日本エンタープライズは調整一巡して戻り歩調期待、17年5月期大幅営業増益予想

 日本エンタープライズ<4829>(東1)はコンテンツ制作・配信、店頭アフィリエイト広告、企業向けソリューションなどを展開し、企業間電子商取引分野やM2M/IoT分野への事業領域拡大も推進している。17年5月期は売上総利益率が改善して大幅営業増益予想である。株価は調整一巡して戻り歩調が期待される。

■コンテンツサービス事業とソリューション事業を展開

 交通情報、ライフスタイル、電子書籍、ゲーム、メール、音楽などのコンテンツを制作してキャリアの定額制サービスで配信するコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開している。

 15年5月期のセグメント別売上高構成比はコンテンツサービス事業40%、ソリューション事業60%、営業利益構成比(連結調整前)はコンテンツサービス事業88%、ソリューション事業12%だった。

 配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略としている。そしてM&A・アライアンスも積極活用して事業領域を広げ、ネイティブアプリや法人向け業務支援サービスを新たな収益柱に育成する方針だ。

■中国では携帯電話販売事業を展開

 中国ではチャイナテレコムの携帯電話販売店運営や電子コミック配信サービスなどを手掛けている。中国・上海の携帯電話販売事業はキャリアの販売施策変更に影響されない収益構造構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、コスト削減などの収益改善策を推進している。

 15年10月には中国向けサンリオキャラクター商品卸売事業を行う合弁子会社NE銀潤(当社出資比率51.0%)を設立した。15年12月には北京業主行網絡科技有限公司の出資持分を売却した。中国の携帯通信事業者(チャイナモバイル、チャイナユニコム、チャイナテレコム)向けにモバイルコンテンツを配信してきたが、コンテンツプラットフォームの多角化でICPライセンス保有メリットが低下した。

 今後の中国における事業展開については、携帯電話等販売事業(チャイナテレコムの携帯電話販売店2店舗の運営)、卸売をはじめとしたソリューション事業(NE銀潤に対するサンリオキャラクター商品の日本からの輸出など)、およびモバイルコンテンツ事業を積極的に展開する。

■中期成長に向けてM&A・アライアンスを積極活用

 ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化、成長分野のM2M/IoTへの事業領域拡大など、中期成長に向けてM&A・アライアンスも積極活用している。

 13年3月音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月子会社のHighLabを設立、14年11月アプリ開発の会津ラボを子会社化、15年6月スマートコミュニティ事業および太陽光発電・販売の合弁子会社として山口再エネ・ファクトリーを設立、15年7月プロモートを子会社化した。15年12月クルーズ<2138>が運営するフリマアプリ「Dealing」サービスを譲り受けて電子商取引(EC)分野に参入、16年2月スマートバリュー<9417>と業務資本提携、16年4月エキサイト<3754>と業務提携した。

 16年8月、連結子会社でグループ内開発を担当するフォー・クオリア(11年10月子会社化)と、モバイル向け音楽配信サービスなどを展開するアットザラウンジ(08年7月分社化)の合併(16年10月1日予定で存続会社はフォー・クオリア)を発表した。グループ全体の経営効率の向上を図る。

■法人向け業務支援サービスを収益柱に育成方針、BtoB分野に本格参入

 法人向け事業では14年8月スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発、14年10月ビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。

 15年5月には子会社の会津ラボが会津若松市の「次世代型食品生産トライアル事業」に対するスマート農業支援を発表、15年6月にはIDCフロンティアとクラウド分野で業務提携してクラウド型統合運用監視サービス「プレミアクラウド」サービスを開始、15年8月には千葉県のスマートフォンアプリ「ちばMy Style Diary」を開発・運用開始、15年9月には子会社の会津ラボが山口県周南市の徳山動物園でナビゲーション「あるく動物ナビ」のサービスを開始した。

 16年1月には千葉県山武群横芝光町の「横芝光町情報発信アプリサービス開発業務」を受託、16年2月には静岡県下田市の子育て支援アプリ「しもだこどもDiary」を発表した。16年5月にはグループ会社の山口再エネ・ファクトリーが山口県宇部市に建設していた「東岐波太陽光発電所」が竣工した。

 16年6月には東京都中央卸売市場築地市場・東京魚市場卸協同組合と協業して電子商取引事業を行う100%子会社いなせりを設立した。同組合に所属する仲卸業者が飲食事業を展開する企業・店舗に向けて鮮魚・水産物を直接販売する電子商取引サービス「いなせり」を16年秋から開始する。これによって企業間(BtoB)EC分野に本格参入する。そして10月19日、いなせりが電子商取引サービス「いなせり」の共同運営に先駆けて、飲食事業者を対象に事前会員登録を開始したと発表している。

 16年8月にはスマートバリューが名古屋市から受託した子育て支援アプリケーション構築および運用保守業務で提携し、妊娠期間中に妊婦と胎児の状態に応じたアドバイスをする「ママ&ベビの今の状態」のコンテンツ提供を担当すると発表した。

 16年9月には子会社の交通情報サービス(ATIS)が、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」が全国高速道路情報や最適ルートをお知らせするロボアプリに「高速道路情報」の提供開始を発表した。

 10月18日にはパートナーエージェント<6181>と共同で、長野県南佐久郡川上村が取り組む「女性活躍推進および結婚環境向上推進」における官民連携施策「KAWAKAMI SMART PROJECT」に地域内の相互扶助を支援するシェアリングエコノミーシステム「MAKETIME」の提供開始を発表した。

 また10月18日には、一般社団法人ゲートウェイ・アップ・ジャパンが実施する「熊本地震の被災地の復旧・復興を支援するプログラム」に参画して、訪日外国人が投稿する口コミ情報を多言語で発信し観光客集客を図るWEBサービスなどを開発すると発表した。

■IoTやドローン分野の事業化に向けた技術開発も推進

 16年3月には子会社の会津ラボが、会津大学との産学連携により開発したドローン群制御技術「Dronet(ドロネット)」を、ドローン展示会「Japan Drone 2016」で発表した。複数のドローンを給電ケーブルで接続し、ドローン間のケーブルの角度からドローン同士の距離を一定に保ち、ドローン群全体を安定制御する技術である。事業化に向けた開発も会津ラボが行う。

 16年7月には子会社の会津ラボが、ガーデン・エクステリア大手のタカショー<7590>および会津大学と協業し、ガーデニング・エクステリア製品をインターネットに接続して快適な癒し空間を作るIoT商品の共同開発を行うと発表した。

■16年5月期は販管費抑制で2桁営業増益

 四半期別推移を見ると、15年5月期は売上高が第1四半期13億16百万円、第2四半期11億98百万円、第3四半期12億26百万円、第4四半期13億76百万円、営業利益が52百万円、10百万円、52百万円、75百万円、16年5月期は売上高が13億19百万円、12億28百万円、14億75百万円、15億08百万円、営業利益が57百万円、14百万円の赤字、1億09百万円、67百万円だった。

 16年5月期は販管費抑制などで15年5月期比2桁営業増益だった。売上総利益は同3.7%減少し、売上総利益率は42.0%で同5.1ポイント低下した。ソリューション事業の売上構成比が上昇して全体の売上総利益率が低下した。販管費は同5.4%減少し、販管費比率は38.0%で同5.4ポイント低下した。コンテンツサービス事業への広告戦略を転換して広告宣伝費が減少した。ROEは6.4%で同2.6ポイント上昇、自己資本比率は83.5%で同1.9ポイント上昇した。配当は前々期と同額の年間3円(期末一括)で、配当性向は37.2%だった。

 コンテンツサービス事業は売上高が同12.4%減の21億94百万円(交通情報5.2%減収、エンターテインメント12.3%減収、ライフスタイル28.8%減収)、営業利益(連結調整前)が同11.1%増の6億84百万円だった。広告宣伝費減少で営業損益が改善した。ソリューション事業は売上高が同27.8%増の33億35百万円(ソリューション37.3%増収、広告代理サービス11.7%増収、海外58.0%増収)だったが、営業利益が同50.7%減の93百万円だった。ソリューション(受託開発)が好調で地方創生ビジネスの強化も進展した。

■17年5月期第1四半期は2桁営業増益

 今期(17年5月期)第1四半期(6~8月)の連結業績は売上高が前年同期比5.6%減の12億45百万円、営業利益が同18.1%増の67百万円、経常利益が同33.4%増の80百万円、純利益が同2.3倍の55百万円だった。コンテンツサービス事業における「定額サービス」でキャリアの施策変更の影響を受けて減収だが、広告宣伝費の減少も寄与して2桁営業増益だった。

 売上総利益は同12.6%減少し、売上総利益率は41.5%で同3.3ポイント低下した。販管費は同15.8%減少し、販管費比率は36.1%で同4.3ポイント低下した。ソリューション事業の売上構成比上昇で売上総利益は低下した。販管費では広告宣伝費が減少した。なお営業外収益では業務受託手数料、補助金収入、受取負担金が増加した。

 コンテンツサービス事業は売上高が同19.5%減の4億84百万円(交通情報0.9%減、エンターテインメント33.4%減、ライフスタイル15.5%減)で営業利益(連結調整前)が同7.1%増の1億94百万円だった。ソリューション事業は売上高が同6.0%増の7億61百万円(受託開発などソリューション5.1%減、広告代理サービス21.8%増、海外16.6%増)で営業利益が同15.5%減の19百万円だった。

■17年5月期通期は売上総利益率が改善して大幅営業増益予想

 今期(16年5月期)の連結業績予想(7月12日公表)は売上高が前期(16年5月期)比4.2%減の53億円、営業利益が同50.2%増の3億30百万円、経常利益が同38.6%増の3億50百万円、純利益が同58.7%減の1億35百万円としている。配当予想は前期と同額の年間3円(期末一括)としている。予想配当性向は90.1%となる。

 売上面ではソリューション事業が伸長するが、コンテンツサービス事業における行政の規制による影響やコンテンツ市場の環境変化を鑑み、全体として減収予想としている。また純利益は投資有価証券売却益一巡で減益予想だが、売上総利益率改善や広告戦略転換による販管費減少で大幅営業増益・経常増益予想である。なお通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.5%、営業利益が20.3%、経常利益が22.9%、純利益が40.7%である。営業利益進捗率がやや低水準の形だが、第2四半期以降の売上総利益率改善に期待したい。

■株価は調整一巡して戻り歩調期待

 株価の動きを見ると8月の直近安値238円から徐々に下値を切り上げて、10月20日には308円まで上伸する場面があった。

 10月28日の終値282円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS3円33銭で算出)は85倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS123円96銭で算出)は2.3倍近辺である。時価総額は約115億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を回復した。調整一巡して戻り歩調が期待される。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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