綿半ホールディングスは目先的な売り一巡して上値試す、スーパーセンター事業の利益率改善に注目

 綿半ホールディングス<3199>(東1)はスーパーセンター事業や建設事業などを展開する持株会社である。17年3月期第2四半期累計は建設事業における大型案件一巡で前年同期比減益だったが、スーパーセンター事業の利益率改善が寄与して利益は計画超だった。そして通期は増収増益予想である。株価は第2四半期累計減益を嫌気する形で上場来高値圏から急反落したが、目先的な売りが一巡して上値を試す展開だろう。

■スーパーセンター事業や建設事業などを展開

 スーパーセンター事業(綿半ホームエイドが長野県中心に展開するスーパーセンター業態、および15年12月子会社化したキシショッピングセンターが愛知県中心に展開する食品スーパー業態)を主力として、綿半ソリューションズ(16年4月綿半鋼機と綿半テクノスが合併)の建設事業、および綿半トレーディング(16年7月ミツバ貿易が社名変更)が医薬品原料などを輸入販売する貿易事業を展開している。16年3月期売上構成比はスーパーセンター事業56.8%、建設事業38.8%、貿易事業4.2%、その他事業(不動産賃貸事業)0.3%だった。

 なお16年11月にはホームセンターを関東甲信越エリアに展開するJマート(東京都三鷹市)を子会社化した。またキシショッピングセンターは17年1月1日付で商号を綿半フレッシュマーケットに変更予定である。

■スーパーセンター事業は長野県中心にスーパーセンター業態を展開

 綿半ホームエイドのスーパーセンター事業は、1977年にホームセンター業態1号店(長池店)をオープンし、2007年からは生鮮食品や惣菜など食品の品揃えを強化したスーパーセンター業態の出店を開始した。スーパーセンター業態の展開によって食品の売上構成比が上昇している。15年5月には綿半スーパーセンター豊科店、15年11月には綿半スーパーセンター塩尻店がオープンした。

 長野県内で唯一生鮮食品を扱うホームセンター・スーパーセンター業態であり、NB商品中心に地域特性に合わせた豊富な品揃え、価格競争力、ブルーカード(長野県内の主要な小売業やサービス業が加盟するポイントカード)による顧客囲い込みなど、ELP戦略を武器とした個店競争力の高さを強みとしている。

 15年12月愛知県一宮市を中心に地域密着型食品スーパーを展開しているキシショッピングセンターを子会社化した。愛知県内への店舗網拡大、食品の取り扱い、小型店の運営ノウハウの共有などでホームセンター事業の強化に繋げる。そして16年3月期末の店舗数はスーパーセンター業態11店舗、ホームセンター業態7店舗、食品スーパー5店舗の合計23店舗となった。

 また11月4日にはJマート(東京都三鷹市)を子会社化した。Jマートはインテリア、ガーデン、ペット等に特色のあるホームセンターを、長野県、山梨県、東京都、埼玉県、神奈川県の関東甲信越エリアに14店舗展開しているため、大都市圏への店舗網拡大に繋がる。

■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み

 建設事業は、建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開している。長尺屋根工事などの外装改修工事および自走式立体駐車場工事に強みを持つ。

 長尺屋根工事では、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行うWKカバー工法で特許を取得し、企業の工場・倉庫・物流センター、商業施設、駅舎関連などに豊富な工事実績を誇っている。自走式立体駐車場工事では、柱の少ない認定品「ステージダブル」など国土交通省の認定を多数有していることが強みであり、大型SCの立体駐車場などの工事実績が豊富である。

 なお16年4月、建築・土木の設計施工を主体とする綿半鋼機と、鉄構・橋梁構造を主体とする綿半テクノスが合併し、存続会社の綿半テクノスの社名を綿半ソリューションズに変更した。

■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを輸入販売

 綿半トレーディング(16年7月ミツバ貿易が社名変更)は医薬品・化成品向け天然原料の輸入専門商社で、ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など、特定分野に強みを持っている。

 製造部門も有しており、医薬品分野ではHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。メキシコではキャンデリラワックスの精製工場を保有している。

■スーパーセンター事業は既存店売上と店舗網拡大、建設事業は工事採算に注目

 スーパーセンター事業は既存店売上高と、M&Aも活用した店舗網拡大戦略が注目される。15年3月期の既存店売上高は14年3月期比94.5%、既存店客数は97.9%、既存店客単価は96.5%、16年3月期の既存店売上高は15年3月期比100.6%、既存店客数は98.9%、既存店客単価は101.7%だった。建設事業は基本的には第4四半期の構成比が高い季節要因だが、大型案件の動向や個別案件の工事採算動向で利益率が変動する。

 16年3月期は連結繰延税金資産計上効果が減少したため最終減益だが、スーパーセンター事業と建設事業が好調で15年3月期比大幅営業・経常増益だった。四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期208億22百万円、第2四半期218億39百万円、第3四半期242億26百万円、第4四半期219億05百万円、営業利益は2億98百万円、4億80百万円、6億47百万円、1億44百万円だった。

 売上総利益は同14.6%増加し、売上総利益率は18.9%で同1.4ポイント上昇した。販管費は同11.6%増加し、販管費比率は17.1%で同0.8ポイント上昇した。またROEは12.1%で同3.3ポイント低下した。自己資本比率は22.4%で同0.3ポイント上昇した。配当は同10円増配の年間25円(期末一括)で配当性向は19.5%だった。配当についてはグループの業績や内部留保の充実などを勘案したうえで、安定的な配当を継続して実施することを基本方針としている。

 スーパーセンター事業は売上高が同10.3%増の504億15百万円で営業利益(連結調整前)が同50.1%増の4億52百万円、建設事業は売上高が同1.6%増の344億07百万円で営業利益が同56.3%増の18億48百万円、貿易事業は売上高が同1.5%減の37億15百万円で営業利益が同3.8%減の3億66百万円、その他は売上高が同1.9%減の2億53百万円で営業利益が同13.4%増の95百万円だった。

■17年3月期第2四半期累計は減益だが、各利益は計画を上回って着地

 今期(17年3月期)第2四半期累計(4~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.0%増の431億08百万円だが、営業利益が同28.5%減の6億08百万円、経常利益が同27.6%増の6億44百万円、純利益が同26.4%減の4億52百万円だった。

 建設事業における前期の大型案件・高利益率案件の反動が影響し、前年同期との比較で減益だった。ただしスーパーセンター事業の利益率改善が牽引し、各利益は期初計画を上回って着地した。全体の売上総利益は同6.3%増加し、売上総利益率は19.6%で同0.9ポイント上昇した。販管費は同10.5%増加し、販管費比率は18.2%で同1.5ポイント上昇した。特別損失では減損損失が減少(前期37百万円、今期5百万円)した。

 スーパーセンター事業は売上高が同12.1%増の270億15百万円で営業利益(連結調整前)が同59.4%増の5億32百万円だった。既存店売上は松本地域における自社競合やEDLP(エブリデー・ロー・プライス)戦略による特売廃止などで同95.9%だったが、前期オープンのスーパーセンター2店舗および子会社化したキシショッピングセンターが寄与して全店売上が同111.8%となり、利益面では食品ロス率改善、商品絞り込みよる仕入原価低減、店舗オペレーション効率化などEDLC(エブリデー・ロー・コスト)戦略による利益率改善が寄与した。この結果、売上高は計画未達だったが、利益は計画超の大幅増益となった。

 建設事業は前期の大型案件の工事進捗と高利益率案件集中の反動が影響し、売上高が同16.5%減の140億50百万円で営業利益が同65.7%減の2億85百万円だった。貿易事業は売上高が同18.3%増の18億95百万円で営業利益が同71.4%増の2億72百万円だった。為替の円高も寄与した。その他は売上高が同16.2%増の1億47百万円で営業利益が同20.5%増の62百万円だった。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期216億77百万円、第2四半期214億31百万円、営業利益は4億24百万円、1億84百万円だった。

■17年3月期通期は増収増益予想

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月13日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比8.5%増の963億77百万円で、営業利益が同8.8%増の18億69百万円、経常利益が同9.6%増の18億81百万円、そして純利益が同0.3%増の12億67百万円としている。配当予想は前期と同額の年間25円(期末一括)で予想配当性向は19.5%となる。なお営業外収益として表示していたスーパーセンター事業における物流センター利用料収入について、17年3月期から販売費および一般管理費へ表示方法を変更する。組み換え後の16年3月期の営業利益は17億17百万円である。

 前期オープンしたスーパーセンター2店舗およびキシショッピングセンターの通期寄与など、スーパーセンター事業が牽引して増収増益予想である。セグメント別計画は、スーパーセンター事業の売上高が同15.4%増の581億72百万円で営業利益が同34.4%増の8億07百万円、建設事業の売上高が同1.1%減の340億30百万円で営業利益が同0.5%増の18億57百万円、貿易事業の売上高が同5.2%増の39億07百万円で営業利益が同19.5%増の4億38百万円としている。期初計画を一部組み替えて、スーパーセンターの売上高を増額、建設事業の売上高を減額した。

 スーパーセンター事業の月次売上状況(前年同月比、速報値)を見ると、16年10月は全店117.0%、既存店101.9%だった。既存店売上は12ヶ月ぶりにプラスに転じた。10月はEDLP戦略の効果が見え始めたとしている。4~10月累計では全店112.5%、既存店96.7%となった。

 なお通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が44.7%、営業利益が32.5%、経常利益が34.2%、純利益が35.7%で低水準の形だが、建設事業は第4四半期の構成比が高くなりやすい収益構造であり、スーパーセンター事業における利益率改善進展や16年11月子会社化したJマートの寄与も考慮すればネガティブ要因とはならない。

■景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を目指す

 中期ビジョンでは基本方針に「時代の変化に対応し、景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を創り上げる」を掲げ、多様性のある経営人財の育成、IT化推進による経営改革、M&A推進のための財務体質強化、長期を見据えた海外展開の準備に取り組んでいる。

 スーパーセンター事業では、近隣県への進出も含めて本格的な多店舗展開(当面の目標100店舗体制)に向けた体制作りの期間として、出店スピード加速のための体制整備や新フォーマット店舗の開発に取り組んでいる。体制整備では店舗オペレーションの効率化、パートナーのプロ化(パートのスキルアップ)、発注精度の向上、物流ネットワークの整備・強化、本部バックアップ体制の整備などを推進する。

 新フォーマット店舗の開発では、限られた売場面積の中で地域特性に合わせた品揃えを強化するため、小型スーパーセンター業態(700~1000坪)の開発や、食品と非食品の超小型店業態(300坪程度)の研究を推進している。15年4月にはホームセンター業態の「綿半ホームエイド川中島店」(売場面積2000㎡)に生鮮食品を加えて、小型スーパーセンター業態としてリニューアルオープンした。

 建設事業では、デザインセンターを活用した提案営業や施主に対する直接営業の強化、技術ノウハウを活かした新製品の継続的開発や付加価値の提供などで、採算を重視しながら受注拡大に繋げる。遠隔地の案件に対しては施工代理店方式(当社が開発した冶具・ノウハウを提供)も活用して、エリア・顧客基盤の拡大に取り組む。中長期的な課題として施工代理店方式を活用した海外展開も検討する。リニア新幹線の停車駅となる長野県飯田市を発祥とする老舗企業であり、高い信用力を背景としてリニア新幹線・駅舎および周辺関連工事の受注も期待される。

 貿易事業では、利益率の高い医薬品分野を中心として、ニッチ市場における新商品の開発を強化する。

■中期経営計画で19年3月期経常利益22億円目指す

 16年5月策定の中期経営計画では、経営目標値に19年3月期売上高1000億円(内訳はスーパーセンター事業600億円、建設事業360億円、貿易事業40億円)、経常利益22億円を掲げている。

 事業別重点施策としては、スーパーセンター事業では新業態開発による売場面積拡大(3年間で4500坪)、既存店活性化に向けたサービスメニューとプロモーションの拡充、ロス率改善やオペレーション効率化による利益率向上、建設事業では問題解決に向けた提案型営業への転換による安定した高収益体質の実現、貿易事業では天然原料の新商品拡充と販売経路の拡大を推進する。

■株主優待制度は毎年9月末に実施

 株主優待制度については毎年9月30日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して贈呈する。15年9月30日現在の株主を対象として開始した。優待品の内容は次の(1)~(3)の中から1点を選択する。(1)2000円相当の長野県特産品のうち1点、(2)綿半ホームエイド店舗で利用できるブルーカードポイント2倍カード、(3)社会貢献活動への2000円寄付。

 そして8月16日に株主優待制度の内容拡充を発表した。従来の株主優待に加えて、綿半ホームエイドPB商品詰め合わせを新設(17年3月期末はオリジナル生活用品9点2000円相当)した。またポイント2倍カードについては、ブルーカードのみの提示で利用できるようシステムを変更した。

■株価は上場来高値圏から急反落したが、目先的な売りが一巡して上値試す

 株価の動きを見ると、第2四半期累計減益を嫌気する形で上場来高値圏1700円台からから急反落し、11月9日には地合い悪化も影響して1480円まで調整する場面があったが、その後は切り返しの動きを強めている、

 11月29日の終値1585円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS128円49銭で算出)は12.34倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は1.58%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1108円88銭で算出)は1.4倍である。時価総額は約155億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を一旦割り込んだが、素早く回復する動きを強めている。中期成長力を評価する流れに変化はなく、目先的な売りが一巡して上値を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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