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アンジェスMGは遺伝子治療薬、核酸医薬、DNAワクチンの開発を推進
- 2017/1/31 06:49
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アンジェスMG<4563>(東マ)は遺伝子医薬の創薬バイオベンチャーで、遺伝子治療薬、核酸医薬、DNAワクチンの開発を推進している。株価は安値圏でモミ合う形だが、きっかけ次第で動意づく可能性がありそうだ。
■遺伝子医薬のグローバルリーダー目指す創薬バイオベンチャー
遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す大阪大学発の創薬バイオベンチャーである。HGF(肝細胞増殖因子)遺伝子治療薬、NF-kBデコイオリゴ核酸医薬、DNA治療ワクチンなど、遺伝子の働きを活用した遺伝子医薬分野で開発を推進している。
自社開発品の販売権または開発販売権を製薬会社に供与し、契約に基づいて契約一時金収入、開発の進捗に対応したマイルストーン収入、および上市後の売上に対する一定対価のロイヤリティ収入を得る。
日本では13年5月公布「再生医療推進法」の理念のもと、14年11月施行の「医薬品医療機器等法(改正薬事法)」で新たに再生医療等製品が定義され、遺伝子治療を含む再生医療等製品に対する早期承認制度が導入された。これによって遺伝子治療を含む再生医療分野に関しては、日本が世界で最も早く製品承認を取得できることなり、再生医療・細胞医療の早期実用化の促進が期待されている。なお当社が開発を進めているHGF遺伝子治療薬は、承認取得すれば先進国2番目の遺伝子治療薬となる可能性がある。
■複数のプロジェクトを保有してリスク分散
新薬開発プロジェクトは、複数のプロジェクトを保有してリスク分散を図っている。重点プロジェクトごとの状況を整理すると以下のとおりとなる。
(1)重症虚血肢を対象とするHGF遺伝子治療薬は、国内では先進医療B制度の下、医師主導臨床試験を実施中である。6症例の実施を目指し、大阪大学医学部附属病院、徳島大学病院、愛媛大学医学部附属病院に続いて、16年9月神戸大学医学部附属病院において4症例目の投与が開始された。海外は計画を変更して米国で新たな試験計画を策定中だが、16年12月に米スタンフォード大学との協業の覚書を締結した。HGF遺伝子治療薬の新開発戦略の構築をはじめ、DNAワクチンなど将来の事業分野を対象に幅広く協力を進める。
(2)原発性リンパ浮腫を対象とするHGF遺伝子治療薬は、国内で13年10月から第1・2相臨床試験を実施し、16年4月症例登録完了した。
(3)顔面アトピー性皮膚炎を対象とするNF-kBデコイオリゴ軟膏製剤は、国内第3相臨床試験結果(速報)で有意差が示されなかったため、今後の方針を検討中である。
(4)椎間板性腰痛症を対象とするNF-kBデコイオリゴ核酸医薬は、米国で第1・2相臨床試験を準備中である。
(5)透析シャント用NF-kBデコイオリゴ薬剤塗布型PTAバルーンカテーテルについては16年12月、メディキットとの間で締結していた共同開発契約を終了した。治験の結果、統計的有意差が得られなかったため、製造販売承認の申請を断念し、契約を終了することで合意した。契約終了により現行のNF-kBデコイオリゴを使ったPTAバルーンカテーテルの開発を中止する。
(6)次世代型デコイ核酸医薬「キメラデコイ」の基盤技術開発を完了し、新たに開発を始めるデコイはキメラ型を主軸としている。STAT6とNF-kBという炎症に関わる2つの重要な因子を同時に抑制する働きをもった核酸医薬で、NF-kBのみをターゲットとした従来のデコイに比べて炎症を抑える効果が格段に高いことが期待される。16年10月NF-kB・STAT6キメラデコイオリゴ核酸の開発プロジェクトが「平成28年度おおさか地域創造ファンド重点プロジェクト事業助成金」に採択された。
(7)次世代遺伝子医薬DNA治療ワクチン事業は、遺伝子治療薬、核酸医薬に次ぐ第3の柱として推進する。16年8月米バイオ企業Vical社への出資比率引き上げと事業提携で基本合意した。16年9月高血圧DNAワクチンに関する物質特許(大阪大学と共同出願)が米国で成立した。16年10月動脈硬化症を対象としたDNAワクチンに関する日本国内の用途特許が成立した。16年12月米Vical社と戦略的事業提携契約を締結した。17年1月DNAワクチンに関する日本における物質特許(16年9月米国で成立した特許と同じ内容)が成立した。また高血圧DNAワクチンの臨床試験を17年第1四半期からオーストラリアで開始する。
(8)子宮頸部前がん治療ワクチン(CIN治療ワクチン)の独占的開発・製造・販売権について、森下仁丹に再許諾するライセンス契約を16年10月締結した。対価として契約一時金および将来の商業化時におけるロイヤリティを受け取る。
■16年12月期は期初計画比で赤字縮小
今期(16年12月期)通期の連結業績予想は12月6日に修正を発表し、売上高が5億円、営業利益が52億円の赤字、経常利益が52億円の赤字、純利益が52億円の赤字としている。売上高は森下仁丹からの契約一時金の発生および研究開発事業収益の減少を見込み、利益については重症虚血肢を対象とするHGF遺伝子治療薬の海外開発計画変更などで研究開発費用が当初予想を下回るため、各利益の赤字が計画比縮小する。
なお12月21日に投資有価証券売却益44百万円の発生、1月18日にストック・オプション権利保有者の失権に伴う戻入益42百万円の計上を発表しているが、16年12月期業績予想を据え置いている。
■株価はきっかけ次第で動意の可能性
なお17年1月発行の第29回新株予約権(クレディ・スイス証券に対する第三者割当、行使価額修正条項付、当初行使価額253円、総数8万個=800万株)の権利行使状況に関するリリースによると、1月17日時点における未行使個数は6万個(600万株)となった。
株価の動きを見ると、1月17日に296円まで急伸する場面があったが、買いが続かず大勢として240円~250円近辺でモミ合う展開だ。ただし大きく下押す動きは見られず下値固め完了感を強めている。1月30日の終値は248円だった。きっかけ次第で動意づく可能性がありそうだ。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)