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クリナップは14年4月以来の1000円台回復、17年3月期大幅増益予想
- 2016/12/14 08:22
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリナップ<7955>(東1)はシステムキッチンの大手でシステムバスルームも展開している。17年3月期は原価低減効果も寄与して大幅増益予想である。株価は年初来高値更新の展開で14年4月以来の1000円台を回復した。好業績を評価して上値を試す展開だろう。
■システムキッチンの大手でシステムバスルームも展開
システムキッチンの大手である。厨房部門(システムキッチン)を主力として、浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)も展開している。16年3月期の部門別売上高構成比は厨房部門78%、浴槽・洗面部門16%、その他6%で、販売ルート別売上高構成比(単体ベース)は一般ルート(工務店・リフォーム)79%、ハウスメーカー16%、直需(マンション)5%である。
■中期経営計画で「ザ・キッチンカンパニー」目指す
中期経営計画では「ザ・キッチンカンパニー」の確立を目指している。重点施策として、システムキッチン「S.S.」「クリンレディ」「ラクエラ」を軸とした商品ラインナップの充実、中高級システムキッチンの販売強化と市場シェア上昇、リフォーム市場での競争優位となる商品の開発、全国のショールームを核とした販売戦略の推進、会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携強化とリフォーム需要の取り込み、サプライチェーン全体での原価低減活動強化、設備投資およびコストの最適化、CPS活動の全社展開による業務効率化、20年サポートを支える業務システムの整備、海外事業の強化などを推進している。
商品ラインナップ充実では、15年5月発売の新機能「流レールシンク」搭載システムキッチン「クリンレディ」が2015年日経優秀製品・サービス賞において優秀賞日経産業新聞賞を受賞した。また16年2月発売した新発想の洗面ボール「流レールボール」が2016年度グッドデザイン賞を受賞した。
全国ショールームを核とした販売戦略では、ショールームを顧客接点の要、地域に根差したブランド戦略の重要拠点、リフォーム需要取り込みの最重要拠点と位置付けて、集客を強化するためリニューアルと生活提案型ショールームへの転換を進めている。シュールームのリニューアルは12年3月期4ヶ所、13年3月期14ヶ所、14年3月期21ヶ所、15年3月期9ヶ所、16年3月期13ヶ所、5期合計61ヶ所を実行した。
16年9月には宮崎ショールームがリニューアルオープン、10月には名古屋ショールームを中部圏の旗艦ショールーム「クリナップ・キッチンタウン・名古屋」として移転オープンした。
会員登録制組織「水まわり工房」正会員数は16年3月期末4259社(15年3月期末比309社増加)となった。生産面では16年2月、クリナップ岡山工業津山工場のプレス棟建築工事とプレスライン設備工事が完了した。16年7月本格稼働後は、福島県いわき市の東日本の拠点と合わせて生産拠点の二極化体制が整い、西日本における供給体制を強化する。
海外展開は中国、台湾、シンガポール、マレーシアなどに展開している。中国にはハウスメーカーと共同進出して、瀋陽、蘇州、無錫、太倉の4地区にキッチン等を供給している。
■新設住宅着工やリフォーム需要の影響を受けやすい収益構造
四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期319億24百万円、第2四半期284億53百万円、第3四半期288億39百万円、第4四半期270億23百万円、営業利益が19億68百万円、5億49百万円、11億13百万円、6億02百万円の赤字、16年3月期は売上高が271億23百万円、292億70百万円、301億81百万円、278億71百万円、営業利益が32百万円の赤字、4億30百万円、13億59百万円、6億28百万円だった。
収益は新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい。16年3月期は新設住宅着工件数や住宅設備機器需要が本格回復に至らず、原材料価格上昇、ショールームリニューアル費用や広告宣伝費の増加で大幅減益だった。売上総利益は15年3月期比4.1%減少し、売上総利益率は32.4%で同0.9ポイント低下した。販管費は同0.9%増加し、販管費比率は31.5%で同0.8ポイント上昇した。
特別損失では厚生年金基金解散損失引当金繰入額が一巡した。ROEは0.6%で同0.9ポイント低下、自己資本比率は65.0%で同0.7ポイント低下した。配当性向は244.2%だった。利益配分は安定的な配当を長期的に継続していくことを基本方針としている。
部門別売上高は、厨房部門が同1.6%減の897億55百万円、浴槽・洗面部門が同2.6%減の184億66百万円、その他が同2.2%増の62億23百万円だった。厨房部門のシステムキッチン「S.S.」は数量・金額とも減少、「クリンレディ」は数量・金額とも増加、「ラクエラ」は数量・金額とも減少した。浴槽・洗面部門のシステムバスルーム「アクリアバス」は数量・金額とも減少、「ユアシス」は数量・金額とも減少、洗面化粧台は数量・金額とも減少した。
ショールームは15年10月首都圏エリア旗艦ショールームとして「クリナップ・キッチンタウン・東京」をオープンしたほか、6ヶ所を新築移転、6ヶ所を全面リニューアルした。
■17年3月期第2四半期累計は計画超の大幅増益
今期(17年3月期)第2四半期累計(4~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.6%増の567億47百万円、営業利益が同3.2倍の12億42百万円、経常利益が同4.2倍の11億53百万円、純利益が同11倍の9億35百万円だった。計画超の大幅増益だった。
リフォーム売上が想定を下回ったが、原価低減効果や販管費低減効果などが寄与した。売上総利益は同2.5%増加し、売上総利益率は33.2%で同0.6ポイント上昇した。販管費は同2.2%減少し、販管費比率は31.0%で同0.9ポイント低下した。純利益については、厚生年金基金解散時負担額が特別解散認可申請時に計上した引当金額を下回ったことに伴う損失引当金戻入額3億11百万円を特別利益に計上したことも寄与した。
部門別売上高は、厨房部門が同1.2%増の441億84百万円、浴槽・洗面部門が同2.9%減の94億63百万円だった。厨房部門ではシステムキッチン「S.S.」が数量・金額とも増加、「クリンレディ」が数量・金額とも増加、「ラクエラ」が数量・金額とも減少となった。浴槽・洗面部門ではシステムバスルーム「アクリアバス」が数量・金額とも減少、「ユアシス」が数量・金額とも減少、洗面化粧台が数量・金額とも増加となった。
四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期275億26百万円、第2四半期292億21百万円、営業利益は5億20百万円、7億22百万円だった。
■17年3月期通期も大幅増益予想で収益改善基調期待
今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月10日公表値に対して、11月7日に純利益を2億50百万円増額)は、売上高が前期(16年3月期)比4.0%増の1190億円、営業利益が同2.2倍の25億円、経常利益が同2.5倍の22億円、純利益が同4.3倍の14億50百万円としている。第2四半期累計の特別利益で計上した損失引当金戻入額3億11百万円が寄与する。配当予想は据え置いて前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。予想配当性向は57.4%となる。
部門別売上高の計画は、厨房部門が同3.5%増の929億09百万円、浴槽・洗面部門が同4.7%増の193億29百万円、その他が同8.7%増の67億62百万円としている。
会員登録制組織「水まわり工房」加盟店や流通パートナーと連携し、流レールシンクを標準装備したシステムキッチン「クリンレディ」や美コートワークトップを標準装備したシステムキッチン「S.S.」などを中心に拡販を強化する。生産設備の整備、ショールームの新設・移転・改装、情報基盤整備などへの投資を継続しつつ、生産面での原価低減や営業業務の効率化などで大幅増益予想としている。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.7%、営業利益が49.7%、経常利益が52.4%、純利益が64.5%である。期後半の構成比が高い収益構造を考慮すれば高水準であり、通期利益にも増額余地がありそうだ。低金利や住宅取得優遇策なども追い風となって収益改善基調が期待される。
■公開買い付けによる自己株式取得を実施
なお主要株主からの一部株式売却意向に対応して、11月7日公開買い付けによる自己株式取得を発表した。取得株式総数上限550万100株(発行済株式総数に対する割合13.11%)、取得価額総額上限41億8557万6100円、取得期間16年11月8日~16年12月30日、公開買い付け予定数550万株、公開買い付け期間16年11月18日~16年12月6日、公開買い付け価格761円としている。
そして12月7日に結果および取得終了を発表した。応募数500万株で、買い付け数500万株となった。
■株価は14年4月以来の1000円台回復
株価の動きを見ると、年初来高値更新の展開で12月13日には1002円まで上伸し、14年4月以来の1000円台を回復した。収益改善基調を評価する流れに変化はないようだ。
12月13日の終値1000円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS34円86銭で算出)は28~29倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1340円97銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約419億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドである。好業績を評価して上値を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)