整前)の動向を見ると、個人教育事業は売上高が同4.1%増の123億33百万円で営業利益が99百万円の赤字(前々期は10億44百万円の赤字)、法人研修事業は売上高が同6.2%増の44億40百万円で営業利益が同14.2%増の12億08百万円、出版事業は売上高が同19.1%増の27億64百万円で営業利益が同13.0%増の6億12百万円、人材事業は売上高が同14.7%増の6億23百万円で営業利益が同3.3倍の21百万円だった。
受講者数は、個人受講者が同12.9%増の14万6888人、法人受講者が同7.7%増の6万9471人、合計が同11.2%増の21万6359人だった。公務員およびマスコミ・就職分野が大幅増加した。出版事業では初のフルカラー書籍(簿記・宅建士・FP・社労士など)が好調に推移し、独学道場(独学者向けオリジナル講座)の商品ラインナップ拡大、資格以外分野の書籍出版などが寄与した。
■17年3月期第1四半期は営業減益
今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.4%増の57億25百万円、営業利益が同6.6%減の7億55百万円、経常利益が同7.4%減の7億46百万円、純利益が同12.1%増の5億56百万円だった。外注費や広告宣伝費の増加で営業減益だったが、発生・現金ベースとも売上高が増加して前期からの好調な流れを維持している。
差引売上総利益は同0.3%増加し、差引売上総利益率は45.8%で同1.0ポイント低下した。販管費は同3.4%増加し、販管費比率は32.6%で同0.3ポイント上昇した。営業外収益では投資有価証券運用益が減少した。営業外費用では持分法投資損失が減少した。特別損失では投資有価証券評価損34百万円を計上したが、特別利益で受取和解金1億20百万円を計上した。
セグメント別(発生ベース・全社費用等調整前)に見ると、個人教育事業は売上高が同1.3%減の36億32百万円で営業利益が同4.6%増の5億27百万円、法人研修事業は売上高が同8.6%減の11億48百万円で営業利益が同15.2%減の3億43百万円、出版事業は売上高が同50.8%増の7億87百万円で営業利益が同1.0%増の1億56百万円、人材事業は売上高が同16.3%増の1億64百万円で営業利益が22百万円(前年同期は5百万円の赤字)だった。
個人教育事業は発生ベースでは1.3%減収だが、現金ベースでは1.6%増収と好調に推移し、外注費や賃借料などのコストコントロールで営業増益だった。法人研修事業は受託訓練の需要減などで減収減益だった。出版事業はフルカラー書籍(簿記・宅建士・FP・社労士など)が好調に推移したが、制作費や販促費の増加で営業微増益にとどまった。人材事業は求人広告売上などが増加し、増収効果で営業損益が改善した。医療事務関連人材売上高は前期並みだった。
受講者数は個人受講者が同2.4%増の5万392人、法人受講者が同4.9%増の2万6728人、合計が同3.3%増の7万7120人だった。公務員講座が同4.3%増、簿記検定講座が同10.9%増、宅地建物取引士が同14.0%増、FP講座が同9.6%増と大幅増加した。一方で税理士講座が同11.0%減、司法書士講座が同10.3%減、マスコミ・就職講座が同11.35減となった。
■17年3月期通期は大幅増益・増配予想
今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月13日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比2.5%増の205億円、営業利益が同37.0%増の8億30百万円、経常利益が同21.2%増の7億70百万円、そして純利益が同2.6倍の5億50百万円としている。配当予想は同2円増配の年間4円(第2四半期末2円、期末2円)で予想配当性向は13.5%となる。
新規開講講座の早期収益化、語学事業への注力、オンラインスクールによる売上創出、医療系人材事業の推進、M&A案件への積極的取り組み、オンラインスクールを利用した業務内製化によるコスト削減、スクール規模の適正化、その他コストの継続的な見直しなどに取り組み大幅増益予想である。差引売上総利益率は同0.4ポイント上昇の39.8%、販管費比率は同0.7ポイント低下の35.7%の計画としている。受講者数が回復傾向であり、出版事業の好調なども寄与して好業績が期待される。
■株価は徐々に下値切り上げ、指標面の割安感を見直して戻り歩調
株価の動きを見ると、6月の直近安値176円から7月安値184円、8月安値184円、9月安値188円と徐々に下値を切り上げ、9月中旬以降は200円近辺で推移している。
10月18日の終値200円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS29円72銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間4円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS245円17銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約37億円である。
日足チャートで見ると上向きに転じた25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。そして戻りを押さえていた52週移動平均線突破の動きを強めている。指標面の割安感を見直して戻り歩調だろう。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)