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パシフィックネットは下値固め完了して上放れの動き、中古モバイル好調で17年5月期増益予想
- 2016/11/29 06:54
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パシフィックネット<3021>(東2)は中古パソコン・モバイル機器のリユースやデータ消去を展開するセキュリティサービス企業である。17年5月期は中古モバイル機器の好調などで大幅増益予想である。株価は下値固めが完了してモミ合い上放れの動きを強めている。教育IT関連やサイバーセキュリティ関連のテーマ性があり、3%台後半の高配当利回りも見直して戻りを試す展開が期待される。
■中古情報機器のリユース・データ消去などを展開
中古パソコン・モバイル機器のリユースやデータ消去を展開するセキュリティサービス提供企業である。パソコン、タブレット端末、スマホなど中古情報機器の引取回収・販売事業を主力として、事業者向けレンタル事業も展開している。16年5月期のセグメント別売上構成比は引取回収・販売事業84%、レンタル事業16%、営業利益構成比は引取回収・販売事業28%、レンタル事業72%だった。
旗艦店「PC-NETアキバ本店」など全国主要都市に店舗展開し、インバウンド需要対応で15年5月期に7店舗を免税店化した。16年6月には中古モバイル買取・販売専門店としてRmobile(アールモバイル)日本橋店(大阪市)をオープンした。また主要仕入先のリース・レンタル会社や一般企業からの引取回収強化、生産性向上、業務プロセス効率化などで収益力を高めている。
企業や官公庁のセキュリティ意識やコンプライアンス意識の向上を背景として中古情報機器の入荷台数が増加し、データ消去サービスなども奏功して顧客カバー率が一段と広がっている。
■データ消去・処分サービスなどセキュリティ体制に強み
全国主要都市の引取回収拠点や、ISO27001(ISMS)およびプライバシーマークに準拠した情報漏洩防止のセキュリティ体制に強みを持つ。IT機器データ消去・処分サービスではマイナンバー制度のガイドラインに完全対応し、データ消去証明書発行サービスも行っている。
15年5月には電子記録メディア破壊機メーカーの日東造機から、オンサイト・オフサイトデータ物理破壊消去サービスの最優秀会社として「Crush Box プラチナサービスリセラー」の第1号に認定された。マイナンバー完全対応データ消去サービスに関しては16年1月都築テクノサービスとパートナーシップ締結、16年1月米国方式のハードディスク破壊サービス(NSA/DoD準拠のV字型破壊)を開始した。
■買取・回収サービスを強化
14年10月日本初のIT機器処分管理Webサービス「P-Bridge」の無償提供開始、15年10月特許取得した。ソリューション・プラットフォームと位置付けて16年1月には「P-Bridge」と、15年9月公開の情報システム部門向けWEBメディア「ジョーシス」を連携して、双方の会員アカウントを共通化した。16年5月期末のアカウント発行社数は約1800社に達している。10月25日には「P-Bridge」にIT機器レンタル見積依頼~発注の新機能を追加し、将来的なIT機器管理プラットフォーム化に向けて前進したと発表している。
15年12月iPhoneおよびiPadの個人向け買取サービスを強化するため、直営店での店頭買取に加えて専用Webページ「R-mobile」を設置して買取受付を開始した。16年7月には「P-Bridge」に新機能「かんたんモード」を実装した。また中古PC&モバイル専門店PCNET8店舗および中古モバイル専門店Rmobile2店舗の店頭に「ポケモンGO」コーナーを設置し、同アプリに最適な中古スマホと充電済みモバイルバッテリーの販売、およびスマホ無料充電サービスを開始した。
■リユースの社会的取り組みを強化
14年11月Windowsクラスルーム協議会の「Windowsクラスルーム包括プログラム」のサービスメニューとして「教育機関のお客様向けECOサービス」を開始した。教育現場におけるICT機器導入時・処分時のコスト削減サービスや、ICT機器処分時の情報漏洩などセキュリティリスクを軽減するサービスを教育機関向けに提供する。
15年7月特定非営利活動法人.sopa.jpと、子どもの学習支援と企業の使用済みパソコンの最活用を行うCSRプログラム「リユースforキッズ」を開始し、環境省の「平成27年度使用済製品等のリユースに関するモデル事業」として採択された。
■周辺領域への事業展開も推進
中期成長に向けて新たなレンタル市場・リユース市場・周辺事業への展開も推進している。15年10月光通信<9435>と合弁会社2B(トゥー ビー、当社出資比率は当社51%)を設立してBtoB専門MVNO(仮想移動体通信事業者)事業に進出し、16年1月法人向け総合通信サービス「Bizmo」第2弾として最新モバイル端末の商品ラインナップを拡充、16年6月サービス内容拡充と専用サイト全面リニューアルを実施した。
15年11月ドローン(無人航空機)の法人向けレンタルを開始、企業のマイナンバー対策をサポートする「マイナンバー安心パック」を開始、16年3月thisisと協業してレンタルアート(法人向けにインテリアとして展示する絵画をレンタルするサービス)を開始した。16年8月にはAED(自動体外式除細動器)のレンタル・販売を開始した。AEDレンタル・販売、設置、付随する講習・サポート、撤去・処分までワンストップサービスで提供する。
■中古情報機器の流通量の影響を受けやすい収益構造
四半期別推移を見ると、15年5月期は売上高が第1四半期11億50百万円、第2四半期10億86百万円、第3四半期10億52百万円、第4四半期12億03百万円、営業利益が1億19百万円、32百万円、36百万円、40百万円、16年5月期は売上高が10億70百万円、10億90百万円、10億72百万円、13億31百万円、営業利益が5百万円、25百万円、33百万円、55百万円だった。
中古情報機器の流通量の影響を受けやすい収益構造である。16年5月期は15年5月期比減益だった。中古スマートフォン・タブレット等の中古モバイル機器の市場は拡大基調だが、15年度の国内ビジネス向け新品パソコン出荷台数が23.8%と2年連続大幅減少(MM総研2015年度国内パソコン出荷概要)し、企業等からの使用済み情報機器排出台数も大幅減少した。
14年4月「WindowsXP」サポート終了に伴う入れ替え需要の反動減が想定以上に長期化し、新品パソコン価格の高止まりや「Windows10」への切り替えに対する慎重姿勢なども影響した。このため売上高が計画を下回り、価格競争による売上総利益率の低下などで大幅減益だった。
売上総利益は同5.8%減少し、売上総利益率は43.3%で同3.4ポイント低下した。販管費は同0.7%減少し、販管費比率は40.7%で同1.0ポイント低下した。ROEは4.7%で同5.0ポイント低下、自己資本比率は63.4%で同0.6ポイント上昇した。配当は同3円増配の年間19円(期末一括)で配当性向は108.2%だった。配当については継続的な利益還元を基本としたうえで、業績連動型の配当方式を採用し、当期純利益の30%以上を配当性向の目安として決定することを基本方針としている。
セグメント別動向を見ると、引取回収・販売事業は売上高が同1.5%減の38億26百万円、営業利益が同83.1%減の33百万円だった。中古モバイル機器は好調だったが、ビジネス系使用済みパソコンの入荷台数が減少した。レンタル事業は売上高が同21.6%増の7億36百万円、営業利益が同2.9倍の84百万円だった。ストック収益拡大に向けた営業強化や2Bとの協業効果で顧客数が拡大した。
■17年5月期第1四半期は赤字だが増収基調
今期(17年5月期)第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比7.2%増の11億47百万円、営業利益が45百万円の赤字(前年同期は5百万円の黒字)、経常利益が41百万円の赤字(同13百万円の黒字)、純利益が30百万円の赤字(同5百万円の黒字)だった。
買い取り競争激化による仕入価格上昇や事業拡大に向けた先行投資などが影響して赤字だが、中古モバイル機器の好調で増収基調だ。売上総利益は同10.7%減少し、売上総利益率は37.3%で同7.4ポイント低下した。販管費は同横ばいとなり、販管費比率は41.2%で同3.0ポイント低下した。
セグメントに見ると、引取回収・販売事業は売上高が同3.6%増の9億27百万円、営業利益が61百万円の赤字(同16百万円の赤字)だった。中古モバイル機器が好調で増収だが、ビジネス系使用済みパソコンの入荷台数減少や買い取り競争激化による仕入価格上昇で赤字が拡大した。レンタル事業は売上高が同25.7%増の2億19百万円、営業利益が同26.2%減の16百万円だった。営業強化などで売上高・売上総利益とも増加したが、さらなる事業拡大に向けた先行投資で営業減益だった。
■17年5月期通期は大幅増益予想で収益改善期待
今期(17年5月期)連結の業績予想(7月15日公表)は売上高が前期(16年5月期)比10.7%増の50億50百万円、営業利益が同2.6倍の3億12百万円、経常利益が同2.3倍の3億20百万円、純利益が同2.4倍の2億14百万円としている。配当予想は前期と同額の年間19円(期末一括)としている。予想配当性向は45.9%となる。
ビジネス系パソコン出荷台数は前年並みを想定し、ビジネス系タブレット等中古モバイル市場の拡大、新たなIT機器(VR・AR=仮想現実・拡張現実関連機器、IoT、ドローン等)の市場拡大、引取回収・販売事業におけるシェア拡大・収益性向上などで大幅増益予想である。
■中期経営計画の目標値見直し、18年5月期基準年度として東証1部目指す
16年7月、中期経営計画「VISION2018」(15年7月策定)の目標値見直しを発表した。引取回収・販売事業の事業環境悪化に対応し、修正後の目標値は18年5月期売上高60億円、営業利益4億50百万円、営業利益率7.5%、ROE10.0%以上とした。そして18年5月期を基準年度として東証1部への市場変更を目指す。
なお東証マザーズ上場後10年を経過した上場会社の上場選択に基づき、東証2部を選択し、16年10月1日付で東証マザーズから東証2部へ市場変更した。
市場環境については、法人向けパソコンは2016年度横ばい、2017年度以降「Windows10」への移行拡大、法人向けタブレットは2016年度V字回復、2017年度以降市場拡大、中古携帯・スマホ市場は拡大基調、MVNO市場は個人・法人とも順調拡大の見込みとしている。
成長に向けた基本戦略に変化はなく、競争優位確立と営業マーケティング強化による顧客拡大、モバイル・IoT・マイナンバーなど技術革新・社会的要請に対応したレンタル市場・リユース市場・周辺事業の創出と展開、レンタル事業拡大とリユース事業との相乗効果の発揮、戦略実行力の強化と自律型組織・人財への変革としている。
また事業モデルとサービス分野を追加した。機器の導入・運用から使用済み機器の処分・再利用までをトータルにカバーするLCM(ライフサイクルマネジメント)を事業ドメインに設定し、LCMを高い相乗効果のある5つの事業・サービス分野に分け、新たな成長モデルを構築する。
5つの事業・サービス分野は、ITファイナンス(最新のIT機器導入と運用を中長期レンタル・付帯サービスで支援)、ITセキュリティ(使用済み機器のデータ消去等で情報漏えいを防止)、ITエコロジー(リユースで資源再利用を促進)、IT通信(モバイル化やIoTを通信等で支援)、ITメディア(ITに携わる方々に活きた情報と交流の場を提供)とした。
■株価は下値固め完了してモミ合い上放れの動き
株価の動き(16年10月1日付で東証マザーズから東証2部へ市場変更)を見ると、安値圏500円近辺でモミ合う展開だが、11月22日には525円まで上伸する場面があった。下値固めが完了してモミ合いから上放れる動きのようだ。
11月28日の終値504円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS41円35銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間19円で算出)は3.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS373円61銭で算出)は1.3倍近辺である。時価総額は約26億円である。
週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線と26移動平均線を突破する動きを強めている。教育IT関連やサイバーセキュリティ関連のテーマ性があり、3%台後半の高配当利回りも見直して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)