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川崎近海汽船は低PBRも見直して戻り試す、円安や市況改善で中期的に収益改善期待
- 2017/3/3 07:27
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
川崎近海汽船<9179>(東2)は近海輸送と内航輸送が主力である。17年3月期減収減益予想だが円安や海運市況改善がプラス要因となりそうだ。2月24日にはオフショア支援船業務の合弁相手であるオフショア・オペレーションを子会社化すると発表した。中期的には近海部門の船隊規模適正化、内航部門の新規航路開設、オフショア支援事業の本格化、コスト削減効果などで収益改善が期待される。株価は低PBRも見直して戻りを試す展開が期待される。
■近海輸送と内航輸送を展開
石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門を展開している。16年3月期の売上高構成比は近海部門が36%、内航部門が64%だった。
13年10月には新規分野として、オフショア・オペレーション(OOC)と均等出資で合弁会社オフショア・ジャパン(OJC)を設立し、日本近海における海洋資源開発・探査・掘削設備・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船業務に進出した。16年3月にはOJCが国内最強牽引力を持つ最新鋭アンカー・ハンドリング・タグ・サプライ船「あかつき」を就航させた。
2月24日にはオフショア支援船業務の合弁相手であるOOCの株式の過半を取得(17年4月予定)して子会社化すると発表した。オフショア支援船事業分野の充実を図る方針だ。
■内航部門の新規航路開設を推進
15年12月には当社、ネスレ日本、一般財団法人日本気象協会の3社が、気象予報を活用した海運により、日本のモーダルシフトを推進することで合意した。
16年3月には、岩手県宮古港と北海道室蘭港を結ぶ新たなフェリー航路(宮古~室蘭326km)開設を発表した。航路開設時期は18年3月予定で1日1往復、毎日運航する。
16年10月には静岡県清水港と大分県大分港をRORO船で結ぶ新規航路を開設した。九州と首都圏、東海甲信地域を結ぶ物流のモーダルシフトが加速し、ドライバー不足問題の解決策の一つとして期待されている。
また16年10月には、需要増大が期待されているバイオマス燃料用貨物(PKS、木質パレット等)輸送への取り組みを強化するべく、専任機関としてバイオマス関連輸送ワーキンググループを設置した。
■輸送量、運賃市況、燃料油価格などが影響する収益構造
四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期111億91百万円、第2四半期122億87百万円、第3四半期119億83百万円、第4四半期104億85百万円、営業利益が56百万円の赤字、8億59百万円、9億60百万円、5億98百万円、16年3月期は売上高が107億16百万円、114億84百万円、108億54百万円、94億44百万円、営業利益が3億円、11億87百万円、9億93百万円、8億15百万円だった。
輸送量、運賃市況、燃料油価格などが影響する収益構造である。16年3月期は安定した輸送量を確保したが、燃料油価格下落に伴う燃料調整金等の減少幅が大きく減収、営業利益と経常利益は円安やコスト削減効果が寄与して増益、純利益は近海部門の一部船舶に関する減損損失を計上したが増益だった。
なお16年3月期の売上総利益は15年3月期比19.0%増加し、売上総利益率は16.6%で同3.7ポイント上昇した。販管費は同5.4%増加し、販管費比率は8.9%で同1.1ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化したが金融収支が改善した。特別損失では減損損失が増加した。ROEは3.4%で同1.2ポイント上昇、自己資本比率は61.9%で同5.6ポイント上昇した。また配当性向は49.5%だった。
近海部門は売上高が同7.3%減の154億44百万円だが、営業利益が10億67百万円の赤字(前々期は13億72百万円の赤字)だった。内航部門は売上高が同7.6%減の270億51百万円だが、営業利益が同16.8%増の43億63百万円だった。
■17年3月期第3四半期累計は減収減益
今期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)連結業績は、売上高が前年同期比15.3%減の280億01百万円、営業利益が同52.9%減の11億68百万円、経常利益が同54.5%減の11億11百万円、純利益が同72.0%減の4億48百万円だった。
近海部門における市況低迷や円高影響、内航部門における燃料油価格下落に伴う燃料調整金収入減少などで減収減益だった。売上総利益は同22.6%減少し、売上総利益率は14.5%で同1.4ポイント低下した。販管費は同4.4%増加し、販管費比率は10.4%で同2.0ポイント上昇した。
営業外収益では持分法投資利益が増加(前期1百万円、今期53百万円)した。営業外費用では為替差損が増加(前期14百万円、今期92百万円)した。特別利益では固定資産売却益1億14百万円を計上したが、船隊規模適正化の一環として高コスト用船の期限前解約での返船を行い、特別損失に用船契約解約金4億64百万円を計上した。
セグメント別に見ると、近海部門は売上高が同30.7%減の85億19百万円で営業利益が14億15百万円の赤字(前年同期は7億42百万円の赤字)だった。市況低迷や円高などが影響した。木材輸送でバイオマス発電用PKS輸送が増加し、バルク輸送で石炭・セメント・穀物輸送が増加したが、鋼材・雑貨輸送では日本出しの鋼材が伸び悩み、バルク輸送ではロシア炭輸送が減少した。
内航部門は、不定期船輸送で石灰石および石炭の各専用船が安定した輸送量を確保したが、定期船輸送が夏場に連続した台風の影響を受け、燃料油価格下落に伴う燃料調整金収入減少も影響して売上高が同6.2%減の194億80百万円、営業利益が新規航路開設に係る費用増加などで同19.8%減の25億84百万円だった。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期87億35百万円、第2四半期92億61百万円、第3四半期100億05百万円、営業利益は1億72百万円の赤字、8億54百万円、4億86百万円だった。
■17年3月期通期も減収減益予想だが、円安と市況改善がプラス要因
今期(17年3月期)通期の連結業績予想(10月31日に売上高を減額、営業利益と経常利益を増額、純利益を減額)については、売上高が前期(16年3月期)比13.4%減の368億円、営業利益が同59.0%減の13億50百万円、経常利益が同62.2%減の12億円、純利益が同22.2%減の6億円としている。
燃料油価格の動向や6月に実施した船腹調整の状況などを踏まえ、下期の想定為替レートは1ドル=110円から1ドル=100円に、燃料油価格(C重油)は4万円/KLから3万9800円/KLに見直した。その後の円安や海運市況改善がプラス要因となりそうだ。配当予想は同5円減配の年間8円(第2四半期末4円、期末4円)で、予想配当性向は39.1%となる。
今期の取り組みとして近海部門では、バルク輸送の高コスト船の早期返船を進めて船隊規模の適正化を図り、木材輸送や鋼材・雑貨輸送では運航効率の向上を図る。内航部門では不定期船輸送で石灰石専用船のリプレースを行い、定期船輸送では新規航路開設を推進する方針だ。
■中期経営計画で19年3月期ROE7.2%目指す
16年4月策定した16年度中期経営計画では、経営目標値に19年3月期売上高433億円(近海部門122億円、内航部門311億円)、営業利益28億円(近海部門11億円の赤字、内航部門39億円の利益)、経常利益27億50百万円、純利益18億50百万円、ROE7.2%、自己資本比率58.1%、DER0.50倍を掲げた。前提の為替レートは1米ドル=110円、燃料油価格は4万3400円である。
新造船建造等に対する3年間の合計投資額は130億円とした。期間中の新造船は近海部門の一般貨物船2隻(社船と傭船)、内航部門の石灰石専用船1隻(社船)、RORO船1隻(社船)、旅客フェリー1隻(社船)の予定である。
近海部門は極めて厳しい事業環境の中、喫緊の課題である収益改善に向けて船隊規模の適正化と積極的な貨物獲得を目指す。内航部門は不定期船輸送における各専用船の安定輸送確保と新規顧客獲得、定期船輸送とフェリー輸送における新規航路開設による事業拡大を目指す。
新規事業では、16年3月竣工した国内最高性能を誇る新造AHTSV(アンカー・ハンドリング・タグ・サプライ船)の「あかつき」の運航(オフショア・ジャパン)によって、日本近海における海洋資源開発・探査・掘削設備・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船業務を開始する。
陸上輸送におけるドライバー不足で海上輸送へのモーダルシフトが注目され、中期的には、近海部門における船隊規模適正化、内航部門における新規航路開設、日本近海におけるオフショア支援船業務、さらにコスト削減効果などで収益改善が期待される。
■株価は0.4倍近辺の低PBRも見直して戻り試す
株価の動きを見ると、16年12月の戻り高値313円から一旦反落したが、その後も着実に下値を切り上げている。戻り歩調に変化はないようだ。
3月2日の終値306円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS20円44銭で算出)は15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は2.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS783円16銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約90億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって下値を着実に切り上げている。そして26週移動平均線も上向きに転じている。0.4倍近辺の低PBRも見直して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)