ジャパンインベストメントアドバイザーはインタートレードの株式取得、Fintech駆使して新たな金融サービスを拡大

 ジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)<7172>(東マ)は、オペレーティング・リース中心に金融ソリューション事業を展開している。12月20日にはインタートレードの株式取得を発表した。Fintechを駆使して新たな金融サービスの拡大を目指す。16年12月期はオペレーティング・リースの好調が牽引し、パーツアウト・コンバージョン事業の収益化も寄与して大幅増収増益予想である。株価は戻り高値圏だ。中期成長に向けた積極的な事業領域拡大戦略を評価して4月の上場来高値を目指す展開だろう。

■オペレーティング・リース主力に金融ソリューションを展開

 オペレーティング・リース事業を主力として、環境エネルギーファンド事業、M&Aアドバイザリー事業などの金融ソリューション事業を展開している。さらに航空機を対象としたパーツアウト・コンバージョン事業など、中期成長に向けた事業領域拡大戦略を推進している。

 15年12月期の製品・サービス別売上高構成比はオペレーティング・リース事業63%、環境エネルギー事業11%、パーツアウト・コンバージョン事業21%、メディア事業4%、その他事業1%である。また15年12月期の売上高営業利益率41.2%、ROE46.3%という高収益構造が特徴だ。

 オペレーティング・リース事業は、子会社JPリースプロダクツ&サービシイズ(JLPS)が第二種金融商品取引業登録業者として、航空機や海上輸送用コンテナを主対象に展開している。15年10月には船舶を対象とした日本型オペレーティング・リース第1号案件の組成を完了し、対象物件として航空機・船舶・海上輸送用コンテナのすべての領域をカバーすることになった。

 また米CAI社との合弁会社CAIJ社(コンテナ・オペレーティング・リース事業)を16年4月100%子会社化し、米CAI社およびCAIJ社とコンテナ案件の紹介・供給等を目的として業務提携した。

■知名度・信用力・資金調達力・営業力向上し、投資需要も高水準

 14年9月東証マザーズ上場によって知名度・信用力が向上し、資金調達力や営業力も向上した。オペレーティング・リース事業ではレッシー(賃借人)からの引き合いが途絶えることなく、潜在需要が豊富な状態が続いている。主要顧客(投資家)である中堅・中小企業の投資意欲も高水準で、販売面では全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社等からの顧客紹介が増加基調である。また太陽光発電ファンドも為替リスクのない安定利回り商品として投資家ニーズが高い。

■中期成長に向けて事業領域を拡大

 中期成長に向けてM&Aも積極活用しながら事業領域拡大戦略を推進している。

 環境関連事業では、15年5月電力備蓄用バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)のLEシステムと資本業務提携、15年9月中央アジアや南アジアで再生可能エネルギーや省エネルギー事業を展開しているあすかグリーンインベストメント(AGI)と資本業務提携、15年10月汚泥削減システムのフジ・エコ・テクノス(FET社)に出資した。

 パーツアウト・コンバージョン事業は、15年11月ルクセンブルクに子会社JIAルクセンブルクを設立、JIAルクセンブルクが仏Vallair社と資本・業務提携して、航空機を対象とするパーツアウト・コンバージョン事業に参入した。パーツアウト事業は退役航空機を解体して各部品を世界の整備会社・リース会社・航空会社等へ販売する事業、コンバージョン事業は機齢の経った旅客機を輸送機等に改造してリサイクルする事業である。なお12月15日には、仏Vallair社に出資していた優先株を普通株に転換する(12月30日実行予定)と発表した。これによって仏Vallair社に対する出資比率が20%となり、持分法適用関連会社となる。

 プライベート・エクイティ(PE)投資事業やIR(投資家向け広報)支援事業にも進出している。15年8月100%出資のPEファンドJPE第1号を設立し、第1号案件として日本マンパワーのグループ会社で人材派遣・紹介事業を展開するNMPスペシャリストの全株式を取得した。同社は3年後の上場を目指す。PEファンドは当面3億円を上限として当社100%出資で運営するが、将来的には投資家からの資金も受け入れる予定だ。

 15年9月日本証券新聞と日本証券新聞リサーチを子会社化してメディア関連事業およびIR支援事業に進出した。またIR支援サービスの日本証券新聞リサーチと人材派遣・紹介事業のNMPスペシャリストが連携して、人材難に悩む企業に対して中小企業診断士や社外取締役などを紹介・マッチングする事業なども展開する。

 16年1月M&Aアドバイザリー事業の子会社ジャパンM&Aアドバイザー(JMA)を設立した。またIPOコンサルティング事業を開始し、第1弾としてIT技術を駆使した投資コンサルティング事業会社とコンサルティング契約を締結した。金融とITの融合に寄与するフィンテック企業を中心にIPOコンサルティング事業の拡大を目指し、PE事業においてもITを駆使した新たな金融サービスを提供する企業・技術への投資活動を積極化させる方針だ。

■Fintech駆使して新たな金融サービス拡大目指す

 12月20日にはインタートレード<3747>の株式取得を発表した。同社との協業の可能性を視野に入れながら、純投資目的で取得した。本業の金融ソリューション事業とのシナジーが見込まれるIT・サービス分野、特に金融とITとの融合に寄与するFintechを駆使した新たな金融サービスの拡大を目指すとしている。

■手数料収入が収益柱、四半期業績は販売計上時期で変動する特性

 オペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業の組成・出資金販売・管理などに伴う手数料収入が収益柱である。会計上の売上高認識基準は、顧客(投資家)から案件ごとに募集している出資金の販売がすべて終了した時点において出資金に含まれる手数料を売上高として計上するため、四半期業績は販売計上(完売)時期によって変動しやすい特性がある。

 15年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期4億30百万円、第2四半期3億50百万円、第3四半期10億45百万円、第4四半期9億80百万円、営業利益は1億85百万円、94百万円、5億26百万円、3億50百万円だった。

 15年12月期は出資金販売額がオペレーティング・リース事業で14年12月期比80.0%増、環境エネルギー事業で同87.8%増と大幅伸長した。組成は航空機3件・233億16百万円、船舶1件・11億76百万円、コンテナ2件・92億63百万円、太陽光発電6件・36億52百万円で、販売(完売)は航空機8件・148億37百万円、船舶1件・3億36百万円、コンテナ3件・28億95百万円、太陽光発電6件・33億82百万円だった。

 売上総利益率は66.3%で同20.3ポイント低下、販管費比率は25.1%で同10.5ポイント低下した。ROEは46.3%で同1.6ポイント上昇、自己資本比率は20.5%で同10.8ポイント上昇した。配当は無配を継続した。

■16年12月期第3四半期累計は減益

 今期(16年12月期)第3四半期累計(1~9月)連結業績は、売上高が前年同期比68.7%増の30億80百万円だが、営業利益が同24.1%減の6億11百万円、経常利益が同51.4%減の3億47百万円、純利益が同64.5%減の1億59百万円だった。出資金販売額が100億円となり、パーツアウト・コンバージョン事業(売上高13億04百万円)も寄与して大幅増収だが、人件費の増加などに加えて、急激な円高進行に伴って外貨建て資産の評価替えによる為替差損を営業外費用に計上した。

 組成は航空機16件・555億61百万円、船舶3件・81億92百万円、コンテナ2件・14億41百万円、太陽光発電5件・34億30百万円、販売(完売)は航空機4件・50億86百万円、船舶2件・17億29百万円、コンテナ3件・31億85百万円、太陽光発電5件・29億80百万円だった。

 売上総利益は同21.1%増加したが、売上総利益率は49.6%で同19.4ポイント低下した。また販管費は同2.0倍増となり、販管費比率は29.7%で同4.8ポイント上昇した。業容拡大に伴って人員が大幅に増加した。営業外では商品出資金売却益が減少(前期1億13百万円、今期53百万円)し、外貨建て資産の評価替えによる為替差損が増加(前期99百万円、今期1億45百万円)した。また株式交付費19百万円を計上した。特別利益では段階取得に係る差益13百万円を計上した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期9億92百万円、第2四半期13億61百万円、第3四半期7億27百万円で、営業利益は3億40百万円、2億88百万円、17百万円の赤字だった。四半期業績は販売計上(完売)時期によって変動しやすい収益特性がある。

■16年12月期通期大幅増益予想

 今期(16年12月期)通期の連結業績予想(2月12日公表)は、売上高が前期(15年12月期)比85.7%増の52億10百万円、営業利益が同2.0倍の23億62百万円、経常利益が同76.1%増の22億32百万円、そして純利益が同75.5%増の13億41百万円としている。

 第4四半期にはオペレーティング・リース事業で7件(出資金総額概算107億円)、環境エネルギー事業で3件(同16億円)の完売、および4機のリマーケティング案件を計画している。またパーツアウト・コンバージョン事業では4機の引き渡しを計画している。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が59.1%、営業利益が25.9%、経常利益が15.5%、純利益が11.9%と低水準だが、四半期業績は販売計上(完売)時期によって変動しやすい収益特性があり、第4四半期に収益性の高い案件の販売計上を予定していることや、パーツアウト・コンバージョン事業の収益化も考慮すれば、通期大幅増益基調に変化はないだろう。そして来期(17年12月期)も大幅増収増益が期待される。

 配当予想(2月17日公表)は年間10円(第2四半期末4円、期末6円)で予想配当性向は8.7%となる。利益配分については、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、株主への利益還元を重視し、安定した配当を継続していくことを基本方針としている。今後については東証1部への上場を目標として、連結配当性向は概ね20%以上を目指すとしている。

■純利益ベースで毎期50%以上の成長を目指す

 中長期成長戦略として、第1ステージは航空機・オペレーティング・リース事業での競争力の高い商品供給による規模の拡大、第2ステージは参入障壁が比較的高く物件価値が比較的安定しているコンテナ・オペレーティング・リース事業でのラインナップ充実、第3ステージはオペレーティング・リースの代替商品として、太陽光発電を中心とした環境エネルギーファンド事業の強化を推進してきた。

 今後の第4ステージでは主力のオペレーティング・リース事業に、環境エネルギー事業およびパーツアウト・コンバージョン事業を加えて、収益の3本柱の確立を推進する。さらにM&Aアドバイザリー事業、PE投資事業、不動産投資事業、事業承継アドバイザリー事業、ウェルス・マネジメント事業、中小企業に対する人材紹介事業、メディア関連・IR支援関連事業、IPOコンサルティング事業など、金融ソリューション事業を中心にM&Aも積極活用して事業領域拡大戦略を加速する。そして純利益ベースで毎期50%以上の成長を目指すとしている。中期的に収益拡大基調が期待される。

■株主優待制度は12月末に実施、一部拡充を発表

 株主優待制度については15年12月期から導入した。毎年12月末日時点で1単元(100株)以上保有株主に対して、保有株式数および継続保有期間に応じてクオカードおよび日本証券新聞デジタル版購読券を進呈する。

 なお12月13日に株主優待制度の一部拡充を発表している。優待内容に「継続保有期間2年以上」を新設した。

■株価は戻り高値圏、事業戦略評価して上値試す

 株価の動きを見ると、地合い悪化も影響した11月の直近安値2415円から切り返し、12月14日には戻り高値となる3675円まで上伸した。その後一旦反落したが自律調整の範囲だろう。

 12月20日の終値3235円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS114円37銭で算出)は28~29倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は0.3%近辺、実績連結PBR(16年12月期第3四半期実績の連結BPS444円34銭で算出)は7.3倍近辺である。時価総額は約398億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を突破し、13週移動平均線がサポートラインの形となった。中期成長に向けた積極的な事業領域拡大戦略を評価して4月の上場来高値4310円を目指す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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