キムラユニティーは17年3月期減額だが営業利益は据え置いて増益予想、安心感強めて戻り試す

 キムラユニティー<9368>(東1)はトヨタ自動車向け部品包装が主力の総合物流サービス企業である。物流請負のNLS事業が成長し、北米や中国の収益拡大も進展している。円高影響などで17年3月期業績予想を減額修正したが、営業利益は据え置いて増益を確保する見込みだ。そして株価のネガティブ反応は見られず、営業増益予想に対する安心感を強めて、安値圏モミ合いから上放れの動きとなった。低PER、低PBRという指標面の割安感も見直して戻りを試す展開だろう。

■トヨタ向けが主力の総合物流サービス企業

 トヨタ自動車<7203>の補修部品・KD部品の包装・物流、および一般物流請負を主力とする総合物流サービス企業である。自動車販売・リース・整備などの自動車サービス事業、物流分野における情報サービス事業、派遣・アウトソーシングなどの人材サービス事業、太陽光発電による売電事業なども展開している。

 16年3月期のセグメント別売上構成比(連結調整前)は、物流サービス事業が65%、自動車サービス事業が31%、情報サービス事業+人材サービス事業+その他が3%だった。

 主力の物流サービス事業では、ネット通販市場の拡大も追い風として物流請負のNLS(ニューロジスティクスサービス)が拡大基調である。NLSの売上高(海外現地子会社分含む)は16年3月期に15年3月期比10.1%増の92億42百万円まで拡大した。

 自動車サービス事業では13年12月、軽自動車販売専門店を運営するスーパージャンボを子会社化した。15年12月にはスーパージャンボが、自動車小売・買取FCチェーン「カーセブン」を運営するカーセブンディベロップメントとFC契約を締結して中古車買取専門店「カーセブン国道1号中川店」を出店した。

■海外事業は収益改善基調

 海外はトヨタ自動車の海外生産拡大に合わせて、米国、メキシコ、ブラジル、中国、タイに拠点展開している。海外事業は物流量増加に伴って収益改善基調である。

 米国子会社は13年7月カナダの大手自動車部品メーカーMAGNAグループのDRIVE社から倉庫内物流請負を新規受注、14年7月新倉庫が稼働した。中国では自動車保有台数の増加に伴い、自動車アフターマーケットにおける補修部品需要の拡大基調が予想される。

■営業損益改善基調

 四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期107億47百万円、第2四半期110億47百万円、第3四半期115億81百万円、第4四半期123億93百万円、営業利益が1億88百万円、3億81百万円、4億43百万円、5億08百万円、16年3月期は売上高が114億77百万円、118億29百万円、125億17百万円、121億98百万円、営業利益が2億86百万円、5億16百万円、5億94百万円、5億53百万円だった。

 16年3月期は、自動車サービス事業でメンテナンス契約の車検費用を発生時に費用処理したことが一時的な売上原価増加要因となったが、物流サービス事業における国内格納器具製品事業の受注拡大、国内新規事業所開設を含めた拡販、北米子会社の物流業務拡大、円安による海外子会社売上の円換算額増加、自動車サービス事業におけるリース契約台数・メンテナンス契約台数の増加で過去最高の売上高となり、新規事業所での生産準備費用一巡も寄与して大幅営業増益だった。営業外では為替差損益が悪化した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、物流サービス事業は売上高が同4.8%増の316億35百万円(包装が同0.6%増の264億99百万円、格納器具製品が同33.6%増の51億36百万円)で、営業利益が同31.3%増の22億65百万円だった。国内格納器具製品事業の拡販、NLS分野における北米子会社の物流業務拡大、円安による円換算増加、国内外における収益改善活動の成果、新規事業所生産準備コスト一巡などが寄与した。

 自動車サービス事業は売上高が同5.1%増の150億78百万円、営業利益が同14.1%減の5億67百万円だった。リース契約台数・メンテナンス契約台数の増加などで車両リースが同2.2%増収、車両整備が同16.3%増収、自動車販売が同2.2%増収と順調だったが、メンテナンス契約の車検費用について発生時に費用処理したことが一時的な売上原価増加要因となった。

 情報サービス事業は、売上高が同5.4%増の11億62百万円、営業利益が同26.9%増の1億20百万円だった。人材サービス事業は売上高が同18.3%減の4億51百万円、営業利益が同56.2%減の14百万円だった。その他は売上高が同0.5%増の47百万円、営業利益が同0.1%減の14百万円だった。

■17年3月期第2四半期累計は計画未達だが営業増益確保

 10月27日発表した今期(17年3月期)第2四半期累計(4~9月)の連結業績(10月17日に減額修正)は、売上高が前年同期比0.9%減の231億04百万円、営業利益が同3.5%増の8億30百万円、経常利益が同7.1%減の7億95百万円、純利益が同9.3%増の4億30百万円だった。個人消費の低迷やメーカーの燃費不正問題の影響で自動車販売が計画を下回り、円高による為替換算影響や為替差損計上で売上高・利益とも計画を下回ったが、生産性改善効果などで営業増益を確保した。また繰延税金資産取崩額の減少で純利益は増益だった。

 売上総利益は同1.9%増加し、売上総利益率は16.3%で同0.5ポイント上昇した。販管費は同1.5%増加し、販管費比率は12.7%で同0.3ポイント上昇した。営業外収益では持分法投資利益が増加(前期90百万円、今期1億45百万円)したが、営業外費用で外貨建て資産に係る為替差損が増加(前期12百万円、今期2億06百万円)した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、物流サービス事業は売上高が同1.8%減の153億12百万円で営業利益が同4.1%減の10億16百万円だった。北米子会社における物流業務の増収が寄与したが、国内での格納器具製品事業の受注減少や円高による為替換算影響などで減収減益となった。自動車サービス事業は売上高が同0.9%増の71億68百万円で営業利益が同49.4%増の2億92百万円だった。リースおよびメンテナンス契約台数が増加した。情報サービス事業は売上高が同3.1%増の5億48百万円で営業利益が同0.9%減の49百万円、人材サービス事業は売上高が同17.3%減の2億07百万円で営業利益が6百万円の赤字(前年同期は10百万円の黒字)、その他は売上高が同1.4%増の27百万円、営業利益が同3.2%増の11百万円だった。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は再1四半期115億55百万円、第2四半期115億49百万円、営業利益は3億30百万円、5億円だった。

■17年3月期予想を減額だが営業利益は据え置いて増益予想

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想について10月17日に売上高、経常利益、純利益を減額修正した。前回予想(4月27日公表)に対して、売上高は18億円減額して前期(16年3月期)比0.4%増の482億円、営業利益は据え置いて同7.7%増の21億円、経常利益は3億円減額して同8.5%増の21億円、純利益は1億40百万円減額して同18.8%増の12億10百万円としている。配当予想は前期と同額で年間27円(第2四半期末13円、期末14円)としている。予想配当性向は26.9%となる。

 個人消費の低迷やメーカーの燃費不正問題の影響で自動車販売が計画を下回り、円高による為替換算影響や為替差損計上で売上高、経常利益、純利益が計画を下回るが、生産性改善効果などで営業利益は据え置き増益予想だ。物流サービス事業では北米子会社のNLS分野拡販、自動車サービス事業ではリース契約台数・メンテナンス契約台数の増加に取り組む。利益面では前期のメンテナンス契約における車検費用発生時処理の影響が一巡することも寄与する見込みだ。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.9%、営業利益が39.5%、経常利益が37.9%、純利益が35.5%とやや低水準だが、為替が円安方向に傾いていることもあり、第3四半期(10~12月)以降の挽回に期待したい。

■中期的に収益拡大基調

 15年5月策定の「中期経営計画2017」では、目標値として18年3月期の売上高520億円、営業利益25億円、経常利益27億円、純利益16億円、EPS132円56銭、ROE6.0%を掲げている。利益還元については業績や設備投資計画を踏まえつつ、連結配当性向30%以上を目標としている。

 セグメント別(連結調整前)目標は、物流サービス事業の売上高が337億円で営業利益が25億50百万円、自動車サービス事業の売上高が168億15百万円で営業利益が9億円、情報サービス事業の売上高が14億円で営業利益が1億20百万円、人材サービス事業の売上高が7億円で営業利益が50百万円、その他サービス事業の売上高が45百万円で営業利益が15百万円としている。

 また中期重点強化事業の目標値としては、深トヨタグループ事業の売上高を15年3月期比9.2%増の194億30百万円に、NLS(ニューロジスティクスサービス)事業の売上高を同29.2%増の108億50百万円に、海外事業の売上高を同29.8%増の80億円に、BtoB(CMS=カーマネジメントサービス)事業の管理台数を同90.7%増の4万台に、BtoC(車両販売)事業の車両販売台数を同70.5%増の4500台に拡大する方針だ。

■株主優待は3月末と9月末の年2回実施

 株主優待制度は毎年3月31日現在および9月30日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、保有株数に応じて「お米券」を贈呈している。さらに500株以上を継続2年以上保有している株主に対しては、保有株数に応じて長期優待が上乗せされる。たとえば1000株以上を2年以上保有している場合は「基本優待お米券5kg+長期優待お米券2kg=合計お米券7kg」を贈呈する。

■株価は基調転換して戻り試す、割安感も見直し

 株価の動きを見ると、年初来安値圏1000円~1050円近辺でのモミ合い展開から上放れの動きとなった。10月17日発表の減額修正に対するネガティブ反応は見られず、11月1日には1110円まで上伸した。営業増益予想に対する安心感を強めたようだ。

 11月1日の終値1108円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS100円26銭で算出)は11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間27円で算出)は2.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2056円75銭で算出)は0.5倍近辺である。時価総額は約134億円である。

 日足チャートで見ると上向きに転じた25日移動平均線がサポートラインの形となった。週足チャートで見ると戻りを押さえていた26週移動平均線を突破した。基調転換を確認する動きだ。低PER、低PBRという指標面の割安感も見直して戻りを試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

 

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