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京写は17年3月期第2四半期累計減益だが通期増益予想
- 2016/11/29 06:44
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
京写<6837>(JQ)はプリント配線板の大手メーカーである。17年3月期第2四半期累計は減益だったが、通期はLED照明関連の市場拡大を追い風に、新規取引拡大も寄与して大幅営業増益予想である。株価は徐々に下値を切り上げて基調転換の動きを強めている。0.7倍近辺の低PBRなど指標面の割安感も見直して戻りを試す展開が期待される。
■プリント配線板の大手メーカー
プリント配線板の大手メーカーである。世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を収益柱として、実装治具関連事業も展開している。
プリント配線板は防塵対策基板、高熱伝導・放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持ち、生産は国内、中国、インドネシアに拠点展開している。また実装治具関連事業も強化し、14年10月にはキクデンインターナショナルからフロー半田付け搬送キャリア事業を譲り受けた。なお海外販売拠点として16年8月、韓国LGエレクトロニクスとの取引拡大に向けて京写韓国、北米での自動車関連の拡販に向けて京写メキシコを設立した。
16年3月期の製品別売上高構成比は片面板44.2%、両面板42.4%、その他(実装治具関連)13.4%、製品用途別売上高構成比は自動車関連28.5%、家電製品24.2%、事務器13.1%、映像関連7.6%、アミューズメント関連3.8%、その他17.6%だった。幅広い用途と顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得し、LED照明関連の市場拡大も背景として製品サイクルの長い自動車関連や家電関連を強化している。
■LED照明関連の市場拡大が追い風
四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期41億65百万円、第2四半期44億41百万円、第3四半期45億35百万円、第4四半期45億36百万円、営業利益が2億53百万円、2億33百万円、2億39百万円、1億91百万円、16年3月期は売上高が46億97百万円、46億81百万円、50億92百万円、49億09百万円、営業利益が1億94百万円、60百万円、2億21百万円、42百万円だった。
収益は自動車や家電などの生産動向の影響を受けやすいが、LED照明関連の市場拡大が追い風である。16年3月期は国内でスマートメーター関連を新規受注し、LED照明の家電製品分野も堅調だった。海外は自動車関連が伸長した。ただし中国の景気減速の影響で片面板の受注が減少するなどプリント配線板が全体として伸び悩み、海外工場における内製稼働率の低下、円安に伴う輸入販売品や原材料などの調達コスト上昇、搬送用治具事業譲受に伴う人件費の増加などで減益だった。
なお売上総利益は15年3月期比2.8%減少し、売上総利益率は17.9%で同2.3ポイント低下した。販管費は同11.2%増加し、販管費比率は15.3%で同0.3ポイント上昇した。経常利益増減分析は増益要因が売上要因3億44百万円、減益要因が原価率要因4億44百万円、販管人件費増減要因2億99百万円、営業外要因21百万円としている。為替影響は売上高でプラス13億円、営業利益でマイナス1億円、経常利益でマイナス1.3億円だった。ROEは7.5%で同4.8ポイント低下、自己資本比率は47.7%で同3.2ポイント上昇した。配当性向は24.2%だった。
セグメント別に見ると、日本は売上高が同2.2%減の76億49百万円で営業利益(連結調整前)が同57.1%減の89百万円、中国は売上高が同23.5%増の100億08百万円で営業利益が同26.0%減の5億38百万円、インドネシアは売上高が同1.5%減の17億21百万円で営業利益が同1億23百万円の赤字(前々期は33百万円の赤字)だった。
■17年3月期第2四半期累計は製品構成差で減益
今期(17年3月期)第2四半期累計(4~9月)の連結業績は売上高が前年同期比0.4%減の93億45百万円、営業利益が同7.3%減の2億36百万円、経常利益が同9.4%減の2億44百万円、純利益が同15.5%減の1億87百万円だった。両面配線板が過去最高売上高となったが、片面配線板が減少し、実装関連事業も受注減少して減益だった。
製品別売上高は、両面配線板が同17.7%増の43億04百万円、片面配線板が同12.0%減の38億76百万円、その他が同11.8%減の11億64百万円だった。分野では、自動車関連が同15.2%増の33億86百万円、家電製品が同10.0%減の21億11百万円、事務機が同18.4%減の10億50百万円、映像関連が同19.0%増の8億76百万円、アミューズメントが同31.7%減の2億65百万円、その他が同1.6%減の16億55百万円だった。地域別では日本が同1.6%減の37億52百万円、中国が同5.2%増の36億64百万円、東南アジアが同2.9%減の13億75百万円、北米が同12.7%減の3億37百万円、その他が同23.2%減の2億15百万円だった。
自動車関連が国内外で好調に推移して全体の売上高は概ね前期並みとなり、海外工場における合理化も進展したが、海外工場で外注比率の高い両面配線板が増収だったのに対して、国内で内製比率の高い片面配線板が減収だったという製品構成差の影響で、売上総利益率が低下して減益だった。売上総利益は同1.3%減少し、売上総利益率は18.0%で同0.2ポイント低下した。販管費は同0.2%減少し、販管費比率は15.5%で同横ばいだった。営業外では為替差益が減少(前期12百万円、今期11百万円)した。特別利益では前期計上の投資有価証券売却益36百万円が一巡した。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期46億54百万円、第2四半期46億91百万円、営業利益は1億04百万円、1億32百万円だった。
■17年3月期通期は新規取引拡大して大幅営業増益予想
今期(17年3月期)通期の連結業績予想(4月28日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比3.2%増の200億円、営業利益が同44.9%増の7億50百万円、経常利益が同36.0%増の7億円、純利益が同5.6%増の5億円としている。配当予想は前期と同額の年間8円(期末一括)で予想配当性向は22.9%となる。
売上面では自動車関連が好調に推移し、中国における韓国LGエレクトロニクス向け新規取引拡大(テレビ用LEDバックライト)が本格寄与する。片面配線板の需要回復に伴う内製稼働率の上昇、海外工場における合理化効果などで大幅営業増益予想である。想定為替レートは1米ドル=110円としている。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が46.7%、営業利益が31.5%、経常利益が35.0%、純利益が37.5%と低水準の形だが、家電関連、事務機関連、アミューズメント関連も需要回復傾向を強めていることも考慮すれば、通期ベースで好業績が期待される。
■新中期経営計画で21年3月期営業利益17億円目標
16年6月策定の新中期経営計画では、経営ビジョンを「一流になる」、基本戦略を「企業間連携を活用し電子回路デバイス分野において独自技術を武器に成長分野を攻める」とした。企業間連携によって販路拡大、新マーケット開拓、技術開発を図る方針だ。
目標数値としては、21年3月期売上高280億円(片面配線板105億円、両面配線板145億円、治具20億円、実装10億円)、営業利益17億円(営業利益率6.0%)を掲げた。株主還元については配当性向20%を目標とする。
成長に向けた重点戦略としては、片面配線板は未開拓地域および新規顧客への拡販、独自技術による顧客および成長分野の開拓、両面配線板は海外での拡販および海外生産体制の拡充、実装は国内成長分野への特化と生産自動化、治具は国内外での拡販と新用途の開発などを推進する。また新規事業の創出と育成では、プリント配線板の上流下流および関連分野への進出、産学連携による産業利用用途の製品開発、企業間連携による経営効率化に取り組む方針だ。
片面配線板では印刷技術をベースとした新製品「プリンタブル基板」の開発を推進し、両面配線板では海外工場設置で内製比率上昇を推進する。成長分野のLED照明関連は直管型LED照明の普及に加えて、自動車ヘッドライトのLED化進展も期待されている。自動車ヘッドライト関連の大手メーカーへの供給も拡大しているようだ。政府が省エネ対策として、エネルギー消費の少ないLED照明の普及を促進する方針を示していることも追い風となる。中期的に収益拡大基調が期待される。
なお、15年7月京都大学と共同研究契約を締結した。梅野健教授(京都大学大学院情報学研究科)の研究室と、次世代無線通信技術の「カオスCDMA」の産業利用化を目的として共同研究する。15年12月には「動く産業用機械の配線を不要とする無線化技術」について京都大学と共同で特許出願している。
■株価は下値を切り上げて基調転換の動き、指標面の割安感も見直し
株価の動きを見ると、7~9月の安値圏270円近辺で下値固めが完了したようだ。徐々に下値を切り上げて基調転換の動きを強めている。11月25日には318円まで上伸する場面があった。
11月28日の終値314円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS34円89銭で算出)は9.0倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は2.55%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS444円12銭で算出)は0.78倍である。時価総額は約45億円である。
週足チャートで見ると戻りを押さえていた26週移動平均線を突破し、13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いてきた。下値固めが完了して基調転換する動きだ。0.7倍近辺の低PBRなど指標面の割安感も見直して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)