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綿半ホールディングスは17年3月期第3四半期累計営業微減益だが、通期増益予想で増額余地
- 2017/2/7 07:36
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
綿半ホールディングス<3199>(東1)はスーパーセンター事業や建設事業などを展開する持株会社である。スーパーセンター事業ではM&Aを活用してエリア拡大や業態多様化を推進している。1月30日発表した17年3月期第3四半期累計連結業績は建設事業における前期の反動が影響して営業微減益だったが、通期はスーパーセンター事業のM&A効果や利益率改善効果が牽引して増収増益予想である。そして利益予想に増額余地がありそうだ。株価は高値圏でモミ合う形だが、自律調整一巡して上値を試す展開が期待される。
■スーパーセンター事業や建設事業などを展開
綿半ホームエイドなどのスーパーセンター事業、綿半ソリューションズ(16年4月綿半鋼機と綿半テクノスが合併)の建設事業、綿半トレーディング(16年7月ミツバ貿易が社名変更)の貿易事業を展開している。16年3月期売上構成比はスーパーセンター事業56.8%、建設事業38.8%、貿易事業4.2%、その他事業(不動産賃貸事業)0.3%だった。
■スーパーセンター事業はエリア拡大と業態多様化を推進
スーパーセンター事業はM&Aを活用してエリア拡大と業態多様化を推進し、綿半ホームエイドが長野県中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケット(15年12月子会社化したキシショッピングセンターが17年1月商号変更)が愛知県中心に食品スーパー業態、およびJマート(16年11月子会社化)が関東甲信越エリアにホームセンター業態を展開している。
綿半ホームエイドのスーパーセンター事業は、1977年にホームセンター業態1号店(長池店)をオープンし、2007年からは生鮮食品や惣菜など食品の品揃えを強化したスーパーセンター業態の出店を開始した。スーパーセンター業態の展開によって食品の売上構成比が上昇している。15年5月には綿半スーパーセンター豊科店、15年11月には綿半スーパーセンター塩尻店がオープンした。
長野県内で唯一生鮮食品を扱うホームセンター・スーパーセンター業態であり、NB商品中心に地域特性に合わせた豊富な品揃え、価格競争力、ブルーカード(長野県内の主要な小売業やサービス業が加盟するポイントカード)による顧客囲い込みなど、ELP戦略を武器とした個店競争力の高さを強みとしている。
16年11月にはJマート(東京都三鷹市)を子会社化した。Jマートはインテリア、ガーデン、ペット等に特色のあるホームセンターを、長野県、山梨県、東京都、埼玉県、神奈川県の関東甲信越エリアに14店舗展開しているため、大都市圏への店舗網拡大に繋がる。なお16年12月末現在の店舗数はスーパーセンター11店舗、ホームセンター21店舗、食品スーパー5店舗、合計37店舗となった。
17年1月には100%子会社の綿半パートナーズを設立した。グループのスケールメリットを活かした商品仕入原価の低減やPB商品の共同開発・相互供給を推進する。
■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み
建設事業は、建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開している。長尺屋根工事などの外装改修工事および自走式立体駐車場工事に強みを持つ。
長尺屋根工事では、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行うWKカバー工法で特許を取得し、企業の工場・倉庫・物流センター、商業施設、駅舎関連などに豊富な工事実績を誇っている。自走式立体駐車場工事では、柱の少ない認定品「ステージダブル」など国土交通省の認定を多数有していることが強みであり、大型SCの立体駐車場などの工事実績が豊富である。
16年4月、建築・土木の設計施工を主体とする綿半鋼機と、鉄構・橋梁構造を主体とする綿半テクノスが合併し、存続会社の綿半テクノスの社名を綿半ソリューションズに変更した。
■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを輸入販売
綿半トレーディング(16年7月ミツバ貿易が社名変更)は医薬品・化成品向け天然原料の輸入専門商社で、ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など、特定分野に強みを持っている。
製造部門も有しており、医薬品分野ではHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。メキシコではキャンデリラワックスの精製工場を保有している。
■スーパーセンター事業は既存店売上と店舗網拡大、建設事業は工事採算に注目
スーパーセンター事業は既存店売上高と、M&Aも活用した店舗網拡大戦略が注目される。16年3月期の既存店売上高は15年3月期比100.6%、既存店客数は98.9%、既存店客単価は101.7%だった。建設事業は基本的には第4四半期の構成比が高い季節要因だが、大型案件の動向や個別案件の工事採算動向で利益率が変動する。
16年3月期は連結繰延税金資産計上効果が減少したため最終減益だが、スーパーセンター事業と建設事業が好調で15年3月期比大幅営業・経常増益だった。四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期208億22百万円、第2四半期218億39百万円、第3四半期242億26百万円、第4四半期219億05百万円、営業利益は2億98百万円、4億80百万円、6億47百万円、1億44百万円だった。
売上総利益は同14.6%増加し、売上総利益率は18.9%で同1.4ポイント上昇した。販管費は同11.6%増加し、販管費比率は17.1%で同0.8ポイント上昇した。またROEは12.1%で同3.3ポイント低下した。自己資本比率は22.4%で同0.3ポイント上昇した。配当は同10円増配の年間25円(期末一括)で配当性向は19.5%だった。配当についてはグループの業績や内部留保の充実などを勘案したうえで、安定的な配当を継続して実施することを基本方針としている。
スーパーセンター事業は売上高が同10.3%増の504億15百万円で営業利益(連結調整前)が同50.1%増の4億52百万円、建設事業は売上高が同1.6%増の344億07百万円で営業利益が同56.3%増の18億48百万円、貿易事業は売上高が同1.5%減の37億15百万円で営業利益が同3.8%減の3億66百万円、その他は売上高が同1.9%減の2億53百万円で営業利益が同13.4%増の95百万円だった。
■17年3月期第3四半期累計は建設事業の反動で営業微減益
1月30日発表した今期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)連結業績は、売上高が前年同期比2.2%増の683億48百万円、営業利益が同1.6%減の15億14百万円、経常利益が同1.8%減の15億44百万円、そして純利益が同0.2%増の10億28百万円だった。
建設事業における前期の大型案件・高利益率案件の反動が影響し、全体としては営業微減益だったが、スーパーセンター事業はM&A効果や利益率改善効果で大幅増収増益だった。全体の売上総利益は同8.4%増加し、売上総利益率は19.9%で同1.1ポイント上昇した。販管費は同9.8%増加し、販管費比率は17.7%で同1.2ポイント上昇した。特別損失では減損損失が減少(前期41百万円、今期5百万円)した。
スーパーセンター事業は売上高が同15.4%増の432億94百万円で営業利益(連結調整前)が同61.1%増の10億45百万円だった。Jマートのホームセンター14店舗が加わり、期末店舗数はスーパーセンター11店舗、ホームセンター21店舗、食品スーパー5店舗、合計37店舗となり、第3四半期(10~12月)の全店売上が121.5%と伸長した。また既存店売上はEDLP(エブリデー・ロー・プライス)戦略効果が徐々に発現し、第2四半期累計95.9%に対して第3四半期99.7%と回復傾向を強めている。利益面では食品ロス率改善、商品絞り込みよる仕入原価低減、店舗オペレーション効率化など、EDLC(エブリデー・ロー・コスト)追求による利益率改善も寄与した。
建設事業は、前期の大型案件と高利益率案件が集中した反動に加えて、一部工事の発注遅れも影響して、売上高が同16.9%減の218億88百万円、営業利益が同48.5%減の7億88百万円だった。貿易事業は売上高が同3.8%増の29億59百万円、営業利益が同36.1%増の4億48百万円だった。その他は売上高が同8.4%増の2億05百万円、営業利益が同0.3%増の75百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期216億77百万円、第2四半期214億31百万円、第3四半期252億40百万円、営業利益は4億24百万円、1億84百万円、9億06百万円だった。
■17年3月期通期増収増益予想で利益増額余地
今期(17年3月期)通期の連結業績予想は、前回予想(5月13日公表)を据え置いて、売上高が前期(16年3月期)比8.5%増の963億77百万円、営業利益が同8.8%増の18億69百万円、経常利益が同9.6%増の18億81百万円、純利益が同0.3%増の12億67百万円としている。配当予想は前期と同額の年間25円(期末一括)で予想配当性向は19.5%となる。なお営業外収益として表示していたスーパーセンター事業における物流センター利用料収入について、17年3月期から販売費および一般管理費へ表示方法を変更している。組み換え後の16年3月期の営業利益は17億17百万円である。
前期オープンしたスーパーセンター2店舗、綿半フレッシュマーケットの通期寄与、16年11月子会社化したJマートなど、スーパーセンター事業におけるM&A効果や売上総利益率改善効果が牽引して増収増益予想である。
セグメント別の計画はスーパーセンター事業の売上高が同15.4%増の581億72百万円で営業利益が同34.4%増の8億07百万円、建設事業の売上高が同1.1%減の340億30百万円で営業利益が同0.5%増の18億57百万円、貿易事業の売上高が同5.2%増の39億07百万円で営業利益が同19.5%増の4億38百万円としている。
スーパーセンター事業の月次売上状況(前年同月比、速報値)を見ると、16年12月は全店134.1%、既存店98.8%だった。全店は子会社化したJマートが寄与した。既存店売上は2ヶ月連続のマイナスだった。綿半スーパーセンター塩尻店オープンに伴って前年11月下旬~12月中旬に近隣店舗協賛セールを実施した反動で既存店はマイナスだった。ただし年末商材のグリーン部門や総菜部門が好調であり、ペットフードをはじめEDLP戦略の効果が着実に現れているとしている。なお16年4月~12月累計では全店115.3%、既存店97.2%となった。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が70.9%、営業利益が81.0%、経常利益が82.1%、純利益が81.1%で、利益進捗率が高水準である。建設事業は第4四半期の構成比が高くなりやすい収益構造であり、スーパーセンター事業における利益率改善進展やJマートの寄与も考慮すれば、通期利益予想に増額余地がありそうだ。
■景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を目指す
中期ビジョンでは基本方針に「時代の変化に対応し、景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を創り上げる」を掲げ、多様性のある経営人財の育成、IT化推進による経営改革、M&A推進のための財務体質強化、長期を見据えた海外展開の準備に取り組んでいる。
スーパーセンター事業では、近隣県への進出も含めて本格的な多店舗展開(当面の目標100店舗体制)に向けた体制作りの期間として、出店スピード加速のための体制整備や新フォーマット店舗の開発に取り組んでいる。体制整備では店舗オペレーションの効率化、パートナーのプロ化(パートのスキルアップ)、発注精度の向上、物流ネットワークの整備・強化、本部バックアップ体制の整備などを推進する。
新フォーマット店舗の開発では、限られた売場面積の中で地域特性に合わせた品揃えを強化するため、小型スーパーセンター業態(700~1000坪)の開発や、食品と非食品の超小型店業態(300坪程度)の研究を推進している。15年4月にはホームセンター業態の「綿半ホームエイド川中島店」(売場面積2000㎡)に生鮮食品を加えて、小型スーパーセンター業態としてリニューアルオープンした。
建設事業では、デザインセンターを活用した提案営業や施主に対する直接営業の強化、技術ノウハウを活かした新製品の継続的開発や付加価値の提供などで、採算を重視しながら受注拡大に繋げる。遠隔地の案件に対しては施工代理店方式(当社が開発した冶具・ノウハウを提供)も活用して、エリア・顧客基盤の拡大に取り組む。中長期的な課題として施工代理店方式を活用した海外展開も検討する。リニア新幹線の停車駅となる長野県飯田市を発祥とする老舗企業であり、高い信用力を背景としてリニア新幹線・駅舎および周辺関連工事の受注も期待される。
貿易事業では、利益率の高い医薬品分野を中心として、ニッチ市場における新商品の開発を強化する。
■中期経営計画で19年3月期経常利益22億円目指す
16年5月策定の中期経営計画では、経営目標値に19年3月期売上高1000億円(内訳はスーパーセンター事業600億円、建設事業360億円、貿易事業40億円)、経常利益22億円を掲げている。
事業別重点施策としては、スーパーセンター事業では新業態開発による売場面積拡大(3年間で4500坪)、既存店活性化に向けたサービスメニューとプロモーションの拡充、ロス率改善やオペレーション効率化による利益率向上、建設事業では問題解決に向けた提案型営業への転換による安定した高収益体質の実現、貿易事業では天然原料の新商品拡充と販売経路の拡大を推進する。
■株主優待制度は毎年9月末に実施
株主優待制度については毎年9月30日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して贈呈する。15年9月30日現在の株主を対象として開始した。優待品の内容は次の(1)~(3)の中から1点を選択する。(1)2000円相当の長野県特産品のうち1点、(2)綿半ホームエイド店舗で利用できるブルーカードポイント2倍カード、(3)社会貢献活動への2000円寄付。
そして16年8月、株主優待制度の内容拡充を発表した。従来の株主優待に加えて、綿半ホームエイドPB商品詰め合わせを新設(17年3月期末はオリジナル生活用品9点2000円相当)した。またポイント2倍カードについては、ブルーカードのみの提示で利用できるようシステムを変更した。
■株価は自律調整一巡して上値試す
株価の動きを見ると、16年10月の上場来高値1840円から反落し、高値圏1600円近辺でモミ合う形だ。ただし自律調整一巡感を強めている。
2月6日の終値1604円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS128円49銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1108円88銭で算出)は1.4倍近辺である。時価総額は約158億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインの形だ。中期成長力を評価する流れに変化はなく、自律調整一巡して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)