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テクマトリックスは17年3月期第3四半期累計が大幅増益、通期2桁増益予想・連続増配予想
- 2017/2/2 07:07
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
テクマトリックス<3762>(東1)はシステム受託開発やセキュリティ関連製品販売などの情報サービス事業を展開し、ストック型ビジネスやクラウドサービスを強化している。1月31日発表した17年3月期第3四半期累計連結業績は大幅増益だった。セキュリティ関連が好調に推移して通期も2桁増益予想、そして連続増配予想である。2月1日の株価は第3四半期累計の大幅増益を好感して急伸した。16年7月の上場来高値を試す展開が期待される。
■システム受託開発やセキュリティ関連製品販売などを展開
ネットワーク・セキュリティ関連のハードウェアを販売する情報基盤事業、および医療・CRM・EC・金融を重点分野としてシステム受託開発やクラウドサービスを提供するアプリケーション・サービス事業を展開している。
16年3月期のセグメント別売上高構成比は情報基盤事業66%、アプリケーション・サービス事業34%、営業利益構成比は情報基盤事業82%、アプリケーション・サービス事業18%だった。
■ストック型ビジネスやクラウドサービスを拡大
中期成長に向けた重点戦略として、ストック型ビジネスの保守・運用・監視サービス関連の戦略的拡大、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、ネットワーク・セキュリティ関連商材およびサービスの充実などを推進している。
クラウドサービスではコンタクトセンター向けCRMシステム「Fast Cloud」や医療情報クラウドサービス「NOBORI」など独自クラウドサービスを開発している。16年3月期末の「NOBORI」契約施設数は約450となった。16年4月には医療情報クラウドサービス「NOBORI」をプラットフォームとした新たな医療クラウドサービス「NOBORI-PAL」を提供開始した。サービス拡充を進めて初年度延べ80施設での利用を目指すとしている。
■M&A・アライアンスを積極活用
M&A・アライアンス戦略を積極活用している。14年10月クロス・ヘッドが仮想化技術の米Pica8(ピカエイト)社に出資、14年12月クロス・ヘッドがエヌ・シー・エル・コミュニケーションを完全子会社化、15年4月合併した。
15年5月中国の北京ヘルスバンク・テクノロジー有限公司と合弁契約を締結、15年8月北京ヘルステック医療情報技術有限公司(当社出資比率40%)を設立した。子会社の合同会社医知悟が開発した遠隔医療ソフトウェアのライセンスを供与して遠隔医療事業を展開する。15年6月クロス・ヘッドがクライアント仮想化ソフトウェア「OVD」を開発するカナダのInuvika(イヌビカ)社に出資した。
16年4月モール型ECサイトに出店するネットショップの受注処理・在庫管理業務を効率化するSaaS業務支援システム「楽楽バックオフィス」と、ジャックス・ペイメント・ソリューションズの後払い決済サービス「アトディーネ」の連携を開始した。16年6月米Tanium社のネットワーク端末脅威対策プラットフォーム製品の販売を開始、16年7月ネットショップの商品データを一元管理できる新サービス「楽楽アイテムマネージャー」の販売を開始、Yellowfin JapanのBIツール「Yellowfin」の販売を開始した。
16年9月、ネットショップ受注処理・在庫管理業務を効率化するSaaS型業務支援システム「楽楽バックオフィス」が、ネットプロテクションズの未回収リスク保証型後払い決済サービス「NP後払い」と無償自動連携を開始した。なお「NP後払い」の導入店舗数は2.3万店、累計ユーザー数は7000万人を超えている。
また16年9月、顧客情報・対応履歴などを一元管理するCRMシステム「FastHelp5」と、日本アバイアのマルチチャネル対応中小規模向けコンタクトセンターソリューション「ACCS」を連携したワンストップソリューションが、トランスコスモス(タイ)に採用された。16年7月本格稼働した「Fast」シリーズは国内トップクラスの導入実績を誇り、日本アバイアと12年2月に再販契約を締結して共同マーケティングを展開している。
16年10月にはソフトバンクと提携し、子会社の医知悟が開発した専用通信機器「iCOMBOX」を用いた遠隔病理プラットフォームの提供を開始した。深刻な病理医不足を解消するため医療機関と遠隔地の病理医をネットワークで接続し、17年度に医療機関60施設での利用を目指す。また沖縄クロス・ヘッドが日本ヒューレット・パッカードの最新テクノロジーと、沖縄県が整備した国際情報通信基盤を活用して次世代IoTセンターサービスを開始した。
16年11月インドのオンライン医療診察サービスベンチャーであるDocsApp社への資本参加を発表した。またコンタクトセンター向けCRMシステム「FastHelp」と、LINEの法人向けカスタマーサポートサービス「LINE Customer Connect」を連携させた顧客サービス・ソリューションの提供開始を発表した。16年12月にはコンタクトセンター向けCRMシステム「Fast」シリーズについてNEC<6701>との販売代理店契約締結を発表した。
17年1月には子会社カサレアルが、クラウドアプリケーション開発環境を提供するPivotalジャパン社と、認定トレーニングパートナー契約を締結したと発表している。17年3月から5種類のトレーニングを提供開始し、徐々に拡充する予定としている。
■第4四半期の構成比が高く、ストック型収益の積み上げも推進
医療分野ではオンプレミス型(ユーザーがハードウェア、ソフトウェア、データを自分自身で保有・管理)システム提供から、クラウド型(ユーザーがインターネット経由で利用)サービス提供へビジネスモデル変更を推進しているため、14年3月期から医療情報クラウドサービスの売上と利益をサービス期間に応じて按分計上する方法に変更した。このため今後複数年に亘って売上と利益にマイナス影響となるが他事業の成長でカバーする。
四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期39億49百万円、第2四半期46億55百万円、第3四半期43億75百万円、第4四半期54億38百万円、営業利益が63百万円、2億87百万円、1億92百万円、5億88百万円、16年3月期は売上高が48億48百万円、52億90百万円、49億41百万円、58億41百万円、営業利益が1億04百万円、4億12百万円、2億58百万円、6億07百万円だった。
情報システム関連で第4四半期の構成比が高い収益構造である。16年3月期は情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業とも好調に推移し、クラウドビジネスの伸長、医療分野の収益改善も寄与して大幅増益だった。売上総利益は15年3月期比8.5%増加したが、売上総利益率は32.8%で同1.5ポイント低下した。販管費は同5.6%増加したが、販管費比率は26.2%で同2.0ポイント低下した。
ROEは16.0%で同6.6ポイント上昇し、自己資本比率は25.1%で同20.2ポイント低下した。配当は同5円増配の年間20円(期末一括)で配当性向は24.2%だった。利益配分については株主への利益還元と内部留保充実のバランスを総合的に勘案して決定し、期末業績における連結配当性向20%以上を基本方針としている。
セグメント別に見ると、情報基盤事業は売上高が同15.0%増の138億52百万円、営業利益が同9.9%増の11億31百万円だった。アプリケーション・サービス事業は売上高が同10.9%増の70億68百万円、営業利益が同2.5倍の2億50百万円だった。
なお受注高は情報基盤事業が同16.8%増の151億57百万円、アプリケーション・サービス事業が同6.7%増の80億14百万円、合計が同13.1%増の231億71百万円だった。受注残高は情報基盤事業が同28.6%増の58億63百万円、アプリケーション・サービス事業が同21.9%増の52億73百万円、合計が同25.3%増の111億36百万円だった。
またストック比率(単体ベース)は、情報基盤事業が同2.5ポイント低下して37.7%、アプリケーション・サービス事業が同2.1ポイント上昇して43.9%となった。医療情報クラウドサービス「NOBORI」の16年3月期末導入施設数は約450施設(15年3月期末は約300施設)となった。
■17年3月期第3四半期累計は大幅増益
1月31日発表した今期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)連結業績は売上高が前年同期比4.0%増の156億89百万円、営業利益が同29.7%増の10億04百万円、経常利益が同26.9%増の9億86百万円、そして純利益が同38.2%増の6億18百万円だった。
セキュリティ関連が好調に推移した。売上総利益は同10.0%増加し、売上総利益率は33.9%で同1.8ポイント上昇した。販管費は同6.3%増加し、販管費比率は27.5%で同0.5ポイント上昇した。
セグメント別に見ると、情報基盤事業は売上高が同3.8%増の105億51百万円で営業利益が同35.4%増の9億14百万円だった。負荷分散装置がやや頭打ちだったが、次世代ファイアウォールなどセキュリティ関連が順調だった。また官公庁や民間企業における在宅勤務の拡がりに伴って個人認証システムが好調だった。
アプリケーション・サービス事業は売上高が同4.5%増の51億37百万円で営業利益が同9.1%減の89百万円だった。インターネットサービスは既存顧客を中心に受託開発案件の受注が順調だが、一部のプロジェクトで採算が悪化した。医療分野では医療情報クラウドサービス「NOBORI」の契約施設数増加に伴って売上高が逓増傾向だ。CRM分野では大型案件の受注が複数積み上がった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期48億85百万円、第2四半期55億12百万円、第3四半期52億92百万円、営業利益は1億23百万円、4億72百万円、4億09百万円だった。
■17年3月期通期も2桁増益予想、そして連続増配予想
今期(17年3月期)通期連結業績予想は前回予想(5月9日公表)を据え置いて売上高が前期(16年3月期)比6.6%増の223億円、営業利益が同19.4%増の16億50百万円、経常利益が同16.1%増の16億50百万円、純利益が同24.2%増の10億30百万円としている。セキュリティ関連が好調に推移し、人件費の増加などを吸収して2桁増益予想である。配当予想は同5円増配の年間25円(期末一括)としている。予想配当性向は24.4%となる。
セグメント別売上高の計画は情報基盤事業が同9.0%増の151億円、アプリケーション・サービス事業が同1.9%増の72億円としている。情報基盤事業ではサイバー攻撃を防御することができる次世代ネットワーク・セキュリティ関連商材・サービスの拡充を目指す。アプリケーション・サービス事業ではCRM分野・医療分野・インターネットサービス分野におけるクラウドサービス(SaaS)を加速度的に推進する。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が70.4%、営業利益が60.8%、経常利益が59.8%、純利益が60.0%である。やや低水準の形だが、第4四半期の構成比が高い収益構造のためネガティブ要因とはならない。通期ベースでも好業績が期待される。
■中期的に年率売上高成長率10%目指す
15年5月策定の中期経営計画「TMX3.0」では、経営目標数値として18年3月期売上高251億円(情報基盤事業170億円、アプリケーション・サービス事業81億円)、営業利益23億50百万円(情報基盤事業16億円、アプリケーション・サービス事業7億50百万円)を掲げている。
さらに中期的には年率売上高成長率10%、M&Aや海外展開を含めて事業規模250億円~300億円、ストック売上(クラウド、保守、運用・監視サービス等)比率50%超を目指し、売上高営業利益率10%へ挑戦する。
従来のIT産業の労働集約的な請負型ビジネスから脱却し、自らITサービスを創造し、ITサービスを提供する「次世代のITサービスクリエーター」そして「次世代のITサービスプラバイダー」への変貌を継続する。重点事業戦略は、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、セキュリティ&セイフティの追求として、コストダウンによる高収益化やパートナーとのアライアンス強化も推進する。
なお株主還元については連結配当性向20%以上を基本方針として、利益水準を踏まえた配当額の引き上げを重視し、株主優待制度の充実も推進する。
■株主優待制度は9月末に実施
株主優待制度については、毎年9月30日現在の500株以上保有株主を対象として実施している。16年9月末の優待内容は、500株以上~1000株未満保有株主に対して1000円相当の商品または寄付から1点、1000株以上保有株主に対して3000円相当の商品または寄付1点を選択する内容だった。
■株価は第3四半期累計大幅増益を好感して急伸、16年7月高値試す
株価の動きを見ると、第3四半期累計の大幅増益を好感する形で、2月1日は終値で前日比194円(9.24%)高の2294円まで急伸した。
2月1日の終値2294円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS118円59銭で算出)は19~20倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS455円08銭で算出)は5.0倍近辺である。時価総額は約284億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を突破した。そして13週移動平均線が上向きに転じた。調整一巡して基調転換した形だ。16年7月の上場来高値2520円を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)