DNAチップ研究所の17年3月期第3四半期累計は増収で赤字縮小、通期黒字化目指す

 DNAチップ研究所<2397>(東マ)は、DNAチップ技術や遺伝子系検査コンテンツの開発・事業化を目指すバイオベンチャーである。17年3月期第3四半期累計は赤字がやや縮小した。リウマチェック、免疫年齢サービス、EGFRチェックなどの診断事業を強化して通期黒字化を目指している。株価は10月の戻り高値圏から反落してモミ合う形だが、がん関連としても注目され、調整一巡して出直りが期待される。

■DNAチップ技術の事業化を目指す研究開発企業

 将来の個人化医療や未病社会の実現を見据えた遺伝子発現プロファイル収集・統計受託解析など、DNAチップ(DNAマイクロアレイ)技術や遺伝子系検査コンテンツの開発・事業化を目指す研究開発企業である。

 時々刻々と変化する体調変化や加齢とともに起こる免疫変化などを遺伝子検査するRNAチェック(血液細胞遺伝子発現マーカー検査)に強みを持ち、大学病院・研究機関や製薬・食品メーカー向けDNAチップ関連受託実験・解析・統計処理サービスなどの研究受託事業、および免疫細胞の加齢遺伝子の働き具合から体内年齢を予測する免疫年齢サービスなどの診断事業を展開している。

 14年11月にはエンジニアリングプラスチック大手のエンプラス<6961>と資本業務提携した。バイオ事業における業界ネットワークの補完、新製品開発能力の強化、海外インフラの利用などでシナジー効果を目指す。

■がん関連など診断事業を収益柱に育成方針

 中期成長に向けて、次世代シークエンス受託解析サービスなど研究受託メニューを充実させるとともに、RNAチェックによる遺伝子解析検査サービス、独自開発パッケージソフトウェアによる診断サービス、健康モニタリングサービスなどの診断事業を収益柱に育成する方針だ。

 診断事業では、世界初の遺伝子発現による生体年齢評価方法である免疫年齢サービス(免疫細胞の加齢遺伝子の働き具合から体内年齢を予測するサービス)、Diva-EGFRチェックサービス(肺がん患者を対象とした組織由来DNA変異検出サービス)、リウマチェック(関節リウマチ薬剤効果予測検査)による多剤効果予測検査サービス、血液中の遺伝子の働き具合を解析して消化器がんの有無をチェックするマイクロアレイ血液検査、乳癌再発リスクを予測するMammaPrint(乳癌予後予測キット)を展開している。

 商品関連では、高校・大学生教育用DNAチップ教材「ハイブリ先生」、問診パッケージソフト「iRIS:関節リウマチ問診システム」、DNA鑑定向け硬組織(歯牙・骨)からのDNA抽出キット「Tbone EX Kit」を販売している。

 戦略商品に関しては中長期的に一般健康診断への採用拡大を目指し、大腸がん・悪性神経膠腫の術後予後予測、免疫年齢・肥満・うつ病・疲労・アルツハイマーなどの診断関連マーカーの開発・事業化、医薬品開発と一体化した診断マーカー開発(コンパニオン診断薬開発支援)、再生医療支援事業(培養細胞の安全性評価系)なども強化する。

 14年3月には「神経膠腫予後予測方法、およびそれに用いるキット」に関する国内特許を取得した。15年1月には関節リウマチ患者の血液中の遺伝子発現解析から疾患活動性と高い相関性を示すバイオマーカーを発見し、学校法人慶應義塾および学校法人埼玉医科大学と共同出願で国内特許を取得した。

 15年3月には愛媛大学および北海道大学とともにJST研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)に採択された共同研究で、脳腫瘍の一種であるグリオーマ(神経膠腫)の機能を抑制するマイクロRNAを発見した。癌の根治療法を生み出すと期待されている。

 16年7月には、慶應義塾大学医学部内科学(リウマチ)教室の竹内勤教授、鈴木勝也専任講師、埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・謬原病内科の天野宏一教授との共同研究チームが、関節リウマチに対する3種類の生物学的リウマチ薬の治療効果を予測するバイオマーカー(分子指標)を明らかにしたと発表している。

 また16年7月には、関節リウマチに対する新しい検査サービス「リウマチェック3」の開始を発表した。投与前の1回の血液検査で3種類の生物学的リウマチ薬の投与半年後の薬剤効果を、RNAチェック技術を用いて予測する検査である。

 16年10月にはオンコリスバイオファーマ<4588>との共同研究契約の締結を発表した。オンコリスバイオファーマががんの体外検査薬として開発を進めているOBP-401(テロメスキャン)について、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)治療薬のコンパニオン診断薬としての可能性(CRPCに対する効果予測マーカーとしての応用の可能性)を共同研究する。

■17年3月期第3四半期累計は増収で赤字がやや縮小

 1月26日発表した今期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)の非連結業績は、売上高が前年同期比2.9%増の1億01百万円で、営業利益が1億88百万円の赤字(前年同期は1億90百万円の赤字)、経常利益が1億87百万円の赤字(同1億90百万円の赤字)、純利益が1億88百万円の赤字(同2億14百万円の赤字)だった。増収効果で赤字がやや縮小した。

 事業別の売上高は、研究受託事業が同1.3%減の93百万円で、診断事業が同2.1倍の7百万円だった。研究受託事業では「デジタルPCR受託サービス」「再生医療研究分野に向けた間葉系幹細胞の品質評価解析サービス(C3チェックサービス)」「16SrRNA細菌叢解析」「Cancer Panel解析」など新規サービスメニューの拡充を推進した。診断事業では「免疫年齢サービス」「DiVA-EGFRチェックサービス」「リウマチェック3」の販促を推進した。

■17年3月期通期は黒字化目標

 今期(17年3月期)非連結業績予想(4月21日公表)は売上高が前期(16年3月期)比68.9%増の4億80百万円、営業利益が1百万円の黒字(前期は1億78百万円の赤字)、経常利益が1百万円の黒字(同1億78百万円の赤字)、純利益が0百万円の黒字(同2億03百万円の赤字)としている。

 研究受託事業で大型案件の受注を確保して売上拡大を図る。診断事業では新規サービスとして「リウマチェック3」を開始し、海外展開も促進する方針だ。利益面では新規ラボ(研究施設)開設および事務所・研究所移転に伴う費用一巡も寄与する。なお第2四半期累計の受注が好調だったことに加えて、下期には複数の大型案件の受注が見込まれるようだ。第3四半期累計の進捗率が低水準の形だが、事業の特性上、年度末にあたる第4四半期に売上が集中する季節要因があり、通期ベースでの黒字化が期待される。

■研究受託メニューの強化や診断支援サービスの拡充で業績改善目指す

 中期的な業績改善推進プランとしては「研究開発から事業化への加速」を掲げている。新規研究受託メニュー(がん領域を中心としたエクソソーム受託サービスや健康支援事業など)の開発・強化、診断支援サービス(リウマチェックやRNAチェックなど)の開発・拡充を推進する方針だ。またエンプラスとの資本業務提携効果も期待される。

■株価は調整一巡して出直り期待

 株価の動きを見ると、オンコリスバイオファーマとの共同研究契約締結を好感した10月の戻り高値746円から反落し、550円~600円近辺でモミ合う展開が続いている。ただし下値を徐々に切り上げて調整一巡感を強めている。

 1月27日の終値は564円で、時価総額は約24億円である。週足チャートで見ると52週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。がん関連としても注目され、調整一巡して出直りが期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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