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朝日ラバーは自律調整一巡して戻り試す、17年3月期大幅増益で経常最高益更新予想
- 2017/1/6 07:03
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
朝日ラバー<5162>(JQ)はシリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装LED照明光源カラーキャップ、医療・衛生用ゴム製品、RFIDタグ用ゴム製品などを展開している。1月18日~20日開催「第9回ライトテックEXPO」に出展する。17年3月期大幅増益予想で経常利益は過去最高更新見込みである。株価は11月の戻り高値から反落したが自律調整一巡感を強めている。好業績を評価して戻りを試す展開が期待される。
■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力
シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連などの工業用ゴム製品、スポーツ用ゴム製品(卓球ラケット用ラバー)、医療・衛生用ゴム製品(点滴輸液バッグ用ゴム栓など)、機能製品のRFIDタグ用ゴム製品などを展開している。
自動車内装照明関連で、車載用小型電球の光源カラーキャップ「ASA COLOR LAMPCAP」や、車載用LED照明の光源カラーキャップ「ASA COLOR LED」が主力製品である。車載用「ASA COLOR LED」は高級車向けに加えて、小型車や軽自動車向けにも採用が拡大している。
16年3月期セグメント別売上構成比は工業用ゴム事業81%、医療・衛生用ゴム事業19%、営業利益(連結調整前)構成比は工業用ゴム事業71%、医療・衛生用ゴム事業29%、分野別売上構成比は自動車分野63%、医療分野18%、ライフサイエンス分野7%、その他13%、地域別売上構成比は国内84%、海外16%だった。
なお1月18日~20日開催(東京ビッグサイト)の「第9回ライトテックEXPO」に出展する。
■マイクロ流体デバイスの新工場を着工
NEC<6701>のポータブルDNA解析装置向けマイクロ流体デバイスについては14年10月に量産を開始した。分子接着技術を活用した製品である。
マイクロ流体デバイスの生産能力増強、およびライフサイエンス分野や医療分野における新製品開発推進のため、福島県白河市・白河工場の隣接地に新工場(白河第二工場)を16年6月着工した。総投資額は約11億60百万円で、17年2月竣工予定である。
なお新工場建設および初期導入の生産設備投資は、福島県「平成27年度福島医療・福祉機器開発・事業化事業費補助金」の補助対象事業として採択・交付決定された。交付金額は最大7億50百万円で設備稼働後に受領する。これによって補助金収入を特別利益に計上し、補助金のうち固定資産取得に該当する分について圧縮記帳処理を行い、固定資産圧縮損として特別損失を計上する。
■見やすく疲れにくい自動車内装照明の開発開始
15年9月埼玉大学と連携して、色のバラつきが少なく視認性に優れ、疲労低減性のある自動車内装照明用LEDの蛍光体層の共同開発を開始した。LEDの光を波長変換する蛍光体を組み合わせ、人間工学に基づいて運転者にとって見やすく疲れにくい照明の開発を目指す。
この共同開発は経済産業省「平成27年度革新的ものづくり産業創出連携促進事業(戦略的基盤技術高度化支援事業)」として補助金の採択を受けた。事業期間は15年度から3年間、補助金額は3年間で9750万円の予定としている。
■プラズマ気流制御電極技術も開発
16年10月には、国立研究開発法人産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所から支援を受けていた「風車用プラズマ気流制御用電極の特性評価」事業について、平成28年度福島県産総研連携再生可能エネルギー等研究開発補助事業補助金の研究テーマとして採択されたと発表している。
事業期間は16年10月から17年3月までで、補助金額は約3百万円としている。
■特殊要因一巡して営業損益改善基調
四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期14億85百万円、第2四半期15億40百万円、第3四半期15億21百万円、第4四半期15億13百万円、営業利益は55百万円、1億01百万円、50百万円の赤字、8百万円、16年3月期は売上高が13億96百万円、15億02百万円、14億72百万円、16億06百万円、営業利益が26百万円、49百万円、46百万円、1億16百万円だった。
16年3月期は役員退職慰労引当金繰入額が一巡して大幅営業増益・経常増益だった。売上総利益は15年3月期比8.2%減少し、売上総利益率は24.1%で同1.8ポイント低下した。販管費は同17.3%減少し、販管費比率は20.1%で同3.9ポイント低下した。ROEは3.7%で同5.9ポイント低下、自己資本比率は40.1%で同0.8ポイント上昇した。配当性向は44.6%だった。利益配分については、株主資本の充実と長期的な収益力の維持・向上、業績に裏付けられた安定的な配当の継続を原則としている。
セグメント別に見ると、工業用ゴム事業は売上高が同0.9%減の48億50百万円で営業利益(連結調整前)が同27.0%減の3億20百万円、医療・衛生用ゴム事業は売上高が同3.3%減の11億26百万円で営業利益が同1.3%増の1億28百万円だった。
分野別売上高は、自動車分野が同7.2%増の37億40百万円、医療分野が同2.4%減の10億95百万円、ライフサイエンス分野が同1.6%増の3億95百万円、その他が同29.7%減の7億44百万円だった。主要製品の売上高は自動車内装照明用「ASA COLOR LED」が同8.7%増の23億03百万円、卓球用ラケットカバーが同6.6%減の3億16百万円、ディスポーザブル用ゴム製品が同2.4%減の10億95百万円、RFIDタグ用ゴム製品が同54.4%減の3億04百万円だった。
■17年3月期第2四半期累計は計画超の大幅増益
今期(17年3月期)第2四半期累計(4~9月)の連結業績は売上高が前年同期比6.4%増の30億83百万円、営業利益が同2.6倍の1億94百万円、経常利益が同2.9倍の1億93百万円、純利益が同3.2倍の1億47百万円だった。自動車用ゴム製品が好調に推移し、生産性向上も寄与して計画超の大幅増益だった。売上高、各利益とも第2四半期累計として過去最高だった。
売上総利益は同20.3%増加し、売上総利益率は26.8%で同3.1ポイント上昇した。販管費は同3.4%増加したが、販管費比率は20.5%で同0.6ポイント低下した。
セグメント別に見ると、工業用ゴム事業は売上高が同5.6%増の25億01百万円で、営業利益(連結調整前)が同56.2%増の2億11百万円だった。自動車内装照明用「ASA COLOR LED」が好調に推移し、RFID用ゴム製品、スポーツ用ゴム製品の卓球ラケット用ラバーも増加した。医療・衛生用ゴム事業は売上高が同9.9%増の5億81百万円で、営業利益が同2.5倍の1億20百万円だった。採血用・薬液混注用ゴム栓の受注が増加し、生産性向上も顕著だった。
なお事業分野別売上高は、自動車分野が同6.0%増の19億25百万円、医療分野が同10.4%増の5億68百万円、ライフサイエンス分野が同2.1%減の1億77百万円、その他分野が同6.6%増の4億12百万円だった。主要製品売上高は自動車内装照明用「ASA COLOR LED」が同9.0%増の12億27百万円、ディスポーザブル用ゴム製品が同10.4%増の5億68百万円、卓球ラケット用ラバーが同20.9%増の1億67百万円、RFID用ゴム製品が同5.0%増の1億76百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期14億46百万円、第2四半期16億37百万円、営業利益は82百万円、1億12百万円だった。
■17年3月期通期も大幅増益予想
今期(17年3月期)通期の連結業績予想(11月4日に増額修正)は、売上高が前期(16年3月期)比5.5%増の63億05百万円、営業利益が同69.9%増の4億04百万円、経常利益が同65.0%増の3億89百万円、そして純利益が同2.1倍の2億78百万円としている。経常利益は過去最高の見込みだ。配当予想は前期と同額の年間13円(第2四半期末3円、期末10円)としている。予想配当性向は21.0%となる。
引き続き自動車内装照明用「ASA COLOR LED」やRFIDタグ用ゴム製品が好調に推移する。医療・衛生用ゴム事業も採血用・薬液混注用ゴム栓の受注が増加している。利益面では生産性向上への取り組み効果も寄与する。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.9%、営業利益が48.0%、経常利益が49.6%、純利益が52.9%と順調な水準である。通期ベースでも好業績が期待される。
■中期経営計画で新市場・新分野への事業展開を推進
16年2月に第11次3ヵ年中期経営計画(V-1計画)(14年5月策定、15年3月期~17年3月期)の見直しを発表した。ライフサイエンス分野のマイクロ流体デバイス製品について、最終年度17年3月期売上高目標を12.5億円としていたが、主力案件の受注が計画を大幅に下回る見込みとなったことや、他の開発案件の量産開始も遅れる見込みとなった。
事業環境等も勘案した結果、17年3月期の経営目標数値を、従来の売上高80億円(自動車37億円、医療13億円、ライフサイエンス16億50百万円、その他13億50百万円)で営業利益8億円から、売上高62億円(自動車36億円、医療11億円、ライフサイエンス4億円、その他10億円)で営業利益2億70百万円とした。マイクロ流体デバイスを生産する新工場についても着工・竣工を延期し、16年6月着工予定・17年2月竣工予定とした。
なお20年3月期を見据えた長期ビジョンを「AR-2020VISION」として、前半3ヵ年(15年3月期~17年3月期)を第1ステージ「V-1計画」、後半3ヵ年(18年3月期~20年3月期)を第2ステージ「V-2計画」と位置付けている。中期経営方針については、既存事業の質・量の継続的成長(国内事業は質的成長、海外事業は量的成長)、新市場・新分野への事業展開、20年に向けた事業基盤の強化・整備としている。
■株価は自律調整一巡して戻り試す
株価の動きを見ると、11月30日の戻り高値1024円から反落したが、直近安値圏800円近辺から切り返しの動きを強めている。自律調整が一巡したようだ。
1月5日の終値881円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS61円96銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS792円79銭で算出)は1.1倍近辺である。時価総額は約41億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。自律調整が一巡し、好業績を評価して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)