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マーケットエンタープライズは下値固め完了して急反発、ネット型リユース事業を主力に事業ドメイン拡大
- 2017/1/26 06:54
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マーケットエンタープライズ<3135>(東マ)はネット型リユース事業を展開し、中期成長に向けて中古専門MVNOサービス「カシモ」など、新サービスによる事業ドメイン拡大戦略も推進している。17年6月期は先行投資負担で減益予想だが、中期的に収益拡大が期待される。株価は下値が固めして急反発の動きだ。
■インターネットに特化してリユース品買取・販売事業を展開
インターネットに特化してリユース(再利用)品を買取・販売するネット型リユース事業を展開している。
買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」など自社運営26カテゴリーWEB買取サイトを通じて一般消費者や法人からリユース品を仕入れ、全国のリユースセンター(16年4月現在、東京、仙台、横浜、埼玉、名古屋、大阪、神戸、福岡の8拠点)で在庫を一括管理する。そして複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトで一般消費者や法人向けに販売する。販売サイトのサービスブランドは「ReRe(リリ)」に統一した。
16年12月には、デロイト トウシュ トーマツ リミテッド(DTTL)が発表したテクノロジー・メディア・テレコミュニケーション(TMT)業界の収益(売上高)に基づく成長率ランキング「第15回アジア太平洋地域テクノロジー Fast500」において、500位中455位を獲得したと発表している。
■ITとリアルを融合させたマルチチャネル対応が強み
販売の実店舗を持たずにEC(電子商取引)によってリユース品の売買を行うサービスであり、ITとリアルを融合させて仕入・販売ともマルチチャネル対応で全国的な仕入・販売網を構築していることが強みだ。
買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、26カテゴリー買取専門サイトを自社構築・運営している。自社サイトを運営することで顧客ニーズに合ったコンテンツマーケティングを行うことが可能になる。
コンタクトセンターにおける事前査定サービス、出張・宅配・店頭の3チャネルによる買取サービス、全国のリユースセンターでの在庫一括管理という、コンタクトセンターからリユースセンターまで一気通貫のオペレーションシステムを特徴とし、独自の単品管理ステムと全国販売網によって高い在庫回転率を実現している。
事前査定~仕入~在庫管理~販売のオペレーションは、自社開発ITシステムおよびデータベース(複数の買取依頼チャネルや買取手法に対応したマルチチャネル買取システム、査定データベース、商品管理システム、在庫連動システム、受注管理システムなど)によって運営し、効率性の高いオペレーションを実現している。
買取サービスの分野で大手企業とのアライアンスも強化している。15年2月ヤフー<4689>「Yahoo!買取」で法人向け在庫買取サービスを開始、15年6月コープサービスの「ライフなび くらしのサービス」と提携して関東信越6生協組合員向けに総合買取サービスを開始、15年10月ネクスト<2120>グループの引越し見積もり・予約サイト「HOMES引越し」と共同で買取サービスを開始、16年6月アドベントと中古パソコン下取りサービスで協業、Amazon.co.jp上で当社が運営する買取サービスの案内を開始した。
16年8月には富裕層向けの買取新サービス「プライベートバイヤー」の提供を開始すると発表した。第一弾として「三井のすまいLOOP」と提携し、三井不動産レジデンシャルが供給するマンション入居者を中心に提供する。
16年10月には、27番目の専門買取サイトとなる中古スマホ・タブレットの専門買取サービスサイト「スマホ高く売れるドットコム」の開設を発表した。
■中期成長に向けて事業ドメイン拡大戦略を推進
中期経営目標として3~5年の間に売上高100億円、営業利益10億円の達成を目指すとしている。中期成長戦略では収益基盤強化を目指し、事業拠点拡大の水平展開、取扱商品拡大の垂直展開、そして新サービス構築による事業ドメイン拡大戦略を推進する。
水平展開では仕入基盤拡充に向けて、全国主要都市への新規リユースセンターの開設を推進し、出張・店頭買取における人口カバー率の向上や買取コンバージョン率の向上を目指す。垂直展開では取扱商品拡大に向けて、比較サイト運営・専門企業などとのアライアンスを強化し、高単価・低粗利益率帯の車・バイク・不動産など、低単価・高粗利益率帯の衣類・本など、未取扱商材や依頼情報のマネタイズゾーン拡充を図る。そしてシェアードエコノミーを実現する社会的インフラの一翼を担うべく、積極的なIT投資によって新サービスを創造・拡充させるとしている。
16年8月光通信<9435>と合弁でMVNO(仮想移動体通信事業者)のMEモバイルを設立し、16年9月MEモバイルが高機能中古スマホ・タブレットと低価格SIMカードを組み合わせた低価格通話サービス「カシモ」の提供を開始した。
■引越しシーズンの第4四半期(4月~6月)の構成比が高い収益構造
四半期別の推移を見ると、15年6月期は売上高が第1四半期8億33百万円、第2四半期9億61百万円、第3四半期10億04百万円、第4四半期11億89百万円、営業利益が3百万円の赤字、50百万円、76百万円、1億13百万円、16年6月期は売上高が10億56百万円、12億84百万円、12億26百万円、12億97百万円、営業利益が7百万円、80百万円、18百万円、9百万円の赤字だった。
転居に伴う商品の買い替えや新規購入などのニーズが高まり、買取依頼・販売が集中する春季の引越しシーズンにあたる第4四半期(4月~6月)の構成比が高くなる一方で、第1四半期(7月~9月)は売上高が減少して営業損益が低水準となりやすい収益構造である。
16年6月期は15年6月期比21.9%増収だったが、59.3%営業減益、58.9%経常減益、63.7%最終減益だった。リユース市場・EC市場拡大も背景に、新規拠点開設や大手企業との事業提携も寄与して大幅増収だったが、中期成長に向けた積極的な先行投資負担で販管費が計画以上に増加して大幅減益だった。リユースセンターは15年10月神戸、16年4月仙台、コンタクトセンターは16年6月徳島に新規開設した。
売上総利益は同16.8%増加したが、売上総利益率は45.6%で同2.0ポイント低下した。高単価・低売上総利益率商品の構成比上昇が影響した。販管費は同27.7%増加し、販管費比率は43.6%で同2.0ポイント上昇した。積極的な人員採用による人件費増加に加えて、買取依頼数増加を見越した徳島コンタクトセンター開設費用も影響した。営業外費用では上場関連費用9百万円が一巡した。特別損失では投資有価証券評価損8百万円を計上した。ROEは5.5%で同20.3ポイント低下、自己資本比率は62.2%で同5.6ポイント低下した。配当は無配を継続した。
■17年6月期第1四半期は赤字だが2桁増収基調
今期(17年6月期)第1四半期(7~9月)の非連結業績は、売上高が前年同期比14.1%増の12億05百万円、営業利益が71百万円の赤字(前年同期は7百万円の黒字)、経常利益が70百万円の赤字(同7百万円の黒字)、純利益が51百万円の赤字(同3百万円の黒字)だった。
今期(17年9月期)および来期(18年9月期)を中長期的な成長拡大に向けた戦略投資期間と位置付けて、人員や設備をはじめとした積極的な先行投資を行っている。具体的には、前期開設した徳島コンタクトセンターや新たに開始したMVNO(仮想移動体通信)事業への人員・設備拡充などで販管費が増加して各利益は赤字だった。ただし売上面は堅調に推移して2桁増収基調である。
売上総利益は同5.5%増加したが、売上総利益率は44.7%で同3.6ポイント低下した。販管費は同21.3%増加し、販管費比率は50.6%で同3.0ポイント上昇した。
■17年6月期通期も先行投資負担で減益予想
今期(17年6月期)の非連結業績予想(8月12日公表)については、売上高が前期(16年6月期)比22.6%増の59億60百万円、営業利益が同48.3%減の50百万円、経常利益が同32.6%減の63百万円、純利益が同23.4%減の38百万円としている。配当は無配継続としている。
リユース市場・EC市場は拡大基調であり、新規拠点開設や大手企業との事業提携も寄与して大幅増収予想だが、中期成長に向けた積極的な先行投資負担で大幅減益予想である。水平展開(全国主要都市への新規拠点開設)、垂直展開(取扱商材と顧客層双方の拡大)を継続する一方で、中期的な収益基盤の安定化を企図し、新規事業(ストック型ビジネスモデルとして16年9月MVNO事業を開始)の創出に向けて積極的な先行投資を行う方針だ。
買取件数は同25%程度増加を見込んでいる。売上総利益率は徳島コンタクトセンター通期稼働による事前査定対応力強化により、低単価・高売上総利益率商品の取扱増加で同1ポイント程度上昇を見込んでいる。販管費比率は同2.5ポイント程度上昇を見込んでいる。営業外では徳島コンタクトセンター開設に伴う助成金収入13百万円を計上する見込みだ。なお水平展開でリユースセンターは17年内に全国10拠点体制を目指す。今期(17年6月期)は大幅減益予想だが、中期的に収益拡大を期待したい。
■株価は下値固め完了して急反発
株価の動きを見ると、安値圏500円近辺でモミ合う展開だったが、1月23日に動意づく形となり、25日の668円まで急伸した。下値固めが完了して急反発した形だ。
1月25日の終値666円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想EPS7円50銭で算出)は89倍近辺、前期実績PBR(前期実績BPS183円87銭で算出)は3.6倍近辺である。時価総額は約34億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を一気に突破した。17年6月期減益予想を織り込み、下値固めが完了して基調転換する動きだ。戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)