ケンコーマヨネーズは目先的な売り一巡して上値試す、17年3月期2桁増益予想で再増額余地

 ケンコーマヨネーズ<2915>(東1)はマヨネーズ・ドレッシング分野からタマゴ加工品・サラダ類・総菜分野への事業領域拡大戦略を加速している。生産拠点の老朽化や今後の様々な取り組みへの対応としてグループ生産拠点構想も発表している。17年3月期は増額して2桁増益予想である。さらに再増額余地がありそうだ。株価は10月の上場来高値から反落したが、中期成長シナリオに変化はなく、目先的な売りが一巡して上値を試す展開だろう。

■マヨネーズ・ドレッシング類、ロングライフサラダの大手

 サラダ・総菜類、マヨネーズ・ドレッシング類、タマゴ加工品などの調味料・加工食品事業、フレッシュ総菜(日配サラダ、総菜)などの総菜関連事業等、その他(ショップ事業、海外事業)を展開している。ロングライフサラダは業界のパイオニアとして国内1位、マヨネーズ・ドレッシング類は国内2位の市場シェアである。

 16年9月には東京農業大学と包括連携協定を締結した。食品開発への支援を通じた国際協力活動を展開することにより、地球的規模での食料・環境問題の解決に貢献することを目的としている。16年10月にはサラダカフェのサラダ商品「3色キヌアとほうれん草のバランスサラダ」が日本雑穀アワード第4回デイリー食品部門の金賞を受賞した。

 16年3月期の商材別売上構成比はサラダ類46%、タマゴ類27%、マヨネーズ・ドレッシング類26%、その他2%だった。サラダ類とタマゴ類の伸長が加速している。分野別売上構成比は外食26%、CVS(コンビニエンスストア)26%、量販店20%、パン15%、給食5%、その他9%だった。

■タマゴ加工品・サラダ類・総菜分野への事業領域拡大戦略を加速

 中期成長に向けて「サラダNO.1(Leading company)」ポジション確立を目指し、タマゴ加工品・サラダ類・総菜分野への事業領域拡大戦略を加速している。商品開発・品揃え強化面では、商品数は3100以上、年間開発アイテム数は1800超に達している。

 生産拠点はフラッシュ化・変種定量・顧客仕様対応や地域密着生産体制で7工場および連結子会社7社9工場に展開している。14年4月、原料である「殻付き卵」から「タマゴ製品」まで一貫した生産システムを備えた静岡富士山工場が稼働した。生産効率改善に向けた生産拠点統廃合も推進し、子会社の関東ダイエットエッグ新座工場(埼玉県)を14年9月に閉鎖して静岡富士山工場に生産集約した。

 なお11月7日にグループ生産拠点構想を発表した。生産拠点の老朽化や今後の様々な取り組みへの対応として生産設備の更新や新拠点の構築を進める。構想としては19年3月までの稼働を目指し、静岡富士山工場および西日本工場の増築、連結子会社である関東ダイエットクックおよびダイエットクック白老の新工場を建設する。総投資額は150億円強の想定としている。

 サラダカフェ事業は百貨店などへのショップ展開を進め、和食とサラダを組み合わせた和サラダ専門の新ブランド「WaSaRa」の展開も開始した。16年3月に1号店あべのハルカス近鉄タワー館「WaSaRa近鉄あべのハルカス」店をオープンし、サラダカフェ事業のショップ展開は17店舗となった。16年3月には新しい味覚と出会う創造の場「自遊庵」を三越日本橋本店・食品フロアにオープンした。

 中国事業については15年6月、持分法適用関連会社である頂可(香港)の当社持分を譲渡して合弁を解消した。ただし今後もグローバル市場への積極展開を進める経営戦略に変更はなく、アジアだけでなく北米や欧州にも視野を広げていくとしている。

■鶏卵や野菜などの原材料価格が収益変動要因

 四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期147億41百万円、第2四半期153億50百万円、第3四半期157億64百万円、第4四半期144億72百万円、営業利益が6億35百万円、7億59百万円、9億31百万円、6億76百万円で、16年3月期は売上高が160億83百万円、171億61百万円、172億59百万円、164億30百万円、営業利益が8億24百万円、10億02百万円、10億07百万円、6億03百万円だった。

 鶏卵や野菜などの原材料価格が収益変動要因となりやすい。16年3月期は15年3月期比2桁増収増益で過去最高益を更新した。サラダ・総菜類、マヨネーズ・ドレッシング類、タマゴ加工品がいずれも伸長し、特に小型形態ロングライフサラダの採用が加速した。利益面では鶏卵相場が高値圏で推移し、販管費も増加したが、高付加価値商品や連結子会社のフレッシュ総菜の増収、静岡富士山工場の操業度上昇、原燃料コストの低減などが寄与した。

 売上総利益は同9.7%増加したが、売上総利益率は25.8%で同0.3ポイント低下した。販管費は同8.6%増加したが、販管費比率は20.6%で同0.5ポイント低下した。営業外費用では持分法投資損益が改善した。なお経常利益増減分析は増益要因が売上高増加9億89百万円、生産効率向上5億86百万円、物流費削減70百万円、減益要因が原材料価格変動の影響5億63百万円、固定費等の増加4億32百万円としている。

 特別利益では関係会社株式売却益を計上し、法人税等調整額を計上して税金費用が減少したため純利益は大幅増益だった。ROEは11.2%で同1.6ポイント上昇、自己資本比率は45.6%で同0.1ポイント上昇した。配当性向は19.1%だった。利益還元については連結ベースでの配当性向20%を意識し、配当の継続性に配慮しつつ、今後の成長と発展にあわせて安定配当水準を高めていくことを基本方針としている。

 セグメント別の動向を見ると、調味料・加工食品事業は売上高が同10.7%増の550億35百万円(サラダ・総菜類が同12.8%増の189億03百万円、マヨネーズ・ドレッシング類が同1.7%増の167億72百万円、タマゴ加工品が同17.7%増の177億92百万円)で、経常利益(連結調整前)が同8.1%増の28億62百万円だった。販売重量が同9.1%増加(サラダ・総菜類が同9.4%増加、マヨネーズ・ドレッシング類が同4.2%増加、タマゴ加工品が同15.5%増加)し、販売単価も同5円50銭/kg上昇した。

 総菜関連事業等は売上高が同13.2%増の106億60百万円、経常利益が同85.4%増の6億45百万円だった。食品スーパー向け新規採用や北海道エリア限定カット野菜が増加した。その他(ショップ事業、海外事業)は売上高が同5.4%増の12億38百万円、経常利益が77百万円の赤字(前々期は2億29百万円の赤字)だった。

■17年3月期第2四半期累計は計画超の大幅増益

 今期(17年3月期)第2四半期累計(4~9月)の連結業績は売上高が前年同期比8.3%増の360億09百万円、営業利益が同35.6%増の24億76百万円、経常利益が同38.8%増の24億90百万円、純利益が同11.1%増の16億90百万円だった。サラダ類、マヨネーズ・ドレッシング類、タマゴ類、連結子会社のフレッシュ総菜とも順調に伸長した。さらに高付加価値製品の増加、鶏卵相場の落ち着きや原油安による燃料・物流コスト低減なども寄与して計画超の増収・大幅増益だった。売上高、利益とも上期として過去最高を更新した。

 売上総利益は同11.4%増加し、売上総利益率は26.6%で同0.7ポイント上昇した。販管費は同4.8%増加したが、販管費比率は19.7%で同0.7ポイント低下した。経常利益増減要因は、増益要因が増収効果5億04百万円、生産効率向上1億34百万円、物流費ダウン69百万円、原材料価格変動影響1億21百万円、減益要因が固定経費増加1億31百万円としている。営業外費用では持分法投資損失が減少(前期68百万円、今期14百万円)し、特別利益では前期計上の関係会社株式売却益1億90百万円が一巡した。また法人税等合計額が増加(前期4億53百万円、今期8億15百万円)した。

 セグメント別に見ると、調味料・加工食品事業は売上高が同9.2%増の299億54百万円で経常利益(連結調整前)が同22.8%増の18億75百万円、総菜関連事業等は売上高が同4.5%増の54億49百万円、経常利益が同84.2%の6億20百万円、その他(ショップ事業、海外事業)は売上高が同1.0%減の6億05百万円で経常利益が17百万円の赤字(前年同期は66百万円の赤字)だった。

 調味料・加工食品事業は販売重量が増加し、販売単価も上昇した。サラダ・総菜類、マヨネーズ・ドレッシング類、タマゴ加工品とも伸長した。サラダ・総菜類では基盤商品の1kg形態のポテトサラダや小型形態のポテトサラダなどがCVSや外食向けに採用された。マヨネーズ・ドレッシング類は1kg形態のマヨネーズが量販店向けや輸出向けに伸長し、500ml形態のドレッシングがファストフード向けに採用された。タマゴ加工品はサンドイッチ用や総菜パン用のタマゴサラダや巻き寿司用の厚焼き卵などがCVS中心に伸長した。総菜関連事業では食品スーパー向けポテトサラダやスパゲティサラダ、北海道エリア限定のカット野菜が好調だった。

 なお商材別売上高はサラダ類が同2.0%増の156億42百万円、タマゴ類が同18.7%増の108億円、マヨネーズ・ドレッシング類が同2.8%増の88億58百万円、その他が同12.0%増の7億08百万円だった。サラダ類とタマゴ類が増加基調である

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期176億77百万円、第2四半期183億32百万円、営業利益は11億41百万円、13億35百万円だった。

■17年3月期通期増額して2桁増益予想、さらに再増額余地

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(11月7日に売上高、利益とも増額修正)は、売上高が前期(16年3月期)比5.8%増の708億円、営業利益が同19.3%増の41億円、経常利益が同22.6%増の42億円、そして純利益が同28.5%増の26億80百万円としている。配当予想は据え置いて同2円増配の年間30円(第2四半期末14円、期末16円)としている。3期連続増配で予想配当性向は15.9%となる。

 修正後の事業別売上高の計画は、調味料・加工食品事業が同5.3%増の579億69百万円(サラダ・総菜類が同0.6%増の190億21百万円、マヨネーズ・ドレッシング類が同0.5%増の171億42百万円、タマゴ加工品が同15.2%増の205億05百万円)、総菜関連事業等が同8.5%増の115億65百万円、その他が同2.2%増の12億65百万円としている。

 サラダ・総菜類は量販店・CVS向け小型形態商品の充実、和惣菜「和彩万菜」シリーズや北海道限定カット野菜などの強化、マヨネーズ・ドレッシング類は新ブランド「世界を旅するドレッシング」の強化、海外市場(輸出事業)の開拓、タマゴ加工品はCVS・外食から量販店への販路拡大に取り組む。なお経常利益増減分析予想は、増益要因が増収効果6億44百万円、生産効率向上3億17百万円、物流費ダウン1億10百万円、原材料価格変動影響20百万円、減益要因が固定経費等増加3億17百万円としている。

 修正後の通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高50.9%、営業利益60.4%、経常利益59.3%、純利益63.1%である。収益変動要因となる鶏卵や野菜などの原材料価格の動向に注意が必要だが、通期増額は第2四半期累計超過分を上乗せした形であり、通期予想には再増額余地がありそうだ。また連結配当性向20%を意識する基本方針を掲げており、配当にも増額余地がありそうだ。

 分野別・業態別チームによるきめ細かな営業対応、メニュー提案力の強化、新商品投入などの商品ラインナップ強化、ブランド強化などが奏功し、中食市場の拡大も背景として、CVS・食品スーパー・外食向けにサラダ・総菜類やタマゴ加工品の採用が拡大基調である。高付加価値商品拡販や生産効率改善も寄与して中期的に収益拡大基調だろう。

■中期経営計画で「サラダNO.1」目指す

 中期経営計画「KENKO Five Code 2015-2017」では、基本戦略を「サラダNO.1(Leading company)」のポジション確立、サラダ料理の更なる進化、グローバル市場への積極展開を進める経営基盤強化としている。経営目標値には18年3月期売上高750億円、経常利益率5%、自己資本比率50%、ROE8%以上維持を掲げている。

 具体的戦略として、マヨネーズ・ドレッシング事業では、新ブランド「世界を旅するドレッシング」の拡充、健康訴求・機能性を付加した商品の拡充を推進する。また西日本工場NO.2ラインでドレッシングラインを増強(16年6月稼働)して、味や品質の向上、賞味期限延長、容器変更(マルチ充填のフレキシブルな形態対応)に取り組む。

 サラダ・総菜事業では「和彩万菜」シリーズの拡充、やわらか食や小型形態への対応、新規素材の開拓を推進する。御殿場工場新ラインでロングライフサラダラインを増強(16年4月稼働)した。多品種・多形態生産に対応する。

 ポテト事業では素材系や「北海道ブランド」の商品開発、メニュー提案の強化、グループ間での商品・メニュー化の強化を推進する。また山梨サラダ工場で小型ポテトサラダラインを増強(16年1月稼働)した。

 たまご事業では「惣菜亭」シリーズ拡充やニーズに合った商品開発を推進する。当社グループ総合フェアで提案した「卵焼きサンドイッチ」がCVSや製パン向けに好評のため、さらなる市場拡大を目指す。また静岡富士山工場でタマゴ加工品の冷凍設備およびスクランブルエッグラインを増強(16年2月稼働)した。

 また「サラダ料理」のさらなる進化として、サラダカフェ事業において百貨店やショッピングモールへのショップ展開を進める。プロダクトブランド強化の面では、ドレッシングの「世界を旅するドレッシング」、和惣菜の「和彩万菜」、ポテトサラダの「まるごと北海道」、タマゴ加工品の「惣菜亭」の各ブランドのコンセプトを明確にして、社内外への浸透を図る方針だ。

 海外事業に関しては15年7月、北米や欧州を中心とする食にまつわる情報収集拠点をカナダのバンクーバーに新設した。バンクーバーリサーチオフィスでは市場演出型企業として、日本にはない新しい食文化をいち早くキャッチし、情報を発信していくとしている。そして16年3月現在、35の国と地域へ輸出している。中期的には賞味期限延長によってさらなる拡販を図る方針だ。

■株主優待制度は毎年3月末に実施

 株主優待制度は毎年3月末日現在の株主に対して実施し、1単元(100株)以上~10単元(1000株)未満所有株主に対して当社商品1000円相当、10単元以上所有株主に対して当社商品2500円相当を贈呈する。

■株価は目先的な売り一巡して上値試す

 株価の動きを見ると、10月の上場来高値3955円から利益確定売りで反落した。そして17年3月期増額修正にも反応薄で水準を切り下げている。12月2日には3015円まで調整した。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 12月2日の終値3060円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS188円59銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1358円94銭で算出)は2.3倍近辺である。時価総額は約435億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。また週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。中期成長シナリオに変化はなく、目先的な売りが一巡して上値を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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