イワキは戻り歩調で4月の年初来高値試す、16年11月期大幅増益予想で低PBR

 イワキ<8095>(東1)は医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社である。ジェネリック医薬品関連の好調で16年11月期第3四半期累計は2桁営業増益となり、通期も大幅増益予想である。そして17年11月期は化学品事業の収益改善も期待される。天然界面活性剤市場参入も注目される。株価は戻り歩調だ。0.4倍近辺の低PBRも見直して4月の年初来高値を試す展開だろう。

■医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社

 医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社である。グループ内に医薬品製造・販売の岩城製薬、表面処理薬品製造・販売のメルテックスといったメーカー機能も備えている。

 16年11月期から事業区分を再構成して、医薬・FC(Fine Chemical)事業(医薬品原料の製造・販売、医薬品の製造・販売、体外診断薬・研究用試薬の卸売および医療機器の販売)、HBC(Health & Beauty Care)事業(化粧品原料・機能性食品原料の販売、一般用医薬品・関連商品の卸売、化粧品通信販売)、化学品事業(表面処理薬品・電子工業薬品・化成品の製造・販売、表面処理設備の製造・販売)、食品事業(食品原料の製造・販売)の4事業とした。

 15年11月期売上高構成比(新区分組替後)は、医薬・FC事業35%(原料薬品23%、医薬品9%、その他特約3%)、HBC事業43%(HBC原料20%、ファルマネット19%、オリジナル製品4%)、化学品事業11%(表面処理薬品7%、スペシャリティマテリアル1%、表面処理設備3%)、食品事業7%だった。

■卸売・商社・メーカー機能の連携を強化、天然界面活性剤市場に参入

 全国の医薬品卸・医療機関・ドラッグストアなどに医薬品や機能性食品などを供給する卸売機能、国内外のメーカーなどを開拓して輸出入する商社機能、グループ内に岩城製薬とメルテックスのメーカー機能を併せ持つことが強みで、卸売・商社・メーカー機能の連携を強化している。

 中期的な事業基盤強化と収益拡大に向けて、医薬品事業での共同開発・受託品の拡大、ドラッグストア向けPB商品など自社企画商品開発強化、医薬品原料事業における市場シェア拡大、インド・グレンマーク社など海外サプライヤーとの連携強化、岩城製薬の生産能力増強と新製品開発、メルテックスの新製品拡販、海外(タイ、韓国、中国)展開強化、日立化成<4217>とのアライアンスによる拡販などを推進している。

 16年7月にはシンガポールのAllied Carbon Solutions(ASC社)と業務提携して天然界面活性剤市場に参入した。ASC社は非可食天然物「マフア」の種から抽出した油脂を発酵させて天然界面活性剤を製造する高度な技術を有している。ASC社がインドの子会社で商業生産化する天然界面活性剤「ACS-Sophor」を、医薬品・化粧品・健康食品・食品の事業分野において当社が優先的に販売する権利を得た。

■15年11月期は化学品事業が新製品への切り替えで低調

 四半期別の推移を見ると、14年11月期は売上高が第1四半期125億44百万円、第2四半期141億92百万円、第3四半期131億90百万円、第4四半期142億19百万円、営業利益が1億90百万円、4億24百万円、23百万円の赤字、2億99百万円だった。15年11月期は売上高が130億01百万円、145億15百万円、139億58百万円、139億48百万円、営業利益が90百万円、3億08百万円、1億46百万円、15百万円だった。

 15年11月期は、ジェネリック医薬品関連やインバウンド需要関連が伸長したが、化成品事業が15年3月の業務提携解消に伴って新規導入製品のプリント配線板用「ルーセントカパー」シリーズへの切り替えを進めているため減収となり、メルテックスの繰延税金資産取崩も影響して最終赤字だった。売上総利益率は19.4%で14年11月期比1.2ポイント低下、販管費比率は18.4%で同0.6ポイント低下した。配当は同1円50銭減配の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)だった。

■16年11月期第3四半期累計は2桁営業増益

 10月13日発表した今期(16年11月期)第3四半期累計(12~8月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.9%減の407億06百万円だが、営業利益が同17.4%増の6億39百万円、経常利益が同2.7%増の6億75百万円、そして純利益が2億87百万円の黒字(前年同期は78百万円の赤字)だった。インバウンド需要関連が一段落し、化成品事業は新規導入製品への切り替えで低水準だが、ジェネリック医薬品関連が伸長して2桁営業増益だった。

 売上総利益は同1.1%増加し、売上総利益率は20.2%で同0.6ポイント上昇した。販管費は同0.1%減少したが、販管費比率は18.7%で同0.4ポイント上昇した。営業外収益では有価証券償還益66百万円が一巡した。営業外費用では持分法投資損失が減少(前期19百万円、今期3百万円)したが、為替差損が増加(前期20百万円、今期70百万円)した。特別利益では投資有価証券売却益29百万円、特別損失では過年度決算訂正関連費用50百万円を計上した。

 セグメント別動向を見ると、医薬・FC事業は売上高が同10.4%増の157億35百万円、営業利益(連結調整前)が同25.7%増の9億60百万円だった。政府の後発医薬品使用促進策も追い風となり、医薬品原料分野でジェネリック医薬品の新規原料が大幅伸長した。医薬品分野では主力の外皮用剤が伸長した。HBC事業は売上高が同2.1%減の164億53百万円、営業利益が同80.1%減の23百万円だった。通販化粧品分野は堅調だったが、機能性食品原料におけるインバウンド対象商品が減少した。利益面では広告宣伝費の増加も影響した。

 化学品事業は売上高が同33.7%減の38億98百万円、営業利益が3億79百万円の赤字(前年同期は3億24百万円の赤字)だった。表面処理薬品分野で新規導入製品のプリント配線板用「ルーセントカパー」シリーズへの切り替えを進めていることに加えて、表面処理設備分野も国内における企業設備投資抑制の影響で低調だった。食品事業は売上高が同0.4%減の28億14百万円、営業利益が6百万円の赤字(同11百万円の赤字)だった。受託加工が低調だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期127億53百万円、第2四半期140億91百万円、第3四半期138億62百万円、営業利益は1億61百万円、1億70百万円、3億08百万円だった。

■16年11月期は大幅増益予想で増額余地

 今期(16年11月期)通期の連結業績予想は前回予想(1月14日公表)を据え置いて、売上高が前期(15年11月期)比1.0%増の560億円、営業利益が同51.9%増の8億50百万円、経常利益が同29.6%増の9億円、純利益が4億50百万円(前期は1億43百万円の赤字)としている。配当予想は前期と同額の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)で予想配当性向は45.0%となる。

 医薬・FC事業では政府の後発医薬品使用促進策も追い風となってジェネリック医薬品関連が伸長する。化学品事業は新規導入製品「ルーセントカパー」シリーズへの評価が進捗し、9月に単月黒字化したようだ。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が72.7%、営業利益が75.2%、経常利益が75.0%、純利益が63.8%である。第4四半期の構成比が低くなる季節要因を考慮しても通期ベースで好業績が期待される。そして来期(17年11月期)は化学品事業の収益改善も寄与して収益拡大が期待される。

■グループ中長期ビジョンおよび新中期経営計画を策定

 創業111年を迎える25年11月期に向けて、グループ中長期ビジョン「Vision i-111」および新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)を策定した。

 グループ中長期ビジョン「Vision i-111」では、基本戦略を、策揃え企業になる=Intelligent、ナンバーワン製品・事業に注力する=Innovative、海外市場への事業展開を図る=International、資本効率を意識した事業運営を行う=Investmentとして、数値目標には創業111周年25年11月期の連結売上高1000億円、ROIC10.0%以上を掲げた。

 新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)では、これまで独立的に運営されていた事業部門をプロダクツごとのバリューチェーンに従って統合・運営するため、組織体系を4事業(医薬・FC事業、HBC事業、化学品事業、食品事業)に再構成し、数値目標には18年11月期売上高600億円、営業利益10億円、ROIC4.0%以上を掲げた。

 医薬・FC事業(イワキ、岩城製薬)では、原料の選定から最終製品の提供までを「策揃え」で提供するほか、国内外の医薬関連企業との協業を通して、さらなる市場拡大に努める。

 HBC事業(イワキ、アプロス)では、OEMやプライベート・ブランド製品の自社企画・提案を通して、国内の健康食品原料市場における高シェアを維持・拡大する。海外市場の開拓も推進する。化粧品通信販売では「シルキーカバーオイルブロック」の拡販を図る。

 化学品事業(メルテックス)では、高い技術力・ブランド力を持つIチップ抵抗向けスズめっき「メルプレートSN」シリーズの世界市場シェアNO.1を確保するとともに、15年から販売開始した大型新製品のプリント配線板向け硫酸銅めっき「ルーセントカパー」シリーズのグローバルシェア拡大を図る。

 食品事業(イワキ、持分法適用会社のボーエン化成)では、商品開発効率化、生産コスト低減、ボーエン化成における国産・高付加価値原料の受託加工強化などを推進する。海外展開に関してはハラル対応原料に特化したマーケティングを開始し、マレーシア、インドネシア、中近東諸国の市場開拓に注力する。

■株価は戻り歩調で4月の年初来高値を試す

 株価の動きを見ると、安値圏180円~190円近辺でのモミ合いから上放れて戻り歩調の展開となった。10月28日には210円まで上伸した。第3四半期累計の2桁営業増益・最終黒字化も好感されたようだ。

 10月31日の終値207円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS13円33銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は2.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS514円23銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約71億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いて先高感を強めている。0.4倍近辺の低PBRも見直して4月の年初来高値227円を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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