【2017年の相場展望】どうみる新春相場:当面は「トランプ・ラリー」が基調だが波乱要因も

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 2017年の株式相場は、当面はトランプ次期米大統領の経済政策「トランプノミクス」に期待する「トランプ・ラリー」が基調となり、米国株高やドル高・円安に連動する形で日本株も堅調な展開となりそうだ。ただし強気な見方が多い一方で、既に織り込み済みとの見方もある。さらに「トランプノミクス」が世界経済に与える負の影響など波乱要因も多彩である。日本株にとっては「トランプ・ラリー」以外に独自の好材料が見当たらず、日銀の出口戦略が意識されれば上値が重くなる可能性もありそうだ。

■2017年も当面は「トランプ・ラリー」が基調

 2016年の米国のNYダウ工業株30種平均株価は、トランプ次期米大統領の経済政策「トランプノミクス」への期待感で終盤に大幅上昇し、年間では史上2番目の上げ幅となった。日本でも日経平均株価が、米国株高やドル高・円安に連動する形で終盤に挽回し、最終的には僅かながらも5年連続の上昇となった。

 トランプ次期米大統領の経済政策「トランプノミクス」の基本は、大型法人減税や米企業の海外からの資金還流による米国内での投資拡大促進、財政支出拡大による社会インフラの再構築、米国第一主義(米国ファースト)の保護通商政策、金融規制の緩和、環境規制の緩和などによって、米国内での生産および雇用を拡大することで米国経済の成長率引き上げを狙っている。

 外交政策については不透明感が強いが、米国経済の成長率引き上げを狙う「トランプノミクス」に対する期待感は強い。またトランプ次期米大統領は選挙期間中にドル安政策を展開していたが、米景気拡大に伴って日米金利差が拡大するとの観測が強く、為替に関してはドル高・円安の流れに変化はないと考えられる。

 当面は1月20日のトランプ次期米大統領の就任演説が注目イベントとなる。その後はトランプ次期政権の具体的な政策や主要経済指標を見極めながらの展開となるが、テクニカル面での過熱感を解消するための調整を交えながらも、2017年も当面は「トランプ・ラリー」が基調となりそうだ。

■日経平均株価は米国株や為替に連動、当面は2015年高値が焦点

 NYダウ工業株30種平均株価は史上初の2万ドルが目前に迫っている。そして1月20日のトランプ次期米大統領の就任演説が好感される動きになれば、NYダウ工業株30種平均株価2万ドルは通過点となる。

 日本株も当面は、米国株や為替に連動する流れに変化はなく、日銀のETF買い入れが下値を支える需給関係にも大きな変化はないだろう。米景気拡大期待でNYダウ工業株30種平均株価が2万ドルを突破すれば、為替もドル高・円安が進行することになり、日経平均株価も米国株高とドル高・円安を好感して2万円が通過点のムードとなる。

 ドル高・円安進行によって、ドルベースで見た日経平均株価に割安感や出遅れ感が生じることも、海外投資家の買いに繋がりそうだ。そして当面は2015年の高値2万952円が焦点となる。

 物色面では、当面は自動車・機械・電機・精密などの輸出関連セクター、金利上昇を好感する銀行などの金融セクターといった主力株が主導する展開だろう。その後は物色が内需関連のバリュー株、グロース株、中小型株などに循環的に広がるかが焦点となる。

■政策やマネーの流れの大転換

 財政支出拡大や米国ファーストの保護通商政策を掲げるトランプ次期米大統領の誕生によって、2017年は政策やマネーの流れの大転換が本格化するとの見方が広がっている。

 グローバル資本主義から保護貿易主義へ、金融政策から財政政策へ、金融緩和から金融引き締めへ、といった政策の大転換に合わせて、マネーが債券市場から株式市場へシフトするグレート・ローテーションの流れだ。

 金融政策面では、先進主要国が大規模な金融緩和策から、金融緩和縮小局面あるいは金融引き締め局面に移行するという見方が有力になっている。既に利上げ局面に入っている米FRB(連邦準備制度理事会)は2016年12月に、2015年12月以来1年ぶりに2回目の利上げを実施した。そして2017年は正常な金利水準を目指すとして2~3回の追加利上げが予想されている。

 ECB(欧州中央銀行)は2016年12月の理事会で、量的金融緩和の終了時期を2017年12月まで9ヶ月延長することを決定したが、一方では国債買い取り規模を2017年4月から200億ユーロ縮小して600億ユーロとすることを決定した。いわゆるテーパリング(量的金融緩和の段階的縮小)局面に向かっている。

 日銀も2016年9月の金融政策決定会合で、新しい金融緩和の枠組みとして、短期金利と長期金利をそれぞれ目標値に誘導するイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)導入を決定すると同時に、マネタリーベース目標を撤回した。これによってテーパリングが意識され始めている。

■波乱要因も多彩

 そして波乱要因も多彩だ。政治面では世界的なポピュリズムや自国第一主義の台頭、移民・難民問題の深刻化、フランス大統領選挙やドイツ連邦議会選挙などEU主要国における政権交代懸念などがある。また地政学リスクとしては世界的なテロの激化、米ロ接近による対中国の強硬政策や関係緊張などに注意が必要となる。

 経済面では「トランプノミクス」が世界経済に与える負の影響として、保護通商政策への傾倒による世界貿易の縮小と世界経済の停滞、ドル高に伴う新興国からのマネー流出による通貨危機懸念や世界経済への悪影響、米財政支出拡大に伴う米財政悪化懸念と急速な金利上昇などが警戒される。

 もちろん「トランプノミクス」の柱となる減税や財政支出が小幅にとどまった場合、あるいは米国内での生産・雇用の拡大が進展しない場合には大きな失望感が広がることになる。中国に関しては人民元の下落、外貨準備高の減少、不動産バブルの崩壊、過剰設備解消の負の影響、成長率の鈍化、沿岸部と内陸部の格差問題、米国の対中国政策強硬化による政治的緊張、南シナ海における地政学リスクなど、懸念材料に事欠かない。また世界的に金利上昇が加速した場合には、金利がある程度の水準に達したところでマネーが株式市場から債券市場に逆シフトする可能性がある。

 日本経済に関しては、米国の景気拡大やドル高・円安進行は日本の輸出企業にとって恩恵が大きいと一般的には考えれるが、そもそも米国ファーストの米景気拡大によって、本当に日本経済が直接的に大きな恩恵を享受できるのかという懐疑的な見方が燻ぶる。

 トランプ次期米大統領が通商政策や通貨政策で日本を敵視する可能性は小さいという見方が多いようだが、保護通商政策への傾倒は日本や新興国からの輸入関税や数量規制に繋がらないのか、米国内での生産拡大を迫られた場合に日本の国内空洞化に拍車をかけることにならないか、といった懸念が十分に払拭されたわけではない。

■国内では日銀の出口戦略が波乱要因

 国内では2017年も「トランプ・ラリー」による米国株高とドル高・円安連動以外に好材料が見当たらない状況だ。

 安倍総理の経済政策「アベノミクス」が既に忘れられた状況であり、抜本的な構造改革に踏み込めない状況が続いている。日銀の異次元金融緩和政策の限界も指摘されている。年内に衆院解散・総選挙が予想されているが、争点に欠けるため現時点では特に好材料とも考えられない。同一労働・同一賃金などの働き方改革は、短期的には企業にとって人件費負担が増す形となりそうだ。

 国内の波乱要因としては、2018年4月に黒田日銀総裁の任期切れを迎えるということもあり、世界的な金利上昇を受けて、日銀の異次元金融緩和策の出口戦略が意識され始めた場合の市場への心理的影響が注目点となる。

 日銀は早ければ2017年春にも、国債やETFの買い入れ規模を縮小するテーパリングに向かうとの見方もある。株価形成を歪めているとの批判も多い日銀のETF買い入れだが、日本株の下値を支えてきたETF買い入れ規模を日銀が縮小することになれば、日本株は最大の買い手を失うことになりかねない。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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