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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】DNAチップ研究所は第3四半期累計の赤字幅拡大に対するネガティブ反応は限定的
- 2015/2/3 07:07
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
バイオベンチャーのDNAチップ研究所<2397>(東マ)の株価は、概ね800円近辺のレンジでモミ合う展開だ。1月22日に発表した第3四半期累計(4~12月)の営業赤字幅拡大に対するネガティブ反応は限定的のようだ。急伸後の調整が一巡して反発局面が期待される。
将来の個人化医療や未病社会の実現を見据えた遺伝子発現プロファイル収集・統計受託解析など、DNAチップ(DNAマイクロアレイ)技術の事業化を目指す研究開発企業である。現在は研究受託事業(大学病院・研究機関や製薬・食品メーカー向けDNAチップ関連の受託実験・解析・統計処理サービスなど)を主力として、商品販売事業も展開している。
時々刻々と変化する体調変化や加齢とともに起こる免疫変化などを遺伝子検査するRNAチェック(血液細胞遺伝子発現マーカー検査)に強みを持ち、中期成長に向けて次世代シークエンス受託解析サービスなど研究受託のメニューを充実させるとともに、RNAチェックによる遺伝子解析検査サービス、独自開発パッケージソフトウェアによる診断支援サービス、健康モニタリングサービスなどの診断関連事業を収益柱に育成する方針だ。
診断サービスでは「リウマチェック」(関節リウマチの薬剤効果予測検査)による多剤効果予測検査サービスの拡充、「免疫年齢診断」サービスの拡充、そして新規サービスの「超高感度バリアント検出サービス(仮称)」(肺がん患者を対象とした組織由来DNA変異検出)を強化する。
商品販売事業では高校・大学生教育用DNAチップ教材「ハイブリ先生」、乳癌再発リスクを予測する乳癌予後予測キット「MammaPrint」(導入商品)、問診パッケージソフト「iRIS:関節リウマチ問診システム」、DNA鑑定向け硬組織(歯牙・骨)からのDNA抽出キット「Tbone EX Kit」などの受注拡大を推進している。
戦略商品に関しては中長期的に一般健康診断への採用拡大も目指す方針だ。さらに大腸がん・悪性神経膠腫の術後予後予測、免疫年齢・肥満・うつ病・疲労・アルツハイマーなどの診断関連マーカーの開発・事業化、医薬品開発と一体化した診断マーカー開発(コンパニオン診断薬開発支援)、再生医療支援事業(培養細胞の安全性評価系)なども強化して業容を拡大する。14年3月には「神経膠腫予後予測方法、およびそれに用いるキット」に関する国内特許を取得した。
14年11月にはエンジニアリングプラスチック事業を展開するエンプラス<6961>と資本業務提携した。バイオ事業における業界ネットワークの補完、新製品開発能力の強化、海外インフラの利用などでシナジー効果を目指すとしている。
今期(15年3月期)の業績(非連結)見通しは、前回予想(4月24日公表)を据え置いて、売上高が前期比26.1%増の4億40百万円、営業利益が2百万円の黒字(前期は44百万円の赤字)、経常利益が2百万円の黒字(同44百万円の赤字)、純利益が1百万円の黒字(同45百万円の赤字)としている。
研究受託事業でのマイクロアレイ受託解析サービス、次世代シークエンス受託解析サービス、診断支援および関連ビジネスの拡大に注力し、営業黒字化を目指している。増収効果に加えて、受託解析や診断事業の売上構成比上昇、採算性の高いメニューの重点拡販、作業効率の改善などで粗利益率が上昇する見通しだ。
1月22日に発表した第3四半期累計(4~12月)の業績(非連結)は、売上高が前年同期比5.7%減の1億43百万円、営業利益が1億31百万円の赤字(前年同期は1億08百万円の赤字)、経常利益が1億50百万円の赤字(同1億08百万円の赤字)、純利益が1億51百万円の赤字(同1億09百万円の赤字)だった。事業別売上高は研究受託事業が同8.8%減の1億34百万円、商品販売事業が同88.7%増の9百万円だった。
第3四半期累計は前年同期に比べて減収となり、営業赤字幅が拡大したが、受注高は増加傾向のようだ。第4四半期(1~3月)の売上構成比が高い収益構造であり、通期ベースでの営業黒字化が期待される。
中期的な業績改善推進プランとしては「研究開発から事業化への加速」を掲げている。提案型研究受託メニューの強化(マイクロアレイ解析と新規受託サービス)、診断関連事業の拡充(リウマチ多剤効果判定、臨床研究用データベース「iCIS」、診断マーカー、RNAチェックなど)、販売促進のためのアライアンス強化、海外展開(米国の大学との共同研究)などを推進する方針だ。エンプラスとの資本業務提携効果も寄与して収益改善が期待される。
なお、14年12月8日付のエンプラス<6961>を割当先とする第三者割当増資による新株発行(84万8000株、発行価格669円)および新株予約権の発行(8520個=85万2000万株、当初行使価格669円)により、第3四半期末時点の発行済株式総数は423万7700株、自己株式は49株となった。
株価の動きを見ると、エンプラスとの資本業務提携を好感して急伸した14年11月高値1430円から反落し、1月22日の第3四半期累計業績発表前後にやや乱高下する場面があったが、概ね800円近辺のレンジでモミ合う展開だ。ただし第3四半期累計の営業赤字幅拡大に対するネガティブ反応は限定的のようだ。
2月2日の終値は805円だった。週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、日足チャートで見ると25日移動平均線突破の動きを強めている。急伸後の調整が一巡して反発局面が期待される。