京進はモミ合い上放れて年初来高値更新、17年5月期第1四半期2桁増収増益

 京進<4735>(東2)は京都・滋賀エリア地盤の学習塾事業を主力に、日本語教育事業、幼児教育事業、英会話事業、保育事業も展開して業容を拡大している。17年5月期第1四半期は2桁増収増益だった。通期も生徒数の順調な増加や新規事業分野の伸長で2桁増収増益・連続増配予想である。教育ニーズ多様化がビジネスチャンスとなって中期成長も期待される。株価はモミ合いから上放れて年初来高値更新の展開となった。指標面の割安感も見直し材料であり、15年6月高値が視野に入りそうだ。

■京都・滋賀エリア地盤の学習塾事業が主力

 京都・滋賀エリアを地盤とする小中高生対象の集合学習塾「京進」(小中部、高校部)および個別指導教室「京進スクール・ワン」の学習塾事業を主力としている。個別指導教室「京進スクール・ワン」はFCによる展開を強化している。海外での日本人子女向け学習塾サービスはドイツ、米国、中国に展開している。

 主力の学習塾事業は「自ら学ばせる指導」の徹底や、脳科学に基づく独自学習法「リーチングメソッド(自立型人間育成メソッド)」などを特徴として、インターネット映像授業「京進e予備校@will」やオンライン個別指導「e-DES(イーデス)」も実施している。

 さらに新規事業分野として、日本語教育事業・国際人材交流事業、幼児教育事業「京進ぷれわん」、英会話事業「ユニバーサルキャンパス」、保育事業などの教育関連分野に事業展開して業容を拡大している。

 成長分野と位置付けている日本語教育事業・国際人材交流事業は12年8月設立の京進ランゲージアカデミーが展開している。15年1月ミャンマー・ヤンゴン校(持分法適用関連会社のKYOSHIN JETCが運営)開校、15年4月華聯学院京都校の営業権取得、16年4月京進ランゲージアカデミー名古屋北校開校、16年6月神戸日本語学院の事業を譲り受けた。

 保育事業は、近畿エリアで当社および11年9月設立子会社HOPPA、東京・神奈川エリアで14年8月子会社化したビーフェアおよび16年4月子会社化した有限会社たまプラーザベビールームが保育園を運営している。小規模認可保育施設を中心に積極展開している。また16年6月学童保育の「THE HOPPA ROYAL KIDS」を開設した。

 報告セグメント(16年5月期から区分変更)は、第1教育事業(小中高生対象の集合学習塾および個別指導教室の運営、FC事業)、第2教育事業(日本国内における外国人留学生対象の日本語教育事業、日本国内での就労を希望する専門知識のある外国人人材を日本企業へ紹介する国際人材交流事業、リーチングメソッドをベースとした研修サービス事業)、第3教育事業(幼児教育事業、英会話事業、保育事業)としている。

 16年5月期セグメント別売上高構成比(連結調整前)は第1教育事業が82%(15年5月期88%)、第2教育事業が6%(同5%)、第3教育事業が12%(同7%)だった。16年5月期末のグループ全体拠点数は、第1教育事業が個別指導教室数「京進スクール・ワン」243教室(うちFC106教室)および「京進」小中部76校・高校部11校の合計331拠点、第2教育事業が日本語学校6校、第3教育事業が英会話学校13校、保育園29園となった。

■四半期業績は受験生卒業や講習など季節要因で変動する収益構造

 四半期別業績推移を見ると、15年5月期は売上高が第1四半期28億45百万円、第2四半期26億02百万円、第3四半期31億08百万円、第4四半期22億70百万円、営業利益が2億13百万円、87百万円、4億16百万円、5億07百万円の赤字、16年5月期は売上高が31億36百万円、27億86百万円、33億40百万円、26億02百万円、営業利益が2億98百万円、94百万円、4億60百万円、4億50百万円の赤字だった。

 四半期業績は主力の学習塾事業において受験生卒業などで生徒数が変動する季節要因がある。新学期を迎える春季が最も低下し、その後増加していく傾向が強い。また夏期や冬季など季節講習を実施する時期は授業料収入が増加する傾向が強い。このため夏期講習の第1四半期(6~8月)および冬期講習の第3四半期(12~2月)の構成比が高く、卒業~新学期にあたる第4四半期(3~5月)は赤字となりやすい収益構造である。

 16年5月期連結業績は15年5月期比9.6%増収、同92.0%営業増益、同88.1%経常増益、同2.9倍最終増益だった。学習塾事業の生徒数が順調に増加し、第2教育事業と第3教育事業の赤字縮小も寄与した。期中平均生徒数(FC含む)は2万8272人で同6.2%増加した。売上総利益は同12.1%増加し、売上総利益率は26.8%で同0.6ポイント上昇した。販管費は同5.7%増加したが、販管費比率は23.4%で同0.9ポイント低下した。

 営業外収益では補助金収入が減少したが、特別利益で補助金収入が増加した。ROEは9.3%で同5.7ポイント上昇、自己資本比率は30.6%で同1.9ポイント低下した。配当は同68銭増配の年間6円48銭(期末一括)で連結配当性向は21.1%だった。配当については安定的に行うことを基本とし、個別業績の純利益に対する配当性向30%を目標としている。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、第1教育事業は売上高が同2.8%増の97億45百万円、営業利益が同8.5%増の15億39百万円だった。生徒数は小中が同2.8%増の8767人、高校が同10.6%増の2402人、個別指導が同1.3%増の8758人、FCが同7.0%増の4670人、合計が同3.8%増の2万4597人と順調に増加した。教室展開は開校が「京進」小中部1校および「京進スクール・ワン」直営1校・FC6校の合計7校で、閉鎖が3校だった。

 第2教育事業は売上高が同29.6%増の6億81百万円、営業利益が79百万円の赤字(前々期は1億91百万円の赤字)だった。国際人材交流事業は費用が先行しているが、日本語教育事業の生徒数増加(同22.6%増加の917人)でセグメント赤字が縮小した。教室展開は日本語学校1校(京進ランゲージアカデミー名古屋北校)を開校した。

 第3教育事業は売上高が同75.3%増の14億41百万円、営業利益が55百万円の赤字(前々期は1億56百万円の赤字)だった。英会話学校は2校開校した。保育園は11園新設し、たまプラーザベビールーム(1園)を子会社化した。保育園の新規開園に伴う費用発生やスタッフ人員増強でセグメント赤字だが、新規開園による大幅増収効果で赤字が縮小した。特別利益に計上した保育園開園に伴う補助金収入1億55百万円を勘案すると、保育園事業の損益は実質的に黒字だった。生徒数は幼児教育が同23.9%減の54人、英会話が同20.5%増の2247人、保育が同88.1%増の457人、合計が同26.6%増の2758人だった。

■17年5月期第1四半期は2桁増収増益

 10月7日に発表した今期(17年5月期)第1四半期(6~8月)の連結業績は、売上高が前年同期比12.0%増の35億12百万円、営業利益が同13.3%増の3億38百万円、経常利益が同12.0%増の3億34百万円、そして純利益が同28.9%増の2億16百万円だった。

 期中平均生徒数(FC含む)は2万9019人で同6.0%増加した。また売上総利益は同13.6%増加し、売上総利益率は31.6%で同0.5ポイント上昇した。販管費は同13.7%増加し、販管費比率は21.9%で同0.3ポイント上昇した。特別損失では減損損失が減少(前期19百万円、今期1百万円)した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、第1教育事業は売上高が同3.8%増の27億77百万円で、営業利益が同8.8%増の6億23百万円だった。生徒数が同3.0%(731人)と順調に増加した。教室展開は京進スクール・ワンFC1教室開校、2教室閉鎖で、期末個別指導教室数は242教室(うちFC105教室)となり、京進小中部76校、高校部11校、Net学習センター1拠点と合わせたセグメント全体の拠点数は330拠点となった。

 第2教育事業は売上高が同39.9%増の2億17百万円、営業利益が23百万円の赤字(前年同期は28百万円の赤字)だった。国際人材交流事業は費用が先行しているが、日本語教育事業の生徒数増加でセグメント赤字が縮小した。教室展開では16年6月に神戸日本語学院の事業を譲り受けて日本語学校8校となった。

 第3教育事業は売上高が同69.2%増の5億18百万円、営業利益が同4.0倍の8百万円だった。既存保育園の児童数および英会話教室の生徒数が順調に増加した。また保育園が13園増加、英会話学校が2教室増加したことも寄与して大幅増収となり、営業損益が改善した。

■17年5月期通期も2桁増収増益・連続増配予想

 今期(17年5月期)通期の連結業績予想は前回予想(7月11日公表)を据え置いて、売上高が前期(16年5月期)比10.7%増の131億33百万円、営業利益が同24.5%増の5億02百万円、経常利益が同29.0%増の5億26百万円、純利益が同37.7%増の3億55百万円としている。

 顧客ニーズに対応したサービス向上や新規開校などで生徒数が順調に増加して2桁増収増益予想である。配当予想は同2円27銭増配の年間8円75銭(期末一括)で予想連結配当性向は20.7%となる。

 なお第1四半期の進捗率は、第2四半期累計(6~11月)の対しては売上高が53.2%、営業利益が83.3%、経常利益が80.1%、純利益が79.1%となり、通期予想に対しては売上高が26.8%、営業利益が67.3%、経常利益が63.5%、純利益が60.9%となる。学習塾事業において第1四半期の構成比が高く、第4四半期が赤字となる季節変動要因が大きい収益構造であることを考慮しても、概ね順調な水準だろう。

■2020年ビジョンで売上高200億円目指す

 長期構想「日本一の総合教育企業グループを目指す」に向けて、2020年ビジョンでは「連結売上高200億円」「関西基盤の教育業界NO.1売上」「国際企業への脱皮」を掲げ、学習塾市場で差別化を推進するとともに、その他の教育関連市場で積極的な拡大展開を図るとしている。目標数値には18年5月期売上高144億円、経常利益率3.5%、そして21年5月期売上高200億円、経常利益率5.0%を掲げている。

 事業別戦略として、第1教育事業ではリーチングメソッドの提供で差別化を進めるとともに、戦略的な開校で事業拡大を目指す。第2教育事業では文部科学省が08年から進めている「留学生30万人計画」を背景に、日本語学校の積極的開校や外国人人材の日本企業への紹介を拡大する。第3教育事業では、小学生への英語教育の早期化(低学年への移行)や国・自治体の待機児童解消政策に伴う市場の伸びを先取りし、積極的な開校・開園を推進するとともに、差別化商品・サービスを準備する。

 なお16年4月、一般財団法人日本次世代企業普及機構による「第1回ホワイト企業(次世代企業)アワード ダイバーシティ部門賞」を受賞した。142社がエントリーした中から11社がアワードとして選ばれた。

■少子化の一方で、教育熱高まりや教育ニーズ多様化はビジネスチャンス

 学習塾業界は少子化による学齢人口減少や競争激化が課題として懸念されることが多いが、一方では家庭における教育熱が一段と高まり、英会話やIT分野、さらにコミュニケーション能力や問題解決能力といったライフスキルまで、教育ニーズの多様化が進展している。こうした状況はビジネスチャンスであり、積極戦略によって中期成長に繋がることが期待される。

■株価はモミ合い上放れて年初来高値更新、割安感も見直し材料

 株価の動きを見ると、第1四半期の2桁増収増益を好感する形でモミ合いから上放れ、3月高値327円を突破して年初来高値更新の展開となった。10月14日には338円まで上伸した。

 10月25日の終値323円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS42円29銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円75銭で算出)は2.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS339円62銭で算出)は1.0倍近辺である。時価総額は約27億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線が上向きに転じてサポートラインとなりそうだ。指標面の割安感も見直し材料であり、15年6月高値397円が視野に入りそうだ。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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