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アイビーシーは調整一巡して反発期待、ネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニー
- 2017/1/26 09:51
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイビーシー<3920>(東1)はネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニーである。17年9月期は先行投資負担で減益予想だが、17年4月中旬に「System Answer」シリーズ後継製品の販売開始を予定している。情報通信ネットワークが高度化・複雑化する中で性能監視ツールの重要性が増しており、中期成長シナリオに変化はない。なお2月15日~17日「クラウドコンピューティングEXPO」に出展する。株価は調整一巡して反発が期待される。
■ネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニー
ネットワーク機器・システムの稼働状況や障害発生の予兆などを監視して、情報通信ネットワークシステム全体の性能状態を容易に可視化できるネットワークシステム性能監視ツール(ソフトウェア)のリーディングカンパニーである。国内システム性能・稼働監視ソフトウェア業界において、大手システムインテグレーターを除く専業首位クラスである。
■複雑化するネットワークシステムにおいて性能監視ツールの重要性が増す
ネットワークシステム性能監視ツールとは、ネットワークシステムを構成する様々なメーカーのネットワーク機器や仮想サーバーの状況を、俯瞰的かつきめ細やかに収集して表示・解析・通知を行うソフトウェアのことである。ネットワークシステム全体の稼働・性能状況を監視し、ネットワークシステムの障害発生を未然に防ぎ、ICTインフラの性能維持・改善さらにコスト削減を可能にする。
現在の情報通信ネットワークは、クラウドコンピューティングやリソース仮想化など新たな技術が浸透し、ビッグデータの活用やデータ量の増大、ネットワーク環境やデバイスの多様化などが進展している。また最近ではコンピュータ・ネットワークシステムの特徴を生かしたブロックチェーン(分散台帳技術)が注目されている。
しかしネットワークシステムが高度化する一方で、システム環境変化による障害予兆の特定が困難になる問題が深刻化している。またネットワークシステム障害を介したサービス停止や通信遅延なども社会問題化している。そして高度化・複雑化かつブラックボックス化するネットワークシステムにおいて、ネットワークシステムの安定稼働や品質向上を実現するネットワークシステム性能監視ツールの重要性が一段と増している状況だ。
■自社開発の性能監視ツールおよび運用支援サービスをワンストップで提供
同社は、マルチベンダーの機器で構成される複雑なネットワークシステム全体の稼働・性能状況を、精度の高いデータを取得して分析するネットワークシステム性能監視ツールの開発・販売および導入支援サービス、顧客のネットワークシステムに内在する問題点や課題を抽出して最適な改善策を提示する分析・性能評価サービス、およびネットワークシステム設計・構築・運用支援のコンサルティングサービスを提供している。
問題・障害発生後に気付く従来型の手法ではなく、問題・障害の予兆をいち早く検知して問題・障害発生を未然に防ぐ新たな手法で、製品の自社開発から現状評価・性能監視・運用支援に関するサービスをワンストップで提供している。
事業別売上区分は、ネットワークシステム性能監視ソフトウェアに係る自社開発製品のライセンス(ソフトウェア使用権)販売、自社製品導入支援やネットワークシステム構築に係るコンサルティングなどのサービス提供、その他物販(他社製情報通信機器等の販売)としている。16年9月期の事業別売上高構成比は、ライセンス販売82%、サービス提供12%、その他物販6%だった。自社開発製品ライセンス販売が収益柱である。
■マルチベンダー対応製品の自社開発とデータ・ノウハウの蓄積が強み
ネットワークシステム性能監視に必要なマルチベンダー対応ソフトウェアを自社開発し、様々な環境下でのデータおよび統計分析・解析ノウハウを蓄積していることを特徴・強みとしている。様々なネットワーク関連機器を詳細に分析し、潜在的な問題点を洗い出して改善策を提示する。そして高度化・複雑化かつブラックボックス化しているネットワークシステム環境でも、安心安全なサービス提供によってネットワークインフラの品質向上とコスト削減を実現する。
継続的に自社開発製品の機能拡張を推進し、対応メーカー数と分析ポイント数は06年9月期末22社・339ポイントから、16年9月期末108社・3390ポイントまで拡張した。ほぼ全ての主要メーカーに対応している。一朝一夕で同社と同等の製品を作ることは困難であり、マルチベンダー対応の競争優位性を表す数字だ。
■現在の主力製品は「System Answer G2」シリーズ
現在の主力製品は11年7月リリースしたネットワーク性能監視ソフトウェア「System Answer G2」シリーズで、15年9月期ライセンス販売の約9割を占めている。マルチベンダーのネットワーク機器や仮想サーバーで構成される膨大で複雑なネットワークシステムの性能情報を、1分間隔できめ細かく詳細なデータを収集し、瞬時に性能指標データを作成して可視化できる独自の性能監視専用ソフトウェアである。
専門知識がなくてもネットワーク全体の状況を俯瞰できる使いやすさ、およびマルチベンダー対応を特徴として、システムの安定稼働促進、品質向上、コスト削減に効果を発揮する。大規模ユーザー向けや中規模ユーザー向けなど規模(顧客の監視対象数)に応じた製品ラインナップで、様々なネットワークシステム環境に対応したオプションも提供している。
マルチベンダー対応で幅広いメーカー機器の性能情報を可視化できる点が同業他社に対する圧倒的なアドバンテージとなり、官公庁・地方自治体、金融業、製造業、物流業、情報通信業、医療・文教分野など、業種・業態・規模を問わず、累計販売実績は08年12月リリース「System Answer」シリーズと11年7月リリース「System Answer G2」シリーズの合計で、16年9月期末現在1000システム以上に達している。
また同社製品のように100社を超えるマルチベンダー対応で使い勝手の良い性能監視ソフトウェアは世界でも類がなく、自社エンジニアによる手厚い顧客サポート体制も好評のため、ライセンス販売における継続利用率は約9割と極めて高い。
■中期成長に向けてサービス領域拡大、IoTやブロックチェーンなど成長分野にも進出
中期成長戦略として、付加価値を高めるためにM&A・アライアンスも活用したサービス領域の拡大や成長分野への進出、パートナー企業との連携強化による販売力の強化・サービス型販売の促進、情報監視機能を強化した次期製品の開発・市場投入を推進している。
サービス領域の拡大では、16年3月統合ログ管理市場で豊富な実績を誇るインフォサイエンス社「Logstorage」と連携して「System Answer G2 ログオプション」提供開始、16年4月ネットワーク品質の可視化による効果的なITシステム投資計画を支援する「System Answer G2 Quality Analyzer オプション」提供開始、16年4月アットマークテクノ社とIoTを活用した製造ライン統合管理ソリューションで協業、16年5月NRIセキュアテクノロジーズ社とセキュリティソリューションで協業した。
16年9月には、アプリケーションパフォーマンス管理(APM)分野で「Dynatrace」国内総販売元であるラック社と協業して「Dynatrace」の販売を開始した。アプリケーションパフォーマンス管理市場に本格参入する。
16年11月「System Answer」シリーズと日本IBMがエンタープライズ向けに提供するIBMクラウドを組み合わせて、企業のハイブリッドクラウドへの展開を支援するためエンタープライズ領域のビジネス拡大に向けた技術検証を実施した。
16年11月特化型クラウドインテグレーションサービス(SCI)の提供開始を発表した。特定のベンダーに依存せず、数多く存在するクラウド基盤、インテグレーター、アダプターの中から最適なマルチクラウド環境を選択して提供する。
16年11月リンクとの協業を発表した。リンクからクラウドサービス「ベアメタル型アプリプラットフォーム」のOEM提供を受け、特化型クラウドインテグレーションサービス(SCI)のクラウド基盤の一つとして「SCIクラウド」を販売する。
また16年11月、アマゾンウェブサービス(AWS)のパートナープログラムである「AWSパートナーネットワーク(APN)テクノロジーパートナー」に認定されたと発表した。
成長分野への進出では、16年4月IoT分野およびブロックチェーン分野への事業展開を目的としてSkeed社と合弁会社iBeed社を設立、16年7月Skeed社との合弁を解消してiBeed社を完全子会社化した。また16年8月コンセンサス・ベイス社とブロックチェーン分野で業務提携した。資本提携も視野に入れている。
パートナー企業との連携強化による販売力の強化では、主要パートナー企業である伊藤忠テクノソリューションズ、富士通エフサス、日立システムズ、ユニアデックス、NECフィールディングなど、大手システムインテグレーターとの連携を強化して公共系システムや大手企業への販売促進を継続する。
サービス型販売の促進では、同社製品を組み込んだトータルソリューションをパートナー企業と一体となって提供する。15年10月ITホールディングスグループのTIS社のITインフラ管理・運用支援マネージドサービス「MOTHER」の性能分析サービスに「System Answer G2」が採用された。また16年8月スカイアーチネットワークス社と協業開始した。スカイアーチネットワークス社のマネージドサービスに「System Answer G2」を活用したレポーティングサービスを提供する。
■後継製品は17年4月中旬に販売開始予定
同社の製品開発は従来、システムが正しく動いているかどうかを監視し、問題が発生した際にどこで発生したのかを検知・把握する「死活監視」「状態監視」のための「保守ツール」から、性能上問題がないかどうかを分析し、障害が発生する前に問題点を検知して適切な対処を施す「性能監視」のための「収集ツール」へと発展してきた。そして今後は、コンピュータやネットワークシステムを維持・改善するための根拠ある「判断ツール」として活用できる「情報監視」機能を備えた製品が必要とされている。
情報監視とは、コンピュータやネットワークシステム運用時に発生する数々の問題を、的確に判断するための情報や根拠をいち早く把握するための監視手法である。そして機器の履歴管理、高負荷時の影響度把握、監視の見落とし防止、派生アラートの集約、監視の自動化、仮想化監視機能の強化、API機能(自動レポーティング機能、外部プログラム連携機能)など「情報監視」機能を取り入れた付加価値の高い次期製品の開発が順調に進捗しているようだ。
16年12月には「System Answer」シリーズの後継製品に関するロードマップを発表した。コンセプトを「性能監視から情報監視へ」として、監視設定の自動化、監視の見落とし防止、派生アラートの集約、仮想化監視機能の強化、IPMIによるハードウェア監視、動的しきい値(ベースライン)監視の強化などの機能を盛り込んだ。16年12月β版、17年1月某データセンターにおいてβ版の実証テスト開始、17年4月上旬詳細情報の公開、17年4月中旬販売開始予定としている。
■ソフトウェアのライセンス販売で高収益のストック型ビジネスモデル
収益面では、主力の「System Answer G2」シリーズの継続利用率や複数年契約の比率が高く、ソフトウェアのライセンス販売が積み上がる高収益のストック型ビジネスモデルを特徴としている。
13年9月期から「System Answer G2」シリーズのライセンス販売にシフトしたことに伴い、販売先の規模が拡大して販売数も大幅に伸長した。また売上原価におけるハードウェアの仕入が減少したため。13年9月期以降は売上総利益率が80%台と高水準で推移し、売上高営業利益率も13年9月期16.5%、14年9月期26.8%、15年9月期32.7%と高水準である。
また顧客の検収時期の影響で、四半期別業績は第2四半期(1~3月)および第4四半期(7~9月)の構成比が高くなりやすいという季節変動要因がある。
■16年9月期は先行投資負担で営業減益だが、2桁増収で最終増益
前期(16年9月期)の非連結業績は、売上高が前々期比16.8%増の11億41百万円、営業利益が同8.5%減の2億92百万円、経常利益が同10.5%増の3億33百万円、純利益が同6.8%増の1億95百万円だった。人材採用などの先行投資負担で営業減益だが、売上高が計画を上回り、営業外収益の改善で経常利益と純利益は増益だった。
売上高の内訳はライセンス販売が同15.0%増の9億21百万円、サービス提供が同1.4%増の1億21百万円、その他物販が同75.8%増の98百万円だった。主力のライセンス販売が好調に推移した。また顧客企業との継続的な関係構築の結果、情報機器等の物販が大幅に増加した。
売上総利益は同10.6%増加し、売上総利益率は84.7%で同4.8ポイント低下した。OEM製品の販売開始の影響で低下したが80%台の高水準を維持している。販管費は同21.7%増加し、販管費比率は59.1%で同2.3ポイント上昇した。人件費などが増加した。従業員数は同10人増加の57人となった。
営業外収益では保険解約返戻金46百万円を計上し、営業外費用では株式公開関連費用が一巡した。特別損失では関係会社株式評価損16百万円を計上した。ROEは15.4%で同8.5ポイント低下、自己資本比率は81.9%で同3.1ポイント上昇した。
配当は無配とした。利益配分については今後の業績の推移や財務状況等を考慮したうえで将来の事業展開のための内部留保等を総合的に勘案しながら配当を検討することを基本方針としているが、現在は成長過程にあるため、事業上獲得した資金については事業拡大のための新規投資等に充当することを優先するとしている。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期1億71百万円、第2四半期3億15百万円、第3四半期2億25百万円、第4四半期4億30百万円、営業利益は11百万円の赤字、1億29百万円、27百万円、1億47百万円だった。
■17年9月期は先行投資負担で減益予想だが、2桁増収基調に変化なし
今期(17年9月期)の非連結業績予想(11月14日公表)は、売上高が前期(16年9月期)比14.4%増の13億05百万円だが、営業利益が同19.1%減の2億36百万円、経常利益が同37.0%減の2億10百万円、そして純利益が同35.4%減の1億26百万円としている。中期成長に向けた先行投資負担で減益予想だが、2桁増収基調に変化はないようだ。
売上高の計画は、ライセンス販売が同13.4%増の10億44百万円、サービス提供が同30.7%増の1億58百万円、その他物販が同3.6%増の1億02百万円としている。クラウドサービスやビッグデータ市場の持続的な成長、さらにIoT関連市場の拡大も予想され、主力のネットワーク性能監視ソフトウェア「System Answer G2」シリーズのライセンス販売が好調に推移する。またサービス提供については、特化型クラウドインテグレーションサービス(SCI)の提供開始が寄与する。
売上総利益については16年9月期並みを想定しているが、販管費については中期成長に向けた本社オフィス増床前倒し実施に伴う関連費用、新製品開発に係る動作検証環境整備のためのシステム導入費用などが発生する見込みだ。人員は10人程度の増加を想定している。また営業外費用では東証1部への市場変更に伴う上場関連費用の発生を見込んでいる。配当予想は未定としている。
■ネットワークシステム性能・稼働監視ソフトウェア市場は拡大基調
パソコンや携帯電話・スマホ、高性能サーバーや大規模データセンター、さらに家電や自動車まで、あらゆる機器がネットワークで繋がる時代が到来し、ネットワークシステムが正しく稼働するように見守り、障害の発生を未然に防ぐことは企業や官公庁など、あらゆる組織にとって極めて重要な危機管理策の一つとなっている。
このためネットワークシステム性能・稼働監視ソフトウェア市場は拡大基調が予想される。通信事業者やデータセンター事業者の大規模なシステム更新案件、官公庁や地方自治体案件の増加に加えて、仮想環境に対応して稼働監視システムを見直す企業が増加している。中期的に事業環境は良好だろう。
そしてネットワークシステム全体が一段と高度化・複雑化・ブラックボックス化している状況を考慮すれば、100社を超えるマルチベンダー対応に強みを持つ同社の競争優位性が一段と鮮明化することが予想され、中期成長期待が高まる。
■株価は調整一巡して反発期待
株価の動きを見ると、水準を切り下げて安値圏1000円台でモミ合う展開だ。1月18日には988円まで調整する場面があった。ただし素早く切り返して調整一巡感を強めている。
1月25日の終値1047円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS23円07銭で算出)は45倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS250円06銭で算出)は4.2倍近辺である。時価総額は約57億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、1000円近辺が下値支持線の形だ。そして日足チャートで見ると25日移動平均線突破の動きを強めている。調整一巡して反発が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)