【アナリスト水田雅展の銘柄分析】トレックス・セミコンダクターは調整一巡、中期成長力やウェアラブル端末関連のテーマ性を評価して再動意

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アナログ電源IC専門メーカーのトレックス・セミコンダクター<6616>(JQS)の株価は、1月22日の7000円から切り返しの動きを強めている。27日には7480円まで戻した。調整が一巡したようだ。指標面に割高感はなく、中期成長力やウェアラブル端末・LED関連というテーマ性を評価して再動意のタイミングだろう。

 アナログ電源ICに特化して開発・販売する国内唯一の専業メーカーで、入力電圧を希望の出力電圧に変換するVR(電圧レギュレータ)、出力電圧が常に一定となるように制御するDC/DC(コンバータ)、入力電圧を監視して設定電圧以下となった時にアラームを出すVD(電圧検出器)などを主力製品としている。

 小型化と低消費電力化に20年以上の実績を持ち、世界トップクラスの技術力を誇っている。超小型・薄型化と高放熱を両立する独自の超小型パッケージ技術「USP」などをベースとして、顧客の電子機器開発ニーズに対してソリューション提案できる「超小型電源ICに特化したアナログCMOSのプロフェッショナル集団」だ。

 生産面では一部製品の後工程だけをベトナム工場で対応し、大半の生産を外部に委託するファブレスメーカーであることも高収益に繋がっている。技術力や収益力の高さに加えて、財務面の健全性の高さも特徴だ。今期(15年3月期)第2四半期累計(4月~9月)末の自己資本比率は82.6%と高水準である。

 中期的な売上成長や一段の高収益化に向けて、注力領域をスマートフォン、デジタルカメラ、パソコン、デジタル家電などの民生用機器分野から、ヘルスケアやGPS関連などのウェアラブル機器分野、カーナビゲーション、モニタカメラ、ETC車載器、パワーウインドウなどの車載機器分野、ロボット、スマートメーター、監視カメラなどの産業機器分野に広げて新製品開発を強化している。

 14年4月には世界的なパワー半導体メーカーである米IXYS社と相互販売提携契約を締結した。米IXYS社の製品は大きな電力を扱う分野で強みを持っているため、電力制御機器や太陽光発電関連など当社の産業機器分野の品揃え拡充に活用する一方で、米IXYS社の販売網を活用して当社製品の拡販に繋げる。

 また1月13日には、ウェアラブル機器やスマートメーターなど高効率で電池の長寿命を求める機器に最適な超低消費電流の降圧同期整流「DC/DCコンバータXC9265」シリーズ、およびウェアラブル機器など外部ボタンからの信号入力によるシステムリブートに用いる「Push Button リブートコントローラーXC6190」シリーズの量産開始を発表している。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(11月14日に売上高と営業利益を減額)は、売上高が前期比5.4%増の99億円、営業利益が同0.4%増の14億20百万円、経常利益が同12.0%増の15億円、そして純利益が同18.9%減の11億円としている。配当予想(5月13日公表)は記念配当20円を含む年間100円(第2四半期末50円、期末50円)で、前期比60円増配としている。

 第2四半期累計(4月~9月)は売上高が47億65百万円、営業利益が5億68百万円、経常利益が6億62百万円、純利益が4億25百万円で、民生機器向け売上が想定を下回ったため売上高と営業利益は計画を下回ったが、営業外での為替差益計上などで経常利益と純利益は計画を上回った。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.1%、営業利益が40.0%、経常利益が44.1%、純利益が38.6%とやや低水準だが、産業機器向けや車載機器向けが好調であり、下期の想定為替レートが1ドル=108円と保守的であることも考慮すれば、ドル高・円安効果も寄与して好業績が期待されるだろう。

 中期経営計画では目標値として17年3月期売上高120億円強、営業利益20億円強を掲げている。民生用機器分野は価格競争が激化しているため、需要変動幅が比較的小さく、利益率も比較的高い産業機器分野、車載機器分野、医療機器分野、ウェアラブル機器分野を中心に拡販を推進する方針だ。17年3月期の売上構成比の計画は既存の民生用機器分野37.7%、産業機器分野33.7%、車載機器分野14.0%、その他(ウェアラブル機器分野など)14.6%としている。

 アナログ電源ICの市場規模は17年に向けて年平均6.6%の成長が予想されている。寡占企業が少ないため、技術優位性を武器として当社の市場シェア拡大余地は大きいだろう。中期的に収益拡大基調であり、一段の高収益化も期待される。

 株価の動きを見ると、14年12月安値6600円から一旦は9000円近辺まで反発したが、再び水準を切り下げた。ただし12月安値を割り込むことなく、1月22日の7000円から切り返しの動きを強めている。27日には7480円まで戻した。調整が一巡したようだ。

 1月27日の終値7480円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS416円79銭で算出)は18倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間100円で算出)は1.3%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS3433円14銭で算出)は2.2倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえたが、26週移動平均線近辺から切り返しの動きを強めている。サポートラインを確認した形だろう。指標面に割高感はなく、中期成長力やウェアラブル端末・LED関連というテーマ性を評価して再動意のタイミングだろう。

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