クリーク・アンド・リバー社は自律調整一巡して上値試す、17年2月期大幅増益予想でVR関連も注目点

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(東1)はクリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開している。事業領域拡大戦略を加速して17年2月期大幅増益予想である。またVR・AR関連も注目テーマだ。株価は9月の年初来高値から一旦反落したが、自律調整が一巡して14年10月高値を試す展開だろう。

■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 日本のクリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版などの制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業、およびプロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業を主力としている。また韓国のクリエイティブ分野、および医療・IT・法曹・会計などの分野におけるエージェンシー事業も展開し、事業領域拡大戦略を加速している。

 16年2月期セグメント別売上高構成比は、日本クリエイティブ分野61%、韓国クリエイティブ分野15%、医療分野12%、その他12%だった。

 日本のクリエイティブ分野では、13年8月公開のテレビ朝日開局55周年記念劇場公開映画「少年H」(モスクワ映画祭特別賞受賞)の制作を担当したことが評価されて、TV番組制作受託事業が拡大している。当社が制作協力したドキュメンタリー映画「抱擁」は平成27年度文化庁映画賞(文化記録映画部門)文化記録映画優秀賞を受賞した。当社、白組およびハウステンボスが共同制作した劇場公開用3DCGアニメ「GAMBAガンバと仲間たち」が15年10月から公開され、この公開にあわせてスマホゲームアプリ「GAMBA RACER」の配信を開始した。

 なお韓国のクリエイティブ分野はクリーク・アンド・リバー韓国、医療分野はメディカル・プリンシプル、IT分野はリーディング・エッジ、法曹分野はC&Rリーガル・エージェンシー、会計分野はジャスネットコミュニケーションズ、ファッション分野はインター・ベル(13年12月子会社化)、広告分野はプロフェッショナルメディア(15年4月子会社化)の各連結子会社が事業展開している。

 10月27日には、韓国子会社クリーク・アンド・リバー韓国の事業を会社分割(12月1日予定)し、新設会社でTVマーケットに特化したクリーク・アンド・リバー・エンタテインメントに承継させ、その後に新設会社の資本構成を変更する方針を発表した。クリーク・アンド・リバー・エンタテインメントについては現地資本による株式保有比率を高めることで持分法適用会社とする。クリーク・アンド・リバー韓国についてはTVマーケット以外の専門分野への展開を目指すとしている。

■新規分野に積極展開して事業領域拡大戦略を加速

 新規事業分野として電子書籍取次事業、および作家、オンラインクリエイター、建築、ファッションクリエイター、シェフ、プロフェッサー分野のエージェンシー事業へ展開し、M&Aも積極活用している。当面は人件費などの費用が先行するが、順次収益化を見込んでいる。

 15年4月プロフェッショナルメディア(トータルブレーンが運営する人材紹介・派遣事業および広告業界特化型情報事業「広告転職.com」「クリエイティブ派遣.com」を新設分割して設立)を連結子会社化した。15年5月エコノミックインデックスを持分法適用関連会社化した。同社のデータ解析技術を活かして商品・サービスの販売促進、広告効果の検証、企業イメージの動向把握と維持向上、ブランド価値の定量化などを提供する。15年6月ベトナム最大のマルチチャンネルネットワーク(MCN)であるPOPSと業務提携した。

 15年10月オンラインクリエイター分野において、YouTuberと企業のマッチング・分析を行う新ソーシャルクリエイターマッチング・分析プラットフォーム「EUREKA(エウレカ)」をリリースした。また教授や準教授をはじめとする研究者に特化したエージェンシー事業の本格的始動を発表した。

 16年2月法曹分野の子会社C&Rリーガル・エージェンシー(CRLA社)が、世界中の弁護士のためのSNSプラットフォーム「JURISTERRA(ジュリステラ)」の開発を発表し、16年4月からβ版の運用を開始した。米国におけるサービス基盤拡充は16年3月設立した子会社CREEK & RIVER Global(米国)が行う。

 16年3月ゲームやアプリなどの優れたコンテンツを世界へ発信するプロジェクトを本格始動した。第一弾としてアラビア語圏・ロシア語圏に向けて、親子で楽しめる知育アプリ「えほんであそぼ!じゃじゃじゃじゃん」(開発・提供:フォーリー社)の翻訳・吹き替えを実施し、155の国と地域に配信した。16年4月ソーシャルゲームインフォと連携してスマホアプリ先行予約サービス「Social Game Info@先行予約」の提供を開始した。

 16年5月子会社メディカル・プリンシパル社(MP社)が、メンタルヘルスケアのEAP(従業員支援プログラム)事業者として国内最大規模のアドバンテッジリスクマネジメントと提携し、ストレスチェックにおける「医師面接」領域での提携関係を構築した。また大学や企業などの研究機関に所属する研究者のための情報サイト「Technologist’s magazine」をオープンした。

 16年7月中国のアイデアレンズ社および同社の筆頭株主である投資ファンドのパートナー王涵氏と共同で、VR・AR(仮想現実・拡張現実)における日本市場への進出および日本コンテンツの中国展開を図るための合弁会社設立基本合意を発表した。そして16年8月日本市場進出のための新会社VR Japan設立(当社出資比率51.0%)を発表した。アイデアレンズ社のVRヘッドマウンドディスプレイ(HMD)新製品「IDEALENS K2」は、中国市場でのHMDの本命と言われ9月から中国で発売開始した。日本では年内の発売を予定している。

 また16年8月にはハウステンボスと映画配給会社ギャガの第三者割当増資を引き受けた。当社出資比率は15.0%となる。当社が企画・開発・制作するコンテンツを、アジアを中心とする海外へ発信していくことを目指している。

■日本クリエイティブ分野は拡大基調、医療分野は期前半に利益偏重の特性

 四半期別推移を見ると、15年2月期は売上高が第1四半期60億92百万円、第2四半期56億97百万円、第3四半期55億42百万円、第4四半期55億95百万円、営業利益が5億78百万円、3億50百万円、1億69百万円、1億99百万円、16年2月期は売上高が63億69百万円、65億03百万円、57億07百万円、63億30百万円、営業利益が4億58百万円、4億49百万円、1億03百万円、1億67百万円だった。

 医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重し、第3四半期と第4四半期は赤字となるため、全体として上期の構成比が高くなる収益構造だ。主力の日本のクリエイティブ分野は売上・営業利益とも四半期ベースで拡大基調である。

 16年2月期は積極的な人材投資、大型自社開発ゲーム「戦国修羅SOUL」関連の販促費、プロフェッショナルメディア新規連結の影響などで減益だったが、売上面では主力の日本のクリエイティブ分野を中心に既存事業分野が好調に推移した。グループ全体での派遣稼働者数、紹介成約者数は過去最高水準を更新した。増収基調に変化はない。

 売上総利益は10.4%増加し、売上総利益率は32.1%で同0.5ポイント上昇した。ゲーム・Web分野中心に自社制作強化・利益率向上を目的として、制作スタジオを拡張して内制化を推進したことも寄与した。販管費は14.7%増加し、販管費比率は27.4%で同1.5ポイント上昇した。16年2月期末人員数は15年2月期末比125人増加の889人となった。

 営業外費用ではエコノミックインデックス社の持分法適用関連会社化に伴って持分法投資損失68百万円を計上した。ROEは13.2%で同3.8ポイント低下、自己資本比率は52.8%で同0.2ポイント上昇した。配当は前々期比1円増配の年間8円(期末一括)で配当性向は26.5%だった。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、日本のクリエイティブ分野は売上高が同6.3%増の152億36百万円で営業利益が同10.6%減の7億18百万円、韓国のクリエイティブ分野は売上高が同16.6%増の38億20百万円で営業利益が同43.0%減の23百万円、医療分野は売上高が同6.5%増の29億08百万円で営業利益が同13.3%増の4億09百万円、その他事業(IT・法曹・会計他の事業)は売上高が同13.3%増の29億68百万円で営業利益が同71.5%減の24百万円だった。

 新規事業領域では、電子書籍取次事業はダウンロード数・売上高とも順調に増加して黒字定着した。オンラインクリエイター事業は動画再生回数が順調に増加して黒字化メドとなった。第1四半期にシェフ・エージェンシー事業、第2四半期にプロフェッサー・エージェンシー事業を立ち上げ、作家、建築、ファッション、シェフ、プロフェッサーの新規エージェンシー事業における先行投資負担の営業利益への影響額は合計で約2億10百万円(15年2月期は約1億50百万円)だった。

■17年2月期第2四半期累計は増収増益

 今期(17年2月期)第2四半期累計(3~8月)の連結業績は売上高が前年同期比3.2%増の132億77百万円、営業利益が同11.5%増の10億11百万円、経常利益が同5.8%増の9億47百万円、純利益が同12.0%増の5億22百万円だった。主力事業が順調に推移して計画超の増収増益だった。

 売上総利益は同12.6%増加し、売上総利益率は36.2%で同3.1ポイント上昇した。販管費は同12.9%増加し、販管費比率は28.5%で同2.4ポイント上昇した。営業外では持分法投資損益が悪化(前期は損失13百万円、今期は損失73百万円)した。なお利益押し下げ要因として、新規エージェンシー事業における先行投資負担の営業利益への影響額は97百万円(前年同期58百万円)で、前期持分法適用関連会社化したエコノミックインデックス社の経常利益への影響額は67百万円(前年同期13百万円)だった。

 セグメント別(連結調整前)動向を見ると、日本のクリエイティブ分野は売上高が同5.2%増の80億26百万円で営業利益が同3.8%増の4億30百万円、韓国のクリエイティブ分野は売上高が同15.6%減の16億09百万円で営業利益が1百万円の赤字(前年同期は12百万円の黒字)、医療分野は売上高が同16.0%増の21億68百万円で営業利益が同17.3%増の5億49百万円、その他事業(IT・法曹・会計他の事業)は売上高が同0.6%増の14億72百万円、営業利益が同3.2倍の33百万円だった。

 日本のクリエイティブ分野では、新規エージェンシー事業やVRなどで販管費が増加したが、制作スタジオにおいて利益率の高い制作受託案件が増加したことも寄与した。韓国のクリエイティブ分野では、円高・ウォン安の影響で減収となり、利益面では障害者雇用納付金負担の増加も影響した。医療分野は医師紹介事業が好調に推移している。その他事業ではIT分野の連結子会社リーディング・エッジ社の事業基盤再構築の進展も寄与した。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期65億39百万円、第2四半期67億38百万円、営業利益は4億54百万円、5億57百万円だった。

■17年2月期は大幅増益予想

 今期(17年2月期)通期の連結業績予想は前回予想(4月7日公表)を据え置き売上高が前期(16年2月期)比6.4%増の265億円、営業利益が同35.9%増の16億円、経常利益が同38.9%増の15億50百万円、純利益が同27.7%増の8億円としている。配当予想は前期比1円増配の年間9円(期末一括)で予想配当性向は23.4%となる。

 売上面では日本のクリエイティブ分野を中心に既存事業分野が好調に推移する。利益面では引き続き積極的な人材投資で販管費が増加するが、内制化進展による売上総利益率改善や、新規事業分野の収益化(建築およびファッションクリエイター事業で収支均衡を計画)も寄与して大幅増益予想だ。セグメント別(連結調整前)の計画は、日本のクリエイティブ分野の売上高が165億円で営業利益が10億円、韓国のクリエイティブ分野の売上高が35億円で営業利益が30百万円、医療分野の売上高が30億50百万円で営業利益が4億60百万円、その他の売上高が34億80百万円で営業利益が1億20百万円としている。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が20.1%、営業利益が63.2%、経常利益が61.1%、純利益が65.3%である。医療分野は上期の構成比が高い特性があるが、それを考慮しても順調な水準である。戦略的投資の効果や新規事業領域の収益化で増収増益基調が期待される。

■中期成長戦略で18年2月期営業利益30億円をイメージ

 中期成長戦略では既存事業で年率10~15%の成長を見込み、新規事業分野の積み上げや収益化も寄与して、18年2月期売上高300億円、営業利益30億円をイメージしている。事業領域拡大戦略を加速して、中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株価は自律調整一巡して14年10月高値目指す

 株価の動き(16年2月26日付でJASDAQから東証2部に市場変更、8月31日付で東証1部に指定替え)を見ると、VR・AR関連のテーマ性や東証1部への指定替えを好感した9月14日の年初来高値862円から反落し、その後は750円~800円近辺で推移している。

 10月28日の終値752円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS38円50銭で算出)は19~20倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間9円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS227円55銭で算出)は3.3倍近辺である。時価総額は約171億円である。

 週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線が接近して自律調整一巡感を強めている。VR・AR関連のテーマ性もあり、好業績を評価して14年10月高値893円を目指す展開だろう。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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