【小倉正男の経済羅針盤】Jリートの新傾向&外人買い動向

東京証券取引所

■「外人買い」がJリートの市場認知度を高めた
 
小倉正男の経済羅針盤 この半年のことなのだが、Jリート(上場不動産投資信託)が存在感を高めている。

 昨年の今頃、つまりたった1年前は――、Jリートは配当(分配金)=利回りは高い。だが、株式としての価格の上昇・下落はあまりないといったジャンルの銘柄群だった――。法人・機関投資家が買いの主力を形成し、ポートフォリオとして投資をしているといった面が強かった。

 だが、この半年で様相はかなり違っている。
Jリート銘柄は上昇を続け、人気銘柄群になっている。Jリートは、マーケットの認知を得た格好に変わっている――。

 「日銀バズーカ」(金融量的質的緩和)第一弾が発表されたのが2013年4月、外人はJリートを大量に買っている。個人、法人・機関投資家は売りに廻った。

 しかし、外人はその後には、Jリートの売り手に廻った。法人・機関投資家が買い手になるという構造になっていた。

 ところが外人はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資金運用改革の兆しが見えた2014年央にはJリートの買い手に方向転換。Jリートの上昇第一波を牽引した――。

 2014年10月末の「日銀バズーカ」第二弾でも外人は買いに走った。個人は最大の売り手になり、法人・機関投資家も売りに廻った。これが上昇第二波――。

 Jリートが、市場で認知され、Jリート銘柄が値を上昇させ人気化したのはついこの半年――。ファクターとしては、「外人買い」にほかならない。

■人気化=株価上昇で現状のJリート利回りは低下しているが・・・

 さて今年のJリートの動向はどうだろうか。

 Jリートの専門ポータルサイト(ジャパンリートドットコム)を運営するジャパンリートの東間大・代表取締役は、「今年のJリートは多様化が進む」としている。

 判定はきわめて難しい。だが、ごく一般論でいうと、Jリートの現状は、人気化しやや買われ過ぎているというのが大方の見方だ。人気化の結果、株価が上昇して、利回りは現状3%台を割り込んでいるところが少なくない。(昨年のいま頃は、人気薄で利回りは3%超だった)

 利回り3%が絶対的な「基準」とはいえないにしても、一般的にはひとつの「指標」である。オフィスビル関連のJリート有力人気銘柄、すなわち日本ビルファンド投資法人、ジャパンリアルエステイト投資法人、森ヒルズリート投資法人などが軒並みに利回り2・5~2・8%内外になっている。

 Jリート各社としても、東京都心部の優良オフィスビルは限定されており、なかなか買えない状況になっている。東京都心部から離れて首都圏、地方の有力オフィスビルを買う傾向が出てきている――。
Jリート各社でみても、オフィスビル稼働率は高水準だが、賃料(平均値)は地方オフィスビルの増加など低下してきている。

 ジャパンリートの東間大・代表取締役は、「Jリートでは、オフィスビルの購入が地方へという流れが始まっている。またオフィスビル、住居関連だけではなく、新たにヘルスケア、エネルギー、ホテルなどにJリート銘柄群が広がる見込みだ。今年の新規上場は7社内外の予想。全体として多様化の流れが出る――」と語っている。

■原油安によるデフレ懸念と3度目の「日銀バズーカ」期待の綱引き

 今年は、為替は円安として、原油価格は昨年のピークから安値ゾーンに急低下――。原油低落から、貿易収支、経常収支などは最悪だった昨年からは改善・底入れする見込みだ。

 ただし、原油低落は、デフレ懸念を生む。だが、そのデフレ懸念から日銀バズーカ、すなわち第三弾目の金融量的質的緩和が行われるという可能性もないとはいいきれない。年初から大荒れに見舞われている市場からはその要望が強まるばかりである。

 「デフレ克服から3度目の金融量的質的緩和がもし実施されることになれば、外人はまた買い手に廻るのではないか、とみてよいと推測している」(東間代表)。ともあれ、Jリートの先行きだがなかなか読みきれない――。

 東間代表としては、直近のJリートの人気化傾向もあって、自社サイトを活用して個人投資家層の拡大・啓蒙を目指して、質の高い情報を配信していく方針だ。

 Jリートを組み入れた「上場投資信託」(ETF)銘柄情報を配信、あるいはJリートに関連するキュレーションサービス(ネット情報の収集・提供)、あるいは独自の情報コンテンツ提供などを開始する。

 先が見えない今はまさに「不確実性」の時代、情報が質量両面で足りないことだけは確かである――。

(経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数)

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