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アーバネットコーポレーションは戻り歩調に変化なく4月の年初来高値試す、17年6月期2桁増益・連続増配予想
- 2016/10/24 07:13
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アーバネットコーポレーション<3242>(JQ)は東京23区を中心に投資用・分譲用マンション開発・販売事業を展開している。需要が高水準で17年6月期2桁増益・連続増配予想である。株価は戻り歩調に変化なく、指標面の割安感も見直して4月の年初来高値を試す展開だろう。なお11月10日に第1四半期業績発表を予定している。
■東京23区中心に投資用マンション開発・販売
東京23区中心に投資用・分譲用マンション開発・販売事業を展開している。徹底したアウトソーシングで固定費を極小化していることが特徴である。16年6月期末の役職員総数は50名で15年6月期末比7名増加、16年6月期の販管費比率は7.4%で同0.4ポイント低下した。
15年7月連結子会社アーバネットリビングが操業した。当社は投資用ワンルームマンション開発・1棟販売や分譲マンション開発などBtoB卸売、アーバネットリビングは当社開発物件の戸別販売、他社物件の買取再販、マンション管理・賃貸などBtoC小売を基本事業とする。
自社開発物件ブランドは、ワンルームマンションの「アジールコート」、コンパクトマンションの「アジールコフレ」、ファミリーマンションの「グランアジール」、戸建住宅の「アジールヴィラ」である。
■開発物件の分野を拡大
16年3月には、最近の東京23区における事業用地購入の環境、ならびに将来の不動産市場の環境を考慮し、これらへの積極対応として開発物件の分野拡大を発表した。
当社グループが展開している開発地域(東京23区駅10分以内に特化)の事業用地については、都心への人口流入や開発の一極集中による価格上昇もあり、優良事業用地の確保が難しい状況となっている。こうした環境に対応するため、従来は投資用ワンルームマンション用地として取得しなかった狭小用地についても、アパートや戸建住宅として開発する。川崎市や横浜市など人口増加・優良地域への開発エリアの拡大、売上総利益率安定化に向けた分譲物件開発の平準化などの施策に加えて、開発物件分野拡大による業績の向上を目指す方針だ。
■海外投資家への直接販売強化
また投資意欲旺盛な台湾・シンガポール・香港・中国本土の海外投資家への直接販売など販売手法の多様化も推進している。
14年7月売買契約締結した投資用ワンルームマンション「アジールコート銀座イースト」が海外投資家への直接販売第一弾となり、14年11月投資用ワンルームマンション「アジールコート新宿」の売買契約を締結、15年2月投資用ワンルームマンション「AXAS大森西アジールコート」店舗1戸の売買契約を締結した。15年10月には投資用ワンルームマンション「アジールコート麻布十番」(仮称、16年12月末竣工予定、56戸うち店舗1戸)について、東急リバブルソリューションン事業本部の仲介で海外法人との売買契約が成立した。
また15年12月、投資用ワンルームマンション「錦糸町IVPJ」(仮称、16年6月竣工、96戸)について国内法人への1棟販売が確定した。売上計上は17年6月期予定で本物件取引は信託受益権売買としている。16年1月には投資用ワンルームマンション「芝公園PJ」(仮称、16年12月竣工予定、56戸)売却が確定した。国内個人投資家への1棟販売で売上計上は17年6月期予定である。
16年4月には台湾投資家への当社の浸透を図ることを目的として、アンビシャス・コンサルタント・インターナショナル(台湾台北市)が台湾在住の投資家を対象に日本の不動産を紹介する拠点として開設する「M.I.J.サロン」(台北市)に当社常設ブースを設置した。
■物件売上計上で四半期業績が変動する収益構造
15年6月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(非連結)29億47百万円、第2四半期(非連結)18億84百万円、第3四半期(連結)53億91百万円、第4四半期(連結)16億88百万円、営業利益は3億63百万円、1億33百万円、9億51百万円、2億05百万円だった。
物件売上計上で四半期収益は変動しやすい収益構造である。また固定費比率が低いため、利益の出やすい収益構造である。15年6月期の売上総利益率は21.7%で14年6月期(非連結)比2.9ポイント上昇、販管費比率は7.8%で同0.3ポイント上昇した。またROEは21.1%、自己資本比率は32.6%、配当性向は31.3%だった。配当性向についての基本方針は、従来は当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の30%を配当するとしていたが、16年6月期より当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の35%を配当するとした。
■需要高水準で16年6月期は大幅増収増益
前期(16年6月期)連結業績は売上高が前々期(15年6月期)比48.6%増の177億04百万円、営業利益が同21.3%増の20億05百万円、経常利益が同23.3%増の17億20百万円、純利益が同30.5%増の11億39百万円だった。事業別売上高は不動産開発販売が同35.0%増の157億55百万円、不動産仕入販売が17億76百万円(前々期は96百万円)、その他が同20.6%増の1億72百万円だった。なお15年7月操業の連結子会社アーバネットリビングは黒字だった。
自社開発物件は前々期からの繰越物件2棟・107戸を含む投資用ワンルームマンション15棟・658戸(前々期は投資用ワンルームマンション11棟・507戸およびコンパクトマンション1棟・47戸)と分譲戸建物件4棟の合計662戸を売上計上した。さらに用地転売2物件、他社物件買取再販1棟・30戸と戸別7戸を売上計上した。自社開発投資用ワンルームマンションのうち2棟・67戸が海外法人、1棟・41戸が国内法人への一括販売だった。また前々期取得したアリシアコート八丁畷(32戸)に続き、自社開発物件であるアジールコート品川中延(64戸)およびアリシアコート多摩川(19戸)を自社保有収益物件として取得した。
売上総利益は同28.4%増加したが、売上総利益率は18.7%で同3.0ポイント低下した。粗利益率の低い土地転売や買取再販の大幅増収が影響した。販管費は同41.1%増加したが、販管費比率は7.4%で同0.4ポイント低下した。増収効果で販管費増加を吸収した。ROEは20.8%で同0.3ポイント低下、自己資本比率は30.9%で同1.7ポイント低下した。営業外費用では支払手数料が減少(前々期83百万円、前期59百万円)したが、投資有価証券売却損31百万円を計上した。配当は同3円増配の年間16円(第2四半期末7円、期末9円)で配当性向は35.1%だった。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期17億55百万円、第2四半期61億04百万円、第3四半期32億円、第4四半期66億45百万円、営業利益は93百万円、8億21百万円、1億64百万円、9億27百万円だった。
■17年6月期も2桁増益・連続増配予想
今期(17年6月期)の連結業績予想(8月9日公表)は売上高が前期(16年6月期)比1.7%増の180億円、営業利益が同14.7%増の23億円、経常利益が同10.4%増の19億円、純利益が同11.5%増の12億70百万円としている。配当予想は同2円増配の年間18円(第2四半期末9円、期末9円)で予想配当性向は35.4%となる。
売上計上は自社開発物件12棟・599戸(16年6月期の分譲戸建4棟含む合計662戸に対して63戸減少)の計画である。当初は15棟・713戸を予定していたが、うち2物件(62戸)が工期長期化で18年6月期の売上計上に後ズレし、1物件(52戸)を自社保有収益物件とすることにした。ただし12棟のうち4棟が国内外法人ならびに個人への一括直接販売のため、売上高は前期比微増となる見込みだ。
売上総利益率は同2.7ポイント上昇の21.4%、販管費比率は同1.2ポイント上昇の8.6%の想定である。国内外法人ならびに個人への一括直接販売が増加するため売上総利益率が上昇し、販管費の増加を吸収して2桁増益予想である。
低金利継続や相続税対策による不動産投資見直しなどを背景に、海外投資家も加わって投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛である。中期的にも収益拡大基調が期待される。
■株価は戻り歩調に変化なく4月の年初来高値試す
株価の動きを見ると、9月15日の戻り高値344円後は330円近辺でもみ合う展開だ。上げ一服の形だが自律調整の範囲だろう。
10月21日の終値332円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS50円85銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は5.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS234円60銭で算出)は1.4倍近辺である。時価総額は約83億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が接近して再動意のタイミングだ。戻り歩調に変化なく、指標面の割安感も見直して4月の年初来高値366円を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)