【アナリスト水田雅展の銘柄分析】Jトラストは調整の最終局面、積極的な業容拡大戦略を評価して切り返し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 Jトラスト<8508>(東2)の株価は、再び1000円台を割り込んで上値を切り下げる展開が続いている。1月26日には965円まで調整した。ただし900円台の下値支持線に接近して調整の最終局面のようだ。積極的な業容拡大戦略を評価して切り返しのタイミングだろう。なお2月12日に第3四半期累計(4月~12月)の業績発表を予定している。

 M&Aや債権承継などを積極活用して業容拡大戦略を推進し、金融サービス事業(事業者向け貸付、消費者向け貸付、クレジット・信販、信用保証、債権買取)、不動産事業、アミューズメント事業、海外金融事業(消費者金融業、貯蓄銀行業)、その他事業(システム開発など)を展開している。

 国内金融分野では、日本保証(12年3月ロプロが武富士の消費者金融事業を承継、12年9月ロプロと日本保証が合併)、KCカード(11年8月楽天KCを子会社化)、クレディア(12年7月子会社化)、個品割賦事業のNUCS(14年3月子会社化)、国内不動産分野・アミューズメント分野ではアドアーズ<4712>(12年6月子会社化)を傘下に置いている。

 なおKCカードは15年1月に「KCブランド」事業をヤフー<4689>とソフトバンク・ペイメント・サービスに譲渡した。これに伴ってNUCSの「NUCSブランド」事業をKCカードに承継させた。グループのクレジットカード事業を「NUCSブランド」として継続し、KCカードは15年1月にJトラストカードに商号変更した。また14年12月には、連結子会社エーエーディを健康コーポレーション<2928>に譲渡し、連結子会社JTインベストメントは清算が結了した。

 海外金融分野では韓国での事業基盤確立を推進している。11年4月に消費者金融の韓国・ネオラインクレジット貸付を子会社化した。12年10月に貯蓄銀行認可を受けた韓国・親愛貯蓄銀行は、未来貯蓄銀行の一部資産・負債を承継し、13年1月韓国・ソロモン貯蓄銀行から、13年6月韓国・エイチケー貯蓄銀行から消費者信用貸付債権の一部を譲り受けた。

 14年3月には韓国・ハイキャピタル貸付、韓国・ケージェイアイ貸付を子会社化し、14年8月には韓国・ハイキャピタル貸付、韓国・ケージェイアイ貸付および韓国・ネオラインクレジット貸付の貸付事業を韓国・親愛貯蓄銀行に譲渡した。今後は韓国・親愛貯蓄銀行の相対的に低金利の預金を原資として事業を運営し、グループ全体として収益構造の改善を進める。

 14年6月に発表した韓国スタンダードチャータードキャピタルおよび韓国スタンダードチャータード貯蓄銀行(SC貯蓄銀行)の買収については、1月19日に韓国スタンダードチャータード金融持株会社が保有するSC貯蓄銀行の株式全てを取得し、SC貯蓄銀行はJT貯蓄銀行に名称変更した。今後は親愛貯蓄銀行とJT貯蓄銀行の合併を進めるとともに、韓国スタンダードチャータードキャピタルの株式取得に向けての作業を行うとしている。

 また14年11月には、自動車割賦金融業を展開する韓国・亜州キャピタルの株式売却に係る優先交渉権を取得している。売渡人と諸条件について協議を行い、公表すべき詳細が判明しだい速やかに公表するとしている。

 アジアへの展開については、13年12月に子会社Jトラスト・アジア(シンガポール)がインドネシアのマヤパダ銀行と資本業務提携し、14年11月にはインドネシアの商業銀行であるムティアラ銀行を連結子会社化した。

 アミューズメント分野では14年9月、子会社アドアーズが韓国でカジノ事業を展開するJBアミューズメント(JBA、韓国KOSDAQ市場上場)の第三者割当増資を引き受けて第2位株主となった。韓国・済州新羅ホテルでカジノ事業を行うマジェスターを含むJBAグループと協力関係を構築し、アミューズメント事業におけるシナジー創出や事業拡大を目指すとしている。

 不動産分野では14年9月、子会社Jトラストアジアを通じて、シンガポールの不動産開発会社LCD(シンガポール証券取引所上場)の株式29.5%を取得して筆頭株主となった。LCDはタイ、イギリス、ベトナムなどに著名なホテルやサービスアパートメントを保有している。LCDと戦略的協業関係を構築するとともに、シンガポールを拠点として東南アジアに総合的な不動産業を展開する方針だ。なおLCDの商号をJトラスト・インターナショナルに変更予定としている。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(8月13日公表)は営業収益(売上高)が前期比11.9%増の692億91百万円、営業利益が同80.7%減の26億56百万円、経常利益が同79.5%減の27億38百万円、純利益が同0.8%増の112億39百万円、配当予想(5月14日公表)が前期と同額の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)としている。

 中期成長向けてM&Aや事業再編を活用したグループの事業基盤構築・強化に取り組んでいるため、今期は一時的に営業費用が増加して営業減益、経常減益の見通しとしている。純利益については、韓国スタンダードチャータードキャピタルおよび韓国JT貯蓄銀行の株式取得に伴う負ののれん発生益が寄与する。

 第2四半期累計(4月~9月)は不良債権売却による債権売却損計上や、不良資産整理に備えた貸倒引当金積み増しを行ったため赤字だったが、黒字化を見据えた一時的な損失計上であり、今後は収益構造の着実な改善が見込めるとしている。当面はM&A・事業再編、一時的利益・費用の計上などに伴って収益が大幅に変動する可能性があるが、積極的な業容拡大戦略で中期的には収益拡大基調だろう。

 なおA&Pフィナンシャル貸付および同社代表取締役である崔潤氏から提起されていた損害賠償請求訴訟について1月21日、東京地方裁判所より両訴訟とも原告らの請求を全て棄却する判決が言い渡されたと発表している。

 また日興アイ・アールが実施した「2014年度 全上場企業ホームページ充実度ランキング調査」の総合ランキング部門において、全上場企業3586社中38位(前回69位)となり、最優秀サイトに選ばれた。

 株価の動きを見ると、再び1000円台を割り込んで上値を切り下げる展開が続いている。1月26日には965円まで調整した。ただし14年10月の安値950円を割り込むことなく下げ渋り感を強めている。調整の最終局面だろう。

 1月28日の終値970円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS95円24銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.0%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS1502円54銭で算出)は0.6倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、900円台の下値支持線に接近して調整の最終局面のようだ。積極的な業容拡大戦略を評価して切り返しのタイミングだろう。

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