第一実業は15年高値突破して06年高値試す、機械の総合商社で17年3月期予想に再増額余地

 第一実業<8059>(東1)は産業機械を主力とする機械の総合商社である。1月18日~20日には「第7回クルマの軽量化技術展」および「第46回インターネプコンジャパン」に出展する。17年3月期増収増益予想で、円安進行も追い風として再増額余地がありそうだ。株価は15年7月高値を突破した。依然として指標面に割安感があり、自己株式取得も評価して06年高値を試す展開だろう。これを突破すれば96年高値が視野に入る。

■産業機械を主力とする機械の総合商社

 各種産業機械を主力とする機械の総合商社である。海外は米州、中国、東南アジア・インド、欧州など世界18カ国36拠点に展開している。

 15年4月連結子会社の第一メカテックのDJTECH事業部門を名古屋電機工業<6797>に譲渡した。DJTECH事業部門は高性能はんだ印刷検査装置の開発・製造・販売を行っており、名古屋電機工業と当該検査装置事業に係る代理店契約を締結し、製販サービスの一貫体制を強化して両社の事業拡大を目指す。

 16年3月期のセグメント別売上高構成比はプラント・エネルギー事業23.2%、産業機械事業35.0%、エレクトロニクス事業34.3%、ファーマ事業5.3%、航空事業1.9%、その他0.3%だった。海外売上比率は46.7%だった。

■植物工場やバイナリー発電関連など新規分野への展開も強化

 新規分野として、植物工場システムに関するプロジェクトで埼玉県入間市にパイロットプラントを建設した。茨城県笠間市と長野県飯田市ではメガソーラーを運営している。

 地熱、温泉熱、焼却廃熱、一般工場廃熱など、未利用熱エネルギーを有効活用して発電するバイナリー発電装置ビジネスに関しては、14年4月米アクセスエナジー社の小型バイナリー発電装置の日本国内での独占的製造権を取得し、14年5月独占販売代理店契約を締結した。さらに16年5月には三菱重工業<7011>グループのターボデン(イタリア)社製バイナリー発電装置の国内販売総代理店契約を締結した。中大型バイナリー発電装置をラインナップに加えて事業拡大を図る。

 なお1月18日~20日には「第7回クルマの軽量化技術展」および「第46回インターネプコンジャパン」に出展する。「第7回クルマの軽量化技術展」では、軽量化に不可欠のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)加工におけるプレス成形と射出成形の一体型設備などを紹介する。

■四半期収益は設備投資関連の大型案件によって変動

 四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は受注高が第1四半期427億64百万円、第2四半期300億50百万円、第3四半期338億04百万円、第4四半期673億87百万円、売上高は320億72百万円、412億59百万円、299億74百万円、400億56百万円、営業利益は44百万円、16億79百万円、4億48百万円、21億70百万円で、16年3月期は受注高が390億71百万円、315億81百万円、384億41百万円、318億08百万円、売上高が296億61百万円、321億30百万円、226億66百万円、397億19百万円、営業利益が5億16百万円、11億98百万円、3億29百万円、18億42百万円だった。16年3月期末受注残高は1100億25百万円だった。

 大型案件の受注・完成時期で四半期収益は変動しやすく、設備投資関連のため第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造である。16年3月期は、アジア地域を中心とした海外向けプラント用設備の大口案件が減少し、自動車関連業界向け自動組立ライン、自動加工機、塗装ロボットなどの大口案件も減少した。利益面では貸倒引当金繰入額が減少したが、排水処理プラント建設において下請け業者の作業品質に起因する工期遅延でコストが増加したことも影響した。

 売上総利益は15年3月期比4.0%減少したが、売上総利益率は14.6%で同1.4ポイント上昇した。販管費は同2.1%減少したが、販管費比率は11.5%で同1.3ポイント上昇した。営業外では為替差損益が改善し、持分法投資利益が増加した。特別損失では事業譲渡損が一巡した。ROEは7.4%で同1.3ポイント低下、自己資本比率は37.9%で同0.4ポイント低下した。配当性向は34.5%だった。

 プラント・エネルギーは受注高が46.0%減の359億95百万円、売上高が15.6%減の287億47百万円、営業利益(連結調整前)が0百万円(前々期は5億33百万円の黒字)だった。産業機械は受注高が15.2%減の438億68百万円、売上高が15.3%減の434億88百万円、営業利益が32.2%減の14億05百万円だった。エレクトロニクスは受注高が10.8%増の484億36百万円、売上高が2.1%減の425億92百万円、営業利益が2.3倍の15億11百万円だった。

 ファーマは受注高が13.5%増の81億05百万円、売上高が23.7%減の66億22百万円、営業利益が6.2%増の9億円、航空は受注高が11.0%減の39億41百万円、売上高が55.5%減の23億95百万円、営業利益が70.8%減の90百万円だった。

■17年3月期第2四半期累計は増額修正値上回る大幅増収増益

 今期(17年3月期)第2四半期累計(4~9月)連結業績(9月26日に増額修正)は、売上高が前年同期比23.3%増の762億02百万円で、営業利益が同73.4%増の29億73百万円、経常利益が同67.3%増の31億48百万円、純利益が同72.2%増の18億20百万円だった。受注高は同8.3%減の647億92百万円、海外売上比率は50.4%だった。増額修正値を上回る大幅増収増益だった。

 売上総利益は同14.4%増加したが、売上総利益率は13.4%で同1.1ポイント低下した。販管費は同0.3%増加したが、販管費比率は9.5%で同2.2ポイント低下した。営業外では為替差損益が悪化(前期は差益43百万円、今期は差損50百万円)したが、持分法投資利益が増加(前期39百万円、今期67百万円)した。特別損失では関係会社株式評価損2億56百万円を計上した。

 セグメント別に見ると、プラント・エネルギーは売上高が48.5%増の234億64百万円、営業利益(連結調整前)が6億04百万円(前年同期は2億14百万円の赤字)だった。大手エンジニアリング会社経由の海外向け石油プラント・エチレンプラント用設備、化学会社向け樹脂製造プラント用設備など既存受注大口案件を売上計上した。受注高は10.7%減の182億90百万円だった。

 産業機械は売上高が6.7%減の192億49百万円、営業利益が41.4%減の4億41百万円だった。自動車関連業界向け自動組立ライン、自動加工機、塗装ライン、家電・自動車部品製造の射出成形機が減少した。受注高は7.0%減の204億24百万円だった。エレクトロニクスは売上高が28.3%増の271億34百万円、営業利益が50.0%増の10億81百万円だった。IT・デジタル関連機器製造会社向け電子部品実装機が好調だった。受注高は1.2%減の216億81百万円だった。

 ファーマは売上高が48.4%増の44億42百万円、営業利益が29.6%増の5億64百万円だった。ジェネリック医薬品製造会社向け中心に錠剤外観検査装置やパッケージング用機器・装置が好調だった。受注高は18.0%減の32億72百万円だった。航空は売上高が88.6%増の18億06百万円、営業利益が5.2倍の1億04百万円だった。航空機地上支援機材や空港施設関連機器が好調だった。受注高は42.0%減の11億04百万円だった。

 なお四半期別推移を見ると、受注高は第1四半期374億36百万円、第2四半期273億56百万円、売上高は377億11百万円、384億91百万円、営業利益は9億89百万円、19億84百万円だった。

■17年3月期通期予想に再増額余地

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(9月26日に増額修正)は、売上高が前期(16年3月期)比20.8%増の1500億円、営業利益が同15.8%増の45億円、経常利益が同11.9%増の49億円、純利益が同9.9%増の29億円としている。受注高の計画は同2.1%減の1380億円としている。

 エレクトロニクスやファーマにおいて設備投資需要が想定超であり、プラント・エネルギーや航空も堅調に推移する。利益面では前期発生した一時的コスト増加要因一巡も寄与する。なお非連結子会社であるブラジル現地法人の業績が厳しく、関係会社株式評価損を計上する見込みだ。配当予想は前期と同額の年間17円(第2四半期末9円、期末8円)で予想配当性向は31.3%となる。

 通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は、売上高が50.8%、営業利益が66.1%、経常利益が64.2%、純利益が62.8%と高水準である。円安進行も追い風として通期予想に再増額余地がありそうだ。

■新中期経営計画で19年3月期純利益33億円目標

 16年5月策定の新中期経営計画「DASH2018」では、基本方針を「グローバルに事業軸体制を進め、一層の業績拡大を実現する」「経営体質の向上を図り、強力なガバナンス体制を構築する」とした。経営目標数値には最終年度19年3月期の売上高1330億円、営業利益50億円、経常利益53億円、純利益33億円を掲げている。

■自己株式取得

 8月10日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限200万株、取得価額総額の上限10億円、取得期間16年8月15日~17年1月31日)については、11月30日時点の累計で取得株式総数51万9000株、取得価額総額2億6123万円となっている。

■株価は15年7月高値突破して06年高値試す、96年高値も視野

 株価の動きを見ると、15年7月高値697円を突破して12月8日の703円まで上伸した。その後も高値圏で堅調に推移している。

 12月30日の終値669円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS54円26銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は2.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS669円51銭で算出)は1.0倍近辺である。時価総額は約371億円である。

 週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線が接近して自律調整一巡感を強めている。依然として指標面に割安感があり、自己株式取得も評価して06年高値748円を試す展開だろう。これを突破すれば96年高値919円が視野に入る。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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