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山下医科器械は17年5月期第2四半期累計を減額だが通期据え置き、ネガティブ反応限定的
- 2016/12/30 08:40
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
山下医科器械<3022>(東1)は九州を地盤とする医療機器専門商社で、福岡県での市場シェア拡大を重点戦略としている。12月27日に17年5月期第2四半期累計業績予想を減額修正したが、期後半に需要回復が見込まれるため通期予想は据え置いた。株価のネガティブ反応は限定的だ。0.7倍近辺の低PBRも評価して戻りを試す展開が期待される。
■九州を地盤とする医療機器専門商社
九州を地盤とする医療機器専門商社である。医療機器の販売・メンテナンスおよび医療材料・消耗品などの販売を主力として、子会社イーピーメディックは整形インプラントを製造販売している。中期成長に向けて、九州最大の需要地である福岡県での市場シェア拡大を最重点戦略としている。
医療機関向けSPD(病院医療材料管理業務)契約施設数増加に対応するため、13年7月に福岡SPDセンター(福岡県福岡市)を新設し、鳥栖SPDセンター(佐賀県鳥栖市)との2拠点体制とした。そして16年9月に長崎TMSセンター(長崎県諫早市)が稼働し、物流センター2拠点、SPDセンター3拠点体制となった。物流の効率化と迅速化により信頼性とサービス向上を図る。
また15年10月には、パナソニックヘルスケアとの合弁会社パナソニックメディコム九州(当社出資比率49%)が営業開始した。電子カルテやレセコンなどのメディコム製品および関連機器の販売・サービスを展開する。
■第2四半期と第4四半期の構成比が高い収益構造
四半期別業績推移を見ると、15年5月期の売上高は第1四半期105億82百万円、第2四半期126億55百万円、第3四半期118億52百万円、第4四半期152億21百万円、営業利益は45百万円の赤字、2億21百万円、50百万円、3億12百万円だった。16年5月期の売上高は114億70百万円、130億53百万円、122億63百万円、148億29百万円、営業利益は4百万円の赤字、1億97百万円、64百万円、3億27百万円だった。医療機関の設備投資関連で第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造である。
16年5月期は15年5月期比2.6%増収、同8.6%営業増益、同3.1%経常増益、同7.5%最終減益だった。一般競争参加資格の降格措置期間が満了し、営業減益予想から一転して営業増益となった。売上総利益は同1.4%増加したが、売上総利益率は11.5%で同0.1ポイント低下した。販管費は0.7%増加したが、販管費比率は10.3%で同0.2ポイント低下した。
純利益は営業外費用での持分法投資損失計上、特別利益での収用補償金一巡、法人税等増加などで減益だった。ROEは5.6%で同0.7ポイント低下、自己資本比率は32.0%で同横ばいだった。配当は前々期比7円増配の年間50円(期末一括、普通配当40円+創業90周年記念配当10円)で、配当性向は38.0%だった。利益還元については安定的な配当の継続を基本方針とし、配当水準として連結配当性向30%を基準としている。
セグメント別(連結調整前)に見ると、医療機器販売事業は売上高が同2.5%増の512億64百万円で営業利益が同8.9%増の12億21百万円、医療モール事業(主に賃料収入)は売上高が同7.7%増の74百万円で営業利益が同3.9倍の10百万円、その他(自社グループ開発製品の整形外科用インプラント製造販売)は売上高が同11.0%減の4億76百万円で営業利益が6百万円の赤字(前々期は4百万円の赤字)だった。
医療機器販売業の売上高の内訳は、一般機器分野が同1.8%増の102億01百万円、一般消耗品分野が同2.9%増の192億66百万円、低侵襲治療分野が同3.4%増の134億13百万円、専門分野が同2.3%増の65億90百万円、情報・サービス分野が同3.7%減の17億93百万円だった。
■17年5月期第1四半期は費用増加で営業赤字拡大
今期(17年5月期)第1四半期(6~8月)の連結業績は、売上高が前年同期比3.5%増の118億68百万円、営業利益が36百万円の赤字(前年同期は4百万円の赤字)、経常利益が30百万円の赤字(同15百万円)、純利益が30百万円の赤字(同0百万円)だった。売上総利益率が低下し、長崎TMSセンター稼働に伴って消耗品等の販管費が増加したため営業赤字が拡大した。
売上総利益は同0.8%減少し、売上総利益率は11.0%で同0.4ポイント低下した。販管費は同1.7%増加したが、販管費比率は11.3%で同0.2ポイント低下した。営業外費用では持分法投資損失10百万円を計上した。
セグメント別(連結調整前)に見ると、医療機器販売事業は売上高が同3.4%増の117億84百万円で営業利益が同32.7%減の1億08百万円だった。医療モール事業は売上高が同0.6%増の18百万円で営業利益が0百万円の赤字(前年同期は1百万円の黒字)、その他は売上高が同35.6%減の68百万円で営業利益が同22.9%増の3百万円だった。
なお医療機器販売業の売上高の内訳は、一般機器分野が同26.1%増の20億30百万円、一般消耗品分野が同1.7%減の47億74百万円、低侵襲治療分野が同4.2%増の31億99百万円、専門分野が同1.8%増の15億37百万円、情報・サービス分野が同29.6%減の2億42百万円だった。一般機器分野は大型の病院施設新築移転案件等に伴う超音波診断装置等の医療機器備品や、MRI等の画像診断・放射線機器が寄与した。
■17年5月期第2四半期累計予想を減額だが、通期は据え置き
12月27日に今期(17年5月期)第2四半期累計(6~11月)連結業績予想の減額修正を発表した。売上高を16億60百万円減額して前年同期比0.8%減の243億39百万円、営業利益を1億41百万円減額して同96.9%減の6百万円、経常利益を1億44百万円減額して同84.8%減の34百万円、純利益を83百万円減額して同94.0%減の8百万円とした。大型設備案件の減少で手術室関連機器や画像診断機器などの売上が想定を下回った。
今期(17年5月期)通期の連結業績予想前回予想(7月11日公表)を据え置いて、売上高が前期(16年5月期)比6.0%増の546億95百万円、営業利益が同28.5%減の4億18百万円、経常利益が同23.1%減の4億88百万円、そして純利益が同14.1%減の2億85百万円としている。
診療報酬改定による汎用医療材料の価格低下や病床再編に伴う市場成長の減速など事業環境が厳しい中で、基盤事業であるSPD事業の拡大を図るが、長崎TMSセンター稼働に伴う費用(人件費、リース料、減価償却費)の発生、営業人員増加による人件費の増加などで減益予想としている。
第2四半期累計を減額修正したが、期後半に機器需要の回復が見込まれ、低侵襲治療分野における内視鏡備品などの売上が堅調に推移する。配当予想は同15円減配の年間35円(期末一括)で予想配当性向は30.7%となる。
なお病床機能の分化・連携や在宅医療・在宅介護の推進によって需要増加が見込まれる介護分野の事業展開を図るため、ヘルスケア事業推進部を新設する。同部署では今後、当社グループが出資している国内の新興企業が開発する介護関連製品の取り扱いを予定している。また電子カルテ等の普及拡大が見込まれるため、MIT推進部を強化してシェア拡大を図る。さらに整形分野における子会社事業の強化、循環器事業の拡大、医療モール事業の収益向上に取り組む。
■中期経営計画で18年5月期売上高580億円目標
15年7月策定の新中期経営計画では基本戦略として、さらなる基盤事業の強化と推進体制の構築、地域医療構想に即した新規事業の創出、グループ統制とガバナンス強化に即した経営体制の刷新、積極的な人材確保と教育、コンプライアンス・内部統制の徹底と経営理念経営を推進する。
経営目標数値には、18年5月期の売上高580億円、経常利益8億50百万円を掲げている。中期的に収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度は11月末と5月末の年2回実施
株主優待制度は毎年11月30日および5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。優待内容は100株~999株保有株主に対して500円相当のクオカード、1000株~1999株保有株主に対して1000円相当のクオカード、2000株以上保有株主に対して1500円相当のクオカードを贈呈する。
■株価は減額修正に対するネガティブ反応限定的、低PBRも評価
株価の動きを見ると、概ね1700円近辺のレンジで推移している。12月27日発表の減額修正を嫌気する形で12月28日は軟調なスタートだったが、素早く切り返しの動きを強めた。ネガティブ反応は限定的のようだ。
12月29日の終値1723円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS113円90銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間35円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2391円34銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約44億円である。
週足チャートで見ると52週移動平均線を突破した。そして26週移動平均線が上向きに転じてきた。減額修正に対するネガティブ反応は限定的であり、0.7倍近辺の低PBRも評価して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)