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インテリジェントウェイブは需要高水準で17年6月期第1四半期実質大幅増収、通期増収増益予想
- 2016/11/21 08:42
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インテリジェントウェイブ<4847>(JQ)は金融分野や情報セキュリティ分野を中心にシステムソリューション事業を展開している。需要が高水準で17年6月期第1四半期(非連結決算に移行)は実質的に大幅増収だった。そして通期増収増益予想である。株価は第1四半期業績を嫌気する形で反落したが、目先的な売りが一巡して戻りを試す展開だろう。
■金融システムや情報セキュリティ分野のソリューションが主力
大日本印刷<7912>の連結子会社で、ソフトウェア開発を中心にソリューションを提供する金融システムソリューション事業、情報セキュリティ分野を中心にパッケージソフトウェアや保守サービスを提供するプロダクトソリューション事業を展開している。16年6月期のセグメント別売上構成比は金融システムソリューション事業88.6%、プロダクトソリューション事業11.4%だった。
高度な専門性が要求されるクレジットカード決済のフロント業務関連システムで特に高シェアを持ち、クレジットカード会社、ネット銀行、証券会社など金融関連のシステム開発受託・ハードウェア販売・保守サービスを収益柱としている。
クレジットカード利用承認や銀行ATMネットワーク接続などの決済ネットワークを支える仕組みのNET+1(ネットプラスワン)、クレジットカード不正利用検知のACEPlus(エースプラス)、内部情報漏えい対策システムCWAT(シーワット)などの製品を強みとしている。CWATはPCなど情報端末のファイル操作、メール送信、外部メディアへの書き込み、接続などを監視し、企業の情報を守る情報漏えい対策システムである。
■事業領域拡大に向けて新製品開発を強化
金融システムソリューション事業ではクレジットカード決済のフロント業務関連システムから、バックオフィス業務関連など基幹業務システム関連への事業領域拡大を目指している。またプロダクトソリューション事業では、サイバー攻撃や情報漏えいに対応したセキュリティ関連のソリューションを強化している。
新製品開発では14年末から、当社保有技術を活用した新製品OnCore(オンコア)の開発を進めている。NET+1やACEPlus等の機能を搭載し、さまざまなシステム開発におけるプラットフォームの基盤となる製品だ。16年1月から国内販売を開始し、国内第一号案件として大手クレジットカード会社のカード決済関連業務で売上を計上した。さらにハードウェアをセットにしたパッケージ型製品として、金融以外の業界向けや東南アジアでの販売も視野に入れている。
10月25日にはクレジットカード加盟店契約業務のシステムを複数の顧客で共同利用するサービスを開発し、琉球銀行の「りゅうぎんカード加盟店サービス」に採用されたと発表している。
■アライアンス戦略も積極推進
アライアンス戦略も積極推進し、14年2月ジーフィー(GIFI)と個人投資家向け次世代オンライントレードシステム分野で業務提携、15年2月CyberArk社(イスラエル)と国内販売代理店契約締結、Devexperts Japan社と業務提携、15年5月米パロアルトネットワークス社の標的型攻撃対策ソフトウェア「アドバンストエンドポイント プロテクションTraps」販売開始した。
16年4月ソフトバンクと日本IBMの「IBM Watson エコシステムプログラム」のテクノロジーパートナーに認定された。16年6月イリューシブ・ネットワークス社(イスラエル)のサイバーセキュリティ対策ソリューション「Deception Everywhere」の国内販売を開始した。
また11月8日には米First Performanceと、カード利用者が自身の決済カードの利用条件をリアルタイムにコントロールする「Budgeting Control & Alerts」クラウドプラットフォームサービス事業で提携したと発表している。18年までにカード事業会社10社への導入を目指す。
■金融業界のシステム投資や案件ごとの採算性が影響する収益構造
四半期別推移を見ると、15年6月期の売上高は第1四半期14億26百万円、第2四半期14億18百万円、第3四半期14億57百万円、第4四半期18億58百万円、営業利益は94百万円、89百万円、99百万円、2億01百万円、16年6月期の売上高は13億31百万円、16億65百万円、18億90百万円、23億20百万円、営業利益は34百万円、1億68百万円、2億27百万円、2億85百万円だった。金融業界のシステム投資の動向や案件ごとの採算性が影響しやすく、期後半の構成比が高い収益構造である。
16年6月期連結業績は15年6月期比17.0%増収、47.5%営業増益、49.0%経常増益、1.6%最終増益だった。特別利益一巡や税金費用増加で純利益の伸びは小幅だったが、金融システムソリューション、プロダクトソリューションとも好調に推移して計画超の増収増益だった。
売上総利益は同12.0%増加したが、売上総利益率は27.7%で同1.2ポイント低下した。販管費は同1.2%減少し、販管費比率は17.7%で同3.3ポイント低下した。特別利益では投資有価証券売却益2億96百万円が一巡し、特別損失では退職給付費用2億08百万円が一巡した。ROEは9.7%で同0.4ポイント低下、自己資本比率は72.1%で同2.5ポイント低下した。配当は同1円増配の年間6円(期末一括)で配当性向は33.0%だった。
セグメント別に見ると、金融システムソリューションは売上高が同15.0%増の63億86百万円で営業利益が同6.0%増の6億70百万円だった。カテゴリ別売上高はソフトウェア開発が同23.5%増の40億16百万円、保守が同1.3%減の8億24百万円、ハードウェアが同16.4%減の7億93百万円、自社製パッケージが同24.7%増の3億08百万円、他社製パッケージが同64.1%増の4億43百万円だった。
プロダクトソリューションは売上高が同35.8%増の8億20百万円で営業利益が43百万円の黒字(前々期は1億48百万円の赤字)だった。売上高の内訳は自社製品が同12.7%増の4億25百万円、他社製品が同74.0%増の3億95百万円だった。
■17年6月期(非連結決算に移行)第1四半期は実質大幅増収
11月2日発表した今期(17年6月期)第1四半期(7~9月)の非連結業績は売上高が16億53百万円、営業利益が37百万円、経常利益が37百万円、純利益が20百万円だった。今期から非連結決算に移行したため前年同期の連結業績との比較で見ると24.2%増収、8.8%営業増益、7.5%経常減益、39.4%最終減益だった。不採算案件の影響で営業利益は微増益にとどまったが、需要が高水準で大幅増収だった。受注残高は同62.1%増の33億51百万円となった。
売上総利益は同3.0%増加にとどまり、売上総利益率は20.6%で同4.3ポイント低下した。販管費は同2.4%増加にとどまり、販管費比率は18.4%で同3.9ポイント低下した。
セグメント別に見ると、金融システムソリューションは売上高が同27.6%増の14億60百万円、営業利益が同2.2倍の52百万円、売上高の内訳はカード系が12億10百万円(同9億01百万円)、証券系が2億50百万円(同2億43百万円)だった。プロダクトソリューションは売上高が同3.8%増の1億93百万円、営業利益が14百万円の赤字(前年同期は10百万円の黒字)、売上高の内訳は自社製品が67百万円(同1億17百万円)、他社製品が1億25百万円(同69百万円)だった。
■17年6月期(非連結決算に移行)通期は実質増収増益予想
今期(17年6月期)の非連結業績予想は前回予想(8月3日公表、韓国の子会社の清算結了に伴って非連結に移行)を据え置いて、売上高が80億円、営業利益が8億円、経常利益が8億円、純利益が5億50百万円としている。前期(16年6月期)連結業績との比較で見ると11.0%増収、12.0%営業増益、9.6%経常増益、15.1%最終増益、個別業績との比較で見ると11.0%増収、9.3%営業増益、6.6%経常増益、7.2%最終増益となる。
需要が高水準であり、マネジメント体制整備・強化による開発プロジェクト単位での労務管理および収支管理徹底も寄与して、実質的に増収増益予想である。共同利用型サービスは第2四半期(10~12月)から順次売上計上予定である。また不採算案件の影響は第1四半期限りの一過性要因としている。配当予想は前期と同額の年間6円(期末一括)で予想配当性向は28.7%となる。
セグメント別の計画は、金融システムソリューションの売上高が同8.0%増の69億円で営業利益が同7.5%増の7億20百万円、プロダクトソリューションの売上高が同34.1%増の11億円で営業利益が同86.0%増の80百万円としている。金融システムソリューションはカード系・証券系のシステム開発が伸長し、アクワイアリング業務の共同利用型サービス開始(今期3社開始、5社まで見込む)も寄与する。プロダクトソリューションは他社製パッケージの好調が続く見込みだ。
なお金融システムソリューションのカテゴリ別売上高の計画は、ソフトウェア開発が同11.1%増の44億60百万円、保守が同9.2%増の9億円、ハードウェアが同11.0%増の8億80百万円、自社製パッケージが同9.1%減の2億80百万円、他社製パッケージが同14.2%減の3億80百万円としている。
通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高20.7%、営業利益4.6%、経常利益4.6%、純利益3.6%と低水準の形だが、期後半の構成比が高い収益構造のためネガティブ要因とはならない。需要が高水準であり、通期ベースで好業績が期待される。
■クレジットカード・金融業界のシステム投資は高水準
クレジットカード・金融業界では、システム・ハードウェア更新投資、クレジットカード会社の資本関係変化に伴うシステム開発投資、不正検知を含むFEPシステム投資、ブランドプリペイドカードやモバイル端末決済など決済サービス多様化に対応したシステム投資、訪日外国人旅行客の増加に伴うコンビニエンスストアATMや海外カードに対応した新規投資などで、設備投資が高水準に推移する見通しだ。
そして中期成長戦略として、需要変動や採算性の影響を受けやすい開発請負型から、ASP方式によるセキュリティソフト・システム利用課金などストック型収益構造への転換を推進する方針だ。中期経営目標値としては売上高100億円、営業利益10億円を目指している。高水準の投資需要を背景にクレジットカード・金融関連の開発案件受注増加が期待され、さらにサイバー攻撃対策や情報漏えい対策などセキュリティ関連の需要増加も期待される。中期的に収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は6月末に実施、セキュリティ製品を贈呈
株主優待制度は、毎年6月末現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、Dr.Web社のセキュリティ製品(Windows版またはMac版)1ライセンス(PC1台用)を贈呈する。
■株価は第1四半期業績を嫌気した形だが、目先的な売り一巡して戻り試す
株価の動きを見ると、10月20日に戻り高値535円まで上伸したが、第1四半期業績を嫌気する形で反落した。ただし460円近辺で下げ渋る動きだ。目先的な売りが一巡したようだ。
11月18日の終値473円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS20円88銭で算出)は22~23倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の個別BPS190円34銭で算出)は2.5倍近辺である。時価総額は約125億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、52週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。目先的な売りが一巡して戻りを試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)