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インソースは上場来高値更新の展開、17年9月期大幅増収増益予想
- 2016/12/21 07:57
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インソース<6200>(東マ)は社会人向け研修サービスの大手である。ITを活用した研修サービスを特徴・強みとして高利益率を達成している。17年9月期も大幅増収増益予想である。16年11月の公開講座受講者数は前年比48%増加と好調である。また12月16日にはプロネクサスとの業務提携を発表した。良好な事業環境も背景として中期的に収益拡大基調が期待される。株価は好業績を評価して上場来高値更新の展開だ。過熱感を冷ますための自律調整を交えながら上値を試す展開だろう。
■社会人向け研修・教育サービスを展開
社会人(企業・官公庁・自治体の社員・職員など)向け研修・教育サービスを展開している。02年11月社会人教育ベンチャーとして設立、03年1月事業開始、16年7月東証マザーズに新規上場した。
研修事業は講師派遣型研修(企業内研修)と公開講座を主力として、研修一括受託、ダイバーシティ・グローバル推進支援などのサービスも提供している。その他事業では、システム販売のITサービス事業(HRテック)、eラーニング・映像制作のインナープロモーション事業、就労移行支援の福祉事業、各種コンサルティングサービス(人事評価制度構築、人財育成体系構築、CS調査など)などを展開している。
16年9月期の売上高構成比は研修事業93%(講師派遣型研修71%、公開講座22%)、その他事業7%だった。また03年6月~16年9月累計の総取引社数は1万7157社(民間1万3362社、官公庁3795組織)に達している。
■ITを活用した自社開発の多様な研修コンテンツなどが特徴・強み
100万件を超える働く人の悩みを蓄積したデータベースを基に、16年9月末時点で講師派遣型研修2050種類以上、公開講座1066種類の研修コンテンツを自社開発し、階層別研修、年代別研修、部門別研修、業界業種別研修、スキル・テーマ別(グローバル化対応、メンタルヘルス対策、ダイバーシティ推進など)研修、さらに外国人向け研修など、多様な研修ニーズに対応した研修コンテンツを特徴・強みとしている。なお16年10月には11分野計24本、11月には11分野計19本の新作研修をリリースしている。
講師派遣型研修は、顧客の課題に応えるオーダーメード型研修である。1600種類以上の自社開発研修コンテンツを顧客専用にカスタマイズして提供し、個別指導(15名以上が基本)から最大数千名の集合研修まで対応できる運営ノウハウを有している。公開講座は、1名から受講できるオープンセミナー型研修である。全国各地で年間4190回(15年4月~16年9月実績)開催しているため、991種類以上の研修ラインナップの中から受講者にとって興味のある研修を、都合の良い日程・手軽な価格でピンポイントに受講できる。
研修サービスのクオリティの高さも特徴・強みだ。受講者の悩みに応える内容の研修を実戦経験豊富で鍛え抜かれた講師が登壇して運営する。16年9月期集計の受講者アンケートでは、内容評価で「大変理解できた」「理解できた」合計が15年9月期比0.6ポイント上昇の95.1%、講師評価で「大変良かった」「良かった」合計が同0.7ポイント上昇の94.4%に達している。
ITサービス事業の人事サポートシステム「Leaf」は、研修担当者が研修業務を一元的に管理でき、プライバシーに配慮したストレスチェックが唯一できるシステム(特許出願中)である。14年4月販売開始し、16年9月末時点の導入取引先数(有料利用)は33社となった。
インナープロモーション事業は子会社ミテモが展開している。定額制eラーニングシステム「STUDIO」は教育や理念などの社内浸透を支援するもので、利用者数は0.5万人(16年5月末時点)である。映像制作先実績は180社以上(16年5月末時点)である。福祉事業は障がい者の就労支援を目的として15年2月、就労移行支援事業所「Bizstage」を開設した。
12年1月大幅リニューアルしたWEBinsourceは公開講座への申込、提携する各社の研修申込や書籍購入などがネット上で簡単に利用できる研修担当者向けWEBサービスである。人事サポートシステム「Leaf」と連携させることによって従業員一人ひとりの人材育成管理が行えるなど、ITを活用した人材活用促進(HRテックの推進)の基盤となるシステムである。社員教育インフラとして導入顧客先が増加基調であり、公開講座受講者数の大幅伸長にも繋がっている。
16年11月には新サービスとして営業力強化トータルサービス「Plants」を発表した。中核システム「Plants12」を中心として、営業研修、電話・メール代行、WEB制作代行など多様なサービスをプラスして提供する。
なお12月9日には研修運営代行サービスに関して、次年度からの「新潟県自治研修所研修業務委託」の委託先候補になったと発表している。
■アライアンス戦略も積極化
16年8月には、43ヶ国の語学講師を派遣する国際ビジネスサポートと業務提携、アドベンチャー教育の普及に取り組んでいる学校法人玉川学園と業務提携した。
16年11月にはチエル<3933>とグローバル人材育成分野および研修関連ツール分野での業務提携を発表した。チエルのクラウド型eラーニング教材配信サービスおよびアクティブラーニング向けソリューションを提供することで、研修関連ツールをワンストップで提供可能となる。
また16年11月にはメディアフラッグ<6067>と、研修事務・運営一括請負サービス(会場設営、オリエンテーション、アンケート回収など研修運営にあたって必要とされる業務の一括請負)の業務提携を発表した。これによって会場設営等のサービスが全国で提供可能となる。
12月16日にはプロネクサス<7893>との業務提携を発表した。双方の提供する教育研修(教材含む)を相互販売する。プロネクサスの約200種類の研修の提供が可能となる。またプロネクサスが持つ約3000社の主要取引先に対する当社研修の販売で、売上向上と顧客の裾野拡大に繋げる。
■ITを活用したサービスで高利益率
ITを活用した研修コンテンツや人事サポートシステムの自社開発、登壇業務に特化した講師の採用、WEB活用による問い合わせ対応主体の営業活動、営業活動から研修実施までのプロセス管理など、研修に関わる業務の分業化を図っている。このため1研修あたりの原価率が低減し、多様な研修ニーズへの対応や廉価な研修サービスの提供を可能としている。さらに収益性の高いコンテンツ開発やナレッジ蓄積・活用でも収益を上げるビジネスモデルだ。
営業面では顧客自動創出ソリューション「Plants」によって営業効率を高めている。WEB上で詳細なカリキュラム・受講者評価を比較検討可能にして、Google検索「研修+キーワード」で1位に表示される研修紹介ページが174ページ(当社調べ、16年5月末時点)に達している。そして新規取引件数の約5割がWEB経由となり、公開講座はWEBからの申込が中心である。
このようにITを積極活用し、豊富なノウハウに基づいて多様な研修ニーズに応える研修サービスが特徴・強みであり、ITサービスと組み合わせた事業展開によって、売上高営業利益率は15年9月期16.5%、16年9月期15.8%と、競合他社との比較で高い利益率を達成している。
なお収益変動の季節要因として、新入社員研修が集中する4~6月にあたる第3四半期(4~6月)の構成比が高いという特性がある。
■16年9月期は計画超の2桁増収増益で大幅増配
前期(16年9月期)連結業績は売上高が前々期(15年9月期)比20.3%増の29億15百万円、営業利益が同14.8%増の4億60百万円、経常利益が同13.6%増の4億52百万円、純利益が同25.1%増の2億98百万円だった。講師派遣型研修事業、公開講座事業とも好調に推移して期初計画を上回る2桁増収増益となり、過去最高を更新した。事業別売上高は講師派遣型研修事業が同12.5%増の20億70百万円、公開講座事業が同31.8%増の6億50百万円、その他事業が同2.2倍の1億94百万円だった。
研修実施回数は講師派遣型研修が同11.6%増の1万422回、公開講座が同49.3%増の4190回、合計が同20.3%増の1万4612回だった。受講者数は講師派遣型研修が同8.2%増の32万7708人、公開講座が同39.2%増の3万1439人、合計が同10.3%増の35万9147人だった。
また16年9月末時点の累計取引社数は1万7157社、Leaf有料利用数は33社、WEBinsource累計登録先数は同60.7%増加の3312社となった。WEBinsource累計登録先数が大幅増加し、公開講座顧客固定化施策が公開講座の大幅伸長に繋がっている。16年6月本格開始したストレスチェック運用代行サービスは累計事業者数が39(官公庁25組織、民間14社)となった。
売上総利益は同17.8%増加したが、売上総利益率は66.6%で同1.4ポイント低下した。また販管費は同18.8%増加したが、販管費比率は50.8%で同0.7ポイント低下した。販管費では積極的な人材採用で人件費が増加し、上場一時費用も計上した。またROEは28.8%で同9.3ポイント低下、自己資本比率は68.4%で同9.0ポイント上昇した。配当は同7円増配の年間11円(期末一括)で配当性向は28.3%だった。利益配分については、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としている。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期6億74百万円、第2四半期6億22百万円、第3四半期8億円、第4四半期8億18百万円、営業利益は1億33百万円、69百万円、1億56百万円、1億円だった。
■17年9月期も大幅増収増益・増配予想
今期(17年9月期)連結業績予想(11月11日公表)は売上高が前期(16年9月期)比22.6%増の35億73百万円で、営業利益が同22.9%増の5億65百万円、経常利益が同25.0%増の5億65百万円、純利益が同20.9%増の3億60百万円としている。配当予想は同2円増配の年間13円(期末一括)で予想配当性向は29.6%となる。各事業が伸長して大幅増収増益・増配予想である。
事業別売上高の計画は、講師派遣型研修事業が同12.6%増の23億32百万円、公開講座事業が同30.7%増の8億50百万円、その他事業が同2.0倍の3億90百万円としている。公開講座はセミナールーム拡充や新商品投入効果で大幅増収、その他事業はITサービスの大幅増収を見込んでいる。
月次情報(速報値)を見ると、16年11月度は、講師派遣型研修実施回数が前年比23.1%増の1193回、公開講座受講者数が同48.0%増の3174人、16年6月本格開始したストレスチェック運用代行サービスが累計導入取引社数16社(官公庁11+民間企業5)で受注金額12百万円超だった。WEBinsourceは新規登録先数が同49.2%増の94社で、累計登録先数が3511社となった。
■中期経営計画を策定
16年11月に3ヶ年中期経営計画(17年9月期~19年9月期、ローリング方式)を発表し、目標数値として18年9月期売上高45億22百万円、営業利益7億25百万円、経常利益7億25百万円、純利益4億62百万円、19年9月期売上高58億72百万円、営業利益9億83百万円、経常利益9億83百万円、純利益6億26百万円、そしてROE15%以上を掲げた。
テーマを「教育研修やITで生産性向上を支援するトップブランドになる~働き方改革実現のための課題解決企業へ」として、3つの戦略(コンテンツ戦略、営業戦略、IT戦略)を推進する。
営業拠点拡大・人員増強、公開講座常設セミナールーム拡充、出張開催拡大、公開講座利用顧客固定化促進、デジタルマーケティング強化、成長分野研修コンテンツ開発強化、新サービス開発強化、サービスプラットフォームによるサービスワンストップ化などを推進する。さらに市場開拓余地の大きい教育(学校、保育園)や医療・福祉(病院・介護施設)といった業界の開拓にも注力する方針だ。
■研修・教育サービスは成長産業、中期的にも収益拡大基調
日本では、労働力人口減少を補うための多様な人材の活躍推進、国際競争力回復のための労働生産性の向上が課題とされ、政府もアベノミクス成長戦略で「1億総活躍社会」の実現を掲げている。こうした事業環境を背景として、社会人向け研修・教育サービスは成長産業と考えられる。
また企業の人財育成意欲は一時的な景気変動に左右され難く、むしろ企業の競争力強化や成長に向けて、社員のスキルアップや戦略的キャリア育成の重要性が一段と高まっている。このため企業・官公庁・自治体の研修需要は高水準で推移することが予想され、事業環境は中期的に良好である。自社開発研修コンテンツなどの強みを発揮して、中期的にも収益拡大基調だろう。
■株価は上場来高値更新の展開、需給面良好で自律調整交えながら上値試す
株価の動きを見ると、上場来高値更新の展開で12月13日の1516円まで上伸した。好業績を評価する流れに変化はないようだ。
12月20日の終値1423円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS43円86銭で算出)は32~33倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は0.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS162円43銭で算出)は8.8倍近辺である。時価総額は約117億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線に対する乖離率が拡大して目先的に過熱感もあるが、上場来高値を更新して需給面は良好である。過熱感を冷ますための自律調整を交えながら上値を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)