アイリッジは戻り足が本格化して上値試す、popinfo利用ユーザー数5500万突破

 アイリッジ<3917>(東マ)はスマホ向けO2Oソリューション事業を展開している。09年サービス開始した「popinfo」利用ユーザー数は17年1月に5500万を突破した。利用ユーザー数の増加ペースが加速し、17年7月期は先行投資費用を吸収して大幅増収増益予想である。さらにFinTechソリューションも推進して中期成長期待は高い。株価は戻り足が本格化してきた。中期成長力を評価して上値を試す展開が期待される。

■O2Oソリューション事業を展開

 自社開発O2Oソリューション(組み込み型プログラム)である位置情報連動型プッシュ通知ASPのpopinfo(ポップインフォ)提供から、popinfo搭載O2Oアプリ企画・開発、集客・販促を中心としたO2Oマーケティング企画・運用支援まで、企業のO2Oマーケティングを支援するO2Oソリューション事業を包括的に展開している。

 O2O(online to offline)とは、消費者にオンライン(webサイトやアプリ)を通じて各種情報を提供し、オフライン(実店舗)への集客や販売促進に繋げるマーケティング手法である。

 主力のpopinfoは企業や店舗のスマホアプリに組み込み、アプリユーザーのスマホ待ち受け画面に、伝えたい商品・イベント・クーポンなどの情報やメッセージをプッシュ通知によって配信できるO2Oソリューションである。位置情報・属性情報・時間を組み合わせて、指定した場所・人・時間帯で配信が可能なため、たとえばアプリユーザーが実店舗指定エリアに接近するとイベント・セール・タイムサービスの情報を配信するなど、実店舗への誘導・集客や販売促進に高い効果を発揮する。

■導入アプリ数・利用ユーザー数は増加基調

 O2Oマーケティングやオムニチャネル化の進展とともに、popinfo導入アプリ数およびアプリ利用ユーザー数とも増加基調である。

 GU(ジーユー)、三井ショッピングパーク、三菱東京UFJ銀行、三井住友カード、阪急阪神、東急電鉄、トリンプをはじめ、小売・流通、金融、交通など業種を問わず大企業中心に採用され、popinfo導入アプリ数は300アプリ(導入社数ベースでは100社弱)を超えている。当社の第3位株主であるNTTデータ<9613>経由の導入も増加基調である。

 16年4月には東京都港区「港区防災アプリ」に導入され、新生銀行のサイト常駐型コンシェルジュサービス「アレコレ相談室」導入支援、シダックスグループのレストランカラオケ・シダックス(全国約270店舗)のスマホ向けアプリのリニューアル開発支援を行った。16年5月にはミサワホーム「ミサワオーナーズクラブ」アプリ、宮城県岩沼市「岩沼市防災アプリ」に導入された。16年6月には富士急行の「FUJI-Q RESORTSアプリ」の企画・開発を行った。

 16年7月には、デジタルガレージの子会社で決済事業を手掛けるイーコンテクストと共同で、全国のバス事業者に向けたスマホアプリ決済サービス「BUS PAY(バスペイ)」の提供開始を発表した。バス乗車券の予約から支払、乗車時の乗車券提示まで、スマホアプリで簡単に行える業界初のサービスである。

 16年8月東京急行電鉄の「東急線アプリ」バージョンアップの開発支援を発表した。東急線内における目的駅までの所要時間実績を表示する「駅間time」を鉄道業界として初めて導入した。16年9月ファミリーマートの公式アプリ「ファミリーマートアプリ」および「Famiポートアプリ」の同時開発支援を発表した。16年10月大阪・光の饗宴実行委員会主催「大阪・光の饗宴2016」公式アプリを、一般社団法人大阪・光の饗宴と共同企画・開発して提供開始したと発表している。

 16年12月朝日新聞社の展覧会アプリ「ミュージアムノート」の開発支援、ロケーションバリューが開発支援したJALカード会員向け公式アプリ「JALカードアプリ」へのpopinfo導入、17年1月メニコンの会員制コンタクトレンズサービス公式アプリ「メルスプランアプリ」の開発支援を発表した。

 09年サービス開始したpopinfo利用ユーザー数(プッシュ通知配信に同意したユーザー数、アプリごとにカウント)は14年1月1000万突破、14年9月1500万突破、15年3月2000万突破、15年9月2500万突破、16年1月3000万突破、16年3月3500万突破、16年5月4000万突破、16年7月4500万突破、16年11月5000万突破、そして17年1月5500万突破と増加ペースが加速している。

■O2Oソリューションの包括的展開が成長要因

 当社の成長要因として、外部要因ではスマホ普及とともにスマホを活用した企業のマーケティング活動が活発化していること、内部要因としてO2Oアプリ開発・リリース後も「新店舗オープンや季節イベントなどに応じたアプリ内企画」「利便性向上や機能追加」などに継続的に取り組んでいることがあげられる。O2O関連の技術面だけでなく、集客・販売促進の企画ノウハウも蓄積してO2Oソリューションを包括的に展開していることが強みだ。

 なお16年10月、有限責任監査法人トーマツのテクノロジー・メディア・テレコミュニケーション業界成長率ランキング、第14回「デロイト トウシュトーマツ リミテッド 日本テクノロジーFast50」において18位を受賞した。また16年11月、米国Red Herringが主催するテクノロジーベンチャーアワード「2016Red Herring Global Top100」を受賞した。日本企業の受賞は3社だった。

 16年12月にはデロイト トウシュトーマツ リミテッドが発表した成長率ランキング第15回「アジア太平洋地域テクノロジーFast500」において500位中321位を受賞した。

■サービスラインナップ拡充、フィンテックとO2Oの融合など推進

 中期成長に向けて顧客層拡大(大手企業への深堀、中堅企業への拡大)や、サービスラインナップ拡充(popinfoの情報配信機能を軸として、アナリティクス機能、クーポン機能、ポイント管理機能、iBeaconを用いた来店検知機能、ゲーム機能、アプリ決済機能など)による単価上昇に取り組んでいる。

 さらに効果的なO2Oマーケティングを実現するため、ビッグデータ解析によって従来よりも精度の高いターゲティング機能の整備を図る、ポイント残高管理機能を強化するなど、従来の集客・販売促進だけでなくターゲティングや決済までを網羅する方針だ。16年3月にはスマホアプリ向けポイントシステム「popinfoポイント」を開始した。

■アライアンス戦略も積極化

 15年12月テックビューロと業務提携した。テックビューロの国内唯一のプライベート・ブロックチェーン技術「mijin」を利用し、当社のpopinfoを組み合わせてフィンテックとO2Oの融合を推進する。そして16年9月ブロックチェーン技術のO2O領域への適用に向けた1次技術検証の実施を発表している。

 16年3月NTTドコモのO2O戦略子会社であるロケーションバリューと、O2Oアプリ開発・マーケティング分野の戦略的パートナーとして業務提携した。当社のpopinfoとロケーションバリューのModuleAppsは、O2Oソリューションの特徴や主要顧客業種などが異なっているため、開発リソース連携などで高い補完関係が実現できるとしている。またロケーションバリューの約1200万ユーザーと合わせて国内最大級のO2O連携となる。

 16年3月クレディセゾン<8253>が当社株式を追加取得(デジタルガレージ子会社で当社の第2位株主DGインキュベーションが24万株をクレディセゾンに譲渡)し、当社、クレディセゾンおよびデジタルガレージ<4819>との3社連携を強化した。FinTechソリューションの共同開発を推進する。

 16年11月には当社と飛騨信用組合が、フィンテックソリューションによる地方創世の取り組みとして、スマートフォンアプリを活用した電子地域通貨のプラットフォームを導入すると発表した。ブロックチェーン技術を活用して17年春、飛騨信用組合の職員を対象に電子地域通貨「さるぼぼ倶楽部コイン(仮称)」を導入し、商用化に向けた実証実験を行う。金融機関による地域通貨の電子化は業界初となる。

■ストック型ビジネスモデル、利用ユーザー数増加で収益拡大基調

 収益はアプリ利用ユーザー数に応じた従量課金型の月額報酬(popinfoサービスのライセンス収入)、およびアプリ開発・コンサル等(popinfoを組み込んだO2Oアプリ開発に係る収入、O2O促進マーケティングに係る収入)である。導入企業数増加と利用ユーザー数増加に伴って収益が積み上がるストック型ビジネスモデルだ。

 四半期別の業績推移を見ると、16年7月期は売上高が第1四半期2億29百万円、第2四半期2億62百万円、第3四半期3億78百万円、第4四半期3億61百万円、売上総利益率が34.0%、35.2%、39.4%、38.7%、営業利益が10百万円、10百万円、59百万円、57百万円だった。現在はアプリ開発・コンサル等の売上高構成比が高いため、多くの取引先の決算月(3月)を含む第3四半期の構成比が高くなる傾向があるとしている。

 利用ユーザー数の増加で収益は拡大基調である。前期(16年7月期)の非連結業績は、売上高が15年7月期比65.2%増の12億30百万円となり、営業利益が同27.2%増の1億36百万円、経常利益が同27.2%増の1億37百万円、純利益が同27.4%増の92百万円だった。既存取引先の継続支援や新規受注の両面で顧客層の拡大・深耕を推進し、popinfo利用ユーザー数も大幅に増加して大幅増収となった。採用費、人件費、自社サービス開発コストなど中期成長に向けた先行投資負担を吸収して計画超の大幅増収増益だった。

 サービス別売上高はO2O関連が同65.7%増の12億30百万円(月額報酬が同55.7%増の2億95百万円、アプリ開発・コンサル等が同69.1%増の9億34百万円)だった。アプリ開発・コンサル等売上高のうち既存取引先の継続新は7割、新規取引先は3割だった。16年7月末のpopinfo利用ユーザー数は、15年7月末比約2100万増加して約4500万となった。

 売上総利益は同49.9%増加したが、売上総利益率は37.3%で同3.8ポイント低下した。自社サービス開発強化に向けた先行費用および外注費からのスイッチング・コスト計上などで売上原価が増加した。販管費は同62.3%増加したが、販管費比率は26.2%で同0.5ポイント低下した。人員増に伴って人件費が増加し、新オフィス移転に伴うコストが増加した。16年7月末の人員数は59名(うち開発40名、セールス13名、管理6名)となり、15年7月末比27名増加した。自社サービス開発、および外注から内製への切り替えによる原価率改善に向けて人材を積極採用している。

 ROEは10.9%で同1.3ポイント低下した。自己資本比率は81.4%で同1.0ポイント低下した。配当は無配を継続した。利益配分については、成長過程にあるため、人材確保・育成やサービス強化のための投資、営業強化のための広告宣伝は販売促進、その他成長投資に対して迅速に対応することが重要と考え、現在まで配当を実施していない。今後においても当面は成長投資に備えて内部留保の充実を図る方針としている。将来的には利益還元を検討するが、配当実施の可能性および実施時期等については、現時点において未定としている。

■17年7月期第1四半期は大幅増収増益

 今期(17年7月期)第1四半期(8~10月)の非連結業績は、売上高が前年同期比63.5%増の3億75百万円、営業利益が同6.4倍の65百万円、経常利益が同6.4倍の65百万円、純利益が同9.0倍の46百万円だった。月額報酬、アプリ開発・コンサル等とも順調に増加し、内製化進展による原価率改善も寄与して大幅増収増益だった。営業利益は四半期ベースで過去最高となった。

 サービス別の売上高はO2O関連が同63.5%増の3億75百万円(月額報酬が同65.2%増の1億03百万円、アプリ開発・コンサル等が同62.8%増の2億71百万円)だった。アプリ開発・コンサル等では大型のアプリ開発・リリース案件が寄与した。

 売上総利益は同88.6%増加し、売上総利益率は39.2%で同5.2ポイント上昇した。自社サービス開発強化に向けた内製化が進展して大幅改善した。販管費は同20.2%増加したが、販管費比率は21.7%で同7.8ポイント低下した。人件費増加などを増収効果で吸収した。16年10月末の人員数は58名で、16年7月末比1名減少した。なお新規事業・新規サービスへの取り組み強化で、下期に関連コストや採用関連費用が増加する見込みとしている。

■17年7月期通期も大幅増収増益予想で収益拡大基調

 今期(17年7月期)の非連結業績予想(9月9日公表)は売上高が前期(16年7月期)比30.1%増の16億円、営業利益が同46.1%増の2億円、経常利益が同45.5%増の2億円、そして純利益が同49.7%増の1億38百万円としている。配当予想は無配継続としている。

 サービス別売上高の計画は、O2O関連が同30.1%増の16億円(月額報酬が同35.2%増の4億円、アプリ開発・コンサル等が同28.4%増の12億円)としている。月額報酬ではpopinfo利用ユーザー数2000万~2500万ユーザー増加を見込んでいる。アプリ開発・コンサル等は既存取引先との取引拡大や新規取引先の開拓が順調に推移する。また経営資源の一部を新規サービス・事業の取り組み強化に投入する。新規サービス・事業については売上計画に織り込んでいない。

 利益面では、新規サービス・事業への取り組みなど先行投資負担を大幅増収で吸収し、内製化による原価率低下(1ポイント程度の低下を想定)も寄与して大幅増益予想である。今期の採用は10人程度の計画(受注状況によって見直す可能性)で、17年7月期末の人員は69名の見込みとしている。

 なお通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.5%、営業利益が32.8%、経常利益が32.8%、純利益が33.4%と高水準だが、新規事業や新規サービスへの取り組み強化で、下期に人件費などの開発コストや採用関連費用が増加する見込みとしている。

 popinfo利用ユーザー数の目標は20年を目途に1億人超としている。顧客層の拡大、アプリ決済などサービスラインナップ拡充による単価上昇、開発内製化による売上総利益率改善、そしてpopinfo利用ユーザー数増加に伴うストック型収益(月額報酬)の構成比上昇などで、中期的にも収益拡大基調が期待される。

■株価は戻り足が本格化、中期成長力を評価して上値試す

 株価の動きを見ると、安値圏3000円台でのモミ合いから上放れて戻り足が本格化してきた。2月7日には5050円まで上伸し、16年4月以来となる5000円台を回復した。

 2月7日の終値5010円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想EPS50円13銭で算出)は100倍近辺、実績PBR(前期実績BPS323円45銭で算出)は15倍近辺である。時価総額は約138億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線が上向きに転じ、基調転換を確認して先高感を強める形となった。中期成長力を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る