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エスプールは16年11月期第3四半期累計大幅増収増益で通期予想も増額修正
- 2016/11/2 07:18
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エスプール<2471>(JQ)はコールセンター業務などの人材サービス事業を展開している。16年11月期第3四半期累計は大幅増収増益で黒字化し、通期連結業績予想を増額修正した。主力業務が好調に推移して、電力スマートメーター設置業務の収益改善も寄与する。17年11月期も収益拡大基調が期待される。株価は年初来高値圏だ。好業績を評価する流れに変化はなく、13年9月高値2197円を目指す展開だろう。
■ロジスティクス、障がい者雇用支援、コールセンターなど人材サービス事業
ビジネスソリューション事業(ロジスティクスアウトソーシング、障がい者雇用支援・就労移行支援サービス、フィールドマーケティングサービス、マーチャンダイジングサービス、販売促進支援業務、顧問派遣サービス)、および人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、携帯電話販売員派遣、ストアスタッフ派遣)を展開している。
15年11月期のセグメント別(連結調整前)売上高構成比はビジネスソリューション事業41%、人材ソリューション事業59%、営業利益構成比はビジネスソリューション事業31%、人材ソリューション事業69%だった。
成長分野への集中投資で事業拡大を図るとともに、低採算案件の見直しなど低収益事業の改善にも取り組んでいる。継続的な収益の確保が期待できるストック型サービスの構成比を高めることで収益構造の抜本的な改善を推進する方針だ。
■ロジスティクス分野は低採算案件見直しで収益改善推進
ロジスティクスアウトソーシングサービスは、子会社エスプールロジスティクスがECサイト出店企業などの物流センター運営・発送代行サービスを展開している。
ネット通販市場の拡大やインバウンド需要の増加を背景として物流センターの需要は高水準だが、物流センター運営代行業務では低採算案件の取引見直しを進めている。当面の売上高は減少するが、高単価の健康食品・化粧品などへの取扱品目シフトや業務効率化などで収益改善を推進する。
■障がい者雇用支援サービスは事業規模拡大目指す
障がい者雇用支援サービスは、障がい者雇用促進法に基づいて大企業の障がい者雇用をサポートしている。子会社エスプールプラスが運営する企業向け貸し農園「わーくはぴねす農園」の栽培設備販売収入と農園運営管理収入を収益柱としている。
高付加価値サービスとして千葉県中心に事業規模拡大を目指し、早期の全国展開も視野に入れて行政との連携強化に取り組んでいる。
■電力会社スマートメーター関連業務を拡大
フィールドマーケティングサービスでは、子会社エスプールエンジニアリングが電力分野のスマートメーター関連業務を拡大している。
15年5月にエスプールエンジニアリングが東京電力<9501>からスマートメーター設置業務を受注した。東京電力は20年度までに約2700万台のスマートメーター設置を予定しており、このうち約540万台分の入札で約24億円分の業務(工事履行期間15年7月1日~17年3月20日)を受注した。実績を積み上げて全国各地域での受注を目指す。
■グループのセールスサポート関連を集約
14年11月には販売促進支援業務に特化した子会社エスプールセールスサポートを設立した。マーチャンダイジング業務、クレジットカードなどの会員獲得業務、販売イベントブースの運営業務などの販売促進支援業務を集約(ビジネスソリューション事業)し、事業拡大と収益性向上を目指す。
■人材ソリューション事業はコールセンター業務向け人材派遣が主力
人材ソリューション事業は子会社エスプールヒューマンソリューションズが展開し、コールセンター業務や携帯電話販売業務向け人材派遣を主力としている。16年4月にはエスプールヒューマンソリューションズが、優良派遣事業者認証委員会が指定した審査認定機関より「優良派遣事業者」として認定された。15年6月にはフルキャストホールディングス<4848>と業務提携した。
新規事業として15年12月、小売・飲食・サービス業などアルバイトを多く採用する企業を対象に求人応募受付代行サービス「Omusubi」を開始した。16年11月期上期28社受注し、通期80社の受注を目指している。16年6月には業務拡大に合わせて北海道北見市の自社コールセンターを拡張すると発表した。
■売上総利益率上昇傾向
15年11月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期16億61百万円、第2四半期17億77百万円、第3四半期18億円、第4四半期20億29百万円、営業利益は22百万円の赤字、53百万円、90百万円の赤字、1億18百万円だった。
15年11月期は電力スマートメーター設置業務関連費用先行などで14年11月期比大幅減益、最終赤字だったが、売上総利益率は25.3%で同0.5ポイント上昇した。販管費比率は24.5%で同2.8ポイント上昇した。ROEはマイナス9.7%で同44.9ポイント低下、自己資本比率は24.7%で同10.4ポイント低下した。配当は14年11月期と同額の年間10円(期末一括)だった。配当の基本方針は、中長期的な企業価値の向上と継続的・安定的な配当の両立を目指し、連結ベースでの株主資本配当率(DOE)5%を目安としている。
セグメント別(連結調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が同10.9%増の30億円で営業利益が同41.7%減の1億63百万円、人材ソリューション事業は売上高が同8.1%増の43億02百万円で営業利益が同16.3%増の3億60百万円だった。
■16年11月期第3四半期累計は大幅増収増益で黒字化
今期(16年11月期)第3四半期累計(12~8月)の連結業績は、売上高が前年同期比26.4%増の66億21百万円、営業利益が3億50百万円(前年同期は59百万円の赤字)、経常利益が3億41百万円(同66百万円の赤字)、純利益が2億77百万円(同1億24百万円の赤字)の大幅増収増益で黒字化した。
売上面では、ビジネスソリューション事業の障がい者雇用支援サービスが順調に推移し、人材ソリューション事業のコールセンター業務がグループ型派遣の推進によって拡大した。利益面では増収効果に加えて、ビジネスソリューション事業の電力スマートメーター設置業務の収益改善効果が寄与した。
売上総利益は同57.6%増加し、売上総利益率は28.9%で同5.7ポイント上昇した。販管費は同22.7%増加したが、販管費比率は23.6%で同0.7ポイント低下した。特別損失では固定資産除却損12百万円を計上したが、一方で本社移転費用36百万円が一巡した。
セグメント別(連結調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が同15.0%増の24億58百万円、営業利益が同20倍の3億79百万円だった。ロジスティクスアウトソーシングは低採算案件見直しで減収だが、障がい者雇用支援サービスが拡大し、電力スマートメーター設置業務の増収(前年同期比約4.3倍増収)や生産性向上による黒字化も寄与した。
人材ソリューション事業は売上高が同34.0%増の41億93百万円で、営業利益が同56.6%増の3億99百万円だった。社会保険料・雇用保険料負担の増加で売上総利益率がやや低下したが、グループ型派遣の推進でコールセンター業務(前年同期比約50%増収)が拡大した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期20億38百万円、第2四半期22億60百万円、第3四半期23億23百万円、営業利益は1百万円、2億46百万円、1億03百万円だった。
■16年11月期通期予想を増額修正、17年11月期も収益拡大基調
今期(16年11月期)通期連結業績予想(9月27日に増額修正)は、売上高が前期(15年11月期)比25.9%増の91億46百万円、営業利益が同8.2倍の4億86百万円、経常利益が同9.6倍の4億74百万円、純利益が3億82百万円の黒字(前期は68百万円の赤字)としている。
売上面では、ビジネスソリューション事業の障がい者雇用支援サービスや電力スマートメーター設置業務、人材ソリューション事業のコールセンター業務が順調に拡大する。利益面では増収効果に加えて、障がい者雇用支援サービスにおいて相対的に収益率の高い農園設備販売が計画超であり、電力スマートメーター設置業務の黒字化も寄与する。売上高・利益とも過去最高更新予想だ。
ビジネスソリューション事業のロジスティクスアウトソーシングは低採算の物流センター運営代行業務を縮小するため減収だが、収益回復に向けて単品(リピート通販)および越境ECの発送代行業務を強化している。障がい者雇用支援サービスは愛知県と千葉県で1ヶ所ずつの農園新設を控えている。来期(17年11月期)も収益拡大基調が期待される。
配当予想は据え置いて前期と同額の年間10円(期末一括)としている。配当性向は7.9%となる。配当増額の可能性もありそうだ。
■中期経営計画で「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」目指す
15年1月策定の新中期経営計画「Next2020-変化への挑戦」では、中期ビジョンとして「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」を掲げている。社会貢献性が高い分野、景気変化に強い分野、参入障壁が高い分野でバランスの取れたポートフォリオ経営を推進し、ストック型ビジネスの強化、低収益事業の改善、新たな収益柱の構築を目指す方針だ。
経営目標値は、営業利益率5%の早期達成と20年度までに業界最高水準10%の達成、安定的かつ継続的な配当の実施、ROE最低5%堅持としている。人材確保が課題だが、アウトソーシング需要は高水準であり、高付加価値サービスが牽引して中期的に収益拡大基調が期待される。
■株価は好業績を評価する流れに変化なく13年9月高値目指す
株価の動きを見ると、10月21日に年初来高値1828円まで上伸し、その後も年初来高値圏で堅調に推移している。好業績を評価する流れに変化はないだろう。
11月1日の終値1634円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS127円20銭で算出)は12.8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は0.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS218円74銭で算出)は7.4倍近辺である。なお時価総額は約49億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドだ。好業績を評価する流れに変化はなく、13年9月高値2197円を目指す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)