【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エスプールは今期増額の可能性が高く見直し買い

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

人材サービスのエスプール<2471>(JQS)の株価は、1月14日の決算発表後に水準を切り下げて、1月23日と26日に870円まで調整する場面があった。今期(15年11月期)の保守的な会社見通しが嫌気されているようだ。ただし28日は929円まで戻して目先的な売りの一巡感を強めている。今期業績見通しは増額の可能性が高いだけに、見直し買いの動きが強まるだろう。

ビジネスソリューション事業(ロジスティクスアウトソーシング、障がい者雇用支援・就労移行支援サービス、フィールドマーケティングサービス、マーチャンダイジングサービス、販売促進支援業務、顧問派遣サービスなど)、人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、携帯電話販売員派遣、ストアスタッフ派遣など)を展開している。

ロジスティクスアウトソーシングサービスはネット通販市場拡大が追い風であり、子会社エスプールロジスティクスが、ECサイト出店企業などの物流センター運営・発送代行サービスで新規顧客獲得を推進している。

 障がい者雇用支援サービスは障がい者雇用促進法に基づいて大企業の障がい者雇用をサポートするもので、企業向け賃貸農園「わーくはぴねす農園」の栽培設備販売収入と農園運営管理収入を収益柱としている。子会社エスプールプラスが運営する千葉県市原市「わーくはぴねす農園 市原ファーム」では23社の企業がサービスを利用し、14年6月に新設した千葉県長南町「わーくはぴねす農園 茂原ファーム」も完売した。また15年2月には第3農園となる山武農園が開設予定で、15年後半にも複数の農園の開設を計画している。高付加価値サービスとして千葉県を中心に事業規模を拡大する方針だ。

 フィールドマーケティングサービスでは、電力会社が推進するスマートメーター関連業務が拡大している。14年9月にはフィールドマーケティングサービスを展開する子会社エスプールエコロジーが、一般建設業(電気工事業、電気通信工事業)の許可を取得し、移動通信キャリアの通信・ネットワーク機器の設置業務、電力計のスマートメーター化に関連したサポート業務の事業拡大を推進している。

 人材ソリューション事業(子会社エスプールヒューマンソリューションズ)では、ファミリーマート<8028>のFC店舗向けに人材提供を一括で行う「人材サポートセンター」を設立し、コンビニエンスストア向けストアスタッフサービスを強化している。

 14年11月には販売促進支援業務に特化した子会社エスプールセールスサポートを設立した。マーチャンダイジング業務、クレジットカードなどの会員獲得業務、販売イベントブースの運営業務など、複数の事業部や子会社で提供していた販売促進支援業務を集約して事業拡大と収益性向上を目指す戦略だ。

 1月14日に発表した前期(14年11月期)の連結業績(1月8日に増額修正)は、売上高が前々期比23.1%増の66億04百万円、営業利益が同3.1倍の2億07百万円、経常利益が同3.9倍の1億91百万円、純利益が同3.7倍の1億65百万円だった。配当予想(10月2日に6期ぶりの復配を発表)は年間10円(期末一括)とした。主力事業が順調に拡大して計画を上回る増収増益だった。

 セグメント別(内部取引および全社費用等調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は障がい者雇用支援サービスへの企業の参画が想定以上となって売上高が同24.1%増の27億04百万円、営業利益が同53.9%増の2億80百万円、人材ソリューション事業はコールセンター業務と携帯電話販売業務が順調に拡大して売上高が同20.3%増の39億80百万円、営業利益が同23.2%増の3億10百万円だった。

 今期(15年11月期)の連結業績見通し(1月14日公表)は売上高が前期比10.5%増の73億円、営業利益が同9.4%増の2億26百万円、経常利益が同11.8%増の2億14百万円、純利益が同9.6%増の1億81百万円、配当予想が前期と同額の年間10円(期末一括)としている。

 セグメント別(内部取引および全社費用等調整前)の計画は、ビジネスソリューション事業の売上高が同28.2%増の34億68百万円、営業利益が同46.1%増の4億10百万円、そして人材ソリューション事業の売上高が同0.5%増の40億円、営業利益が同17.8%減の2億55百万円としている。なお人材ソリューション事業からビジネスソリューション事業への業務移管の影響は売上高で約2億40百万円としている。

 ロジスティクスアウトソーシングサービス、障がい者雇用支援サービス、スマートメーター関連業務、コールセンター業務などの主力事業が順調に拡大して増収増益見通しであり、売上高と営業利益は過去最高を更新する。またスタッフ採用難を織り込んで保守的な見通しとしているが、増額の可能性が高いだろう。

 1月14日には新中期経営計画「Next2020-変化への挑戦」を発表した。中期ビジョンに「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」を掲げ、社会貢献性・成長性の高い分野での事業展開、ニッチな分野・参入障壁の高い分野での事業展開を推進する。そして経営目標値には、営業利益率5%の早期達成、20年度までに業界最高水準10%の達成、安定的かつ継続的な配当の実施、ROEの最低5%の堅持を掲げた。高付加価値サービスが牽引して収益拡大基調だろう。

 株価の動きを見ると、前期業績増額修正を好感して1月8日に1153円まで急伸する場面があったが、買いが続かず1月14日の前期決算発表後は水準を切り下げた。1月23日と26日には870円まで調整する場面があった。今期の保守的な会社見通しが嫌気されているようだ。ただし28日は929円まで戻して目先的な売りの一巡感を強めている。

 1月28日の終値929円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円37銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.1%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS251円66銭で算出)は3.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると、大勢として800円~1200円近辺でのボックス展開だが、徐々に下値を切り上げている。そして足元では一旦割り込んだ26週移動平均線突破の動きを強めている。今期業績見通しは増額の可能性が高いだけに、見直し買いの動きが強まるだろう。

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